番外編 お手紙届きました
内容、暗いです。
ご了承を。
……彼は写真立てを見ながら、ひとつため息をついた。
「……どうして、こうなったのだろう……」
最初に失ったのは、ふたつ下の妹だった。
友人の結婚式から帰ってきて、ふたりでその事について話している時だった。
「アリシアさんも、幸人さんも、幸せそうでよかったわ」
「……そうだな」
「もう、兄さん? いいかげんにアリシアさんのこと、吹っ切ってよ。兄さんにも婚約者はいるんだから」
財閥の後継者であるため、家の関係で選んだ相手ではあったが、彼にとってもっとも信頼できる人物であるのもたしかで、穏やかに寄り添ってはいるのだが。
「それとこれとは別だ。幸人のやつ、あんなに美人の嫁さんを貰いやがって」
「はいはい」
彼女は美人ではなく、可愛らしいタイプだったための感情らしい。アリシアの家はは英国の王家の関係者だったそうで、所作などもかなり洗練されていた。その様子を見ていると、やはり財閥の長としてはほしくなるものらしい。
あきれた妹をおいて、づかづかと自分の部屋に向かう。
その時だった。
「きゃっ……!」
「菫?」
振り向くと、妹の足元に穴が開いて、そこに落ちていく所だった。
「! 菫!」
あわてて駆け寄ったときにはもう、穴は閉じていた。
「菫! 菫!」
その様子を見ていた使用人たちも、あわてて床下などを調べにいく。
そして……。いくら探しても、警察に捜索願いを出しても、ついに妹は見つからなかった……。
『穴が開いて落ちた』
そういって信じるものはいなかった。当然だろうが。
目撃していた者たちも、やはりなにも言えなかった。
そして、結婚し子供もできて、……友人ふたりを失った。
万一の時のために、彼の道場の管理については話し合っていたため、自分が管理することになったが、生き残った娘は自ら孤児院に行くことを選んでいた。
『和泉のおじさんに、なにもかも頼ることはできません』
年のわりに、大人びていた少女は、自身の力で生きていく力を得るために、孤児院を選んでいた。
少女に息子のひとりがまとわりつくようになったのは、中学3年のころからだろうか。
息子の嫁になってくれれは、自分の娘になってくれる。
そう思ったが、その息子は、「倫理」や「道徳」といったものが理解できない人間だった。
むやみになんでもできる人間だったせいだろうか。
できることをなぜしてはいけないのかを、理解することができなかった。
少女が抑止力となってくれたために、犯罪だけは犯さずにすんでいたようなものだ。
だから、息子が成長したら、少女から遠ざけて、少女の願いを叶えるために動こうと思っていた。妻も少女を娘のように可愛がっていたから。
……その少女と息子が消えた。
最後にみた人物によると、目をはなした一瞬のうちに消えた、と言うことだった。
まるで、妹の時のようだ……。
そして同じようにいくら探そうとも見つからなかった。
息子は見つかったとき、犯罪をおかしていた。
妙なコスプレをして、そういう人々があつまる町で、本物の剣で近くにいた女性を殺した。
そして、まわりにいる人々にも、ためらわず剣を振るった。
そのため、警察によって射殺された……。
いままでどこにいたのか、何をしていたのか、不明のまま。
殺された女性も、身元は不明のままだった。
女性は手厚く葬り、息子の葬儀もあげ、そして、少女はいまだに見つからない。
息子については、マスコミがいろいろいっていたが、身内、息子を知っている者たちは、逆に同情的だった。
当然の結果とみな、受け止めたのだ。
自分でも当然だと思っても、その考え方を変えることができなかったのは、たしかに自分の罪なのだろう。
そのことだけは、しっかりと刻み込んだ。
少女はおそらく息子に殺されてしまったのだろう。
もう、会えないのだろう。
「ふう」
もういちどため息をついて視線をあげると、見慣れない封筒があった。
「これは……?」
たしかにさっきまではなかったものだ。
宛先は自分になっている。
なんとなく開いて、目を見張った。
封筒のなかに入っていた手紙。
ひとつは行方不明の妹から。現状の報告と、幸せだということがかかれていた。
もうひとつは、同じく行方不明の少女。新しい家族と、息子が犯した罪。そして、いまはとても楽しいと書かれていた。
そして同封されていた写真のような絵。
普通の紙に印刷された写真、といったそこには、妹とその夫、3人の子供たち。
少女とその4人の家族、妹の息子のひとりと……2匹の竜と四枚の翼の烏。
家族を得て微笑む妹。ありなえない生き物たちと写っている少女。どちらも幸せそうだった。
「……幸せで、いてくれてるのか……」
思わず涙をこぼしながらも、写真を見つめる。
様子を見に来た妻も、写真をみて微笑んだ。
「よかった。ふたりとも幸せに過ごしているのね」
「そうだな」
妻と笑い会う。
ああ、写真立てを買いにいかないとな。
ふと思って、もとからおいてある写真を見つめる。
妻や家族ととった写真と、少女が幼い頃に家族ととった写真。
「幸人、アリシアさん。桔梗ちゃんは幸せに暮らしているよ」
そっと呟いた。
息子より桔梗が大事なご夫婦でした。




