411 公正な裁判
「撤収の日には、初心者たちをプラムスへ集めてほしい」和也が言った。
「ええ、できます。ただ、もっと――」
柑々は真剣に話し合っていた。
「うああっ!!」
天井から悲鳴が響き、突然、金色の光が天井を突き破った。
「何だ!?」ルースは驚愕し、二歩後ずさった。
ズズンッと轟音が響き、土煙が巻き上がった。
「ルース元首!」熊隊の大部隊が柑々の部屋へ飛び込み、ルースの前を固めた。
土煙がゆっくりと晴れていく。
「た……助けて……ルース様……」
顔面蒼白のイミが重傷を負った身体を引きずり、弱々しく助けを求めながらルースへ這い寄った。
一行が瓦礫の中から立ち上がると、すでに精鋭の熊隊に包囲されていた。
「雨間君!?」柑々の顔から血の気が引いた。
「加奈……」和也は頭が割れそうになった。
「ルース様……この人たちが……あなたを暗殺しようと……」
そう言い残し、イミは意識を失った。
ルースは驚いてイミのもとへ駆け寄り、すぐに手当てを始めた。
「おのれ! 全員捕らえろ!!」
「やめろ!」和也が咆哮すると、熊隊は怯んでわずかに後退した。
「和也! ここは私のサーバーだ!」
愛するイミが瀕死になっているのを見て、ルースは怒鳴った。
「ビスマルク元首の命令で定期視察に来てみれば、裏でずいぶん好き勝手やっていたようだな。強制的に介入させてもらう!」
和也はすぐさま言い返した。
「小僧、貴様もまとめて殺されないよう気をつけろ!」ルースも引かずに怒鳴り返した。
和也は何も言わず、一歩踏み出して足元に炎の輪を広げた。
「やるか、ルース?」
熊隊は自分たちが狼隊より下であり、狼隊は百賢の旅より下、百賢の旅は大賢団より下だと知っていた。そして和也は――その大賢団の隊長の一人だった。
――格が違う。
「私はお前など恐れていないぞ……和也」
ルースは聖血の十字架を取り出した。全身から溢れる聖なる光が、和也の炎と真っ向からぶつかり合う。
和也はごくりと唾を飲み込み、ルースとの正面衝突を避けた。
「この件は……俺に任せろ」
「いいだろう。私はここで待っている!」ルースはイミの前に立ちはだかり、怒りに満ちた目で和也を睨んだ。
「降伏か、武力か」
和也は五輪の魔杖を取り出し、六人を見据えた……。
…
柑々の頭の中で激しい葛藤が渦巻いた――助けるべきか?
戦っても……ドイツ人プレイヤーには勝てない。
話し合うにも……そもそも一行がプラムスにいるはずがない。
前にも後ろにも逃げ道はない。柑々には、一行がもはや助かる術を失ったことが分かっていた。
雨間刻にとって、唯一の救いがあるとすれば――
雨間刻は、華やかな服を着た柑々がドイツ人プレイヤーの遥か後方で無事に立っている姿を見つめた。
しかし、柑々は雨間刻をちらりとも見ようとしない。まるで、そこにいないかのようだった。
雨間刻は寂しげにうつむき、胸に残っていた最後の迷いを、息とともに吐き出した。
「もう逃げられない……」
雨間刻はゆっくりと前へ進み、巨槍を手に強大な和也の前へ立った。そして――微笑んだ。
和也は雨間刻を二秒ほど見ただけで、おおよその実力を見抜いた。続いて次の一人へ視線を移し……最後にマイロを見つめた。
「降伏すれば、公正な裁判を受けられる」
和也はそう言いながら、密かに五輪の魔杖を袖へ隠し、装着されていた付魔石をすべて抜き取った。
「いや……俺たちは、むしろ――」
雨間刻がきっぱりと拒み、勇ましい最期の言葉を口にしようとした瞬間、和也はすでに動いていた。
雨間刻が「いや」と口にした瞬間、和也は五輪の魔杖を横薙ぎに振った。
一行の背後で地面がたちまち裂け、その亀裂から強烈な風の壁が噴き上がり、マイロと寧々を空高く吹き飛ばした!
キティは驚き、反射的に鎖鎌を投げてマイロを引き戻した。
次の瞬間――
バヂィッ*&**((*&︿%$#@!!‵
寧々とマイロは和也の貫雷の槍をまともに受け、空中で金色の雷光が花のように炸裂した。
強烈な電流が鎖鎌を伝い、凄まじい速さでキティへ襲いかかった。手を放す暇もなく感電し、右腕全体が痺れて力が入らなくなる。
マイロと寧々は全身から煙を上げて地面へ倒れ、二分間の麻痺状態に陥った。
「死んだほうがましだ……」
雨間刻が仲間を奮い立たせる最期の言葉をようやく言い終えたときには、和也はすでに仲間二人へ重傷を負わせ、さらに一人を傷つけていた。
雨間刻は倒れた仲間たちを呆然と見つめ……続いて、顔色一つ変えない和也へ視線を戻した……。
バァンッ!!! その場に氷霧が弾け、砕けた氷がドイツ人プレイヤーたちの顔に当たり、冷たい水となって溶けた。
雨間刻が槍を構えて和也へ突きかかったが、巨大な氷壁に阻まれた。
松美は氷壁をすり抜け、戦いに加わった。
和也はすでに手の中に雷弾を握っていた。それを振り上げ、松美の体内へ押し込もうとした瞬間――
「白色パルス!」
加奈の一撃が和也の氷壁を粉砕し、そのまま後方の熊隊を直撃して数人を傷つけた。
和也が間一髪で横へ転がると、松美はすぐに黒い縄を巻きつけた。
その瞬間、黒い影が和也の頭上を覆った……。
「はああっ!!」雨間刻が二本の大剣を高々と掲げ、上空から襲いかかった!
ドンッ!!
二本の大剣が円形の氷盾へ深々と食い込み、その下から血が滲み出した。
一行が和也に傷を負わせたのかと考えた瞬間――氷盾が突然光り始めた。
バンッ! 氷盾が突如爆発し、辺りに水飛沫が飛び散った。一行は全身ずぶ濡れになり、骨まで凍るような冷気に襲われた。
和也は雨間刻に左前腕を斬り落とされながらも、水飛沫を目くらましにして死角から抜け出した。
その先では、加奈がすでに待ち構えていた。二本の黒雷を薙ぎ払うように放ち、後方で見物していたドイツ人プレイヤーたちまで巻き込もうとする。
負傷した和也はわずかに動きが鈍り、もはや加奈の攻撃を避けられなかった。それでも正面から黒雷を放ち、加奈へ反撃した!
二条の黒い雷砲が正面から激突した――ガァン!
大広間が激しく揺れ、巻き起こった強風がカーテンを吹き飛ばした。
和也の魔法がわずかに上回り、黒い雷砲が加奈へ押し返される。
キティが間一髪で加奈へ飛びつき、床に押し倒した。二人の髪は高熱に焼かれ、毛先が縮れていた。
ドイツ人プレイヤーたちは沸き立った。初めて大賢の戦いを間近で目にし、次々と声援を飛ばす。
「奴は負傷している! 一気に畳みかけるぞ!」雨間刻が叫んだ。
「おう!!」一行は同時に猛攻を仕掛けた。
片腕を失った和也は防御しきれず、次第に追い詰められていった。
突然、松美は和也の右脇腹に守りの隙を見つけ、短剣を突き出した。しかし、和也はその勢いを巧みに利用し、松美を雨間刻へ押しやった。
短剣は運悪く、雨間刻の脇下にある鎧の隙間へ挟まった。
和也は松美の腕の下をくぐり抜け、そのもう片方の手首をつかんだ。
三人は手を繋ぐような形で、一直線に並んだ。
「やっと……捕まえた」
和也は笑い、掌から電流を放った!
「うああっ!!」松美と雨間刻は同時に強烈な電流を浴び、全身を激しく震わせた。
松美はその場で意識を失った。雨間刻も目の前に火花が散り、視界も定まらないまま地面で息を切らした。
残るは加奈とキティだけだった。近接戦闘を担う仲間を失った二人は、丸裸も同然だった。
前衛を失ったキティは、近接戦闘に特化した源魔師と正面から戦っても勝ち目がないと悟った。
「もうやめて!!」ついに耐えきれなくなった柑々が叫び、ドイツ人プレイヤーの陣中から飛び出した。
「柑々さん、あなたの立場を明確にしてください」和也は眉をひそめた。
「生け捕りにしたかったんでしょう!? もう成功したじゃない!」柑々は焦って叫んだ。
「お前たちは降伏するのか?」和也は厳しい顔で尋ねた。
加奈は両手を震わせた。自分では兄に勝てないと分かっていた。
そのとき、和也の指先に雷が瞬いた。加奈はようやく気づいた。和也は足止め用の氷魔法と雷魔法しか使っておらず、火魔法には一度も手を出していない。誰一人、致命傷を負わせようとはしていなかったのだ。
どうする!? だが降伏すれば……誰かが死ぬのは避けられない。ならば今、ここで戦って死ぬべきなのか!?
加奈が迷っているうちに――キティが両手を上げた。
「今は様子を見ましょう。意地になって早まらないで……」キティは沈んだ声で言った。
加奈は呆然としたが……やがてゆっくりと魔杖を下ろし、降伏した。
「全員捕らえて、地下監獄へ放り込め!」ルースが命じると、熊隊が一斉に殺到し、六人を連行した。
その直後、和也の視界が真っ白になり、その場に倒れて意識を失った。
傍らにはルースが立ち、冷たい目で和也を見下ろしていた。
「どうやら……お前にも小さな秘密があるようだな、和也大佐。自分の立場はよく考えることだ」
ルースは和也を治療することなく、ゆっくりと立ち去った。
…
まさか、和也は加奈に何かするつもりなのか!?




