王妃様とお母さん
ということで、とりあえずは菫さんとみんなのところへ。
紫黒に案内されたのは、王家のサロン。そこで、みんなのんびりと歓談をしていたよう。
「キキョウちゃん、お話はおわったの?」
「うん。あとは向こうの準備待ちと、あたしたちの方の情報集めってとこ。とりあえず今日一日くらいはゆっくりしててもいいと思うよ」
「そうですか」
ほっとした様子のふたりにあたしも微笑み返す。
さて、
「では、改めて。あたしは有河桔梗。今年の地の月にこの世界に落っこちまして、それからトキワたちと一緒に旅してます」
「有河? もしかしてアリシアさんのお嬢さんですか?」
「あれ、母をご存じですか?」
「ええ。大学時代の親友、だったの。兄もアリシアさんに振られてますし」
クスクス、と笑いながら菫さん。
「それじゃ、和泉のおじさんがあたしに親切だったのって、母の娘だったからかなー」
「そうかも知れませんね。アリシアさんと幸人さんはお元気ですか?」
……そっか。あたしが生まれるより前にこっち来てるから知らないんだ。
「両親とも、数年前に事故で亡くなってる」
「え⁉」
「で、あたしは孤児院でそだった。和泉のおじさんにけっこうお世話になっての、そのせい」
「……ご免なさい」
「いや、知らなかったことだし、気にしなくていいよ」
「それでも、思い出させてしまったわけですから。きっと兄はアリシアさんの娘である桔梗さんを娘のように想っていたのでしょう。自分の息子の嫁になれば、守れると思ったのもあるかもしれませんが。お父様の幸人さんと兄も仲がよかったこともありますし」
ああ、だからうちの両親の邪魔はしなかったと。
「はあー。いがいと世界って狭いですねー。こういう出会いとかあっちゃうと」
ほんとに、どこで人と人とのえんがつながってるやら。
「……ひとつだけ、いいですか?」
「なにかしら」
「……帰れるって言われたら、帰りますか?」
紫黒と木蓮(おそらくはこの字だろ)ちゃんのふたりが思わず震えたのには気づいたけど、これだけは聞いておかなきゃならない。
「……一度帰れるなら、私は幸せだと伝えたいとは思います。ですが、私の帰る場所は、ここですから」
まあ、そういうとは思ったよ。だけど確認しとかないとね。帰すことかできちゃう以上は。
「じゃ、手紙でも書いたら? 向こうに送るだけなら、簡単にできるから」
「え? 送れるんですか?」
「うん。往復は無理だけど、送るだけならできる。だから聞いたんだよ。帰りたいかって。あたしはもう帰れないし」
向こう以上にこっちに大切なものがいっぱい出来ちゃったしね。
「ありがとうございます。近いうちに手紙を準備させてもらいますね」
「うん」
まあ、あたしも手紙書いておこう。……いちおう、こっちでのあのバカのしたことを伝えといたほうがいいだろうからな。




