閑話 キキョウへの想い
今回は桔梗のことを想うひとたちの話です。
トキワ・マリー
「キキョウには悪いことしたかな」
「大丈夫よ。シコクさんといっしょだもの」
そういって笑うマリーに、肩をすくめるトキワ。
「……甘えさせて一緒に回ってもいいとは思うんだがな」
「そうね。それも楽しいと思うんだけど、……本来、わたしたちがキキョウちゃんと一緒にいるのは釣り合わないのもたしかだもの」
一緒に旅をするのは、今年いっぱい。その後は別れ別れになる。そのことは暗黙の了解となっている。
だからこそ。
「一緒にいたいけど、足を引っ張りたくもない。あの子と釣り合って、一緒にいられるのは、たぶんシコクさんだけだもの」
真竜の長を使い魔とし、強力な加護で魔術をつかう。
神々の友人であり、本人も神になる資格すらもつキキョウと自分たちは釣り合わない。
……キキョウとともにあるには、力が足りない。
それは、ふたりが常に気にしていたことでもある。
守りたい相手に守られる。それでも、できる限りのことをしたくて、力を磨きここまで来た。
そして、キキョウと釣り合う相手が現れた。
「シコクさんには迷惑でも、キキョウちゃんと一緒にいてほしいから」
「そのために二人きりにするって、まるで見合いの斡旋みたいだぞ」
貴族などでときどきそういう人物はいたりする。
「あら、トキワはダメだと思うの?」
お手上げ、とばかりに両手を上げると、マリーの手を取る。
「まあ、今はいいさ。どうするかはふたりが決めることだしな。おれたちはおれたちで、祭りを楽しむか」
「そうしましょ」
微笑み合って、ふたりは雑踏に消えて行った。
シオン・コスモス
「あの、よかったんでしょうか」
シオンとふたりで回りたかったので、思わずついてきてしまったが、キキョウとシコクふたりだけにしてよかったのか、と不安になったコスモス。
「大丈夫だよ。黒羽と真竜の長も一緒だからね。……それに、僕たちがキキョウのそばを去った後、彼にはキキョウのそばにいてほしいから」
「え?」
「次の始まりの時にマリーとトキワは結婚する予定なんだ。僕もその後は君の実家の方に行こうかと思っている。……もともと魔道具作りに興味はあったし、君のお父さんと協力して作るのは、とても楽しかったからね。だけど、そうするとキキョウはひとりになってしまう」
「……だから、シコクさん、ですか?」
「そう。彼ならキキョウと実力も身分も釣り合うし、なにより息があってるからね」
ふたりの会話を思い出して、ふと微笑む。
内容が聴こえてるのはシオンだけでも、ふたりの雰囲気から対等に話せてるのは感じる。
「僕たちにとって、キキョウは妹。僕個人にとっては魔術の使い方の師。キキョウを守りたくても、足手まといになりかねない。だから、キキョウのそばには、彼がいてくれる方がいい」
さびしそうにつぶやく。
「だけどキキョウさんは!」
「うん。家族として思ってくれてるからね。一緒にいるのに強さとかは関係ないっていうだろうけど、家族だからいつまでも一緒にはいられない。だけど、つながりが切れるわけでもない。ただ、キキョウが望む通り生きられるように、幸せでいられるように、勝手に願ってるだけだから」
なにより、ひとりにしてしまわないように。
「シオンさん……」
さびしそうなシオンをみて、コスモスはより強く思う。
(皆さんが、いずれ離れ離れになったとしても、いまこの時を楽しめるように、幸せだったと思えるように)
だから。
「シオンさん、今はお祭りを楽しみましょう。面白いものがあったら、キキョウさんにお見せしたいです」
「そうだね」
やっと憂いなく笑ったシオンに、うれしくなって腕に抱きつく。
「行きましょう!」
笑いながらふたりは歩いて行った。
余談ながら。屋台の中になぜかお面を売ってる店があったため、面白がってコスモスが購入。
それが神獣をデフォルメして模したものだったため、キキョウは大笑いしたそうな。
上手く書けてるといいのですが……。
みんな桔梗が大切なので、間違っても孤独にならないように、と動いてます。




