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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十七章――決死隊
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404 芽吹く怒り


ローテン城大広間――


「あとどれだけ残っている!?」将校が焦って尋ねた。


「これが最後の分です!」ドイツプレイヤーたちは何箱もの書類を暖炉へ投げ込んだ。


「ヒューズが作動しました!」歩哨が駆け込んで報告した。


「ちっ! もういい、早く逃げろ!」

将校も石竜へ飛び乗り、最後に残った数人の兵士とともに逃走した。


黄昏の中、ローテン城南側の木壁が強い光に照らされ、ゆっくりと白く染まっていった。


蕾は高位天使の衛兵を一列に従え、ローテン城の前へ姿を現した。


しゃがみ込んで人差し指を土へ突き刺すと、周囲の地面に白い光の紋様が浮かび上がった。光の紋様はローテン城の手前で、寸分違わず止まった。


「女王陛下、ご報告いたします。この城の南壁は保護圏に食い込み、魔王勢力の侵入拠点となっています」高位天使の衛兵が告げた。


「目障りだ」蕾は立ち上がって腕を伸ばし、手のひらを握り締めた。


五本の巨大な蔓が地面を突き破り、タコの足のようにローテン城へ巻きついた。


バキバキと破裂音が相次ぎ、木壁も煉瓦もビスケットのように脆く砕けていく。大地は轟き、土煙が激しく舞い上がった。


ドイツ人プレイヤーによる鉄の支配を象徴していたローテン城は、瞬く間に跡形もなく崩れ去った。


ドイツプレイヤーを神のように崇めていた初心者たちは、精霊女王の蕾が彼らの要塞を原形をとどめないほど締め潰す光景を見て、恐怖に震えた。


プラムスへ逃げてドイツプレイヤーを頼る者もいたが、大半の初心者は新たな神である蕾にひれ伏した。


蕾は振り返り、ゆっくりと初心者の村へ戻っていった。その足跡には一歩ごとに緑の草が芽吹いた。


やがて純白の聖花が形作る玉座に腰を下ろし、眼下で震えるプレイヤーたちを見つめた。


「これより、ラロの名のもとに、この地域から魔王勢力を追放する。お前たちは安心して暮らせ。だが、私は――」

蕾が頬杖をつきながら言いかけたとき、一人の初心者が突然その言葉を遮った。


「あなたが精霊女王!? ドイツプレイヤーを全員殺して、俺たちを……俺たちを立て直してくれるのか!? うぐっ! げほっ、げほっ!」

初心者は興奮して叫んだが、突然息ができなくなり、肺に焼けつくような激痛が走った。


「私は発言を許していない」蕾は彼を睨みつけ、ゆっくりと言い放った。


蕾が視線を外すと、初心者の症状はたちまち消えた。初心者は地面に倒れ、激しく息を切らした。


蕾は意にも介さず、話を続けた。


「これよりラロの名において、この保護圏への魔王勢力の侵入を禁ずる。お前たちには最低限の成長期間を保障する。だが、私はお前たちに代わって戦うつもりはない


一、保護圏へ侵入した魔王勢力は排除する。

二、保護圏外で起きる争いには一切関与しない。

三、保護圏内であっても、旅人同士の私闘には関与しない。

四、政治・経済上の争いには関与しない。


よく覚えておけ。私の時間を無駄にした者は殺す」

蕾が淡々と言い渡すと、その場にいた百人の初心者は身じろぎ一つできなくなった。


蕾が軽く手を振ると、聖白花の花弁がゆっくりと閉じていった。


蕾は再び、花の御座の中へ姿を消した。


プレイヤーたちはそこでようやく大きく息をつき、辺りはたちまちざわめきに包まれた。


...


プラムス塔――


「おはようございます、ルース総統」和也が扉を叩いて入ってきた。


「何の用だ?」ルースが尋ねた。


「ヒューズが現れたそうですね。ビスマルク総統が、資源採掘のペースを上げるよう求めています」和也は笑顔で告げた。


「分かった、分かった。まったくうるさいな!」ルースは苛立たしげに答えた。


「パーカーはどこです? もう長いこと本国へ戻っていないようですが」和也が尋ねた。


「分からない。蕾が現れた以上、防衛線を敷き直し、敵の戦力をさらに分散させる必要がある。奴らに集結されると厄介だ」

ルースは視線を落とし、自分の仕事を続けた。


「手を貸そうか、ルース?」和也が冷笑を浮かべると、ルースは鼻を鳴らし、それ以上相手にしなかった。


...


蕾に守られたことで、初心者の村は一気に活気づいた。


大勢の復帰プレイヤーが蕾をひと目見ようと、わざわざ初心者の村へ戻ってきた。しかし、蕾が白い花から出て周囲を散歩するのはごくたまにだけで、ほとんどの時間をつぼみの中で過ごしていた。


「わしも……ようやく安心して暮らせる!」歴史学者ローレンベルトもグズから逃れ、初心者の村へ移り住んだ。


伝説の鍛冶師カイザー、伝説の剣鍛冶ヘルール、天才商人シュヴァインも、どこからともなく戻ってきた。本サーバーの初心者たちに、安くて実用的な装備を提供し始めた。


予言者デイマンも杖をついて現れた。すべての見習い職のプレイヤーが、彼女に転職を申請できた。聖職者なら試験を受けることで一気に三次職へ昇格できるようになった。


しかし、ほかの職業のプレイヤーは依然としてプラムスで転職する必要があった。そのため、ドイツプレイヤーは今も初心者たちの行動を制限できた。


だが、栞はすでに静かな革命を起こし始めていた。


栞は大勢の新人を仲間に引き入れた。本サーバーのプレイヤーたちは自分たちの歴史を知り、ドイツプレイヤーへ敵意を抱き始めた。


多くの者が自発的に妨害や偵察任務へ参加したが、活動範囲は初心者の村周辺に限られていた。


...


「お嬢さん……エルフなのか?」人間の鎖の先頭に立っていた男が森の縁で、ハイエルフの天使衛兵に声をかけた。


天使衛兵は彼を相手にせず、聖なる鎧に身を包んだまま周囲の警戒に集中していた。


「いい匂いがするな。エルフってのは、みんなそんなに綺麗なのか? 肌だってきっと……」

人間の鎖のリーダーは、あろうことか天使衛兵の腕に触れた。


「女王の近衛から離れろ!!!」天使衛兵は突然怒鳴り、翼を広げて鋭い槍を突きつけた。


バサッ、バサッ、バサッ、バサッ!


四人の高位天使衛兵が空から舞い降り、人間の鎖のリーダーを包囲した。


「すみません……誤解です、誤解です」人間の鎖のリーダーはすぐさま腰を折って謝った。


天使衛兵たちが散っていくと、彼は不満そうにその場を離れようとした。だが突然、両足を凍えるような冷気が襲った!


「えっ!?」人間の鎖のリーダーの両足は脛まで氷に覆われ、身動きが取れなくなった。


「聞いたぞ……お前、村の入口を塞いで、栞を危うく殺しかけたそうだな」

ノクシアが大勢の初心者を引き連れて現れた。全員が黒衣をまとっている。


「お、俺はただドイツプレイヤーの仕事をしただけだ! ほかのことは何も知らないし、関わるつもりもない!」

人間の鎖のリーダーは膝を震わせ、声を潜めて命乞いをした。


「本サーバーがここまで落ちぶれたのは、お前のように誇りも考える力も捨て、奴隷根性の染みついた無能なプレイヤーがいるからだ。今ここでしっかり悔い改め、本サーバーの新人たちの実戦訓練に付き合ってもらう……」

ノクシアは突然、白の矢で彼の武器を弾き飛ばした。ほかの初心者たちはゆっくりと彼へ歩み寄った。


「覚えておけ!

頭、首、心臓。物理職はまず急所を覚えろ。魔法職は胴体を狙って動きを封じる。聖職者はHPだけを見るな。致命的な状態異常を先に処理しろ」

ノクシアは人間の鎖のリーダーのそばまで歩き、鉄杖で急所を示しながら、教師のように初心者たちへ説明した。


「お、おい……まさか……」

人間の鎖のリーダーは紙のように青ざめ、怯えながら尋ねた。


「まずは短剣で試そう。お前、太腿を刺せ!」ノクシアは彼の言葉を無視した。


一人の弓使いが前へ出て、短剣を突き刺し、人間の鎖のリーダーの太腿を切り裂いた。


「うわあああああああああああっ!!!!!!!!!!」


「聖職者は、HPの回復と状態異常への対処が別物だと理解しろ。仲間が攻撃を受ければHPが減り、状態異常を受けることもある。見ていろ――」

ノクシアは鉄杖を、人間の鎖のリーダーの太腿に開いた傷口へ突き込んだ。


人間の鎖のリーダーは激痛に絶叫し、傷口から血が噴水のように噴き出した。


「見ろ! これが出血状態だ。ほかにも燃焼、凍結、毒、麻痺、気絶、盲目など、挙げればきりがない。状態異常とHPのどちらが仲間にとって危険かを瞬時に見極め、優先して対処しろ。そこでヒーラーの実力差が出る。


では誰か答えろ。今のこいつは、状態異常とHPのどちらを優先すべきだ?」

ノクシアが笑顔で尋ねると、一人の聖職者が手を挙げた。


「状態異常です! 私の回復量では、失血する速度に追いつけません」聖職者が答えた。


「正解! +10点!」ノクシアが冗談めかして言うと、その場にどっと笑いが起きた。


人間の鎖のリーダーはHPを回復させられたあと、剣士に首を刺され、魔法で凍らされ、矢で眼球を射抜かれた。もはや人の姿を保てないほど傷つけられていた。


「こ、殺して……くれ……」人間の鎖のリーダーは全身を血に染め、虫の息で懇願した。


「お前、ドイツプレイヤーが大好きなんだろ? なら、あいつらのやり方をたっぷり味わわせてやる!」

ノクシアは鉄杖で彼の顎を持ち上げた。怒りに満ちた顔には復讐の快感が滲み、口元を大きく吊り上げて笑った。


そんな授業が丸一時間も続き、初心者たちはようやく実戦経験を積むことができた。全員が満足げに散っていった。


「ああ、すっきりした!」ノクシアは大きく伸びをしながら笑った。


「次は……何をするんですか?」栞は血の跡から目を逸らし、迷いを振り払うように尋ねた。


「今は耐えろ。焦って動けば、計画を台無しにする。こちらはまだ劣勢だ。絶対に油断するな。だが、お前は本当によくやってくれた! 本サーバーを取り戻した暁には、必ずアンドリアに推薦して、一気に銀龍の刻印の幹部にしてやる!」ノクシアは笑いながら栞の肩を軽く叩いた。


「やったあ!!!!!」


...


狂騒の一週間が過ぎ、夜の帳が下りた。


ノクシアは晴れやかな気分で歩いていた。この二か月、初心者の組織化は一歩も進展しなかった。


それが蕾の出現を境に、すべてが自然とうまく回り始めた。ノクシアはかつての日々を思い返し、大反攻の日に思いを馳せた。


歩いているうちに、いつの間にか保護圏の縁まで来ていた。遠くに見えるプラムス南西の森、その中にあるなだらかな小丘を目にした途端、さまざまな感情が胸に込み上げた。


小さな丘の周囲には、低レベルの黄鹿とイノシシしかいない。そのため、初心者は誰も興味を示さなかった。


そこはかつて、銀龍の刻印の幹部たちがひそかに語り合う場所となっていた。アンドリアの噂話をするには、うってつけだったのだ。


ノクシアは微笑みながら息を吐き、保護圏を出ることにした。三十分ほど歩いて、小さな丸い丘を登った。


森を抜け、ふと顔を上げる。


丘の上には、銀龍の刻印の小旗が立っていた。その下に、銀の鎧をまとった少女が一人きりで座っている。


少女は涙に濡れた目を上げ、茫然と夜空の星を見つめていた。


その少女は…………。


「アンドリア!!!」

ノクシアは突然、堰を切ったように涙をあふれさせ、丘を駆け上がった。


アンドリアは勢いよく振り返った。


「ノクス……」アンドリアは悲しげにため息をついた。

...

この二日間、更新できず申し訳ありませんでした。


急きょ入院することになり、昨日、無事に娘が生まれました。病院でも少しずつ執筆しようとしたのですが、体力が追いつかず、更新までたどり着けませんでした。


来週は家族が会いに来る予定もあり、しばらくは更新時間が不規則になるかもしれません。変更がある場合は、分かり次第お知らせします。


無理のない範囲で物語を続けていきますので、気長にお待ちいただければ嬉しいです。

いつも応援してくださり、本当にありがとうございます!

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