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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十七章――決死隊
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405 私の道


「やっぱり……諦めてなかったんだね!」

ノクシアは息が切れるのも構わず、丘を駆け上がった。


ノクシアがアカウントを買い直して戻ってから、アンドリアの消息は一度も耳にしていなかった。柑々と密かに会ったときも、アンドリアのことを聞く暇はなく、すぐに別れてしまった。


「どうして連絡してこなかったの?」アンドリアは不満げに尋ねた。


「あなたが衝動的に動いて、隠れ家の場所がばれるのが怖かったんだよ」ノクシアはばつが悪そうに笑った。


ノクシアは再会できた喜びを胸に、アンドリアの隣へ歩み寄った。しかし、アンドリアは冷ややかに夜空を仰いでいた。


「隠れ家……」


「どうしてここに座ってるの?」

ノクシアは内心驚いた。幹部たちが、この丘の秘密をアンドリアに教えるはずがない。


「前に一度、みんなと意見が食い違って、あなたたちが次々とログアウトしたことがあったでしょう。グズへ飛んでいたとき、上の空で辺りを眺めていたら、偶然ここで話しているみんなを見つけたの」

アンドリアはかすかに笑った。


「私たちが陰であなたのことを話していたの、ずっと知ってたの?」ノクシアは気まずそうに尋ねた。


アンドリアは黙って微笑み、再び夜空を仰いだ。


満天の星を背にした銀龍の刻印の小旗は、かえって色褪せて見え、ほとんど目立たなかった。


「みんなは?」ノクシアは周囲を見回したが、銀龍の刻印のメンバーは一人もいなかった。


唸る夜風だけが、その重い問いへの答えとなった。


二人は向かい合ったまま、何も言えなかった。その沈黙が、どんな言葉よりも多くを物語っていた。


「ごめん……」ノクシアは沈んだ声で言った。


「どうして?」アンドリアはノクスを見つめて尋ねた。


「あなたのそばにいられなかったから」ノクシアは悲しげに息を吐いた。


アンドリアは目を瞬かせ、女性キャラクターの姿になったノクシアを、どこか見知らぬ相手のように感じた。


輪郭が細くなり、肌がきれいになり、髪が長くなったから? 以前より感情を露わにし、声まで高くなって、かつての冷静さが薄れたように見えるから? それとも――変わったのは自分のほうなのか?


「あなたたちは……私の何が不満だったの?」アンドリアが突然尋ねた。


ノクシアは長いあいだアンドリアに付き従ってきたが、彼女がここまで打ちひしがれ、憂いに沈んでいる姿を見たことがなかった。


ノクシアは深くため息をつき、アンドリアの隣に腰を下ろした。二人は並んで星明かりを浴びた。


「欲張りすぎなんだよ……」


アンドリアが静かに耳を傾けると、ノクシアは続けた。


「『地平線の果てまで、すべて私のもの』って、あなたのキャラクター紹介文だったよね?」ノクシアはアンドリアを見つめて尋ねた。


アンドリアは恥ずかしさのあまり、すぐにうつむいた。穴があったら入りたい気分だった。


「地平線の向こうにあるものだけじゃない……勝利も、名誉も、友情も、道徳も、あなたは全部欲しがる。欲張りすぎなんだよ、アンドリア。仮想世界でさえ、あなたの野心を満たせない」


「それは……ギルマスに求められる資質と責任じゃないの?」

アンドリアは蚊の鳴くような声で言い、両腕で自分の体を抱き、小さく身を縮めた。


「アンドリアはとっくに、立派なギルマスだったよ」


「だからこそ、もっと多くを求めて、もっと頑張ったのに……」アンドリアは途方に暮れたように言った。


「グズを手に入れたあと、あなたはKanatheonとヴィニフ宮殿を争うことを諦めた。でも、勝利と道徳をどう両立するの? 名誉と友情をどう両立するの? 」

ノクシアは二つを比べるように、左右の拳を持ち上げた。


「分からない。そんなのギルマスとして当然の務めでしょう……どうしてみんな私ばかり責めるの!? 私の苦しさは誰にも分かってもらえないの!?」

アンドリアは不満をぶつけるように言い返し、次第に声を荒らげた。


「違う! アンドリアは一人で、正反対の二人のギルマスになろうとしてたんだ。勝利を最優先するなら、犠牲を受け入れなきゃならない。誰も犠牲にしたくないなら、領土や勝利を手放さなきゃならない。それなのに、あなたは勝利も、名誉も、友情も、正しさも、全部守ろうとした」ノクシアは天秤の両皿を押さえ込むように、二つの拳を強く握った。


「勝つためには仲間に手を汚させる。それなのに、公正であろうとして、その仲間を規則どおり裁く。どちらも失いたくないから、最後にはすべての代償を自分で背負った。欲張りすぎなんだよ、アンドリア」


「私が……欲張り?」

アンドリアは呆然とした。その言葉は海の底から浮かび上がってきたかのように唐突で、まるで彼女の辞書には存在しない言葉だった。


「あなたは勝利と慈悲を天秤の両端に載せて、どちらも手放さないまま、その真ん中に立とうとしてる。そんなことを続ければ、いつか必ず壊れちゃうよ」ノクシアは微笑み、アンドリアの肩にそっと手を置いた。


その言葉を聞いた瞬間、アンドリアの中で張りつめていたものが切れた。彼女はわっとノクスに抱きつき、声を上げて泣いた。


「私……もう耐えられない……」

アンドリアはノクスの襟を強くつかみ、涙に濡れた顔を懐かしい胸元へ埋めた。


ノクシアは深く息を吸い、アンドリアの背中を優しく撫でた。


「全部を守ろうとして、自分まで壊さないで。どうにもならないことだってあるんだから、無理しないで」


「ごめん……私……」


「私に謝らなくていい。まずは自分を許してあげて。全部を守ろうとして、自分まで壊さないで。これからどの道を選ぶのか、答えを出すのはあなた自身だよ」ノクシアは優しく微笑んだ。


アンドリアは首を振って涙を拭うと、銀龍の刻印の旗を裏返した――反対側には、双頭の鷲が描かれていた。


ノクシアは呆然とし、立ち上がってアンドリアからゆっくりと距離を取った。


「その旗……まさか、あなた……」


「最低でしょう? ギルドを守るためにドイツプレイヤーへ降伏して、今度は初心者を守るためにギルドを捨てた。それでもドイツプレイヤーは許してくれず、由里をひどく痛めつけた。キティは私の身代わりになり、火野良は彼女を救おうとして闘技場へ放り込まれた。何もかも、私のせい――」

アンドリアは泣きながら笑い、自分こそ誰より醜い人間だと思った。


「アンドリア!」

ノクシアはアンドリアの襟をつかみ、無理やり立ち上がらせた。


「もういい!!! これ以上、自分を責めないで! 降伏したいなら降伏すればいい。反抗したいなら反抗すればいい! すべてを丸く収める道なんて選べないし、そもそも存在しない!今ならまだ遅くない。自分が進む道を選んで! アンドリア、見て! この旗をどう掲げるかは、全部あなた次第だよ。選んだ道を貫いて!初めてプラムスを陥落させたときみたいに、何も迷わず、一心に突き進んで! あなたが自分の道を選んだなら、そのときは仲間として突破口を切り開く。盾が必要なら、私たちが受け止める。私たちは仲間なんだよ!!」


夜風が再び吹き抜けた。銀龍と双頭の鷲――二つの紋章を載せた旗がはためき、どちらの面を表にするか迷っているように見えた。


辺りから人狼の遠吠えが聞こえ始めた。ノクシアは人狼が集まり始める前に、村へ戻らなければならない。


「もう行くね、アンドリア」


「待って! ギルドに入らないの?」

アンドリアは焦って画面を開き、すぐにギルドへの招待を送った。


【システムメッセージ: ギルド「銀龍の刻印」に加入しますか?(Y/N)】


ノクシアはしばらく考え込んだ……。


【システムメッセージ: プレイヤー「ノクシア」がギルドへの招待を拒否しました】


「どうして?!」


「自分の道は、自分で探すしかない。今の私には、栞たちと始めた戦いがある。あの子たちを置いて、あなたの部下には戻れない」

「でも、あなたが自分の道を選んで、私たちと同じ場所へたどり着いたなら――そのときは、また隣で戦おう」


ノクシアはアンドリアを強く抱きしめた。


「またね、アンドリア。次に会うとき、あなたが自分の答えを見つけていると信じてる」


ノクシアの姿が森の闇へ消えたあとも、アンドリアは長いあいだ動かなかった。


やがて、二つの紋章を持つ旗を地面から引き抜いた。

「私の……道……」


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