432 獲物が……狩人となった
カン!
和也は深手を負ったパシュスを炎の手で持ち上げていた、不意に金色の聖光に弾き飛ばされた!
「再生の聖血!」
ニフェトが転移で駆けつけ、間一髪でパシュスを救った!
再び立ち上がったパシュスの銀の鎧は、まばゆい金色に輝き、全身には青い聖句が刻まれていた。
「自分のHPを代償に守魂衛の被ダメージを減らし……今度は守魂衛が犠牲を払って枢機卿を守る。また退屈な決闘用の組み合わせか。他のサーバーを征服した経験はないらしい」
和也はわずか2秒でパシュスとニフェトの手の内を見抜いたが、この組み合わせが最も打たれ強いことは認めざるを得なかった。
「どうしてドイツプレイヤーの側についたの?」ニフェトは眉をひそめて尋ねた。
「ふん、無知な奴だ」
和也は五輪の杖を掲げ、背中に一対の炎の翼を生やすと、二人めがけて振るった!
「魂の盾!」パシュスは腰を落として力を溜め、紫に輝く防壁を展開した。
「万霊の聖鼓!」
ニフェトが神杖で防壁を打つと、教会の鐘を思わせる轟音とともに衝撃波が弾けた。聖なる紋章が空中に現れ、和也の小隊を押し返した。
「あの枢機卿を先に殺せ!」
百賢の旅の魔法使いたちは数十発の魔力砲を一つに束ね、ニフェトを正確に狙い撃った。
「うおおっ!!」パシュスは飛び込んでニフェトを突き飛ばし、盾を掲げて受け止めた。
魔力砲がパシュスに直撃し、その通り道の草地が凄まじいエネルギーで歪んだ。
ドゴォン!!
【システムメッセージ: フレンド パシュス HP残り20%】
「パシュス! 私が——うああっ!!」
ニフェトは驚き、すぐさまパシュスの回復に取りかかった。和也は即座に雷の槍を投げつけ、ニフェトの魔法を阻んだ。
「地下にいた連中は、もう全員逃げたはずだ。二人を仕留めろ」
和也が言うと、ほかの隊長たちも一斉に落雷を呼び、二人に浴びせた。
ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!
12本の雷が次々と叩きつけられ、周囲の地面を黒く焼いた。
半裸になり、肌に稲妻のような傷痕を残したパシュスが、再びニフェトの前に立ちはだかった。銀翼の聖盾から最後の羽根も落ちる。バキッという音とともに、鎧もその破片も一斉に砕け散り、パシュスはニフェトに倒れかかった。
「す……すまない。これが、俺の限界だ……」
そのとき、百賢の旅が2発目の砲撃に向けて魔力を溜め始めた。糸のように細い雷光がパシュスを指す。
「滅びの雷!」
ニフェトはパシュスを抱きしめ、微笑んだ。
「仕方ないね」
その瞬間、パシュスとニフェトの背後で土がさらさらと崩れ、一本の砲身が突き出した。暗い砲口が、数百メートル先の百賢の旅へ向けられる。
ドン——ドゴォン!!
「うわああっ!!!」
百賢の旅は無防備なところに砲弾の直撃を受けた。着弾点の中心にいた十人の源魔師が、その場で肉片となって吹き飛び、一団の中で血の花が弾けた。
「技師か!? 早く攻撃しろ!」百賢の旅の隊長が焦って叫んだ。
「リオ! まだログアウトしてなかったの!?」
百賢の旅は陣形を変えて炎と雷の光線を放ち、砲台も同時に無力化しようとした。
パシュスとニフェトは幾発もの魔力砲を防ぎ、和也とも戦ったことで疲れ果て、もはや防御する力は残っていなかった。
金と赤の光線が、パシュスとニフェトめがけて真っすぐに飛んでいく—————————
ガッ、ガガガッ、ガガガガガガ……背後から奇妙な機械音が響いた。
ニフェトが振り返ると、背後の丘全体に亀裂が走り始めていた。巨大な岩が斜面を転がり落ち、地面が激しく揺れる。
「何が起きてる!?」二人は驚いた。
金と赤の光線が二人を呑み込もうとした瞬間、土煙の中からせり出した鋼鉄の装甲が、その射線を遮った。
ドォン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
二人の姿は、魔力砲が巻き上げた土煙に覆われた。
「まさか、まだ死なないのか……?」
大量の落石に追われて後退した和也は、いつまで経っても二人の死を示す光の塵が現れないことを不審に思い始めた。
そのとき、土煙の中で炎が閃いた!
「気をつけろ!」和也はとっさに氷の壁を立てた。
ドン! 金色の砲弾が風を切って飛び出し、またも百賢の旅の数人を爆殺した。
「ありえない!」百賢の旅の隊長が怒鳴った。
「まさか……下がれ!」
高さ5メートル近い丘が一瞬で消えたのを見て、和也は異変を察した。
「突っ込め、チビガメ!!」
さらに土の塊が土煙の中から斜面を転がり落ちた——全身を鋼鉄で覆い、耐魔法塗料を吹きつけた巨大な戦車が、丘の中から飛び出してきた。
瀕死のニフェトとパシュスは、呆然と戦車を見つめた。
「リ……リオ!?」
車体側面のハッチが開き、一樹が顔を出した。
「早く、こっちへ!」
一樹はニフェトを引き上げ、二人がかりでパシュスを車内へ運び込むと、すぐにハッチを閉じた。
…
「技師の五次職……機工士だ! 急いで機動力を奪え!!」
百賢の旅は慌てふためいた。
「滅びの雷!」
ヒュン——バチッ。雷の砲撃はちょうどリオの戦車の装甲に当たり、耐魔法塗料に弾かれた。
「650メートル、仰角38度!」
一樹が潜望鏡を覗きながら報告した。
「HE!(榴弾)」リオが叫んだ。
一樹はすぐに腕ほどの太さの砲弾を砲に装填し、しゃがんで耳を塞いだ。
「Loaded!(装填完了)」
「うおおっ!!」リオは発射スイッチを蹴りつけた。
ドン!
ドゴォン! 再び百賢の旅に砲弾が炸裂し、半数を超える魔法使いたちが体をばらばらに吹き飛ばされた。
「駄目だ! 魔法で牽制しながら、急いで散開しろ!」
旅団長は即座に陣形を変えた。
数百もの魔法が草原の上空を横切り、リオの戦車に襲いかかった。装甲の上で氷の花と雷光が弾けたが、戦車はびくともしない。魔法の残り火と砕けた石をまとい、斜面にどっしりと構えていた。
「今度は……こっちが攻める番だ!」
リオはハンドルを握りしめ、速度レバーを限界まで押し込んだ。
戦車が暴れ馬のように急加速し、ニフェト、パシュス、一樹は車内の後方へ投げ出された。
分厚い装甲でさえ、リオの燃えたぎる魂の叫びを閉じ込めてはおけなかった。リオのチビガメは鋼鉄の巨獣のように、エンジンから黒煙を引きながら百賢の旅へ反撃に出た!
百賢の旅は慌てていくつもの小集団に分かれた。火力を集中できなくなったことで攻撃力は大きく落ち、斜面をリオの戦車に追い回された。
「Loaded!」一樹が切迫した声で叫んだ。
リオは一発一発の砲弾に、戦友を失った恨みと、自分たちのサーバーを辱められた憎しみを込めた。
「発射!!」リオが吠えた。
ドン! ドイツ軍の中で、また一つ血の花が弾けた。
「駄目だ! 準備ができていない。急いで撤退しろ!」
機工士が現れ、しかも戦車には耐魔法塗料まで塗られているのを見て、和也は慌てて撤退を命じた。
「殺せ、チビガメ!! うおおおっ!!!」
チビガメは硝煙の立ちこめる戦場を突き進み、ドイツプレイヤーの精鋭部隊を次々と殺戮していった。
狩人が獲物となり、獲物が……狩人となった。




