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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十三章——漂流する教会
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379 型破りな潜入

短剣を手にした松美は、捕虜を連行するドイツ人プレイヤーたちを追い、萌僧とともに森の奥へ進んだ。そして、ついにドイツ軍の野営地を発見する。


「えっ……どうしてドイツ人プレイヤーが白狼の旗を掲げてるの?」

松美は、ここに掲げられた軍旗がほかのドイツ人プレイヤーのものとは違うことに気づいた。ほかの野営地よりも警備が厳重で、笑い声ひとつ聞こえない。


野営地から漏れるかすかな火明かりを頼りに目を凝らすと、正方形を描くように巡らされた外壁の上には有刺鉄線が張られ、四隅には見張り塔が建てられていた。


「私がここで騒ぎを起こす。その隙に潜入して、捕虜がいる場所を確かめて」松美は提案した。


「見て……」萌僧は、足元にいた丸々と太ったネズミが野営地へ走っていくのを指差した。


「少しは真剣になってくれる?! 私たち、今かなり危険な状況なのよ!」松美は苛立って言った。


「違う! 見てよ! もう三匹目なんだ!」

萌僧は納得がいかない様子で言った。二人が見つめる中、ネズミは木々の間から飛び出し、無事に開けた場所を横切ると、外壁の下に開いた小さな穴から野営地へ入り込んだ。


「その観察力は大したものだけど、そんな細かいことに気づいても役には立たないわ」

松美は呆れたように言い、萌僧を連れてきたことを後悔した。


「違う!」萌僧はバッグを開き、五本のポーションを取り出した。


「濡れ尻ネズミ変身ポーション、赤ゴキブリ変身ポーション、タヌキ変身ポーション、やわらか舌ネコ変身ポーション、それにティーポット331号変身ポーション…………」

松美は名前を読み上げるにつれて背筋が寒くなり、青ざめた顔で萌僧を見つめた。


「このポーションはとても珍しくて、わざわざNPCを捜し出し、特殊クエストを達成しなければ手に入らないんだ。ドイツ人プレイヤーには遊んでいる暇なんてないはずだから、こんな変身ポーションが存在することも知らない。その効果は――」

萌僧が珍しく真剣な口調で説明していると、松美が突然、片手でその口を強く塞ぎ、短剣を喉元へ突きつけた。


「カミコを覗き見したりしてないでしょうね……。あの子、いつも一匹のネズミに見られてるって言ってたんだけど……」


萌僧は突然、松美の腕を払いのけた。


「僕は女に興味なんてない!」萌僧は揺るぎない眼差しで答えた。


「……えっ!?」松美は自分の身のほうが危ない気がしてきた。


…


しばらくして、ネズミに変身した萌僧は有刺鉄線の下をくぐり、野営地へ潜入した――ザッ!


鎧姿のドイツ人プレイヤーがすぐ隣に立っており、危うく頭を踏み潰されるところだった。


萌僧は慌てて近くの木箱の陰へ逃げ込み、こっそりと様子を窺った。


野営地の中だけでも衛兵が十人いる。全員が物々しい装備で身を固め、普段の巡回部隊よりも明らかに強そうだった。


「中央には二階建ての木造建物、その隣には地下壕への入口。捕虜はどこだ?」

萌僧が考え込んでいると、二人のドイツ人プレイヤーがこちらへ近づき、屈んで二つの木箱を持ち上げ、木造建物へ入っていった。


萌僧はすぐに木箱の底へしがみつき、無事に建物へ潜り込んだ。


「報告します、隊長。最後の二箱の補給物資を運び込みました」


「分かった。物資庫へ置いておけ」

隊長はソファに腰掛け、酒を飲みながら本を読んで暇をつぶしていた。


二人は木箱を運びながら話を続けた。

「まったく……教皇軍の連中は忠誠心が高すぎるだろ。もう何人も捕まえたのに、何も吐かない」

「奴らにかかっている神恩の効果がどんどん強くなっている。教皇に近づいているはずだ」

「早く新世界へ行きたいな! あと何ポイントだ?」

「15。お前は?」

「29」

「はっ! 誰だって狼営で実戦訓練を受けなきゃならないんだ。おとなしく自分を鍛えてろ」


ドンッ! ようやく木箱が床へ下ろされた。


萌僧が木箱から這い出すと、濃厚なチーズの香りが鼻をくすぐった。しかし、気を取られることなく、すぐに壁沿いを進んで出口を捜す。だが、窓はなく、四方の壁にも穴はない。扉の隙間さえ固く塞がれ、抜け出せそうな穴はどこにもなかった。


萌僧は扉の隙間に張りつき、わずかな隙間から廊下の様子を確認した――動きはない。


これ以上待っても埒が明かないと判断し、萌僧は思い切って扉の裏でポーションの効果を解除した。


全身が白い光に包まれ、人の姿へ戻った、ポーションのクールタイムが終わるのを待っていると――突然、大扉が開いた!


「んん……ラム酒、ラム酒、ラム酒! あったぞ」

すっかり酔っ払った隊長は酒棚をひっかき回し、目当ての酒を見つけると部屋を出ていった。


ところが、部屋を出ようとしたところで、床に湿ったネズミの糞がべったり付いていることに気づいた。


「え、衛兵!」隊長はしゃっくり交じりに叫んだ。


一人のドイツ人プレイヤーがすぐに駆けつけた。


「見えるか……ネズミの糞だ。物資庫にネズミがいてはならん。分かったか?」隊長は顔を真っ赤にして言った。


「申し訳ありません、隊長! すぐに掃除し、ネズミも捜し出します!」衛兵は答えた。


萌僧はちょうど扉の裏に閉じ込められており、二人のドイツ人プレイヤーが聞き取れない言葉で話し続けていることしか分からない。


「入れるなら、出ていくこともできる。部屋を補強しなければ意味がない。糞だけ拭いて、作業は明日にしろ」

隊長はラム酒を一口飲み、ふらふらと立ち去った。


大扉が再び閉じられると、今度は萌僧がゴキブリへ変身し、冒険を続けた。


廊下の両側には四つの部屋があった。萌僧は左右の扉の隙間を次々とくぐり抜け、中が厨房や装備庫、情報室になっていることを確認した。部屋にいたドイツ人プレイヤーたちも、萌僧には気づかない。


広間へ戻ると、隊長はすでにソファで酔い潰れていた。今なら周囲に危険はない!


建物の中をしらみつぶしに捜したものの、地下牢は見つからず、二階へ続く階段しかなかった。


「捕虜なら地下牢にいるはずだ。二階にいたら簡単に見つかる……」

萌僧は捕虜は地下壕にいるに違いないと判断した。


萌僧が建物を出ようとしたとき、二人のドイツ人プレイヤーが扉を押し開けて入ってきた。


萌僧は六本の脚をフルに動かして隊長のソファの下へ駆け込み、身を隠した。さらにドイツ人プレイヤーたちの動きを探るため、ソファの背面を伝って上へ登っていく。


「お休み中に申し訳ありません、隊長。我々の見張り当番は終了しました」

ドイツ人プレイヤーは隊長へ敬礼して報告した。


隊長はどうにか上体を起こし、ラム酒をもう一口飲んだ。


「俺ももう上がりだ。報告はいらん。おやすみ」


「うわっ、隊長! 動かないでください!」

二人のドイツ人プレイヤーは突然武器を抜き、慌てた顔で隊長を見つめた。


「驚かせるな……『背中に影鬼がいる』って悪ふざけ、まだ飽きないのか?」

隊長はうんざりしたように言いながら、顔にむず痒さを感じていた。


「動か……ないで……」

一人のドイツ人プレイヤーが小刀を手に、ゆっくりと隊長へ近づいていく――一匹の赤いゴキブリが、その顔に張りついていた!


「どうした?」

隊長が頬を掻こうと手を伸ばした瞬間――ゴキブリは姿を消した!


「えっ?!」

ドイツ人プレイヤーが確かめようと隊長の顔へ触れ、たちまち怒鳴りつけられた。


二人は訳が分からないまま部屋を出ていき、隊長は再び倒れ込んで眠り始めた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

萌僧は慌てて隊長のシャツへ潜り込み、隊長の胸毛に身を隠した。また色っぽく息を弾ませ、震わせた。


「すごく濃厚な男の匂い……」


隊長は脇の下に痒みを感じ、手を伸ばして掻いた。次は胸が痒くなり、その痒みはゆっくりと股間へ移っていく……。


「これは……もっと濃い……うわああああ!!!!」


「まずい、まずい、まずい!」

隊長は股間を押さえながら屋外の草地へ飛び出し、その場で用を足した。その瞬間――


「しまった! ゲームの中で酔っ払ったまま小便したら、現実でもおねしょするぞ!」

隊長はすぐにログアウトした。キャラクターの操作は人形システムへ切り替わり、酔っ払い状態のため、その場に倒れて眠り込んだ。


こうして萌僧は、誰にも気づかれず建物から脱出した


萌僧は地下壕の入口で正面を警戒している衛兵の視線を避け、地下壕へ駆け込んだ。すると案の定、右側にある鍵のかかった鉄格子の中に、二人の捕虜を発見した。


地下牢には衛兵がおらず、休憩用の木の机と椅子が置かれているだけだった。


萌僧はポーションによる変身を解きたかったが、二人を驚かせて衛兵に気づかれることを恐れた。


どうする!?


「ソフィアの情報を吐いたのか?」男の捕虜は尋ねた。


「死んでも吐かない……」女の捕虜は怒りを込めて答えた。


「でも……俺たちは無事にログアウトできないかもしれない。意識だけを強制的にログアウトさせたら、自殺するのと変わらない……」男の捕虜はやるせなさそうに言った。


「見て!!!」女の捕虜が嬉しそうに声を上げた。


一匹のゴキブリが、溶けた腹の先に赤い蝋をつけ、壁に双翼の魔法書の紋章を描いていた。


「Kanatheon?!」二人は声を潜めて驚いた。


萌僧が二人の目の前で人の姿へ戻ると、捕虜たちは目を見開き、思わず拍手しそうになった。


「静かに! ソフィアの名前が聞こえた。彼女がどこに隠れているか知ってる?」萌僧は尋ねた。


「彼女は――」

女の捕虜が答えようとした瞬間、男の捕虜が遮った。


「教えるな。ドイツ人プレイヤーが化けているのかもしれない!」男の捕虜は言った。


「違う、見て! 僕たちはソフィアと合流するつもりなんだ」萌僧は襟元を開き、Kanatheonのギルド紋章を見せた。


「Kanatheonがドイツ人プレイヤーに降伏していないと、どうして分かる?!」男の捕虜は怒鳴った。


「少しは腹を決めなさいよ! それでも男?!」萌僧は激怒した。


「誰だ?!」

地下牢から話し声を聞いた衛兵が、振り返って階段を駆け下りてきた。


「あんたね! もういい、先に助け出すから待ってて!」萌僧は慌ててバッグから変身ポーションを取り出した。


ネズミもゴキブリもクールタイム中。タヌキがこんな場所にいるはずもない。ネコ変身ポーションを使う?


ちょうどドイツ人プレイヤーが階段を下りてきた――


「ネコは目立ちすぎるよね?」萌僧は最後の瞬間に考えた。


「誰と話していた?!」

衛兵は怒鳴ったが、地下牢には何の異変もないように見えた。


男の捕虜は殴られ、口元が腫れ、鼻の周りには青あざができた。


「次にお前たちの話し声を聞いたら、一人処刑する」衛兵は警告した。


立ち去ろうとしたとき、衛兵は木の机に見覚えのないティーポットが一つ置かれていることに気づいた。


「何だ、こいつは?」衛兵は興味を抱き、ティーポットを持ち上げて調べた。


ティーポットは突然温かくなり、微かに振動し始めた。


「どんな素材でできてるんだ?」衛兵は突き出た注ぎ口を指でいじった。


ティーポットは突然、手に持てないほど熱くなり、注ぎ口も硬くなり始めた。


衛兵は勝手に形を変えるティーポットなど見たことがない。魔法か錬金術の道具だと思い、注ぎ口をこすり始めた。


注ぎ口は鋼鉄のように硬くなり、ティーポット全体が砕けそうなほど激しく震える。


衛兵は触れば触るほど面白くなり、両手を使ってさらに速く撫で回した!


ピュッ――注ぎ口から数滴の水が飛び散った……。


ドイツ人プレイヤーは、手のひらに落ちた水滴をじっと見つめた。


「魔法の原液か?」衛兵は手のひらを鼻先へ近づけて嗅いだが、何の臭いもしなかった。


女の捕虜はリンゴのように顔を真っ赤にした。


「少しくらい舐めても平気だろ?」衛兵は桃色の舌を伸ばし、水滴に触れようとした……。


ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ――


【全部隊へ通達。東側で侵入者を発見。全部隊は上官へ報告せよ】


野営地に警報が鳴り響き、ドイツ人プレイヤーは水滴を拭い取って立ち去った。松美が予定どおり東側で騒ぎを起こしたのだ。


萌僧はすぐに人の姿へ戻ったものの、今にも昇天しそうなほど恍惚とした表情を浮かべ、ズボンを押さえていた。


「鍵は入口にある小さな木箱の中だ!」男の捕虜は言った。


我に返った萌僧は、ドイツ人プレイヤーたちの注意が逸れている隙に姿を消し、鍵を盗んで二人を救い出した。三人は見張り塔へ登って狙撃手を気絶させ、外壁を飛び越えて脱獄に成功した!


…


三人は森の中で松美と合流した。


「さっきドイツ人プレイヤーたちに追い回されている姿を見て、ようやく少し信じる気になった」男の捕虜は言った。


「Kanatheonはずっとドイツ人プレイヤーと戦ってる。どこかに身を隠し、反撃の準備を進めているの」松美は言った。


それでも双方は完全には信じ合えず、自分たちの隠れ場所を明かそうとはしなかった。


「こうしましょう。ソフィア様の聖所まで案内します。ただし、あなたたちには拘束させてもらいます。生かすか殺すかは、教皇様に判断していただきます」女の捕虜は提案した。


「私たちも、あなたたちが本当にソフィアの仲間なのか分からない。その条件は飲めないわ。一人ずつ人質を出しましょう。萌僧はそちらで縛っていい。その代わり、私は男のほうを人質に取る。何かあっても、双方に人質がいれば対処できる」

松美は六口弥生と長く行動を共にしてきたため、部外者を簡単には信じなくなっていた。


「僕を縛って!」萌僧は特殊用途の赤い蝋縄を差し出し、女の捕虜は再び気まずそうな表情を浮かべた。


一行は出発し、丘陵地帯へ戻っていった。


…


「この紋章は……」

隊長は二人の上級将校を連れて地下牢で、壁に描かれた~を調べていた――


「Kanatheonのギルド紋章です。このサーバーで二番目に強いギルドでしたが、ハゲグ城の戦いで百賢の旅と大賢衆の連合軍に敗れ、壊滅しました」上級将校は説明した。


「どう見ても、生き残りがいるだろう」

隊長は不満そうに紋章を指差した。酔ってはいたが、頭は冴えている。


将校たちが地上へ戻ると、衛兵が目隠しをされ、一本の木柱に縛りつけられていた。その正面には、大口径ライフルを構えた五人の狙撃手が一列に並んでいる。


「隊長! 私は指示どおりに行動しました。何も間違っていません!」衛兵は必死に命乞いをした。


「捕虜を逃がした。それだけですでに失態だ。奴らがどんな手を使ったかなど関係ない」隊長は冷酷に言い放った。


一人の将校が命令を下した――


「銃殺隊――気をつけ!」狙撃手たちは一糸乱れぬ動きで姿勢を正した。


「狙え!」全員が一斉にライフルを構えた。


「撃て!」


ダァァァン――


ドイツ人プレイヤーたちは表情一つ変えず、戦友が光の粒子となって消えていくのを見つめた。


「Kanatheon……この辺りに潜んでいたのか?」

隊長は地図を開き、調べ始めた。

…

皆さんのフレンドの中にも、ゲームで役に立たないアイテムばかり集めたがる人はいますか?

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