414 悪魔の意志をもって、この美しい世界を救いましょう
時は、本サーバーのプレイヤーたちがロシアサーバーへ侵攻していた頃まで遡る――
【システムメッセージ: オリジナルシナリオ A2—07がプレイヤーにより攻略されました】
【システムメッセージ: 派生シナリオ A2—07—a3が発生しました】
ブッ!
ゲームのチーフエンジニアは六台並んだモニターへコーヒーを吹き出し、慌ててシナリオファイルを開いた。
「A2は聖職者のシナリオで、07ルートは……大聖堂か」
エンジニアの眼鏡に、画面を埋め尽くす数式やコマンドが反射した。
【システムメッセージ: 検索コマンド A2—07攻略プレイヤー一覧】
エンジニアはそう入力した。
【システムメッセージ: A2—07攻略プレイヤー一覧:
パシュス 松美 真子 ニフェト 六口弥生 カミコ 加奈 レックス】
「火力、支援能力、咄嗟の対応力を基準にプレイヤーの実力を分析。評価の低い順から高い順に並べ、人間が直感的に理解しやすい形式で表示しろ」
エンジニアは命じた。
【システムメッセージ: データ解析中。しばらくお待ちください】
「さあ来い、俺のかわいい子!」
エンジニアは興奮のあまり、モニターを両手でがっしりつかんだ。
【システムメッセージ: 解析完了。重み付けによる補正後のデータは以下のとおりです:
最低評価はE(貢献なし。加えて味方の足を引っ張る)
最高評価はS(自らの役割を完璧に果たし、味方の能力を最大限に引き出す)
松美 C-
真子 C
パシュス C+
六口弥生 B
ニフェト B
加奈 B+
レックス A
カミコ S+++】
「ははっ! やっぱり俺のかわいい子にキャリーしてもらわないとな! 今夜は盛大に祝うぞ。今日はもう上がりだ!」
エンジニアは大喜びで机を叩き、歓声を上げた。
【システムメッセージ: 注意。デイリーレポートが残り12000字あります】
エンジニアは固まり……眼鏡を押し上げて座り直し、仕事を続けた。
…
【システムメッセージ: 派生シナリオ A2—07—a3が発生しました】
二人のNPC審問官が、大聖堂の地下にある骸の聖堂へゆっくりと足を踏み入れた。
「数百年前、七人の聖人はここで神の恩寵が落とす影を利用して呪いを増幅させ、煉獄の創造に成功した……。惜しむらくは、彼らの研鑽の結晶である原罪者には意志しかなく、肉体がなかったことだ」
審問官の一人が語った。
「原罪者はすでに勇者様に倒された……。残された呪いの力を使い、今度こそ完全な煉獄の使者を創り出そう」
もう一人の審問官は笑った。
…
数週間後――
二人の堕落した審問官は、自らの血で骸の聖堂を再建し、異端の神、冥王オシリスの召喚にも成功した。
「審問官ウル、審問官ゴリア。見習い枢機卿ソフィアが、教皇聖マルコの神託を受け、あなたたちを捕らえ、悔い改めさせるために参りました」
ソフィアは十数人の処刑人と司教を率いて骸の聖堂へ踏み込み、ニフェトから聞いていた骨で造られたパイプオルガンを初めて目にした。
「来い!」
ウルとゴリアは逆十字を抜き、オシリスとともにソフィアの聖団へ挑んだ。
激戦の末、ソフィアはウルとゴリアを破って生け捕りにし、さらにオシリスの神器を手に入れた。教皇の信任を得たソフィアは、正式に枢機卿へ任命された。
しかし、物語はまだ終わっていなかった……
それから長い月日が流れた。二人には、大聖堂の冷たく湿った地下牢へ閉じ込められてから、どれほど経ったのかも分からなくなっていた。
二人の肌はすでに青白くなり、頬も骨ばっていた。当番の処刑人プレイヤーに教皇に懺悔したいと何度も申し出たが、ほとんどのプレイヤーは相手にしなかった。
あるとき、隠しシナリオを発生させようとした一人の処刑人が、二人の伝言を教皇へ届けた。だが、教皇には取り合ってもらえなかった。
「申し訳ありません。教皇は取り合ってくださいませんでした」
処刑人プレイヤーは二人に告げた。
「そんなはずがあるか!? 勇者様、私たちを騙さないでください! 教皇はどんな願いも聞き届けてくださる神の使いです。私たちは悔い改めました!」
ウルは処刑人の脚にしがみつき、懇願した。
「聖マルコはすでに退位した。現教皇はソフィアだ」
処刑人プレイヤーは答えた。
二人の顔色が変わった。それからさらに何日も、二人は牢に閉じ込められ続けた。
ある日、黒い鎧をまとったプレイヤーの一隊が地下牢へ押し入り、処刑人たちをことごとく壁際へ押さえつけた。
「何者だ!? ここは大聖堂の管轄下だ。教皇がお前たちの狼藉を許すはずがない!」
取り押さえられた処刑人が怒鳴った。
濃紺の長髪を持つ、冷ややかな威圧感を漂わせる女が、ゆっくりと階段を下りてきた。
「ここは大聖堂の管轄……そして、その大聖堂は私の管轄よ。これ以上口を挟むなら、そいつを殺しなさい」
女は黒鎧の衛兵たちに命じた。
「六口の悪魔……!?」処刑人は心の中で震え上がった。
六口弥生は二人の前にしゃがみ込み、その表情をじっくり観察した。
「何の罪で投獄されたの?」
「禁忌を犯した……堕落した聖職者です……」
ウルは怯えながら答えた。
「ふうん? 面白いわね。仲間はいるの?」
「いません……私たちは二人だけです」
ウルが答え、ゴリアは一言も発しなかった。
「聞き方を変えるわ。私があなたたちを連れ出したら、捜しに来て私に面倒をかける者はいる?」
六口弥生は意地の悪い笑みを浮かべて尋ねた。
「いません! どうか私たちを連れていってください、勇者様!」
ウルは懇願し、ゴリアも初めて顔を上げた。
「いいわ。二人を出しなさい」六口弥生が命じると、配下たちは力ずくで鉄扉を破壊した。
「待て! どんな名目で二人を釈放するつもりだ!?」
処刑人たちが慌てて問い詰めた。囚人が消えれば大罪となり、自分たちが預言者に罰せられるかもしれない。
「この六口弥生が、二都市の領主、そして教皇都市の建設者たる権限をもって、この囚人二名を徴用する」
六口弥生の一言一句には、誰にも逆らえない威厳がにじんでいた。そのまま二人を連れ、踵を返した。
「何に使うつもりだ!?」
先ほどの処刑人がまた余計な口を挟み、自らの職権を越えてまで問いただした。
六口弥生はその処刑人に一瞥もくれず、階段を上っていった。
「今、質問したあの邪魔者を殺しなさい……」
黒鎧のプレイヤーはその場で男の首を刎ね、残された者たちは呆然と凍りついた。
ウルとゴリアは頭から黒い布を被せられて連行され、昼から深夜まで歩かされた。街の喧騒は次第に遠のき、足元の石畳も、やがて土と小石の道へ変わった。
再び牢獄特有の冷たく湿った空気を嗅ぎ取り、ウルはたちまち怯えた。
「待ってください、六口弥生様! ここはどこですか!?」
ウルは激しくもがきながら叫んだ。
二人は一本の木柱に縛りつけられ、黒布を剥ぎ取られた――そこは、もう一つの煉獄だった。
全身を傷だらけにしたNPCが数十人、真っ暗な地下牢に閉じ込められていた。
「煉獄を創りたかったのでしょう? なら、ここで本物の煉獄を学びなさい」
六口弥生は冷ややかに笑って立ち去った。入れ替わるように、黒衣の人物が物陰から姿を現した。その手には、真っ赤に焼けた焼きごてが握られていた。
「やめて……ああっ! 熱い!!! やめてください!!!!!!!!!」
……
そして現在、ムー大陸の地下黒牢――
「真子様……狼の群れが羊の囲いへ向かっています……」
ゴリアは真子に報告した。
「どうして、あなたたちは私に従うの……?」
真子はうつむいたまま尋ねた。
ウルとゴリアは顔を見合わせた。
「あの夜、あなたはほかの者たちを痛めつける手を止め、突然泣き崩れました。もう何の意味もない……そんなことを口にしていました。私たちはかつて……煉獄のすぐそばまで行ったことがあります。だから、あなたの匂いをどこか懐かしく感じたのです……」
ゴリアはそう語った。
「ゲームにもう何の楽しみも感じなくなった。ただ、煉獄という場所が気になっただけ……」
真子は淡々と言った。
「だから、すべてのNPCを私たちの目の前に縛りつけ、生きたまま焼き殺すことで、私たちの精神値とカルマ値を低下させ、本物の煉獄を呼び出したあなたの判断は正しかったのです。
あの魔獣が……這い出てきたとき、私たちに倒せる相手ではないと悟りました。それなのに、あれはあなたを仲間と見なし、攻撃しなかった。ラロ経典にさえ記されていない出来事が、私たちの目の前で起きたのです。
だから真子様……あなたは望んでいた力を手に入れた。今度は、あなたが望む世界を私たちに見せてください!」
ウルは興奮気味に語り、真子は苦笑した。
「あなたたちは成長したのね。六口姉さんの意志を……ようやく理解したのね。」
真子は胸の内で呟き、人骨の杖をついてゆっくり出口へ向かった。
「さあ……悪魔の意志をもって、この美しい世界を救いましょう……」
真子はそう告げた。
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