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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十七章――決死隊
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406 これも運命なのか

深夜、教皇都市の花畑――


にゃあ……


三匹の子猫がふわふわの尻尾を立て、背中を丸めながらフールの脚に体をすり寄せた。


フールは嬉しそうに微笑み、子猫のお腹を優しくくすぐると、骨を抜いた魚の身を載せた皿を置いた。


子猫たちはすぐににゃあにゃあと鳴き、皿を囲んで夢中で食べ始めた。


ピンク色の小さな口で魚を頬張り、前足についた肉の欠片まで舌できれいに舐め取る。


ご機嫌な小さな毛玉たちはフールの周りを跳ね回り、すっかり彼を受け入れていた。


フールが背中をそっと撫でても、子猫たちは警戒することなく食事を続けた。


フールは救われたような笑みを浮かべた。だが、ふいに目つきを変え、一匹を抱き上げて口元へ運ぶと、口を開いた……。


にゃあ……。子猫は丸い額をフールの頬にこつんとぶつけ、甘えてきた。


「フール先生?」

フールが見下ろすと、寧々がちょうど彼のそばへ歩み寄ってきたた。


二人は黙って見つめ合った……。


「あはははは! 猫にキスしないでよ! ゲームの中にも病気の設定があるかもしれないんだから」

寧々は腹を抱えて笑った。


フールは猫を顔の前まで持ち上げ、匂いを思い切り嗅ぎながら、頬をその体に擦りつけていただけだった。


フールは急に照れくさそうな顔をし、子猫を下ろすと、顔についた毛を払った。


「今日はいつもより早いね」


「うん……早く会いたくて」寧々は嬉しそうに。


「ふふ、それなら猫にはキスせず……君にキスするよ!」

フールはいたずらっぽく笑い、突然寧々を押し倒した。


二人は花畑の中で睦み合い始めた。


フールの白い肌は星明かりを浴び、淡い光を帯びていた。周囲の暗く静まり返った野原と、ほのかな花の香りが重なり、まるで一幅の絵のように美しかった。


寧々は思わず見惚れ、フールの頬にそっと口づけした。


「どうしたの?」フールは笑って尋ねた。


「私のこと、好き? それとも猫のほうが好きで……ついでに現地の女の子を捕まえて遊んでるだけ?」

寧々はフールの目を見つめ、真剣に尋ねた。


「もちろん君が好きだよ。ほかの誰かと話しているところを見たことがある?」フールは苦笑した。


「でも……どうして?」


「猫に餌をやりに来て君と出会った。これも運命なのかな? もともと誰かと親しくなるつもりはなかった。いくつものサーバーを巡ったけど、これほど猫の多い場所は初めてだったんだ。たまたま無邪気に猫へ餌をやっている君を見て、すっかり心を奪われた。ははは!」フールは声を上げて笑った。


「あなたが猫と触れ合ってるとき……目がすごく寂しそうだよ」


「そうかな……」フールの表情が曇り、笑みが消えた。


「どうしてほかのプレイヤーとパーティーを組まないの? 本当は猫が好きなんじゃなくて、誰かにそばにいてほしいんでしょう?」


「質問が多いね」

フールは苦笑しながら寧々の頬を強くつねった。すると、うっかり攻撃判定が入り、すぐに血が滲んだ。


寧々が痛みに声を上げると、フールは高級治療薬を取り出し、寧々の頬へ塗った。


「ごめん……」


「もしかして……一緒にいてくれるなら、誰でもいいの?」

寧々は目に涙を浮かべ、悔しそうに尋ねた。


フールは深くため息をつき、黙って空を仰いだ。


「ほかの人と親しくなるのが怖いんだ。大切な人がゲームオーバーになるたび、胸が痛む。特に……その死を自分の目で見たときはね。その人たちの死の上に、自分だけが生き残ったのだと思い知らされる。あの無力感に襲われると、まるで溺れて、ゆっくり窒息していくような気分になる。本当に怖い……。死の間際に見せた絶望の目が、今でも夜中に夢から目覚めるたび浮かんできて、心が休まらないんだ……」


「ゲームをやめればいいじゃない。どうして自分を苦しめるの?」


「ゲームは楽しいんだ。それに、ほかにも惹かれるものがあるし、自分が何者なのか、もっと深く知ることができる。やめるつもりはない。仲間たちの死を背負って、戦い続ける。仲間たちのため、自分に誓ったんだ。戦う以上、必ず勝つ。相手がどれほど親しい者でも、どれほど強く、恐ろしくても、どちらかが死ぬまで戦い抜き、決して手加減はしない。そうでなければ、これまでの日々がすべて無駄になり、仲間たちの犠牲まで無駄になる!」

フールの声は次第に熱を帯びていった。


「どうして……いつも仲間たちの死を背負っているなんて言うの? みんなはもう戦死したし、あなたも力の限り戦った。どうしてそこまで自分を追い詰めるの?」

寧々は不満そうに身を起こして尋ねた。


「これは罪なんだと話しただろう……勝利だけが、唯一の救いなんだ」

フールは突然、虚ろな目で輝く星空を見つめた。


「どうして罪なの? みんなだって、あなたに生きてほしかったはずだよ!」寧々は声を張り上げた。


花畑は静まり返り、虫たちの鳴き声だけが歌のように響いていた。


フールは身を起こし、寧々の目をまっすぐ見つめた。その碧い瞳が、ゆっくりと異質なものへ変わっていく。実際に色が変わったわけではない。ただ、その奥に深淵をのぞき込んだような不吉さが宿った。


「違う。みんなは僕を心の底から憎んでいた……」

やがて、その碧い瞳が赤みを帯び始めた。


「前にも話したよね。僕のギルドが包囲され、初心者が連携できなかったせいで、大勢の上級者が死んだって」

寧々はすぐにうなずいた。


「僕のそばには、腹を割って話せる四人の親友――命を預け合った戦友だけが残っていた……」

「みんな、もう勝ち目がないと分かっていた。敵を一撃で倒せるほどの力と、誰にも捕まらないほどの速さを与える神器でも現れない限りはね。僕たちは同意し、生き残っていた二百人のギルドメンバーに、ギルドホールを死守するよう命じた」

「全員がホールへ退いたあと、僕はすべての扉と窓に鍵をかけ……黒衣をまとった……」

「一人ずつ……少しずつ……指から肩へ、肩から首へ、首から頭へ、頭から胸へ……そして、ゆっくりと脚まで」

「僕はギルドメンバーを一人残らず喰い尽くした……」

「敵がホールの正門を破った瞬間、扉の隙間から大量の血が一気に溢れ出し、奴らは凍りついた」

「血まみれのホールの壁には肉片がこびりつき、ちぎれた手足が血の海を漂っていた」

「そして、一体の悪魔が血の海から立ち上がり……そのギルド戦争を終わらせた」

「今でも、僕に殺されるときのみんなの顔を覚えている。あの目は驚きと怒りに満ちていた」

「これが僕の罪だ。勝利だけが、僕を救ってくれる」

フールは重い声で自らの過去を語り終えた。


寧々は凍りついたように動けなかった……。


フールは寧々を見つめ、その怯えきった様子から、もう二度とこの少女に会うことはないだろうと悟った。


「人……」寧々が突然、震える声を漏らした。


フールはため息をつき、黙って耳を傾けた。


「人間の肉って、どんな味なの?」寧々は眉をひそめて尋ねた。


「…………」


「え?」

「人間の肉って……酸っぱいの?」寧々は気味悪そうに顔をしかめた。


「お嬢さん、僕は人喰いなんだぞ。何百人も喰った悪魔なんだ! 怖くないのか!?」

フールは突然、声を荒らげた。


「怖くないよ」寧々は笑った。


「怖くない?」フールは大げさに笑いながら聞き返し、この少女は本当に馬鹿だと思った。


「怖いよ。あなたがしたことを、正しかったなんて言えない」

寧々は震える手を伸ばし、それでもフールの頬へ触れた。


「でも、今もその罪に苦しんでいるあなたまで、あの夜の悪魔と同じだとは思わない。これを私に話してくれたあなたから、私は逃げない」


寧々は涙に濡れたまま微笑んだ。

「私……あなたが好き」


フールは言葉を失った。自分のサーバーで彼を見かけた者は、悲鳴を上げて逃げ出すか、そもそも彼が何者かすら知らない者ばかりだった。いつしかフールは、一人で遊ぶことに慣れていた。だが運命のいたずらか、遠く離れた別サーバーで。


もう半年近くになる。半年だ!


フールがほかのプレイヤーに胸の内を明かしたのは、半年ぶりだった。現実世界でも、ゲームのことは誰にも一言も話さなかった。


半年。もう半年も。


フールは一人きりでムー大陸の雄大な自然を巡ったが、その喜びを分かち合える相手はいなかった。


やがてフールは果てしない力に酔い、殺戮によって心の空虚と孤独を埋めるようになった。


かつての優しさも果てしない血の海の底へ深く沈み、二度と日の目を見ないはずだった――だが、この少女が釣り上げた。


「ははははは! 君は本当に、一見お馬鹿なのに誰より賢いな!」

フールは寧々を強く抱きしめ、忘れかけていた喜びを取り戻した。


二人は花畑で寄り添い、互いの体温を感じた。


「次は君の番だ。どうして今日はそんなに積極的なんだ? 早く僕に会いたかったから?」フールは優しく微笑んだ。


寧々の表情が曇り、真剣な顔になった。


「プラムスへ行くの……」寧々は重い声で言った。


「プラムス? 君のギルドはルースに追われているんじゃなかったのか?」フールは不思議そうに尋ねた。


「うん。でも、本サーバーで抵抗の象徴となっている火野良が数日前、ドイツ人プレイヤー側の切り札に敗れたの。今はプラムスの地下牢三階に閉じ込められてる。あなたが普段からドイツ軍の情報をたくさん教えてくれたから、私も救出部隊に加わって、火野良を救い出すことにした」寧々は固い決意を込めて言った。


フールは驚きのあまり返事もできず、無表情のまま寧々を見つめた。


「私たちは敵対関係だから、フレンド申請もできない。もし……プラムスで死んだら、今夜が……あなたに会える最後の夜になる」

寧々は突然嗚咽し、涙をぼろぼろこぼした。


「君は戦闘に特化したプレイヤーじゃないだろう? 情報収集担当だと言ってたじゃないか。ほかのメンバーに任せればいいだろう?!」

フールは取り乱し、寧々の両腕をつかんで揺さぶった。


「ギルドメンバーはもうほとんど残ってない……。今まで大して役に立てなかったからこそ、今度こそギルドのために何かしなきゃ!」寧々は涙ながらに叫んだ。


「プラムスにはルースの部隊が常駐してると知ってるだろう。火野良を救い出せたとして、どうやってプラムスから脱出するんだ?!」フールは焦りきって叫んだ。


「まだ方法を考えてる。でも、私は絶対に行かなきゃならない!」寧々はきっぱりと言った。


「死にに行くな! 僕は……君に死んでほしくない。まだ君に会いたいんだ!」

フールの声は突然、優しくなった。


「火野良は本サーバーにとって、とても大切な希望の象徴なの。絶対に救い出さなきゃならない」寧々は迷いなく言い切った。


フールには、ほかに手がなかった。深くため息をつく。


「よく聞いて。ルース直属の親衛隊『熊』には五人の大佐がいる。それぞれ自分の小隊を率いて、プラムスを巡回しているんだ……君は絶対に――」

フールは寧々が巡回部隊を避けられるよう、熊隊の行動パターンを細かく説明し始めた。


一時間が過ぎた。フールはルースの寝室の場所から、親衛隊長たちの癖まで、何もかも寧々に教えてやりたいほどだった。それでも、もう自分にできることはないと分かっていた。


「気をつけて……」フールは真剣な声で言った。


「うん!」寧々は気丈にうなずいた。


二人は星空の下の花畑で、もう一度口づけを交わした。


別れの口づけだった。


二人は名残惜しさを募らせ、ますます強く唇を重ねた。


だが最後には、それでも離れた。


「さよなら……フール先生」

寧々はゆっくりと花畑を離れ、振り返ってフールに手を振った。


フールは胸が締めつけられた。


「本当は……僕の名前は――」


「なに?」寧々は足を止めて尋ねた。


「気をつけて、寧々さん。必ず生き延びて、また一緒に猫に餌をやろう!」

フールは結局、先ほどの言葉を最後まで口にしなかった。


「そうだ! メールアドレス……早く交換しよう」寧々は慌てて駆け戻ってきた。


二人はためらうことなく、互いの腕に自分のメールアドレスを書いた。最後にもう一度だけ口づけを交わし、ようやく離れた。


「さよなら、フール先生」

寧々は優しく微笑みながら手を振り、ふいに照れくさそうな顔になった。


フールも呆けたように手を振り返した。


「愛してる!」

その一言を残すと、寧々は一目散に駆け出し、夜闇の中へ消えていった。


フールはしばらくしてようやく腕を下ろし、寧々が書いたメールアドレスが擦れて消えないよう、服の袖でそっと覆った。


「火野良……これも運命なのか? はあ」

フールがため息をつくと、不意に頬へ冷たいものが伝った。


フールは自分の頬に触れ、思いがけず――自分が泣いていることに気づいた。

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