疑問と真実
「幽霊……か」
――12時40分――
導き出された一つの答えによって、午前の授業の内容は全く頭に入らなかった……。気づいたらもう昼食の時間。こんなに時間を早く感じたのは今日の朝ぶりだ。
「おい。なにボーっとしてんのさ」
「え? あ、佑太か」
「弁当だぞ」
「うん。じゃあ食べよっか」
その会話をかわきりに俺と佑太は弁当を食べ始めた。
「まだ気がかりなのか? その……日下部水月って人」
「まあね。そのおかげで日本史の確認テストは絶望的な出来だったからな」
「晴彦、お前本当に誰かとしゃべっていたのか?」
「そう言う佑太は俺の横にだれもいなかったって言うのかよ!」
「いなかった」
「きっぱり言うのね……」
やっぱり俺がおかしいだけなのかな……。いや、でもちゃんと面と向かって話してたんだ! 間違ってなんて……。
「もし晴彦の口実が合ってるんなら」
「なにさ」
「 ”幽霊” なんじゃね?」
”幽霊” ……。
俺は今日ずっとその言葉で頭がいっぱいだった。
聞いてみよう。
「幽霊だとしたら、佑太は信じる?」
「俺は信じるぜ」
「!?」
「幽霊は信じないというか信じたくないタイプだが、俺はお前を信じる。お前が体験したんなら幽霊だとしても驚きはしないぜ」
佑太のしゃべり方は若干きついが、だれにも負けないほどの仲間、いわゆる友達思いだ。俺は今まで佑太のこの性格に幾度となく救われてきたのだ。そう……。
――だから、うれしかった――
「うん。なら良かった。ありがとうな、佑太!」
「おう! 早く飯食わねえと授業始まるぞ」
「そうだね」
大急ぎで食べた弁当はなぜかいつもより旨味が増していた。
――4時00分――
いつもより早く感じた学校での一日が終了した。俺は簡単に身支度をし終え、教室を出た。
朝のどんよりとした重みはもうなく、反対に清々しい気分だった。下駄箱に収納されている靴に履き替え、温暖な空気が今も漂っている春の風に当たっていた。
すると後方から聞き慣れのある声が……。
「お~い! ハレヒコく~ん!」
やっぱり。水月さんだ。ってか……。
「俺の名前は ”ハレヒコ” じゃなくて ”ハルヒコ” !」
やはり持ち前のジョークでかましてきやがった。さすが水月さん。
「ごめんごめん。ジョークだよー」
知ってた――
あ、そうだ。なに普通にしゃべってんだおれは! 違う目的があったろうに! そう、水月さんは人なのか、それとも幽霊なのか……。
しかし、いいものなのか……?
俺の中で矛盾が起きた。
今、いきなり 『幽霊なんですか?』 と聞くのは疑われるし、デリカシーがなさすぎる。考えた結果、デメリットしかない……。ここはいったん様子を見るか。
「水月さん、ちょっと手を貸してくれませんか?」
「え? うん。こう?」
――水月が手を差し伸べす――
「さっ」
「今なんで手を触ったんですか?」
「え?」
しまったーー! ついやってしまったー! これじゃ様子じゃなくて確認のカテゴリーに入ってしまう! 何とかごまかさねば……。
「これは一種の確認というわけでな。すまなかったな。はっはっは……」
俺自身の弱点がまた一つ、自分の過ちによって暴かれたのであった。
「ふふっ。やっぱり晴彦くんは朝も夕方もおかしな人だね。ふふっ」
一つのセリフで2回も笑いやがった。恐ろしや……。
「あは……あははは……」
愛想笑いバレバレだぜ? 俺氏。
「ってそうじゃなくて!」
「?」
また話がそれていた……。
さて、どうしようか。これ以上試行錯誤しても意味がない。どうすれば……。そうだ! 今日は確か金曜日。それなら……。
「明日、予定空いてる?」
「空いてるけど。どうかしたの?」
「俺の家来てみない?」
「いいけど……。私を呼んでなにさせる気ですか?」
「誤解だよ誤解! ちょっと話したいことがあるんだ。」
「はなし?」
「そう。は・な・し・!」
「そこまで言うなら行きます。晴彦くんの家も気になるし!」
正直、嫌な予感しかしない……。 でも、今の状況からすると妥当な判断だったであろう。明日で決着をつけてやる!
――日下部水月は 『何者』 なのかを――




