439 決着をつけよう!
ニフェトは一瞬で一樹の傷を治すと、慌てて二人を戦車の中へ押し込んだ。
「俺についてこい!!!」
リオが叫ぶと、戦車はついに泥沼を抜け出し、斜面を駆け上がった。生き残った歩兵たちも、そのすぐ後ろに続いた。
「早く破壊しろ! 上がってこさせるな!」
山頂の大賢団は即座に浮遊する鏡の角度を調整し、和也と百賢の旅はすぐに分かれて動いた。
「何、この乗り物!?」
加奈は戦車の中へ飛び込むなり、耐えがたい蒸し暑さに襲われた。
リオはすでに上半身裸になっていた。汗が座席を濡らし、床にまで滴っていた。
加奈は片手でハッチを押し開けた——
「お前、バカか!? 早く閉めて鍵をかけろ!」
一樹は仰天し、すぐに加奈をはしごから抱き下ろすと、ハッチを閉めて鍵をかけた。
「こんな悪臭まみれの公衆便所にいるくらいなら、死んだほうがましよ!」加奈は鼻をつまんで怒鳴った。
「通常弾!」
リオは潜望鏡に全神経を集中させ、加奈の悪態を無視した。
「装填完了!」一樹はすぐに砲に装填した。
リオは浮遊する鏡が自分を追尾し始めたのを見て、すぐに戦車を加速させ、鏡の射線に入らないよう、進路を変えた。
「待ってくれ!」
古志は戦車が加速して味方の歩兵を引き離し始めたことに驚き、慌てて車体を叩いた。
「FIRE!」
ドン! 強烈な反動で戦車が激しく揺れ、すぐそばにいた歩兵二人にぶつかって気絶させてしまった。
巨大な浮遊盾の下から、百枚もの小さな鏡の盾が飛び出し、砲弾の進路に幾重にも重なった。
ドォン! 砲弾は小さな盾を次々と砕いたが、そのたびに勢いを削がれ、巨大な盾へ届く前に食い止められた。砕けた鏡の破片が、星屑のように降り注いだ。
「何だと!?」リオは内心ぎょっとした。
減速を余儀なくされたチビガメに、赤い光線が追いついた……。赤い光が閃き——すさまじい勢いで真紅の雷が襲いかかってきた!
リオにはわかっていた。この光の砲撃を避けるわけにはいかない。避ければ、背後の仲間は命を落とすか傷を負う。
「くそっ、受け止めるしかない! しっかりつかまれ!!」
リオはシートベルトを握りしめて叫んだ。
「どういうこと?」
加奈は眉をひそめた。二人が何をしているのか、まだ理解できず、ぽかんと見つめていた。
加奈のすぐ横の装甲が、突然赤くなった————
「加奈!!!」一樹は叫び、加奈のほうへ飛び込んだ!
ドン!!
ドイツプレイヤーの赤い砲撃が戦車上部の砲塔を貫き、砲身まで危うく断ち切られるところだった。
砲塔の旋回レールに鉄片が挟まり、砲塔は向きを変えられなくなった。
リオはすぐに溶接トーチを取り出し、鉄片を切断し始めた。一樹は言われるまでもなく、潜望鏡でドイツプレイヤーの動きを監視した。
「リオ! みんな、怪我はない!?」ニフェトが車外から車体を叩いて尋ねた。
「大丈夫だ! だが、今すぐ砲塔を修理しなきゃならない。待ってくれ!」
リオが怒鳴った。
「私にも何か手伝えることはない……?」
皆がそれぞれの役目を果たす中、加奈は自分だけ何をすればいいのかわからず、そわそわしていた。
「百賢の旅が魔力砲をチャージしてる!! 見たところ、あと30秒!」
一樹は山の上に広がる赤い光を見て、二発目の魔力砲が間もなく撃たれると察した。
「見せて!」
加奈は悔しさをにじませて潜望鏡の前へ割り込み、つま先立ちでのぞいた。そこに見覚えのある顔を見つけた——和也だ!
「またあんた…………」
「あと15秒!」一樹がせかした。
「もっと時間が要る! このトーチじゃ温度が足りな—————」
リオは焦りを募らせた。
「どいて!」加奈が怒鳴った。
ゴォッ!!!!
加奈は手を突き出し、青い炎を噴き出した。わずか数秒で鉄片が柔らかくなり、リオはすかさずそれを挟んで取り除いた。砲塔は再び旋回できるようになった。
「つかまってろ!」リオがアクセルを踏み込み、戦車は再び走りだした。
戦車は山頂へ続く斜面を駆け上がった。だが、大賢団の本隊はまだ稜線の向こうにいる。空に浮かぶ巨大な鏡だけが、こちらを見下ろしていた。
「予備の武器を出せ! 接近戦に備えろ!」
白が急いで指示した。
残兵の魔法使いたちは、普段パンを切るのに使っている小刀を取り出した。素手で戦うしかない者さえいた。皆は頭を低くし、魔法弾が頭上すれすれをかすめる中、戦車について進んだ。
車体表面の耐魔法塗料はほとんど剥がれ落ち、下の鉄がむき出しになっていた。もはやドイツプレイヤーは、魔力砲を使わなくてもリオの戦車を撃ち抜ける。
「これがお前の実力か……加奈。まったく期待外れだ。盾を分割しろ!」
和也は眉をひそめて言った。その一声で巨大な浮遊盾が3枚の大盾に分かれ、3方向から戦車に狙いを定めた。
「まず——」
リオは愕然とした。側面の装甲を撃たれたら……
「撃て!」
和也の一喝で、大賢団が再び赤雷砲を放った。
赤雷砲の光は3本に分かれ、リオの戦車の砲身と左右の履帯へそれぞれ向かった。どれも急所だ!
チビガメが戦闘不能にされようとしたそのとき、カミコが手を上げた。数百枚の小さな銀の盾が浮かび上がり、三筋の赤雷砲の軌道を追い始めた。
広範囲を襲う魔法とは違う。狙いが砲身と左右の履帯に絞られているなら、軌道は読める。
パチン、とカミコが指を鳴らした——
銀の盾が戦車の右側へ集まり、鋭い角を持つ、いびつな星形の盾を組み上げた。右から迫る赤雷砲がその表面で何度も反射し、中央の砲撃へとぶつかった。二つの魔力が激しく干渉し、砲身を狙っていた光が逸れる!
だが、左側へ盾を回す余裕はなかった。
ドォン!!
左の履帯が赤雷砲に撃ち抜かれ、火花とともに何枚もの鉄片が飛び散った。
「ありえない!!!」
和也は驚愕した。連携による魔力砲を反射できる鏡像使など、これまで一度も出会ったことがなかった。
「計算——やめた。このセリフ、つまんない」
カミコは眉をひそめた。
リオの戦車は左の履帯を破壊され、そこから火の手まで上がった。
「ふん、見くびっていたようだが……これで終わりだ!」
和也が再び手を上げ、大賢団はまたチャージを始めた。
「大賢団を狙えば氷の盾に防がれる……大きな鏡の盾を狙えば、小さな鏡の盾に防がれる」
リオは狂ったように指をかじり、いくら知恵を絞っても敵を倒す策が浮かばなかった。
「リオ、鏡の盾は物理攻撃には弱い。徹甲弾はある?」
カミコは車窓を叩いて尋ねた。
「ない! 通常弾じゃ、何枚も重ねられた盾を抜けない——」
リオは絶望しきった声で答えた。
「ねえ……」加奈が低くつぶやいた。
「けど、俺たちは斜面の低いところにいるから、射線が通らない。上空の浮遊する鏡しか狙えないんだ。百賢の旅の攻撃を妨害できない——————」
リオは加奈を無視して続けた。
「ねえ!!」
加奈が怒鳴った。その目には歓喜と不安が入り交じっていた。
「どうした?」一樹が眉をひそめた。
「自然の力で電子を生み出すには、大気の流れが必要なんだよね。だから電子を高密度に生み出すことはできないけど、電子が流れる向きなら操れるでしょ……」
加奈は全身を震わせ、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「できるけど、どうして……まさか!?」
一樹は突然顔面蒼白になり、恐怖で固まった。
「試してみよう……」加奈はごくりと唾を飲み込んだ。
「全員、山を下りろ! 俺たちから離れろ!」
一樹が怒鳴った。
「はあ!? こっちは命懸けで———」
皆が不満の声を上げた。
「説明してる時間はない!! とっとと行け!!」
一樹はバタンとすべての観察窓を閉めた。
「行こう!」
ニフェトはつらさをこらえて言った。今は仲間を信じるしかなかった。
「来い!」一樹は両手で砲身の根元をつかんだ。
加奈は深く息を吸い、銀の杖を砲身に向けた————
「多重詠唱!」……
「静電荷!!」加奈が絶叫した。
砲身の内部が、加奈の生み出した青白い雷光で満たされた。
一樹は目を閉じ、砲身の内部へ意識を集中させた。膨れ上がる力を抑え込みながら、磁場を制御する。
「暴れるな……俺の言うことを聞け……!」
雷光が一樹の制御に合わせて渦を巻き始めた。
戦車が熱を帯び、低くブーンと唸った。その音は次第に甲高くなり、砲口から青白い光が漏れ始めた。
大GMとGM02、GM15が同時に現れ、震えるチビガメを呆然と見つめた。
「和也……」
加奈は歯を食いしばり、さらに電子を注ぎ込んだ。ツインテールが浮き上がり始めた。
「決着をつけよう、宮本加奈」
和也が手を振ると、ドイツのプレイヤーの巨大な赤い魔法陣がチャージを終え、チビガメに狙いを定めた。
「来なさい! 宮本和也!」加奈は銀の杖をリオの頭に思い切り叩きつけた。
「レールガン、発射!」
ブゥン———————————
その場にいた全プレイヤーの視界が真っ白に染まり、3秒間、何も見えなくなった。それに続いて、世界から音が消えた。
【システムメッセージ: フレンド 加奈 HP残り20%】
【システムメッセージ: フレンド リオ HP残り20%】
【システムメッセージ: フレンド 一樹 HP残り20%】
和也は突然、地面が激しく揺れるのを感じた——一発の砲弾が、地面を突き破って飛び出してきた!
「な———」
ドン!!!!
レールガンの一撃が山頂を下から貫通し、射線上にいたドイツプレイヤーは全員、一斉に消えた。
大量の血肉が1万フィートもの上空へ飛び散った。リオの砲弾はわずか半秒で2キロ先の空に達し、上空で爆発した。爆音はまだ届かず、遠い空に小さな閃光だけが見えた。
GMも残兵もドイツプレイヤーも、そろって言葉を失った。砲身が曲がり、濃い煙を噴き上げるチビガメを、口をあんぐりと開けて見つめていた。
加奈が電力を供給し、一樹が磁場を制御し、リオが発射した。三人が魔法と機械で実現した電磁加速の一撃は、山頂を貫き、空へと抜けるトンネルを穿った。
皆がまだレールガンに怯えている中、ニフェトはすでに我に返っていた。
「加奈!!」ニフェトは危険も顧みず、山頂へと駆け上がった。




