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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第三十九章——一騎当千
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356 一騎当千

大鐘楼の大広間へ通じる扉が、ドイツ軍に破られようとしていた。荒道一狼は仲間たちを逃がすため、ただ一人、殿を務める覚悟を決めた……

「殺せ……」パーカーはこともなげに命じた。


玉座はたちまち幾つもの火球を浴びて砕け散り、荒道一狼は彼らの目の前から姿を消した……


「一分……」

その声が突然、ドイツ軍の背後から聞こえた。


パーカーが振り返る暇もなく――


バキィッ!


赤鬼と化した荒道一狼は両腕を広げて敵の一人を抱き締め、その場で腰をへし折り、動けなくした。


「追い払え!」ドイツ軍はすぐさま荒道一狼へ猛火を噴きつけた。


燃え盛る炎は天井近くまで噴き上がり、大広間の隅を黒く焦がし、石煉瓦を白く焼いた。


「灰になったか……」荒道一狼が焼け死んだと誰もが思った、そのとき――


「まだ終わっちゃいねえぞ!!」荒道一狼は神官の金色の防壁をまとい、炎を突き破って飛び出した!


ドォン! 大広間の反対側で激しい爆発が起きた!


荒道一狼は目にも止まらぬ速さでドイツ軍の陣形を突き抜けた。駆け抜ける途中で地面の氷魔法の罠を次々と発動させ、その跡に氷の花が連なる道を作りながら、勢いのまま二人のドイツ人魔導士の襟首を掴み、壁際へ投げ飛ばした!


「なに――」パーカーには詠唱する暇すらなかった。


ドン、ドンッ! 二人は荒道一狼に激しく壁へ叩きつけられ、鮮血を壁一面に撒き散らして即死した。


「二分……」荒道一狼は血の滴る拳を固く握り、ゆっくりと振り返った。


「Formiert euch!!(陣形を組め)」パーカーはこの現地人がただ者ではないと悟り、すぐさま部下に隊列を組ませ、魔法弾で荒道一狼を押さえ込んだ。


荒道一狼は敵の激しい攻撃をかいくぐりながら大広間の壁や柱を蹴って駆け回り、敵の進軍を遅らせた。


三分が過ぎても、荒道一狼は敵の攻撃をかわし続けるばかりで、一度も反撃しなかった。


「鬱陶しいネズミめ……さっさと片づけろ。魔力圧縮術!」パーカーが新たな強化術を発動すると、ドイツ軍が放つ魔法の威力と弾速が一気に上昇した。


「まずい――」ズドドドドッ!


突然加速した数十発の念弾が荒道一狼を直撃し、身を守っていた防壁はたちまち砕け散った。HPゲージも一瞬で、瀕死を示す深紅に染まった。


重傷を負った体から力が抜け、荒道一狼は地面へ落下していく。敵はその着地点を狙い、幾つもの火球を撃ち込んだ!


ドゴォォォン!!!!!!


石壁一面が吹き飛び、激しい爆風が拳ほどもある瓦礫を巻き上げた。


全身を黒く焼かれた荒道一狼が、濃煙の中からゆっくりと立ち上がった。


「この現地人……とんでもなく強い……」ドイツ軍の兵士たちはその強さに息を呑んだ。


「大地原――」荒道一狼が自分を治療しようとした瞬間、突然、回復手段も封じられ。


「神の嘆息……」パーカーは目隠しをした女天使を召喚し、荒道一狼のスキルを封じた。


荒道一狼が一瞬ひるんだ、その次の瞬間、幾本もの雷槍が眼前まで迫り――


ズシュッ、ズシュッ、ズシュッ、ズシュッ、ズシュッ。


血飛沫が花びらのように舞い散り、荒道一狼の全身に幾つもの風穴が開いた。それでも倒れず、ゆっくりと背後の熱を帯びた壁に身を預け、荒い息をつきながら何度も血を吐いた。


「こいつらは……一体、何者なんだ……」

アンドリューとの戦い以来、荒道一狼は敗北を知らなかった。たとえトッププレイヤーが相手でもトッププレイヤー相手でも互角に渡り合えたが、完全に軍隊として統率されたドイツ人プレイヤーを前に、かつてないほどの絶望を感じていた。


下腹部を襲う激痛が全身を貫いた。いくつもの臓器を損傷し、もう時間がないことは荒道一狼自身も分かっていた……。


「あと……二分…………」荒道一狼は痛みを飲み込み、再び過負荷状態に入って敵を見据えた。


白い霧が天井へ集まり、突如、無数の氷の結晶が降り注いだ。


「あと……二分だけよこせ!」荒道一狼は咆哮し、肩や胴に氷の結晶が突き刺さるのも構わず、砲弾のように突進した。


ドォン!!!


その勢いと速さは凄まじく、一気に反対側の壁際まで突っ込み、さらにドイツ兵を一人なぎ倒した。そのまま壁を蹴って反動をつけ、地面とほぼ平行に飛びながら、一直線に往復してドイツ軍の陣形へ何度も突っ込んだ。


ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン!


荒道一狼は一本の赤い光となって大広間を端から端へ跳弾のように飛び回り、ドイツ軍の兵士たちはボウリングのピンのように次々となぎ倒された。


「至高の栄光!」パーカーは聖杖を掲げ、大広間に灼熱の太陽を出現させた。


彼女は相手がたった一人だからといって手加減せず、攻城戦級の戦術で迎え撃った。


今や荒道一狼は手足が満足に動かず、声も封じられ、そのうえ視力まで奪われていた。白く霞む視界の向こうに、霧に包まれた桃源郷が浮かんだ。


荒道一狼の脳裏に柑々の声がよみがえり、その笑顔が浮かんだ……


ドイツ軍は陣形を立て直し、魔杖を構えて荒道一狼に狙いを定めた。


白い霧にかすんだ荒道一狼の視界に、色とりどりの光の輪が灯り始めた。まるで背景を彩るクリスマスのイルミネーションのようだった。


その色鮮やかな世界に、柑々の美しく無邪気な笑顔が浮かんだ……。


柑々と話したかった。だが、彼女と出会えた幸福を表せる言葉など、一つも浮かばなかった。


荒道一狼は姿勢を正し、過負荷を解除すると、微笑みを浮かべたままドイツ人プレイヤーたちへ歩き出した。


「Feuer(発射!)」パーカーが命じた。


「殉教!!!」荒道一狼は全身が漆黒の炎に呑まれ、黒い悪鬼と化して突進した。


クリスマスのイルミネーションが瞬き始め、色彩に満ちた世界の中で、柑々が彼に微笑みかけているように見えた……。


荒道一狼は最後の命を懸け、柑々の幻影へ飛び込んだ――その先に立つパーカーめがけて…


「これも……悪くないな……」


……


鐘楼の屋上――


「もう少し待ちましょうよ!?」ソフィアは見捨てきれず、尋ねた。


「荒道一狼と別れてから、もう十分も経った。生きて戻ってくるはずがない」キティは言った。


ソフィアはすぐに教皇庁の画面を開き、教団騎士長の役職が再び空席になっていることに気づいた。


「…………」


ソフィアは、荒道一狼がもう戻ってこないことを悟った。


「乗って!!!」キティは石竜の背に飛び乗り、柑々を引き上げた。


石竜は翼を羽ばたかせて高く舞い上がり、月明かりの中をハゲグへ向かって飛んでいった。


彼らは逃げ延びた……だが、彼らの一部は永遠にこの地に残った……

【今後の更新について】

これから一週間ほど、仕事後に引っ越しの片付けを進める必要があり、新居のインターネット環境もまだ整っておりません。そのため、更新時刻や一話あたりの文字数が不規則になり、場合によっては更新をお休みする可能性があります。


楽しみにしてくださっている皆様には申し訳ありません。新生活が落ち着き次第、通常の更新ペースに戻しますので、しばらくお待ちいただけますと幸いです。m(_ _)m

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