俺たちの結成
今回、結成します。
俺たち3人は幽霊が見えるようになった。
俺こと結城晴彦、小林佑太、前橋ゆかり。そして正真正銘の幽霊である日下部水月。
俺が今まで歩んできた平凡かつ静寂な日常から非常識な出来事で解放された。誰もこんな展開を予想した者はいないだろう。
そう――――今の俺の生きる人生は大げさに言わなくてもいいくらいに充実している。
【とりあえず使い道が分からないままである偽名】
結城晴彦…………名無し(場合によって羽衣に変更あり)
小林佑太…………ラッキーボーイ(場合によって恐れ知らず野郎に変更あり)
前橋ゆかり…………オーダー(オールラウンダーの略)
日下部水月…………ファントム 「ゴーストじゃねーのかよ」(ツッコミ)←new
――6月2日(金)――
時間はもう下校時間。昨日とはうって変わって6月の風物詩、梅雨という名の雨が降り始めた。俺は雨が特に嫌いというわけではないが気分は乗り気になれない。
「今日は雨だね――――」
「もういやだよね――――」
雨の降る日の教室はこのような鬱々しくなるような会話がどうしても増えてしまう。それも大半が女子の会話……。そうは言ってもしょうがないことなのだがな。
……もう少し聞いていよう。
「俺今日傘忘れてきちゃったぜー」
「ドンマイだな」
「よければ私の傘で一緒に帰る?」
ちょっと待て! 何か近くでいちゃいちゃしているような会話が耳に入ってきたのだが!? でも仕方ないことである。俺が聞いただけでもこの学年だけで10以上のカップルが成立している。うらやましい限りである。
もう一度、次は違う会話に耳を傾ける。
「何してんだ?」
「うああ!?」
タイミングが悪かった。耳を傾けた瞬間、俺に対する問いかけが耳元にあった。そしてそこにはイツメンとでも言っておこう。佑太と前橋の姿があった。
「もう帰りの時間だぞ? 帰らないのか?」
「佑太は帰るのか?」
「……なわけないだろ? これから行くんだよ」
「どこへだ?」
大体予想はつくがな。
「中庭! 水月さんのところだよ!」
「当たり前じゃない!」
横から前橋も薦めてきた。
「……前から思っていたんだが、お前らは部活に入らないのか?」
そう、俺は入っていない。特に入りたい部もなかったし、全員が部活に参加しろという先生からの指示も特にはなかった。だから入っていないのだ。
「入ろうとは思ってたんだけどな、体験入部の時点でどこも断られたんだよ」
あーこれは佑太の力配分のなさが出たんだな……。
「まず、野球部に行ったんだ。で、ウォーミングアップにランニングから入ったんだけど最初飛ばしすぎてあとは撃沈。そこから大半の部活を回ったんだけど……負の連鎖が続いちゃってさ」
「ひでえな」
「ひでえだろ? ここの部活」
「ひでえのはお前だよ!」
「…………」
「すねるなよ! お前らしくない」
佑太の理解不能のすね状態の間に前橋の口が開いた。
「私は最初から入る気はなかったよ?」
「え、なんでだよ。お前は何でもできる万能型じゃねえか」
「えへへ、そんなこと言われると嬉しいなー」
前にも一度言っているんだが……偽名として……。
「んー。誘われはしたよ? 特に運動部。 『ぜひうちの部に入ってください』 だの 『将来性がある』 だのってね」
まるでスカウト勧誘を見ているようだな。
「でもね、私は部活に入ってはダメなんだ」
「え?」
「私ね、その気になったらその気になっちゃう癖があってね。部活に入っちゃうとそれしか見えなくなっちゃうんだよね。別に一つのスポーツに優れた人になりたいわけじゃないからさ」
「もったいない気もするけどな」
「夢があるの」
「ゆ、ゆめ?」
「うん。ここの部活にはない特別な夢にね。私はこの日本、そして世界で役に立つことがしたいの。いずれかは国々の問題をも解決して人々から信頼されるような人柄にね」
「いい夢じゃないか」
「だからこの場で生活している間にいろいろな経験をしておきたいの。もう普通ありえない体験をしちゃってるけどね」
「そうだな」
「というわけで晴彦、これからもよろしくね」
「ああ!」
”さすが” と言っても過言ではない演説であった。いかにも前橋らしい考えだった。もう夢を持っているのかと自分に対しての焦りはあったもののあのような演説を聞いてしまうと、自分自身に応援されているようで不思議な感覚だった。学級委員をしているくらいだからそれくらい当たり前なのかもしれないがな。
それに比べてもうかたっぽはというと……。
「それと文化部にも一応言ってみたんだけどさ、もうそれはそれはブーイングの嵐で……って晴彦! 聞いてるのか?」
将来が心配である……。
――中庭にて――
やはり雨は降り続いている。水月さんは屋根の片隅で雨宿り風に佇んでいた。雨の中の中庭はなにか神秘的な情景を醸し出していた。普通は感じ取れない和みのようなものが。
このような場所がすでに俺たちの活動場所になっているのだ。
心の底から幸運であろうと思う。
「そういえばこの4人で活動するのはいいですけど活動目的はどうします?」
「それよりこの4人ってなにかの活動グループ的な存在だったの?」
前橋は冷静であった。
「えっそうなんじゃないの!?」
「初めて聞いた」
「じゃあ今日からでいいです。で、目的はどうします?」
水月さんがささやきだした。
「特に決めてない」
「特にって、何かないんですか?」
「うーん。ワカーンナーイ!」
うん。ずいぶん思考回路が故障寸前のようだ……。
「じゃあ今のところは特にないということで」
俺を含む4人全員が同意した。
「グループ名はどうする?」
佑太の提案であった。
「佑太のただの趣味だろそれ!」
「いいじゃねえか。つければかっこいいし、わかりやすいだろ?」
「前橋、水月さんどうします?」
「おい! 話聞けよ!」
佑太はうなだれてしまった。慣れているだろうから心配する必要はないであろう。すでに前橋と水月さんも了承済みである。
「ゴーストカルテットでよくない?」
前橋の提案である。
「いいな! それでいこう……ってそれじゃ俺達まで幽霊ってことになってるだろ!」
「あ、ほんとだ」
「没だな」
「よし! 俺がつけてやる」
俺のターンである。
「命名する! 幽霊が友達だからユウとダチで 【ユウダチ】 でどうだ?」
――一瞬の沈黙――
ダメだったか……。そう思うのもつかの間のことであった。
「いいんじゃない? さっぱりしてて私は気に入ったよ!」
前橋は高評らしい。
「私もいいと思います。グッジョブ!」
さすがのテンション。水月さんも高評のようだ。
佑太は……うなだれながら親指を立てた手をこちらに向けている。どうやら満場一致らしい。
「よっしゃ! 今日は俺たちグループ 【ユウダチ】 の結成記念日だーー!」




