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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十章——城破り
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363 城破り


火力網は一瞬で崩壊した。生き残ったドイツ軍本隊は氷壁を解除して一斉に反撃し、瞬く間にもう一基の砲台を破壊した。最後の技師は一人では支えきれないと判断して脱出したが、空中でドイツのプレイヤーたちの砲撃を受け、肉片となって吹き飛んだ。


実戦慣れした古参ギルドKanatheonの者たちは戦いながら後退したが、ほかのPVEプレイヤーやカジュアル勢は状況も分からないままスキルを乱発し、先を争って攻撃したため、たちまち潰走させられた。


内郭にいるソフィアも、すべてに手が回らなくなっていた。どの路地でも戦闘が起きており、とても一人では対処しきれない。駆けつけるたびに、すでに味方が殺されているか、敵が倒されているかのどちらかで、彼女が力を発揮する余地はなかった。


大賢たちが市内へ入ると、均衡は一気に崩れた。彼らは市内各所に散開していたドイツ兵を再集結させ、破竹の勢いで湖畔まで攻め込んだ。


ドイツ軍の二部隊は再び合流し、なお100人以上が残っていた。一方、ハゲグ守備隊の兵力は250人まで激減していた。


策に溺れたのは守備隊のほうだった。今や逆に外郭の廃墟へ閉じ込められ、内郭の防衛へ戻れなくなっていた。


ニフェトは道中で敗残兵を集め、パシュスとともに北門から内湖要塞へ入った。一樹も内郭の援護に向かった。


侵入者を食い止めるものは、もはや内郭の城壁下にある堀しか残っていなかった。だが、守備隊の火力はすでに大幅に弱まっており、ドイツ軍はわずかな犠牲だけで堀を渡りきった。


「終わりだ……俺たちは、もう十分にやった……」


ニフェトはため息をついて首を振り、塔の頂上に掲げられたKanatheonの大旗を切り落とすよう命じた。


大旗は力なく、100メートル下の地面へ落ちていった。守備隊はニフェトの棄城の合図を見ると、すぐさま黒木の祭壇へ火を放ち、我先にとハゲグから逃げ出した。


【システムメッセージ:黒木の祭壇 破壊されました】

【警告:移動教会 発動

*ムー大陸に神恩を維持できる規模の教会が存在しないため、教皇を中心に「移動教会」が自動展開されます。

*護心石に魂を保護された戦死プレイヤーは、教皇の周囲を復活地点として選択できます。】


黒木の祭壇が破壊されたことで、教皇が持つ移動教会のパッシブ効果がついに発動した。数十人のプレイヤーが、護心石の効果によってソフィアの周囲で復活した。


「えっ?! 移動教会?!」ソフィアは驚いて声を上げた。

「早く俺たちを連れて逃げてくれ、教皇!!」

彼らはすぐさまソフィアに街から連れ出すよう求め、我先にと教皇のもとへ殺到した。


「分かった……みんな、私についてきて!」


ソフィアはハゲグがすでに陥落したと悟り、北へ撤退することを決めた。


内湖にあるKanatheon要塞の大門に、亀裂が入り始めた。


「これは……私のせいなのか……」ニフェトはしおれた花のように、力なくつぶやいた。


「これはギルド全員が背負う業だよ」

パシュスは微笑み、火のついた松明を差し出した。


ニフェトはもう一度ため息をつき、ギルド創設の日に5人のメンバーが金を出し合って買った熊皮の絨毯へ、自ら火を放った。炎は瞬く間にギルドタワー全体を呑み込み、ニフェトの両目から涙がとめどなくこぼれ落ちた。


パシュスは彼女の手を引き、敗残兵を連れて東門から脱出した。


城門が破られ、ドイツ軍が内郭へ突入した。


【システムメッセージ:ハゲグ Kanatheonのギルド礎石 破壊されました】

【システムメッセージ:王都 ハゲグ の支配権を失いました】


礎石の上空に浮かんでいた、双翼の魔法書を描いたギルド旗が光を失い、消滅した。


「ハゲグ市内を粛清しろ。見つけ次第、皆殺しだ」ビスマルクが命じた。


ドイツ軍は一瞬も無駄にせず、再び行動を開始した。


和也が城壁へ駆け上がると、ちょうど一樹が飛んできて廃墟へ降り立つのが見えた。


「返事をしろ、加奈!」一樹は取り乱して叫んだ。


大賢たちが市内へ入った際、加奈の部隊は真っ先に集中砲火を浴びた。


一樹はフレンド情報から、加奈がまだハゲグにいることまでは分かっていた。だが、彼女からの連絡は途絶えていた。


廃墟の中で突然、光が瞬いた。一樹はすぐさまそこへ降り立ったが、見つけたのは見知らぬ魔導士だった。


「助けてくれ……」魔導士は虫の息で訴えた。


「お前の隊長は誰だ?!」一樹が怒鳴った。


「知らない……緑の髪……ツインテール……」


「どこにいる?!」一樹はさらに問い詰めた。


「左へ……二つ先の通り……」魔導士は弱々しく答えた。


一樹は振り返りもせずに魔導士を置き去りにし、加奈を捜しに向かった。


「加奈!!!」


一樹はたった一人で瓦礫の中を捜し回った。もしドイツ軍に追いつかれたら……


「クズ……」


加奈のかすかな声が、足元にある木板の下から聞こえた。


一樹はありったけの力で加奈を助け出した。彼女の腹部に二本の木片が突き刺さり、魔法衣の半分が血に染まっていた。


「抱えていく……ほら!」


一樹が加奈を抱き上げると、彼女は激痛に眉をしかめた。傷口からたちまち出血状態が一気に悪化し、一樹は慌てて彼女を下ろした。


「先に行って……」加奈の呼吸は次第に荒くなっていった。


「そんなことできるか?! ソフィアのところまで飛んで連れていけばいいんだな?!」一樹は焦って尋ねた。


加奈は手を上げ、暗い路地の奥を指さした――そこには五輪杖を構えた和也が立っていた。


「見つけたぞ……敵だ……」和也は身振りを交えながら笑った。


一樹が反撃しようとすると、和也は大袖を翻し、巨大な氷壁を召喚して二人を閉じ込めた。


「貴様――」


一樹が怒鳴ろうとした瞬間、加奈がその口を押さえた。


ちょうどそのとき、ドイツ兵の一隊が路地を通りかかった。


「和也大佐、先ほどこの辺りで叫び声が聞こえました。敵を見つけましたか?」ドイツ兵が尋ねた。


和也は肩をすくめるだけで、何も答えなかった。


ドイツ兵は不思議そうに氷壁へ近づいていった。


「北のほうだった気がする」


和也が反対方向を指すと、ドイツ兵たちはすぐさま立ち去った。


一樹と加奈は息を殺したまま、声一つ上げなかった。ドイツ兵たちが去ると、和也は氷壁を解除して二人へ駆け寄り、すぐに包帯と止血スプレーを差し出した。


一樹は驚きながら救急用品を受け取り、呆然と和也を見つめた。


「海辺で休んでいろと言っただろう、この馬鹿が」和也は加奈を睨んだ。


「また会ったら……敵だって言ったじゃない……」加奈は痛みに顔を歪めながら言った。


「そんな意味じゃない……」


和也は鼻で笑うと、一樹と力を合わせて加奈を立ち上がらせた。


「ドイツの魔導士は伝言鳥さえ正確に撃ち抜ける。今は全力で敵を捜しているから、お前は格好の的になるぞ。南門へ行って隠れていろ。俺たちは一時間後にここを離れる。ハゲグから逃げ出すのはそのときにしろ。合言葉は『氷と火』だ。加奈なら、ドイツ語でどう言うか分かる。傷口を押さえ続ければ、出血の持続時間を短縮できる」


和也は二人を連れ、大通りを横切った。


「昨夜、竜尾湾で……俺たちを殺そうとしただろ?」一樹が驚いて尋ねた。


「呼んでもいないのに勝手についてきておいて、よくそんなことが言えるな? 俺は最初から加奈を殺すつもりなんかなかった」


和也は眉をひそめ、周囲にドイツ兵がいないことを確認すると足を止めた。


「さっさと行け。俺は戻って報告しないといけない」


和也は鼻で笑い、煙の立ち込める大通りへと姿を消した。


「待って……」


加奈が突然呼び止めると、和也と一樹は足を止めた。


「ありがとう……お兄ちゃん」加奈は不本意そうに言った。


それを聞いた和也は苦笑して首を振り、ゆっくりと手を振って立ち去った。


「次に会うときは、俺たちは敵同士だ……」

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