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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十五章——昨日までの親友が、明日には他人になる
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397 黒き深淵に挑む者

時は少し遡り、パーカー率いる黒環ギルドが南へ向かう前――プラムス塔。


「二分……」

柑々は暗がりに身を潜め、鏡の盾を通して、暴君が守る下層への階段を監視していた。


予想どおり、二分後に一人の源魔師が塔へ入り、ほどなくして、もともと塔内にいた源魔師が出てきた。


「四時間ごとの交代……どうして……」

柑々は鏡の盾を消し、考え込んだ。


...


「ルース!」柑々はルースの部屋の扉を押し開け、くるりと一回転して笑った。


「おお、柑々さん! はははは。どうしました?」ルースが楽しそうに笑って尋ねた。


通訳官は気を利かせ、部屋の隅へ下がって待機した――


「お願いがあるの!」柑々はルースの机に腰かけ、笑顔を見せた。


「言ってください! 月だって取ってきてあげますよ!」ルースは大喜びした。


「友達を一人、プラムスへ見学に連れてきたいの。いい?」柑々は指先を軽く噛みながら尋ねた。


「プラムスなら、いつでも開放されていますよ。まさか、プラムス塔のことですか?」ルースが眉をひそめた。


「そこ! その人、ドイツ人プレイヤーの見事な統治ぶりに興味があって、塔の中を見学したいんだって」柑々が大げさなほど興奮して説明すると、ルースはわずかに疑いの色を浮かべた。


「柑々さん、許可できないことではありませんが、今回だけです。見学できるのは君に許可された行動範囲内だけで、立入禁止区域はこれまでどおりです」

ルースが厳しい口調で告げた。


「ありがとう、ルース様」柑々は投げキスを送り、振り返って部屋を出ようとした。


「柑々さん、その友達とは誰なのです? それだけは教えてくださいよ!」ルースが苦笑しながら呼び止めた。


「性殿騎士団の友人よ」柑々はあっさりと答えた。


「性殿騎士団……彼らとは面識がないと言っていませんでしたか?」ルースが眉をひそめた。太ってはいるが、頭の切れる男だった。


柑々はぎくりとした。そのことをすっかり忘れていた!


「あの……その人……格好いいから」柑々は後ろめたそうに答えた。


「まさか。このルースよりも格好いいと? けしからんですね」ルースがおどけて言った。


ルースがあまりにも軽く話に乗ってきたため、柑々はかえって引くに引けなくなり、これ以上嘘を重ねることも難しくなった。


「その人と付き合いたいのですか?」ルースが眉をひそめて尋ねた。


「違うって。ただ……少し興味があるだけ」柑々はへらりと笑って答えた。


「柑々さん……私は君が部下を殺したことさえ咎めず、ほかの女性たちが夢にまで見る地位も与えました。それなのに、君はずっと私を拒み続けている。今度は、その友人を私の城へ入れてほしいと言う。とても悲しいですよ」

ルースは遠回しにせず言った。


「別に好きなわけじゃないの。ただ、ついでに案内するだけよ」柑々が説明した。


「それなら……態度で私を安心させてくれませんか?」ルースは笑い、人差し指を曲げて柑々をそばへ呼んだ。


ルースの両手は、すでに落ち着きなく柑々の腰を這い回っていた。


逃げられないと悟った柑々は目を閉じ、黙って耐えた……。


柑々が顔を背けながらも拒まないのを見て、ルースはすぐに彼女を机へ押し倒した!


「駄目!」柑々はすぐにルースの両手を掴み、鋭い目で睨んで止めた。


勢いづいていたルースは突然止められ、顔色を赤くしたり青くしたりしながら、頭の中で無数の考えを巡らせた。


幾多の修羅場をくぐってきた柑々には分かっていた。今こそ、男が最も苛立つ瞬間だ。


「続きは……次に取っておこうよ」

柑々は甘えるように言った。


ルースはため息をついて手を引き、笑った。


「自分の体を交渉材料にするのが、本当に上手ですね。柑々さん」


「これが私の武器なの。羨ましいでしょ?」柑々は意地悪く笑い、服を整えて部屋を出た。


「……」

通訳官は柑々を見送ると、悲しげにうつむいた。

...


「なぜだ……パーカーは、どうして私に知らせずギルド部隊を出撃させた……」

報告を受けたルースは考え込んだ。


「パーカーよりも、ルース様が警戒すべきなのは柑々が連れ帰った二百人です。まるで長年檻に閉じ込められていた狂犬の群れで、気の向くままに人を殺しています。ただし、狙われているのは親ドイツ派の本サーバーの初心者ばかりです。我々の守備隊が介入した際にも、死傷者が出ました」

副官が報告した。


「狼隊をプラムス周辺へ戻せ。明日から、連中の行動範囲をプラムス東部の谷へ制限する。不穏な動きを見せたら殲滅しろ」ルースが命じた。


「間違いなく反抗しますよ」副官が言った。


「そのほうが好都合です。一度に片づけられる。私は柑々に海上要塞の門を開けろと言ったのに、彼女は中にいた狂犬どもを丸ごとムー大陸へ運び込んだ。どうやら、あの美貌の奥には相当な頭脳が隠されているようですね……」

ルースは意味ありげに笑った。


...


「そうそう! だからドイツ人プレイヤーって、格好いいのに面白みがないって言ってるの! はははははは!」

柑々は厳しい顔つきの夢葬者とともに、塔の外にあるステルス看破装置と幾重もの守衛を堂々と通り抜け、プラムス塔へ入った。


柑々は大声で騒ぎ続け、その子供のような笑い声や軽口は、二階から地下牢まで響き渡っていた。。


ドイツ人の守衛たちは思わず首を振り、苦笑した。数多くのサーバーへ駐留してきた彼らも、これほど元気に満ち、陰気さとは無縁の代理指導者に出会ったのは初めてだった。しかも柑々は美しく、普段は謙虚で礼儀正しいため、ドイツ人プレイヤーたちから慕われていた。


柑々は夢葬者と自室へ入り、扉に鍵をかけた。


夢葬者は黒衣に着替え、肌を黒く塗った。


柑々へ合図するように頷くと、黒煙に変わって姿を消した。


「どんぐりころころ どんぶりこ!お池にはまって さあ大変!」

柑々は歌いながら、不安げな顔で夢葬者の鏡像を作り出した。


夢葬者は柑々の指示書を開いた。


1)暴君のそばにステルス看破装置はない。ただし、その背後にある階段は七段ごとに一段だけ音が鳴る。絶対に踏まず、必ず避けること。

2)下層へ進むと長い通路がある。

3)時間が合っていれば、交代する二人目の源魔師がすぐに来る。

4)この先は分からない………………


夢葬者は呆然とし、無意識に紙の裏側を確認した。案の定、小さな文字がもう一行書かれていた。


「気が利くでしょ! この先についての追加情報はありません。頑張って!」


夢葬者はあきれ返って白目を剥いた。


「これだけの情報なら、口で言えば済むだろ! この紙に何の意味があるんだ!」

紙を細かく破り、黒衣の内側へ押し込んだ。


...


「何なんだ、この歌は……」

入口を守る暴君は、大広間で好き勝手に歌う柑々の声を聞きながら、うっとりと口元を緩ませていた。


その頃には、夢葬者はすでに暴君のそばを抜け、七段ごとに一段を跳び越えながら、無事に下層へ到達していた。


「暴君が二人……源魔師が一人……結界? 結界を使えるのは、設置オブジェクトか聖職者だけのはずだ……」

夢葬者は反射を防ぐため望遠鏡を黒い布で包み、通路の向こう側を調べた。


大広間では、通路を横切る一本の赤い光が、三十秒ごとに入口から黒鋼の大扉へ走っていた。透明状態の侵入者だけを検知する簡易スキャンだ。間違いなくステルス看破装置だ。しかし、両脇には看破装置がない。夢葬者は、そこに罠が仕掛けられていると見抜いた。


「そうだ。大広間に入ってから歌い始めた」


「嘘だろ! はははは! お前の耳が気の毒だな!」


「羨ましいだろ!」


階段の上から、ドイツ人プレイヤーたちの楽しそうな話し声が聞こえてきた。


予想どおり、一人の源魔師がゆっくりと階段を下りてきた。


「よう、お馬鹿なお姫様が歌ってるぞ!」交代に来た男の源魔師が大声で言った。


「やっぱりか! はははは!」二人の暴君が大笑いしたが、扉に魔法をかけている源魔師は何も答えなかった。


男の源魔師は通路の中央を、一歩も左右へ逸れずに進み始めた。


夢葬者は焦った。この機会を逃せば、さらに数時間待たなければならない。しかも透明化はそれほど長く維持できず、柑々も何時間も歌い続ければ喉が潰れてしまう。


「交代まで、あと二分……か? ちっ、もう待てない!」

夢葬者はすぐに源魔師の背後へ走り、その歩調を真似ながら、体が触れそうなほど密着して進んだ。


通路の三分の一まで進んだところで――赤い光が来た!


源魔師は何事もなかったように歩き続けた。


源魔師の背中に張りつくようにして、最後の一瞬で足を止め――姿を現した!


赤い光が、夢葬者の額をかすめるように通り過ぎた……。


夢葬者はすぐに動き出し、源魔師を盾にしながら進み、黒鋼の大扉を守る暴君たちの視線をかわした。


しばらく進むと、赤い光が再び迫ってきた!


夢葬者は同じ手を使って足を止めた。しかし、暴君との距離が縮まり、源魔師の体だけでは、その姿を完全に隠せなくなっていた!


「ん?」

右側の暴君は、源魔師の背後で黒い影が一瞬揺れたのを見て、顔を覗かせた――だが、誰もいない。


「どうしました?」源魔師が尋ねると、暴君は首を横に振った。


残るのは、あとわずか。そのとき、源魔師がわざとらしいほど急に足を止め、布製の靴を直し始めた!


夢葬者の頭に無数の考えが駆け巡った。それでも、危険を承知で横へ飛び出した!


夢葬者は安堵の息を漏らした。罠は何一つ作動しなかった。


夢葬者はすぐに隅へ飛び込み、影鬼の定点ステルススキルで姿を隠した。


「ああ、疲れた」黒鋼の大扉の前にいた源魔師はすぐに手を離し、その場を離れた。


光の紋様が消え、夢葬者は鋼鉄の扉に何本もの細い隙間があることに気づいた。


片目を隙間へ寄せ、奥を覗く――


「なるほど……ここにいたのか!!!!!!!!!」


青い光が走り、源魔師の交代が完了した。


「それじゃ、行くぞ!」魔法をかけ終えた源魔師が、暴君たちへ手を振った。


「分かりました。では、ステルス看破スキャンを開始します」暴君が言った。


暴君が操作画面を開き、実行ボタンを押すと――


入口に赤い光の網が現れ、黒鋼の大扉へ向かって飛んできた!


夢葬者の表情が険しくなった。網目は手のひらほどしかなく、隙間をすり抜けることはできない。


「終わった……」


光の網が黒鋼の大扉へ到達すると、隅に潜んでいた夢葬者を即座に検知し、通路に警告音が鳴り響いた。


ピピピピピッ!


全員が同時に隅を振り返り、身動きできずにいる夢葬者を見つけた。


ドドドォン!!!!!!!!!

...



黒鋼の扉の向こうにいたのは、いったい誰なのでしょうか……?

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