水の町の祭り
そしてやって来た祭り当日。
水路の上にいくつもの舟が浮かび、その上の屋台でいろいろ売ってる。
そのなかには先日あたしが作った串焼きとかお好み焼きも……あれ、……甘味の店? 黒蜜かけたところてん? ……たしか寒天とかは海草って聴いたことあったけど、いつの間にやら創作されてたんだ……。よし。まずはこれを食べねば!
「ね、あれ食べてみよ!」
あたしが指差す方をみんなが見る。
「なんじゃありゃ?」
「……麺みたいなものに黒い液がかかっている?」
「キキョウちゃん、知ってるの?」
「もしかしたらね」
ひょっとして似ている別のものかも知んないし。
さっそく買って食べました。
うん。間違いない。あたしが知ってるところてんと同じものだ。
「変わった食感だね」
「だけど甘くて美味しいわ」
まったく。
「これ、何て言う料理?」
「寒天麺の液糖かけだよ」
なんつか、そのまんま……。
「あたしの故郷じゃこれ、ところてんの黒蜜かけって言ったんだ」
「ほう。ところてん、というのはよくわからんが、黒蜜かけはいいな。確かにこの液糖は黒っぽいし、蜂蜜に似てるとこもあるし……。よし。こいつは寒天麺の黒蜜かけだ」
あ、名前微妙に変わっちゃった。ま、いいか。
そうして屋台舟を冷やかしながら歩いていくと、広間みたいな場所に出た。中央が少し高くなってて、水かさが増えたときの一時的な安全地帯みたいになってる。
祭りは水路沿いで行われているためか、ここには休憩中の人しかいないよう。
……あれ、あの人?
「何してるんですか?」
これはたぶんリュート、かな。つま弾きながらため息ついてる。
「ああ、ちょっとね。こいつの練習中なんだけどね。……神殿の曲じゃなくて、祭りで楽しめる演奏が出来ないかと思ったんだけどね。……曲っていうと、どうしても神殿の物しか出てこないし、こんなところで誰もそんなのは聴きたくないだろうし……」
……あれかな。元の世界の吟遊詩人さんみたいなことやろうとしてんのかな?
……祭りだし、やっぱり楽しんだものの勝ちだよね。
「黒羽、ちょっとギルド長さん呼んできてもらえる?」
「いいよ」
「キキョウ、なにするつもりだい?」
みんな頭に疑問符浮いてるね。
「あたしの故郷の祭りの再現? みたいなの」
みんなが首をかしげてる間に、ギルド長さんが来た。
「今度は何をするのだ⁉」
……なんかスッゴク楽しそう。
「うん。ちょっと歌と踊り、かな」
「ほう、それはどんなものだ?」
「ちょっと実演したいから、この場所と、あとほかの人も少し集めて欲しいかな?」
まずはみてもらって、それから広めてほしいかな。
少し待って、ギルド長が連絡してくれた何人かのハンターさん達がきた。
「何か面白いことをやるって聞いたけど?」
「うむ。始めてもらえるか?」
「おっけー!」
あたしは広間の中央に立つ。
さっきの楽士さんの横で、シオンが笛を準備してる。
……実は前に笛を作ってから、ふたりでちょくちょく作曲まがいの事をしてた。もっとも自分の笛で演奏できるもの限定だけどね。
そして、あたし。
本日の衣装は、膝丈の濃い紫の浴衣に、薄い黄色の布を羽織っていた。あ、ちなみにトキワとシオンは前と同じ、マリーは濃い緑の浴衣に薄い水色の布を羽織っている。色違いであたしとお揃い。
羽織った布を、腰の所で紐で止めてたけど、いまはそれはほどいて、布の端を手首のところに縛ってる形。これであたしが動くと、布もヒラヒラするし
目で合図すると、シオンが笛を奏で始める。
祭りにあった楽しい曲。
あたしはそれに合わせて舞う。
……実戦で鍛えられたからか、身体強化しなくても、空中回転くらいは簡単。
そして曲が終わる頃には、人が増えてて、みんな拍手してくれた。
あたしはにっこりと笑うと、シオンに合図する。
奏でられる曲に合わせて踊りながら、即興で歌を歌う。
「さあ、踊ろう?
神様に捧げる舞を。
さあ、歌おう?
みんなで天に届くまで。
今日は祭り、みんなで楽しく、神様に感謝する日。
だから踊ろう。だから歌おう。
想いが天に届くまで」
……歌いながら、近くの子供を踊りに巻き込む。
最初は戸惑ってた子も、すぐに楽しそうに踊りだす。
下手くそでも構わない。大事なのは楽しむこと。
いつの間にか増えた子供達と踊って、歌を真似する子に笑いかけて、そして曲が終わる。
あたしは一礼して、ギルド長の側にいった。
「スゴくキレイだったわ。さすがキキョウちゃん」
「おう。見事だったぞ」
「……僕もゆっくりと見たかった」
シオンは演奏係だったからな。
「うむ、なるほどな。このような楽しみ方もあるか」
「ちょうどここは舞台になるしね」
高くなってるから。
ふと見ると、さっきの楽士さんもやる気になったようで、曲になる前の感じでつま弾いてる。
子供達がそれに合わせて踊ったり、自作の歌を歌ったりしてる。
大人達はそれを微笑ましく見てる。
「……そうだな。楽しむことがこの祭りの意味だからな」
それこそが神様の望みだから。
「お姉ちゃん、もっとおどって‼」
「ごめんね。だけど、あのお兄さんに音楽鳴らしてもらって、みんなで踊れば楽しいよ?」
「えー?」
「ごめんね」
しゅんとして子供が離れてく。
まあ、踊ってもいいんだけど、シオンは疲れてるし、あの人では曲になってないし、あれに合わせて踊るのはちょっと難しい……。
ほんっと、ゴメン。
そのあと、祭りを見て回ってると日が落ちた。
この祭りは、日が落ちると水路が危険度なのでおしまい。
最後に、小舟に明かりを乗せて、水路に流す。
これは、神様への感謝の祈りの意味があるそう。
神秘的なその光景を見ていると、神様からの連絡があった。
ーー今日は楽しかったーー
ほんの一言のメール文を見て、そっと微笑みを浮かべた。
……歌の歌詞は適当です。
あまり気にしないでください……。




