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俺のダチは幽霊!?  作者: 読門太一
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7/8

憩いの場での偽名たち

水月さんは普段いったいどこに居座っているのだろうか……。

ゆっくりみていってください!

――6月1日 1年2組・教室内――


 強い日差しの中、幕を開けた6月。それは授業の合間の休憩時間、佑太(ゆうた)の何気ない一言から始まった。


「そういえばさ晴彦(はるひこ)、水月さんっていつもどこにいるんだ?」


 そう言われればそうだ。前に聞いたときは 『な・い・しょ』 とか何とか言っていただろうから何かあるのだろうか。ちょっとは興味がある。


「探してみるか? まだまだ時間あるし」

「おう! そうと決まれば今からレッツゴー! だぜ!」

「ちょっと待ったあーーー!」


 テレビのボリュームを最大にしたような声が佑太の机に向かってきた。

 それも凄まじい速さで。


「私も参加する!」

 前橋(まえばし)のターンが回ってきたのであった。


「なんで前橋が?」

 佑太が不思議そうに答える。まあ無理もないか。

「前橋も幽霊が見えるらしいんだよ。ちなみにもう友達関係らしい」

「そ、そうなのかよ前橋!?」

 いつみても佑太の行動はオーバーである。さすがすべてにおいて力配分が皆無という恐ろしい人間だ。


「ふふーん! 実は晴彦くんよりも先に見えるって知ったんだよ!」

「ははは……」

 やはり作り笑いは屈辱的に下手である。


「じゃあ幽霊が見えないのは俺だけってことになるな」

 佑太はしみじみ答えた。


「お前は見えなくていい」

「ええ!? なんでだよ晴彦!」

「よくわかんねえことになるから」

 俺なりにひでえ一言を言ってしまったもんだ。

「ひどすぎんだろ!」


 ……すまない、佑太よ。


「じゃあ証明してやるよ!今から壁に頭をぶっ叩きに行ってくる!」

 あほだ……。

「今日から佑太の偽名は恐れ知らず野郎に決めた」


 ちなみに俺の偽名は羽衣(はごろも) or 名(ノー)無(ネーム)しである。これも水月さんのジョークから生まれた。って 俺もしれっとジョークの流行りにのってしまった……。

 ……名無しの方がいいな。


「恐れ知らず野郎でもなんとでも呼んでくれて結構!」

 そういうと佑太は、いや……恐れ知らず野郎は廊下の壁へと一直線に駆け出して行った。


「ねえねえ晴彦くーん」

 誘惑のささやきが横から聞こえてくる。

「なんだ?」

「私にも偽名つけてくれない?」

 ちょっと待てよ! 俺が日本初の偽名製造者みたいになってんじゃねーか! ジョーク製造者は水月さんだけどな……。

「よし。適当でいいか?」

「もちろん」

「……学級委員で」

 その瞬間、頭上から鋭いチョップが舞い降りてきた。

「いてっ」

「なんかフツー」

 適当という言葉に相槌(あいづち)をうったのにもかかわらず、ひどい仕打ちだ。

「じゃあ何でもできるからオールラウンダーを略してオーダーでどうだ?」

「なんか強引な気もするけどそれでいい」

 こんなんでいいのかよ……。

 使い道がいまだにはっきりしていない偽名をつけたと同時に、廊下では激しい音とともに恐れ知らず野郎こと小林佑太が頭にたんこぶを生産していた。



【使い道皆無の偽名】

 結城晴彦…………名無し(場合によって羽衣に変更あり)

 小林佑太…………恐れ知らず野郎

 前橋ゆかり…………オーダー(オールラウンダーの略)

 日下部水月…………???



――理科室にて――


 まずは適当に教科専門教室に探りを入れた。実験器具が立ち並ぶこの部屋にはいかにも水月さんの不思議系の人格がお似合いだと思ったのだが……。


「いないねえ。水月さん」

 溜息(ためいき)交(ま)じりの前橋の声が理科室の空気をつたって耳に入り込んできた。

「理科室じゃないのかもな」

 人体模型と隣り合わせに佑太が問いかける。

「場所を変えよう」

 俺の指示とともに俺たち3人はすぐさま退散した。


――図書室にて――


 理科室の次は図書室だ。不思議系キャラだからこそ本に囲まれた環境で読書――――という考えで来てみたのだが、どこにも居座っている気配は微塵も感じられなかった。

 今にも閉館しそうな内装であった。


「ここにもいないね」

 前橋が小声で問う。

 佑太に関しては一冊の本を手にし、立ち読みをしていた。

 こりゃ早めに見つけないと時間も時間だな。

「ああ! その本知ってる」

 テンションが一時的に上昇した声の方に目を向けると前橋が佑太の方に駆け寄っていた。どうやら佑太が読んでいる本に目的があるらしい。

「本屋で見たことがあるから興味があったんだよ」

「その本いいよねー! なんか心にグッとくるんだよねえ」

 2人の会話が弾む。


「特に134ページの気分転換に忠志(ただし)と柚花(ゆはな)が外で佇(たたず)むところとかチョー青春してるんだよね! 憧れるー!」


 ピンッ――――


 そ・と……?


「そうそう。結構わかってんじゃん、ゆかり!」

「でしょー? あとね……」

「もしかしてええーーーー!」


――一瞬の沈黙が流れる――


「……ってどうした晴彦! ここは図書室だぞ!」

「鼓膜破れるかと思った……」

 2人は俺を見てそう答えた。しかし俺はその返事を返す余裕がなかった。いや、返す必要がなかったのだ。俺の頭の中ではもうすでに構図が仕上がっていた。


 そう―――― ”中庭” という選択肢に。


 思いついた時にはもう休憩時間は終わりを告げていた。なので、20分休憩の昼休みに計画を実行した。

 俺たち3人は弁当時間終了のチャイムが鳴るのと同時に、教室を後にした。


 地面に照りかかる強い日差し。草花をなびかせる6月の風。6月の風物詩ともいえる梅雨の気配も全くないほどのナントカ日和のようだ。

 俺は初めて中庭を訪れたが、こんなにも安らぐ場所なのかと……俺は終始黙り込んでしまった。中庭には一定の距離をあけて2,3人が座れるほどのベンチが3つ、4つある。すでにそこには他の生徒が占領していた。そして真ん中には自然あふれる草花が咲き誇っている。そして広い。

 これが光明学園の中庭の構図。入学して2ヶ月、この学園の魅力は中庭にあるのではないかと初めて気づかされた。


「おい晴彦、ほんとにここなのか」

 たしかにここのはずだ。以前に水月さんの様子を見ていても、水月さんはどちらかというとアウトドア派だ。この中で中庭はその条件として一番マッチしている。


「それにしても広いねえ、この中庭」

 前橋……それはさっき俺の心境が答えてくれたぞ……。


 俺はあたりを見回す。目に入るのは他の生徒ばかり。

 おかしい……。ここにいなければいったいどこにいるんだ?

 しかし、その疑問もつかの間の考えだった。

 よく見ると屋根によって絶妙な大きさの陰がある。その日陰と一体化したように水月が居座っていた。サンドイッチを片手に。

「水月さん発見!」

 俺たち3人は水月さんの方へと足を傾けた。


――中庭――


「あれ? 晴彦くんじゃないの」

 キョトンとした顔で俺たちを見上げた。

「お久しぶりです」

 そう言えばかれこれ一週間も会ってなかったっけな。本当に久しぶりだ。

「あ、それにゆかりさんも一緒ですか!」

「水月さん! お久しぶりです」

 やはり水月さんと前橋はともに友人のようだ。


「それと……その人は誰ですか……?」

 水月さんの矛先は佑太にあった。


「おい晴彦、ここに水月さんがいるのか?」

 そうだった。佑太は見えないんだった。水月さんの前だと佑太は素晴らしく不便である。

「水月さん、この人は小林佑太。俺と前橋の仲間だ。めんどくさいが佑太から水月さんは見えないんだ」

「そうなの……」

 水月さんの立場からしたら迷惑だろうな……。しょうがないことであるが。魔法か何かの未知の能力がつかえれれば便利なんだろうけど。

 ちょっと待てよ? 幽霊が見えている時点で一種の超能力ではないかと……。

 まあいったん置いておこう。


「こうなったら一か八かで頭をぶつけて見えるようにしてやるぜ」

 佑太が壁と面合わせに訴えた。これはやばい……!

「ま、まて佑太! 先を急ぐな!」

 まさかの2回目かよ。次やったらたんこぶだけじゃ済まない。それこそ頭をぶつけた瞬間、記憶喪失にでもなったら――――ってなんで水月さんと前橋は見てるだけなのおーーーー!?


「うあああーーーー!」

 その瞬間、佑太は叫び声をあげて地面に倒れこんだ。

 しかし、佑太は壁に頭をぶつける前に頭を抱え込んだのだ。このときは佑太の力配分のなさがとうとう頭まで来て、脳の痛みコントロールまで制御できなくなったのかよ……と思ってしまったがすぐさま前言撤回した。

「もしかして、俺と前橋みたいに頭痛が突然起こったのか?」

「そうかもね……」


 痛みが治まったのか、佑太は平然とした姿で立ち上がった。

「いててて……。マジで死ぬかと思ったぜ。心配させてご――――」

 なぜか黙り込んだ。

「人がいるーー!」

 何を言っているんだ? と思ったが驚きでふるえている視線の先をたどっていくと……水月さん……?

 ……ま、まさか!?

「佑太さん? もしかして私が見えるの?」

「は、はい!見えるようになりました」

「えーーーー!?」

 俺と前橋が息ピッタリと驚いた。


 頭痛を起こしてまさかとは思ったが、俺と前橋同様、幽霊が見える体質になってしまった。佑太だけは見えないままでもよかったのに……。

「聞こえてるよ、晴彦」

 どうやら声に出ていたらしい。前橋に一喝されてしまった。

「それじゃあ結局俺と前橋、佑太の3人は水月さん= 幽霊が見えるようになってしまったな」

「まさかこの3人とはね」

 まさかとはなんだ。人聞きの悪い。

「俺見えるようになってよかったわーー。見えないと置き去りにされるところだったぜ!」

 それは良かったことだろうが、まずその前に幽霊が見えることを当たり前という考えをしていることに気付いてくれ……。


 しかし偶然もいいところだよ。こんなタイミングで佑太が超能力を持てるようになるなんて。偽名がラッキーボーイに変わるかもしれない……。

 偽名……? あ、そうだ。

「水月さん、水月さん自身の偽名ってなんですか?」

「偽名……?」

 あんたがつけたんだろ!

「えっと。俺が ”羽衣”  or  ”名無し” 、佑太が ”恐れ知らず野郎” だが今すぐ ”ラッキーボーイに変わるかもしれないです。そして前橋はオールラウンダーを略して ”オーダー” ってことで進行しています。特に使いどころはありません」

 自分ながらなんという説明 & 偽名であろうか……。

「私のつけた晴彦くんの偽名、使ってくれてるんだね!」

 いや、別に使ってはいない。何度も言う。使い道がないだけ。


「私かぁ……。水月だから……。水に映った月だからつまり幻想!  ”ファントム” に決定! 私の偽名!」

「「「そこは ”ゴースト” じゃないんかい!」」」

 口をそろえて3人が叫んだのであった。



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