模倣
私は華になりたかったわけじゃない。
でも、
模倣と理解の違いを、
私は知らない。
私は華になりたかったわけじゃない。
あの女は醜い。
美しい皮を被った醜い生き物だ。
私は、あの女がキライだ。
キライという感情は、体感で覚えた。
身体中がゾワっとして、それでいてカッと熱くなる。
近くにいたくない。声を聞きたくない。
これが私のキライ。
なのに、
私はあの女を腐らせ、その皮を被ることを選んだ。
それは、
風の指を自分のものにするためだった。
私が近くに置きたいと、最初に願ったもの。
自分の意思で、自分の手に落ちるように
念入りに、計画的に、どんな手を使っても手に入れたかったもの。
だから、
あの女は邪魔だった。
最初に現れた時から、どうやって消えてもらおうかと考えていた。
でも、何もする必要もなく、女は消えた。
それが、風の心に消えない痣を残した。
あの女は弱い。
あの女は風に依存的していた。
自分だけのものにしたくて、束縛していた。
風の人生を自分のものにして消えた。
なのに、
風もわかっているはずなのに、消せない。
その仕打ちが醜い。
だから、私があの女の皮を被るしかなかった。
華は風を失うのが怖かった。
私も風を失うのが怖かった。
華は風を繋ぎ止めたかった。
私も風を保存したかった。
華は傷を作った。
私も傷を作った。
私は、あの女と同じ?
いや、違う?
私が私であることは忘れてはいけない。
風は、私が保存するのであって、あの女の手に残すのではない。
剥ぎ取らなきゃいけない。
風の勘違いがそこにあったとしても、そこにいるのは私だ。
私の手の中になくてはならない。
私は日記を閉じた。
違う。
私は華じゃない。
華は感情のままに泣いた。
私は感情がない。
華は風に触れた。
私は触れたりはしない。
華は風を閉じ込めた。
私は風を自由にした。
そう思った。
でも、
思い出そうとすると、上手く思い出せない。
風は最後の数年、ほとんど家から出ていなかった。
学校を辞めた。
友人も来ない。
電話も鳴らない。
私は、風を自由にしていたはずだった。
私は風が傷つかないガラス玉の中で、風が求めていた風の空間で好きに生活をさせたかった。
それは、あの女とは違う。
風のためのものだ。
でも、
傷とは何だろう。
風は少しずつ言葉を失った。
少しずつ外を失った。
少しずつ世界を失った。
それは、あの女の残したことと少し似ている気がした。
私は華じゃない。
そう言い聞かせる。
華は風を繋ぎ止めた。
私は風を保管した。
違う。
全然違う。
違うはずだ。
それなのに、
記録の中の華の言葉が、少しだけ私の言葉と重なった。




