↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十五章——昨日までの親友が、明日には他人になる
396/448

395 降伏か、武力か

馬車は酔っ払いのように左右へ揺れながら、ゆっくりとプラムスを離れていった。


北門を出たばかりの草原では、初心者たちが平原猪を狩ってレベルを上げていた。ドイツ人プレイヤーの馬車が通りかかると、初心者たちは親しげに手を振り、ドイツ人プレイヤーも礼儀正しく手を挙げて応えた。


ドイツ人プレイヤーは本来、このサーバーを侵略した敵だった。それでも、初心者たちは彼らに敵意を抱いていなかった。それどころか、ドイツ人プレイヤーを当然の支配者だと考え、畏敬の念すら抱いていた。


だが、その支配者は片手に刃を、もう片方に飴を持っていた。賢い初心者たちは毎回後者を選び、丸々と太るまで食べさせてもらった。


当初、大戦で死に、復活した古参プレイヤーたちは本サーバーの歴史を熱心に広め、仲間たちに抵抗を呼びかけた。だが、理念では腹を満たせず、初心者のレベル上げを助けることもできない。


古参プレイヤーたちは疎まれ、嘲笑された。多くはレベル五十に達する前に諦め、それきりログインしなくなった。


なかでも、ある問いが古参プレイヤーたちの胸を最も深く抉った――自分たちは何不自由なく暮らしているのに、なぜ抵抗しなければならないのか?


…


「はっ! このサーバーはなかなか快適だな。どの王都もそれなりに立派だ」御者が不意に口を開いた。


「ここは東洋の美女ばかりだからな。メールアドレスをもっと集めないと!」馬車の護衛が話に加わった。


護衛たちは一斉に笑い、楽しそうに話し始めた。


馬車の中では、キティと別の場所で捕らえられた初心者六人が、ドイツ人プレイヤーたちのドイツ語の会話が否応なく耳に入ってきた。


馬車は広大な草原を越え、ゆっくりと森へ入っていった。


「ルースはいいよな。いつか俺も自分の王都を持ちたいものだ」一人の護衛が羨ましそうに言った。


「はっ、まずは戦争で――おい!」

一人の護衛が、キティが自分の髪をいじり始めたことに気づいた。


キティは縛られた両手を後頭部へ回し、気持ちよさそうに銀髪を梳き上げて、雪のように白い首筋を露わにした。


「手を下ろせ!」ドイツ人プレイヤーが怒鳴った。


「女の子が髪を整えるだけで怖いの?」キティは髪をいじりながら意地悪く笑った。


「くそっ、こいつの声は本当に耳障りだ。放っておけ」

御者はキティのしゃがれた声を聞き、たちまち鳥肌を立てた。


「妙な真似をするな。少しでも怪しい動きをしたら、即刻処刑するぞ」ドイツ人プレイヤーがキティに警告した。


「妙な真似って……たとえば、こういうこと?」

キティが顔を上げると、瞳はすでに紫色へ変わり、声も透き通った女の声に戻っていた。


キティの力が一気に跳ね上がり、両手を縛る縄を力任せに引きちぎろうとした。


「異常事態だ!!!!!!!!」


ザシュッ――


やがて、血まみれの馬車が悠然と森を抜けてきた。馬車にいたドイツ人プレイヤーは、一人残らず姿を消していた。


全身を血に染めたキティは馬車を止めた途端、視界が暗転し、そのまま地面へ倒れ込んだ。


マイロがすぐに森から飛び出し、キティを抱き起こした。


「ほら!」マイロはすぐに、黄色い液体の入った小瓶の中身をキティに飲ませた。


キティはたちまち意識を取り戻し、立て続けに黒い血を吐き出した。


「ううっ……もう少し副作用の弱い薬は作れないの?」キティは髪をかき上げ、首に刺さっていた小さな針を抜いた。


「君が勝てなかったら困ると思ってさ」マイロは苦笑し、キティを支えて立たせた。


二人は、馬車の中で怯えている六人の初心者を見つめた。


「どうする?」マイロは薬剤ベルトを開き、眉をひそめて尋ねた。


キティはさらに二度、黒い血を吐き出すと、鎖鎌を抜いて馬車へ飛び乗った。


初心者たちは震え上がっていた。その姿を見て、キティの胸に苛立ちがこみ上げた――こいつらは飼い慣らされすぎて、逃げる勇気さえ失っている。


「アンドリアは……こんな卑しい連中のために」

キティは胸の内で悪態をつきながらも、初心者たちの手を縛っていた縄を切った。


初心者たちは馬車に座ったまま、大人の指示を待つ子供のように呆然としていた。


「さっさと行きなさい、馬鹿ども」キティは見下すように言い、マイロとともに立ち去った。


二人はすぐに東へ逃げ、深い森を流れる小川のそばでしばらく休んだ。


キティは革鎧を脱ぎ、ドイツ人プレイヤーに負わされた傷を洗った。


「初心者たちが密告するとは思わないのか?」マイロが真剣に尋ねると、キティはすぐにため息をついた。


「怖いわよ……でも、あいつらを殺したら……アンドリアの犠牲が無駄になるでしょ」

キティはやるせなさを滲ませながら、傷ついた脚を川へ浸した。冷たい水が、たちまち痛みを和らげていく。


「どうしてアンドリアは、初心者たちのために自分を犠牲にしたんだ?」マイロが理解できない様子で尋ねた。


「アンドリアが本サーバーのために、どれほど長く戦ってきたと思う? 拷問にも耐えられる。罵声にも耐えられる。戦いにも耐えられる。でも、自分の手で本サーバーの未来を潰すことだけはできなかったのよ。特に……ノクスと再会したあと、悪気のない言葉で責められた。もう、こんな日々に耐えられなかったんでしょう。自分を最後の犠牲にして、銀龍の刻印を解放したかったのよ」

キティは革靴を履き直し、装備を整えて立ち上がった。


「結局……ドイツ人プレイヤーは、簡単に彼女を解放してくれないだろうな」マイロがため息をついた。


「行きましょう」キティが言った。


「ムー大陸には、もう俺たちの居場所がないな」マイロが寂しげに呟いた。


「いいえ……火野良なら受け入れてくれる。メールで連絡しておいたし、加奈にも火野良のメールアドレスを教えたわ。Kanatheonがどう反応するかは分からないけど……」

二人はゆっくりと東へ歩いていった。

...


キティとマイロはすでに道のりの半分以上を進んでいたが、それまで何事も起きていなかった。


突然、空に数人の翼騎兵が現れて旋回を始めた。すでに二人のおおよその位置を掴んでいるらしい。


「どうやら、あの初心者たちに密告されたみたいだな……」マイロが力なく言ったが、キティは何も答えなかった。


そこへ複数のドローンが森へ飛び込み、二人の居場所はたちまち露見した。


翼騎兵たちはすぐさま地上へ急降下して襲いかかり、辺りは乱戦となった。


キティは二人のペガサス騎士と戦い、マイロは魔導士に足止めされていた。


パァン!


キティは銃声を聞いた瞬間に身をそらし、弾丸は腹を掠めていった。しかし、毒剤師のマイロにはキティほどの身のこなしはなく、太腿を撃ち抜かれた。


それを見た翼騎兵がマイロへ槍を突き出した。キティは驚き、鎖鎌を投げて騎兵を引きずり下ろした。


パァン!


「うあっ!!」

ドイツ人プレイヤーの狙撃手が正確にキティの膝を撃ち抜き、クリティカルダメージを与えた。


片脚が使えなくなったキティは、もう素早く身をかわすことができない。翼騎兵が向きを変えて襲いかかると、キティはペガサスの腹の下へ潜り込み、必死に左右へかわした。


パァン!


さらに右肩を撃ち抜かれた。狙撃手に狙われたキティは、まるで裸同然で身を守る術がなかった。


「キティ!」マイロは紫色の薬剤を投げ、キティに包囲を突破させようとした。


パァン、パァン、パァン!


三発の弾丸がキティの目の前でマイロの特製薬を撃ち砕いた。薬液が降りかかった草は、たちまち数倍の高さまで伸び上がった。


終わった――


ペガサスが二人を押し倒し、翼騎兵がランスを突き立てた! キティは地面に縫い付けられた!


【システムメッセージ: フレンド キティ HP残り20%】


「キティ!!」マイロは咆哮したが、ペガサスの下から抜け出せなかった。


翼騎兵は血に染まったランスを引き抜き、キティの頭へ狙いを定めた。


「やめろおおっ!」マイロが声を枯らして叫んだ。


だが、その叫びはあまりにも弱く、何の力もなかった……。


キィン――チリン!


澄んだ鈴の音がランスを弾き、キティの体が突然、金色の光に包まれた。


「まさか!?」翼騎兵が凄まじい力で弾き飛ばされた!


黒いマントをまとった三人のプレイヤーが、キティのそばに立っていた――


「キティは……こっちの仲間だ」

火野良は巨大な金の剣を二本抜き、ドイツ人プレイヤーの追っ手へ向けた。





は弱いわね! ニフェト!」加奈は大笑いした。自分か一樹に何かあれば、ニフェトが必ず動くと分かっていたのだ。


「本当にかなわないわ、加奈!」ニフェトが腹立たしげに言った。


ニフェト、パシュス、松美、そしてカミコが駆けつけた。


戦況は一瞬で逆転した! 本サーバー側は十一人しかいなかったが、全員が戦い慣れた四次職の精鋭だった。対するドイツ人プレイヤーの大半は三次職の騎兵で、明らかに見劣りしていた。


「よし! 待ってたぞ、Kanatheon!」火野良は狂喜した。


ドンッ! 砕けた石が辺りへ飛び散った。


火野良は影の旅団の大旗を取り出し、Kanatheonの大旗の隣へ力任せに突き立てた。


二本の大旗が、巨人のように堂々と並び立った


どれほど久しぶりだろう。


本サーバーのギルド旗が、再びムー大陸の大地に雄々しく立った。


「降伏する? なぶり殺しにはしないって約束してあげる」加奈が騎兵の代表を挑発した。


代表はすぐに本陣へ戻り、騎兵団の中から一人の銀鎧の騎士が姿を現した……。


「私が正面から突っ込む。雨間刻は続け! 後衛は任せたぞ、パシュス」火野良が言った。


「任せろ!」パシュスは即座に応えた。


銀鎧の騎士は白馬を止め、本サーバーのプレイヤーたちを見つめながら、ゆっくりと兜を脱いだ。


ニフェトの血圧は一気に跳ね上がり、顔が真っ赤になった。


「アンドリア……………」


アンドリアは生気を失った目でニフェトを見つめていた。その手にあるのは、もはや竜紋の大旗ではない――双頭の鷲旗だった。


「降伏か、武力か」

アンドリアは冷たく告げた…………



本サーバーの旗がようやく再び立ったその日、アンドリアは敵の旗を掲げて現れました。ニフェトは、かつての盟友に武器を向けられるのでしょうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。