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また会う日まで

「それで、明日には?」

「うん。この国を出るよ。転移門は使っていいんだよね?」

「もちろん。キキョウさんたちの行動を止めることが出来る存在なんて、この国にはいないからね」

そう言ってヤマブキさんは麦茶を飲む。

暑いときは冷たい麦茶が美味しい。これはあたしがどうこうではなく、昔っからこの国で飲まれていたそう。

あたしはアイスティーを飲む。こっちは冷蔵・冷凍の魔道具が普及したことによって出来た。「冷やす、凍らす」といった一手間で新しい味覚が出来たと、大喜びだったな……。

ちなみにこれ、既に各国の貴族はみんな入手してて、一般の人もぼちぼち手に入れてるそうだ。いや、この世界、ものが流行るってか、流通がほんとに早いね。知識だけあれば、その場で出来ちゃうものが多いからかな。

「……さみしくなるね」

ここ一月はずっと一緒に行動してたしね。

「ヤマブキさんは、いつまで此処に?」

「うん、ボクは神殿が安定するまで、たぶん1、2年は帰れないかなー」

あたしと親しい、というだけでヤマブキさんにはかなりの発言力がある。だから神殿の監査役にちょうどいい。

「そっか。あたしたちは、これ以上この国にいない方がいいからな」

「そうだね。……これ以上頼っちゃったら、それは依存になるからねー」

それくらいの事をしてきている。

「だから取りあえず、プレナイトに戻ってみんなの顔を見に行って、それから水の国へいく予定。今から動けば、祭り見れるし」

「キキョウさんって祭り好きだねー」

「当然。あたしの故郷じゃ祭りを楽しまない人は少数派だ」

胸を張って威張るあたしに、あきれがおだ。


「それで、トキワさんとマリーさん、どうなったんだい?」

しばらく雑談したあと聞かれた。

ああ、そういえば気になるとこだよね。厄介事は全部片付いたし。

「……マリーの妹さんのことがあったから、式は来年の始まりの時にするって。それまでにドレスのデザイン作ったり、独身中のふたりに甘えたりする予定」

さすがに既婚者相手にあたしを優先しろとはいわない。だからだろうね。結婚するまで、思いっきり甘えてくれってふたりに言われた。だから妹として甘えさせてもらう。あのふたりもそれを望んでくれてるし。

「そっか。実はキキョウさんって甘えんぼ?」

「家族限定で」

よそ様に甘えるか。

「それじゃボクは?」

「もちろん仲間だよ。家族とは違った甘え方をする相手」

べたべたには甘えないけど、ちょっとしたわがままなら言っちゃう相手。

「そっか」

嬉しそう?

「それじゃ、そろそろいくね。王様にも挨拶しないと。式のことも決まったら連絡する」

「楽しみに待ってるよ」

そしてあたしたちは、笑顔で別れた。


「……そうか、いってしまわれるか」

「悪いけどね。これ以上ここに居るわけにはいかないんだ」

「……わかってます。ハンターとしてではなく、聖女として留まることはこれ以上は許されないことは。それでも私はあなたにここにいてほしい」

……王はあたしの手を握って、熱い眼差しで見つめてくる。

その意味に気づかないほど鈍感じゃない。

だけど。

「じゃ、準備があるから行くね。明日の10時頃門をくぐる予定だからよければ見送りに来てねー」

気づかないふりしてさりげなく手を外す。

王はため息をついであたしの方をみた。

「……必ず、参ります」

「うん。あ、そーだ。もし王が結婚するときは連絡してよね。祝福しに来るからさ」

「……はい」

王もあたしのセリフの意味は解ったよう。友人として、あたしは幸せを願うよ。


「あ、キキョウちゃん。挨拶はもういいの?」

あたしと同じくあちこち回ってたマリーと合流。

「お、ふたりとももういいのか?」

トキワも来た。

「あれ、こんなところでどうしたんだい?」

さらにはシオンも。

「どーやら、みんなも挨拶回り終わったみたいだね」

「それじゃ、部屋に戻って夕飯にしましょ。料理長さんの新しい料理、楽しみだわ」

「そうするか」

「さんせー」

「それじゃいこう」

部屋に戻ったあたしたちは、鋭気を養ったのだった。


翌日、9時半。

門の前にはあたしたちを見送りに来てくれた大勢の人々で賑わっていた……。てかこの人数なんだ! 軽く数百はいるぞ!

「あなたにはそれだけの功績と、人々から愛される魅力があると言うことです」

クスクスと笑いながら王が言った。

あたしの驚いた顔、そんなに面白かったかよ。

ちょっと王を睨んだあと、回りの人たちを見回す。

「……見送りに来ていただいて、ありがとうございます。また、お目にかかれる日まで、皆様健やかであることを願います」

いちおー聖女らしく挨拶。

ペコリと一礼すると、なぜか拍手が……。

「行くか」

トキワの言葉に、あたしたちは門に向かう。

見送りに来てくれた人たちに向かって、最後に手を振った。

「またねー!」

歓声を背に門をくぐり、あたしたちはトパーズへ帰る。

また、いつか会えるときまで、元気で。

そう願いながら。

ガーネット編終了。

次はいったんプレナイトへ。

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