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永遠のアポストロフィS  作者: 美憂
真実

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25/25

境界

私と華の間には、明確な溝があると信じていた。

それは交わることも共有することもないものであって欲しかった。


不快だ。

でも、認めなければ消化できないのかもしれない。

華の日記はそこで終わっていた。


それ以上は書かれていない。


風を失うことを恐れた女が、

何を考え、

最後に何を願ったのか。


綴られぬままそこで途絶えている。


でも、


少しだけわかる。


風が学校を辞めた日。

風が外へ出なくなった日。

風が私だけを見るようになった日。


私は安心した。


安心してしまった。


それは、

華が望んでいたこととどう違うのか。


私は、いい子であろうと務めていた。

華のような我儘な女ではない。

華のようになんでも手に入れてきた女が、最後に手に入れたかったのが風。

そして、何もない。唯一私が手に入れたかったのは風。


風はどちらの手にいたのだろうか。

それを考えると身の毛がよだつ。


ガラス玉の中に閉じ込めた私の風の中に、あの女は生きていた。

それを風は大事に抱えていた。

私を見ながら、私のかぶるあの女の皮を愛していた。

それが真実だ。


私が愛したあの風の指の傷を作ったのは華。

嫌いな女がつけた傷を私は愛していたなんて。


愛ってなんだろう。

こんなに気持ちの悪いものなのか。

ベッドで自分を抱き、震えているときだった。


おはよお。


はるは私にそう言った。


私は顔を上げる。

はるは笑っていない。


ただ、

毎朝のようにそこにいる。


寝癖のついた髪。

少し曲がったパジャマのボタン。


裸足の細い脚。


そのどれもが風に似ていた。

そのものだった。


でも、

風ではない。

華でもなかった。


私は、しばらくはるを見ていた。

ガラス玉越しにはるをみる。


ガラス玉の中に閉じ込めた風ではない。

日記の中に閉じ込められた華でもない。


今ここにいる、ガラス玉の中にいるのは、


はるだった。


私は、ただ、はると暮らす。

ただ、それだけを繰り返すことが、私自身なのだ。


永遠に繰り返す日々。

私だけのはる。

私だけの風。

私だけの風景。

窓の外で風が吹いた。


蒲の穂が揺れる。


私はガラス玉を机に置いた。


「おはよお」


「おはよう」


私はそう返した。

私だけのアポストロフィS。

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