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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十一章——暗黒時代
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364 新しい家

ドイツ軍は西のグズ城、中央の教皇都市、東のハゲグを相次いで攻略し、本サーバーを中央部で分断した……


王都を失ったニフェトたちは、この先どうやって生き延びるのか……

【システムメッセージ: 王都 ハゲグ の支配権を喪失】

【システムメッセージ: ギルドの礎石×1 獲得】


ニフェトとパシュスはハゲグから逃げ出したあとも足を止めず、海岸線に沿って北へ駆け続けた。森の北側まで回り込んで、ようやく休息を取った。


遠くで濃い煙を上げるハゲグを振り返ると、さまざまな思いが胸に込み上げた。


かつてのハゲグ塔は、ほんの数階しかない木造の建物だった。周囲にも、ただ荒野が広がっているだけだった。彼らのギルドは自分たちの力だけでハゲグに奇跡的な経済発展をもたらし、ヴィニフ宮殿を攻略し、さらに黒真珠を打ち破って、ムー大陸の半分を制覇した。


それなのに、すべてが一瞬にして、はかない夢のように消えてしまった。


ニフェトは名残惜しそうにハゲグを見つめた。泣きたかった。それでも涙をこらえた。自分には泣く資格などないと思っていたからだ。


「行こう……みんなが待ってる」パシュスが優しく声をかけた。


「何を……待っているの?」ニフェトが寂しげに尋ねた。


「私たちを。みんな、もう撤退場所に着いてるよ」パシュスは声を和らげた。


「そのあとは? 私たちはどこへ行けばいいの?」ニフェトの瞳は行き場を失ったように揺れていた。その奥に渦巻く黒い不安が、パシュスにはかすかに見えた。


「分からない……また一から始めよう」パシュスは野菊のような、素朴で明るい笑みを浮かべた。


答えを得られなかったニフェトは、寂しそうにうつむいた。


「考えてみれば、私はずっと失敗ばかりだった。ハゲグのプレイヤーたちからも、Kanatheonのお荷物だってからかわれてた。頑張れば頑張るほど、かえって大きな災いを招いてしまった。それでも逃げなかったよ。非難を受け止めるのも、私の責任の一つだから。ギルドでは文句ばかり言われてたけど、それでも仲間たちは迷わず私を支えてくれた。そんな仲間に恵まれて、私は本当に幸せだよ」


パシュスは笑っていた。


「それで?」ニフェトは眉をひそめた。


「Kanatheonを作っているのは、ハゲグの建物なんかじゃない。ここにいるメンバーだよ」


パシュスはギルド画面のメンバー一覧を開いた。


ニフェトはすぐに顔をそむけたが、パシュスに頬を優しく撫でられ、画面へ向き直された。


「見て。もう二ページしか残ってない。そうだよ! でも、私たちはここにいる。あなたは今もKanatheonのギルマスだよ。私たちは諦めちゃいけない! 生き残った仲間のため、Kanatheonのため、そして何より……六口のために」


パシュスの言葉が、ニフェトの最も痛いところを突いた。


「六口……私は……失敗したんだよ! ううっ……」


ニフェトはついにこらえきれなくなった。堪えていた涙が、堰を切ったようにあふれ出した。


「ごめんなさい……!!!」


声が枯れるほど泣き叫び、パシュスの胸に顔を埋めた。


パシュスは破れた紺青の軍用マントでニフェトを包み、か弱い花に触れるように、その背中を優しく撫でた。


「大丈夫だから……」


……


パシュスは泣き疲れて気を失ったニフェトを抱き、ハゲグ北部の森を抜けて約束の場所へたどり着いた。だが、そこには誰もいなかった。


まさか、誰も生き残れなかったのか!?


そのとき、松美が木の上から飛び降りてきた。その顔は険しい。


「ついてきて!」


松美は一行を連れ、低木をかき分け、背丈ほどもある草むらを抜けていった。


刃のように尖った草の葉が生い茂っていた。パシュスはニフェトが傷つかないよう、マントで彼女を守った。


密林には蔦がびっしりと絡みついており、一行は短刀で切り払いながら進まなければならなかった。


ようやく池のほとりにたどり着くと、そこでは生き残ったKanatheonのメンバーの大半が水を飲み、休んでいた。


パシュスはニフェトをゆっくりと岩にもたれさせ、地面に下ろした。


「戻ってこられないんじゃないかと心配したぞ、兄弟」


古志はパシュスの姿を見てほっとしたように息をつき、腕を組み交わして抱き合った。


「危ないところだったよ。ニフェトが迷わず城を捨てるよう命じてくれたおかげだ」パシュスは苦笑した。


「彼女はもう十分頑張ったよ。前は六口弥生がギルド運営を手伝ってくれていたのに、今じゃドイツ軍の侵攻に対処しながら、ギルドのこまごまとした仕事まで全部一人で背負わなきゃならない。はあ……あんなに息の合った二人が、部外者のせいで袂を分かつなんてな。惜しい、実に惜しい」


古志は首を横に振った。


「ギルドの状況はどう?」パシュスが尋ねた。


「残っているのは百人にも満たない。士気もどん底だ。もうヴィニフ宮殿を守るのはやめよう。できるだけ早く財産を運び出して、大量のエルフ兵を買い、地下に潜ませるんだ。ハゲグ陥落の知らせはすでに大陸中へ広まっている。プレイヤーたちは食料や装備を買い漁り、王都から逃げ出している。ヴィニフ宮殿が落ちるのも時間の問題だ。加奈の情報は確かだよ。ドイツ軍はハゲグ攻略に、攻城戦を得意とする精鋭部隊を送り込んだ。だが、こっちも侵略者にそれなりの損害を与えた。あと三、四日は安全に撤退できる時間がある。今は戦力を温存しよう」


古志はため息をついた。


「ほかには?」パシュスは微笑みながら尋ね、鎧を脱いで池の水で血を洗い落とした。


「それはもっと先の話だ。加奈の情報が確かなら、数か月さえ耐え抜けば、ドイツのプレイヤーたちは次のサーバーを攻める準備のために撤退する。その間、多くのプレイヤーは身を隠し、人形システムにキャラクターの操作を任せるはずだ。だが、俺たちのようなギルド幹部は、メンバーや財産を放っておくわけにはいかない。ログインしてギルドの資産を守り続けなきゃならない。しばらくは、かなり苦しい生活になるだろうな」


古志が苦笑すると、パシュスは何か含みのある目で彼をじっと見つめた。


「どうした?」その視線に居心地の悪さを覚えた古志が、眉をひそめて尋ねた。


「真子は……行方不明。加奈と一樹は?!」


パシュスは二人がこの場にいないことに気づいた。


「あの二人は……俺たちと一緒には逃げなかった。最後に鉄耳山へ向かって逃げていった」古志は眉をひそめて答えた。


「早く密書を送らないと!」


パシュスが密書を送ろうとすると、古志に止められた。


「ドイツ軍に伝書鳥を見つけられたら、加奈を死なせることになる。彼女のメールアドレスは知ってるか?」古志が重い声で尋ねた。


「知ってるのは真子だけだ……」パシュスは暗い顔で答えた。


「あの二人を信じよう。鉄耳山には火野良の影の旅団がいる。うまく立ち回ってくれることを願うしかない」


古志はため息をついた。


パシュスはニフェトを起こした。ニフェトは松美やカミコと顔を見合わせ、三人そろってうなずいた。


「古志……今の分析、なかなか鋭かったよ」パシュスは笑った。


「確かに……私には足りないところがたくさんある。ギルドを運営するには、副長の助けが必要なの。ギルドのために、もっと力を尽くしてくれる?」ニフェトは微笑んで尋ねた。


「えっ……でも、俺は古参メンバーじゃない……」古志は思いがけない申し出に驚いた。


そこでニフェトは深く息を吸い、立ち上がると、意気消沈した仲間たちへ声を張り上げた。


「みんな……私たちは負けました……ギルマスである私に責任があります。こんな苦しい時だからこそ、能力のある者がその座に就くべきです。自分なら私に代われると思う人は、勇気を出して声を上げてください。私が勇気を出してギルマスの責任を背負ったように」


誰一人、声を上げなかった。


「そんな中、Kanatheon史上最大の危機に重責を引き受けようと、一人の男が立ち上がってくれました――古志! 私は彼をギルドの副長に任命し、六口弥生の後任にするつもりです。ここにいる皆さん、異議はありますか?」


ニフェトがきっぱりと尋ねると、仲間たちの間からひそひそ声が上がった。


「六口様……」


「六口弥生には及ばないだろ……」


「六口弥生はもういないの! 私たちは現実と向き合わなければなりません。努力して学びましょう。努力して成長しましょう! 過ぎ去った日々にすがるのをやめてこそ、未来をつかめるんです!」


ニフェトが声を震わせて訴えると、メンバーたちは次々とうなずき始めた。


「実際、古志も悪くない……」


「頭も切れるしな」


「ようやく男が上に立つのか」


すぐに賛同の拍手が湧き起こった。


「ほら! 何も問題ないでしょ」松美がからかうように言った。


「それなら……謹んで引き受けよう」古志は胸に込み上げる喜びを隠しきれずに答えた。


【システムメッセージ: ギルド副長に昇格しました】


「まずは、とっておきの贈り物を見せてやるよ」


古志は幹部たちを連れて草むらを抜け、洞窟の前へやって来た。


泥だらけのリオが中から出てきた。


「洞窟は掘り終わったか?」古志が尋ねた。


リオはそのまま松明を掲げ、一行を手招きした。


中へ入ると、そこには数人が入れるほどのトタン小屋があった。内部にはさまざまな計器やストップウォッチが並び、砲座のようなものまで置かれていた。


「この小屋は何なの……?」ニフェトが不思議そうに尋ねた。


「俺がこっそり武器を開発している場所だ。だが、あんたが気にするべきなのはこっちだ……」


リオがトタン小屋の反対側の扉を開けると――山の奥深くへ続く巨大な洞穴が目の前に現れ、一同は感嘆の声を漏らした。


「ここは火薬や道具を保管していた倉庫だ。奥のほうでは寝るなよ。ネズミや虫がいるからな。火薬はさっき隣の地下室へ移しておいた。ここなら百人近く入れる。もっと奥まで掘っても構わないぞ。ははは」リオは笑った。


「リオもなかなか頭が切れる。ここは水場に近く、森では食料も手に入る。身を隠して暮らすにはうってつけの場所だ――Kanatheonの新たな拠点だよ!」古志は笑った。


「これは副長としての決定?」ニフェトがからかうように尋ねた。


「ち、違うって……」古志はすぐに気まずそうに否定した。


「ははは! みんな! 新しい家に引っ越すぞ!」


パシュスが一同を手招きした。


メンバーたちの寝床を整えたあと、ニフェトは一人で池のほとり、静かに座って過去を思い返した。


地図を開くと、その表情は人形のように冷たくなった。凍てつくような目で、プラムスを見つめる。


「アンドリア……あなたは、私たちを見捨てた」

……



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