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赫の残火

 むかしむかし、ある山あいの里に、仲のいい夫婦が住んでいた。

 

 ようやく授かった赤子(あかご)を囲んで、三人は慎ましくも幸せに暮らしていたそうな。ところが、ある風の強い晩のこと。家から火が出て、またたく間に火柱(ひばしら)が天までのぼった。

 夫婦はわが身を焼かれながらも、赤子だけは必死の思いで外へ放り出した。おかげで赤子は助かったが、夫婦はそのまま、燃え盛る炎の中に消えてしまった。

 その時、天にのぼる炎の中から、二つの魂が寄り添うようにして飛び出した。魂はあまりに強い熱に焼かれたため、その羽は燃える火の粉のように真っ赤に染まっておった。これが「赤テン鳥(あかてんどり)」の始まりだと言われている。

 それからというもの、この里では不思議なことが起こり始めた。親を亡くした赤子が寂しがって泣き声をあげると、どこからともなく、あの真っ赤な羽を持った赤テン鳥が飛んでくるようになった。赤テン鳥は赤子の枕元に舞い降りると、優しく羽を震わせ、赤子が泣き止むまでじっと寄り添っていた。

 里の者たちは、その姿を見てこう(ささや)きあったそうな。

「あの鳥ぁ、火事で亡ぐなった親の魂にちげねぇ。自分(おの)が子ぉどこに居るべがど、今だに鳴ぎ声ば目印にして探し歩いどるんだ。そうして、見つけるだばあして守っとるんだべな」

 赤子がすやすやと眠りにつくと、赤テン鳥は安心したように、夜の闇へと静かに帰っていく。

 

 今でも、どこかで赤子の泣き声がすれば、あの赤い鳥が空を舞うと言い伝えられとる。

 「赤テン鳥」は秋田県仙北市角館に伝わる昔ばなしだそうです。伝承のあらすじをヒントに、自分なりの解釈とイメージで書いてみました。

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