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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第四十章——城破り
358/450

357 井の中の蛙

本サーバーの精鋭は黒い森で惨敗し、教皇都市もドイツ軍の手に落ちた。逃げ延びた者たちは、それぞれのやり方で敗北の現実と向き合おうとしていた……

【システムメッセージ: 最後のページです】

【システムメッセージ: 最後のページです】

【システムメッセージ: 最後のページです】

【システムメッセージ: 最後のページです】

【システムメッセージ: 最後のページです】


「ニフェト……」

パシュスはニフェトの肩にそっと手を置き、重い声で呼びかけた。


「嘘……嘘よ…………システムが間違ってるに決まってる……。7ページ近くあったメンバーリストが、どうして4ページしか残ってないのよ!?」

ニフェトは狂ったように次ページのボタンを押し続けた。だが、システムは無情にも、メンバーリストがすでに最後まで表示されていることを告げるだけだった。


幹部たちは誰も口を開かなかった。いまだにドイツ軍の魔法の余熱を感じているかのように、恐怖が胸の奥に残っていた。


「全部、私のせいだ……」ニフェトはギルド画面を開いた。


【システムメッセージ: ギルマスを辞任します。(Y/N)】


松美はすぐさま背後からニフェトの両腕をきつく押さえ込んだ。

「落ち着いて、ニフェト!」


ほかの者たちも次々と駆け寄り、ニフェトをなだめた。


「まだ戦える! 諦めるな!」古志は焦りを露わに叫んだ。


とはいえ、彼らには敵を退ける策などなかった。


「決戦はいずれ避けられなかった。君はもう、ちゃんと立ち向かったんだ。自分を責めるな……」

桐司は胸を痛めながら言った。


「私が……私が衝動に任せて六口をギルドから追い出したりしなければ、六口なら、きっと私よりいい作戦を考えてくれたはずなのに。全部、私のせい……全部、私のせいなの!」

連日のように押し寄せた大事件の数々が、ついにニフェトを押し潰し、決して癒えない傷を抉った。


「いい加減にしなさいよ!!!」

加奈は怒りのあまりツインテールまで逆立たせ、ニフェトめがけて火球を放った。


赤い光がひらめき、ドンッ!


パシュスは反射的に盾を掲げ、ニフェトに迫る火球を受け止めた。


「六口がいれば勝てたなんて、今さら勝手なことを言わないで! 自分を責めても六口は戻ってこない! 今ここにいる仲間を見なさいよ! なんて弱い人なの! ギルマスのくせに、ギルドが危機に陥ったら運命や他人を恨むばかりで、門の外で待っている仲間に顔向けできるの!? 六口弥生はもういない! 六口がいた頃にいつまでもすがらないで! この世界はあなたを哀れんでなんかくれないのよ!」

加奈の怒鳴り声に、窓ガラスまでかすかに震えた。


「もういい、加奈……」一樹は眉をひそめ、加奈の肩を掴んだ。


「触らないで!」

加奈は樹の腕を鮮やかに振り払い、ドンッと魔法で大扉を吹き飛ばした。


「……」

その場は葬式のように静まり返った。


「そんなんじゃ、永遠にドイツのプレイヤーには勝てない……。このまま、すべてが終わる日を待っていればいいわ……ザコ……」

加奈は皆に背を向けたままそう言い、ゆっくりと立ち去った。


...


紅蓮山――


銀龍の刻印の残兵たちは空腹に耐えながら、山脈の狭間に身を潜めていた。武器を固く握り締め、鎧の隙間から汗を滲ませている。


濃紺の夜空の下でコオロギが鳴き、澄んだリリリという音が、プレイヤーたちの胸に寂しくこだました。


「もう諦める……」

一人の司教が重い声で言った。


「おい、バカ! みんなを見捨てるつもりか!?」

ブラミィは大慌てで叫んだ。


【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX がログアウトしました】


司教のキャラクターは即座に人形システムの制御へ切り替わり、あらかじめ設定された行動に従って、周囲の味方を治療し始めた。


「畜生……」ブラミィは奥歯を噛み砕かんばかりに食いしばった。


「放っておけ……」

乱れた髪を垂らしたアンドリアは、岩に腰掛けたまま、生気のない声で言った。


「プラムスへ急いで戻るんだ。しっかりしろ、アンドリア!」


シモンはアンドリアの足元にひざまずき、彼女を見上げた。だが、そこにかつての颯爽とした騎士王の姿はもうなかった。


「騎兵団は……何人残っている……」アンドリアは口元を強く押さえながら尋ねた。


「アンドリア……」シモンは苦しげな表情を浮かべ、答えようとしなかった。


「プラムスへ急いで戻るんだろう?」アンドリアは問い返した。


「13人……」シモンは重々しくうつむき、呟いた。


アンドリアが深いため息をつくと、それに合わせるように落ち葉が地面へ舞い落ちた。


「私の騎兵団はゲーム開始当初からある……。80人で百戦以上をくぐり抜け、皆、腹を割って語り合える友だった。それが今では、たった13人……。先週はまだ、ロシアサーバーを落としたら支部を一つ作ろうと話していたのに………まるで馬鹿げた夢物語だな………」


アンドリアは一人でぶつぶつと語り続け、力なく笑った。


「残った連中を紅蓮山に呼んで、俺たちを迎えに来させるか?」シモンが尋ねた。


「歩いて戻ろう……。どうせドイツ軍に見つかれば、死ぬだけだ」


アンドリアは立ち上がると、ふらつく足取りで歩き出した。


「シモン……山の上にある、あの崩れかけた建物は何だ?」アンドリアは山頂の廃墟を指さした。


「放棄された羅刹城だ」とシモンは答えた。


「見に行こう……」


アンドリアは速骨竜に跨がると、そのまま駆け去った。


「アンドリ――」シモンが呼び止めようとしたところを、由里に引き止められた。


「少し一人にしてやれ……」


いつもは皮肉っぽい由里があまりにも真剣な顔をしていたため、シモンは何も言い返せなかった。


二人は遠ざかっていくアンドリアを見送った。


...


山頂に建つ羅刹城。その門の脇では、半分に引き裂かれた血の手形の大旗が風に揺れていた。


アンドリアはこれまで各地を転戦してきたが、Kanatheon以外のギルドを訪れたことは一度もなかった。


羅刹城の門をくぐると、プラムスには及ばないものの、円形の城内は守りがよく整えられていた。食糧庫、医療所、アイテム商人、兵舎まで、必要なものはすべて揃っている。かつて200人近いメンバーを抱えていた羅刹教が、たった5人のドイツ人プレイヤーに攻め落とされたとは、とても信じられなかった。


辺りを見回すと、家々は倒壊し、城壁は崩れ、地面には捨てられた装備が散乱していた。当時、彼らがどれほど慌ただしく逃げ出したのかが窺える。


「私たちのサーバーも、羅刹教と同じ、井の中の蛙にすぎなかったのかもしれない……」アンドリアは呟きながら振り返った。


「そうだ………俺は確かに、井の中の蛙だった……」


西城勇が突然ギルドホールから姿を現した。その顔は暗く沈んでいた。


「お前は誰だ?」アンドリアは眉をひそめて尋ねた。


「西城勇……」


「ああ……私たちはどちらも、井の中の蛙だったんだな……」アンドリアは苦笑した。


「あいつらは……俺のギルドの礎石を壊さなかった……」西城勇が重い声で言った。


「どういうことだ!?」


アンドリアは夢から覚めたようにはっとした。だから羅刹教の大旗が、今もこの山城に掲げられているのだ。


西城勇はギルドの礎石を指さした。


『忘れるな』――ギルドの礎石の傍らに、赤い大文字でそう書かれていた。


「なぜ……」アンドリアは考え込んだ。


「アンドリア……2万竜貨は多いと思うか?」西城勇が尋ねた。


「2万……多いな。小さな町を一つ築けるほどだ」アンドリアは眉をひそめて答えた。


「その日、俺は食料を買わせるため、何人かを山の麓へ向かわせた。和也というドイツ人プレイヤーは俺の信徒を殺したくせに、奪った2万竜貨をトウモロコシの粒でも撒くように地面へぶちまけていった……。ドイツ人プレイヤーはもう、資源も金も求めていない……。奴らは俺たちを滅ぼすために来たんだ。俺たちがギルド跡地を見に戻ると分かっていて……わざとメッセージを残し、絶望させようとした」


西城勇は赤い文字を見つめながら、重々しく語った。


「滅ぼすために……!? そんなことをして、何の得がある!?」アンドリアは驚いて尋ねた。


羅刹教の信徒たちは押し黙った。そんなことは誰にも分からなかった。


「お前たちは……これからどうするつもりだ?」アンドリアが尋ねた。


「分からない。たぶん、待つだけだ。ドイツ人プレイヤーがここを見つけたとき、俺たち羅刹教も終わる」西城勇は答えた。


レナはすぐさま憎悪に満ちた目を向けた。


「諦めたのか?」アンドリアは不愉快そうに尋ねた。


「お前たちも黒い森で負けたんだろう……。俺たちは全戦力を注ぎ込み、千人を超える手練れを集めても、300人のドイツ人プレイヤーに勝てなかった。お前は、自分がまだ諦めていないと言い切れるのか?」西城勇は問い返した。


「わ、私は……負けはしたが、まだ諦めてはいない!」アンドリアは悔しげに言い返した。


「さすがだな、光り輝く騎士王アンドリア。だが、俺たちの敵は源魔師でありながら、暗殺者に匹敵する体術を持ち、中距離魔法を近接戦に使い、わずか3分で俺を倒した――それがドイツ人プレイヤーの実力だ」西城勇は苦笑した。


アンドリアは言葉を失った。ドイツサーバーにどれほどの達人がいるのか、想像することすらできなかった。


「西城勇様……どうして諦めるんですか……」レナは静かに立ち上がった。


「勝てないからだ……」西城勇は素直に認めた。


「だったら逃げればいい……。どうしてここへ戻ってきたんですか?」レナの呼吸が次第に荒くなった。


「どこへ逃げるんだ……」西城勇は眉をひそめた。


「どこでもいい! ここへ戻ってくるなんて、死にに来たようなものでしょ!?」レナはついに堪えきれず、怒鳴り声を上げた。


「せめて、派手に散ってやるさ!」西城勇は笑った。


「何よ、そのバカみたいな台詞!? 勝てないなら鍛えればいいでしょ! 火野良と戦ったときだって同じだったじゃない! 火野良の一騎打ちで火野良を倒すため、密かに対策用のスキルを鍛えた、あの気概はどこへいったのよ!?」


レナは盾を投げ捨て、泣きながら罵った。ほかの信徒たちも西城勇を睨みつけている。


「じ、状況が違う……。あの和也は――」西城勇は言葉を詰まらせた。


「西城勇、あんたは、自分が跪いて命乞いしているビラをムー大陸中に貼られたことが受け入れられないだけでしょ。結局、あんたは見栄っ張りの小物なのよ!!」


レナは歯痒さを露わにし、リュックから何束ものビラを掴み出して西城勇に投げつけた。


和也に跪く西城勇のスクリーンショットが印刷されたビラが、地面を埋め尽くした。西城勇はそれを目にすると顔を険しくし、身に刻まれた経文から炎が上がり始めた。


「あんたのために、私は人目も気にせず、街中でこのビラを自分の手で破り捨てた! あんたを嘲笑うプレイヤーたちと殴り合いまでした! 全部、あんたが何も気にせず休んで、それから立ち直れるようにするためだった! それなのに、あんたは諦めて、こんな腐った場所で死ぬのを待ってる! それで私に顔向けできるの!?」


レナは西城勇を力任せに突き飛ばした。


「うるさいんだよ!」

西城勇は拳でレナを殴り飛ばした。


「レナ様!!」


信徒たちはすぐさま彼女を受け止め、揃って西城勇に敵意を向けた。


「あの日、俺はお前たちとすべてを征服してやると豪語した……それなのに今は、源魔師一人にすら勝てない……俺がどの面を下げてお前たちに会えるんだ!? 羅刹教は……もう存在しない!」


西城勇は声の限りに咆哮し、魔拳を呼び出して地面を打ち砕いた。ビラが宙を舞う。


【システムメッセージ:ギルドの礎石 が破壊されました】


西城勇は呆然とした。レナが自ら騎士槍を突き立て、羅刹教のギルドの礎石を砕いたのだ。


【システムメッセージ:レナ がギルドを脱退しました】


「そのとおり……羅刹教はもう存在しない。西城勇は……もう死んだのよ」


レナの頬を一筋の涙が伝った。


【システムメッセージ:XXX がギルドを脱退しました】

【システムメッセージ:XXX がギルドを脱退しました】

【システムメッセージ:XXX がギルドを脱退しました】

【システムメッセージ:XXX がギルドを脱退しました】

【システムメッセージ:XXX がギルドを脱退しました】


信徒たちは全員レナに続いてギルドを脱退し、羅刹教には西城勇一人だけが残された。


西城勇は、レナやかつての仲間たちが一瞬にして赤の他人になったのを呆然と見つめ、頭の中が真っ白になった。


二人のやり取りに一度も口を挟まなかった――ギルドメンバーの前で敵に跪くことが、西城勇にとってどれほどの恥辱だったのか、彼女には痛いほど分かっていた。西城勇の信徒たちが理解できないはずもない。


「アンドリア様!」


銀龍の刻印の者たちは山城から爆発音が聞こえたため、慌てて駆けつけた。そして、見る影もなくなった羅刹教の姿に息を呑んだ。


「アンドリア、私も一緒に行く……」レナが言った。


アンドリアは驚き、西城勇が逆上しても巻き込まれないよう、三歩続けて後ずさった。


「レナ……最後には、お前まで俺を裏切るのか……」


西城勇の顔色が変わり始め、全身の筋肉が隆起し、皮膚の下で激しく脈打った。


レナは何事もなかったかのように、彼とすれ違った。


「あなたは、自分自身を裏切っただけよ……」


レナはすれ違いざまにそう言い残し、信徒たち全員とともに銀龍の刻印の陣営へ加わった。


西城勇はそこでようやく悟り、黙って俯くと、地面に散らばったビラを見つめた。どのビラにも、負け犬のように命乞いする自分の姿が映っていた。


「俺は……俺は、こんな奴じゃないんだぁぁぁぁ!!!!」


彼はもう強がることができず、その場に膝をつき、悔しさに声を上げて泣いた。


「行こう……」


レナは歯を食いしばり、決して振り返ることなく、銀龍の刻印とともにプラムスへ戻っていった。


紅蓮山脈には、西城勇と、悔しさと悲しみに満ちた泣き声だけが残された。


...

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