魔族とのご対面
(桔梗。兵の準備はできたようだ。いつ動く?)
紫黒に報告されて、窓の外を見る。
……あれから数日。
町に出るたびに「彼」と目を合わせる。
いや、正確には「彼」じゃなくて、「魔族」と呼ばないとおかしいか。「彼女」の時もあるから。
魔族はまるであたしを待ってるみたいに人を誘う。
誘われた人に確認すると、人を待ってるから来るまで付き合ってほしい、と言われたそう。
……つまり、毎回あたしを待ってるようなんだ。
そして目を合わせて、あたしが行動するつもりがないと感じると、そのまま去っていく。
跡を追ってみても、途中で気配が消える。
魔道具で確認したところ、一気に他国まで跳んでた。毎回別の国で。驚きだな。どういう能力なんだか。
「そうだな。たぶん早い方がいいと思う。明日動く」
(分かった。連絡しておく)
「みんなも準備しといて」
他のみんなも頷く。
「特に今回、コスモスちゃんを当てにしてるからね」
「はい」
神妙に頷く。コスモスちゃんの銃は魔道具で、魔術消しの結界の中でも使えるからな。
ここでちょっと説明を。
魔術を使うときは、魔力を動かすことで術を編む。
魔道具は魔力を集めることで発動する。
それなら、最初から魔力が溜め込まれている魔道具なら?
回りの魔力がなくなって、魔術を編むことができなくても、溜め込まれている魔力を使って魔道具を発動することは可能ということ。
つまり、今回使用する魔力消去の結界の中でも、銃に溜め込んだ魔力がなくなるまでは使用可能。
ただし、あいては魔族とはいえ人に属するから、殺傷力は低くなってるけどね。
そういうわけで、魔術師のシオンは戦力外になっちゃってるけど。
……まずは話しをして、魔族がどうしたいのかを知らないとな。
明けて次の日。今日は魔族は町の東のほうにいるようだ。
手順としては、まず兵たちが回りを囲み、場合によってはすぐに周りの人たちを避難できるように準備する。
次にあたしたちが、魔族に近づく。たぶん、今回は逃げないと思うんだよな。
で、魔族がおかしな動きをしようとしたら、結界起動。
これは長さんにお願いした。長さん、長生きしてるだけあってかーなーり、器用です。
姿隠して近くにいる予定。……結界の範囲、直径20メートルしかないからな。それ以上だと持ち運びできない。なにしろ、起動中は魔石からの魔力の供給が必要で、あたしのかなり大きな魔石を利用してたりする。
直径50センチあるからな……。これで効果時間1時間だし。
まあ、すぐに戦闘とか、必要にならないのが一番なんだけど。
すべての準備は終えて、とにかく魔族を見つける。……いた。
またいつも通りのナンパだね。
あたしと目が合うのもいつも通り。
あたしはそのまま魔族に近づく。
それで他のみんなも誰が魔族か解るはず。
魔族は話していた男性と別れてあたしの方へ。
あたしの傍らには紫黒、肩の上には黒羽、近くの建物の影に長さん。
「こんにちは」
すこし高めの声。
「ずっとあなたと話したかった。神の代理人、神と同等の力を持つもの、新たなる神の資格を持つものである、あなたと」
「……なにが目的?」
「……」
魔族はにぃっと嗤った。
「……あなたの、死を」
……そして、光が爆発した。




