安全確保
「……それでおっけーかな?」
「……君の望むとおりに。我らも力は貸そう。元々は我らの失点でもある」
「じゃ、そういうことで」
ーーーー
光が爆発する。
そして結界が発動した。
うん。結界が発動するとき、こんな光が爆発するとは思ってなかったな。
ためしに発動したときは、みんなビックリしてたし。
で、光がやむと大きな影がおちた。上空にいる長さんの影。
その傍らには黒羽もいる。
彼らも結界の影響で、本来の姿に戻っちゃってんだよね。
長さんは数十メートルの大きさだし、黒羽も8メートルくらいの大きさまで育っちゃってるし。
なので二人は牽制役。町中で暴れられたら困る。
長さんが現れたことで、町の人たちも何かあったと判断してくれたらしく、兵士さんたちの誘導に従って避難してくれた。
そして。
その子だけはじっとして待っていた。
人々がさって、あたしが動き出すときを。
そう、子供、だ。
見た目、10才くらいだろうか。中性的で長い灰色の髪と赤紫の瞳をしている。
おそらく、それが魔族の本性。
その子の両手には、いつのまにか短剣がそれぞれ握られている。
避難が終わったのか、周りから人がいなくなる。
残っているのは、あたしの傍らの紫黒と、建物の影に隠れている4人。
あたしは一歩その子のほうに足を踏み出した。
次の瞬間、その子は後ろから切りかかってきていた。
……なかなか、速いな。もっとも対処できないほどじゃないけど。
あたしは首を少し傾けることで短剣を避けると、そのまま回し蹴りを放つ。
その子はもともとヒットエンドランのつもりだったらしく、すぐに離れていた。
「……なにが目的? あたしを殺すことはその過程でしかないんだろ?」
「……まずは、あなたを殺すこと。そうすれば、きっと我の望みも叶う」
「望みってなんだ? 話によっちゃ助けられるよ?」
「神々すら叶えられなかった。あなたには無理だ」
うーん、断定。あたしを殺すことで叶う望み……。
やっぱりあれ?
「……そんなに、死にたいの?」
死角に回っては短剣を放つ。それを繰り返していたその子の動きが止まった。
「……我らに死はない。あるのは滅びのみ。あなたでは我を滅ぼせない」
淡々と口にする。
子供の言うことじゃないけど、まあ、実年齢からいったら子供じゃないし。なんというかアンバランスな感じだな。
っと、現実逃避してても仕方ないか。
そーすっと、やっぱあれかなー。
(紫黒)
(なんだ?)
(ちょっとあの子つれて跳ぶ)
(? どこに)
(うーん。誰もいないとこ、かな。これからやることはちょっと誰にも見せらんないな)
(……悪いが私はついていくぞ。見届けなければならない)
(ま、そっか。じゃ黒羽と長さん、みんなにとりあえずの説明よろしく)
(うむ、分かった)
(キをつけてね、キキョウ)
(ん)
念話で簡単に話をつけて、あたしは魔術を使う。
というか、まずは魔道具の魔石を破壊する。
あたしの魔石だから、あたしの意思に従う。
……シオンいわく、そんなのできるのはあたしだけってことだけど。
そして、魔道具が停止したら、すぐに魔術の発動。
『空間転移、目的地東の平原』
次に目を開いたときは、東の地の国、トパーズの人気のない平原にいた。
周りを見ると、紫黒とその子だけがいる。
……うん。聴いていた紫黒はともかく、その子はさすがにビックリしてるね。
「……なんのつもりだ」
「うん。ちょっとやることあってね。それには他の人の目は邪魔だったから」
とりあえず、これからすることは、トキワたちにも見せらんない。
「ま、お楽しみはこれからってね」
「言ってればいい」
そしてあたしは太刀を抜く。
その子とあたしのぶつかり合いが始まった。
紫黒の役割は見届けること。
これは、神様から頼まれたことでもあります。




