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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第三十九章——一騎当千
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355 最後のパーティー

ソフィアは一人で逃げる道を選ばず、キティを守るため、フレンド転送を拒否してその場に残った……

一発の大神砲がドイツ軍の巡回部隊を百メートル先まで吹き飛ばし、瓦礫の中へ叩き込んだ。


ソフィアは他の巡回部隊に気づかれていないことを確認すると、急いでキティの傷を治療し、黒いマントを羽織り直した。そして無事に隣の看板娘酒場の前までたどり着いた。


「危うく忘れるところだった……」キティは双鎌を回収し、腰に収め直した。


……


ソフィアが赤い木製の大扉をそっと押し開けると、中は真っ暗だった。NPCもプレイヤーも、すでに全員逃げていた。


時間が迫るなか、ソフィアは聖杖に明かりを灯し、柑々の店長室を見つけた!


鍵がかかっている! 木の扉は内側から施錠されていた!


「嘘でしょ! 隠し通路には鍵がないのに、部屋の扉が閉まってる!!!」ソフィアは恐怖で涙を浮かべた。


カチャ……。


キティは扉をすり抜けて部屋へ入り、内側から施錠されていた木の扉を簡単に開けた。


ソフィアは夢葬者(むそうしゃ)の便利さを初めて実感し、急いで壁際の本棚を引いた。そこには暗い地下通路が現れた。


「入ろう」二人は本棚を元に戻し、無事に鐘楼の中へ潜り込んだ。


……


「全部ここへ積め! 各ギルドホールの地図を優先して俺に渡せ!」荒道一狼は焦りながら何枚もの地図を机の上へ広げ、後日それぞれのギルドと連絡を取って反撃できるよう、写真に収めていった。


柑々は分身を呼び出し、紙の山から役に立つ情報を探させた。雨間刻は書斎から何箱もの資料を運び出し、鐘楼の大広間へ積み上げていた。


ソフィアとキティが突然、部屋の隅に姿を現し、その場にいた全員を驚かせた。


「成功したんだ! どうやって戻ってきたの!?」柑々はすぐにソフィアへ抱きついた。


「あなたの地下通路を通って……」ソフィアはまだ恐怖から立ち直れないまま、額の汗を拭って答えた。


「翼騎兵が到着するまで、あとどれくらいだ!?」荒道一狼は焦って尋ねた。


「15分後だ!」雨間刻が答えた。


「間に合わない、燃やし始めろ!」荒道一狼はすでに三十枚以上のギルドホールの地図を撮影しており、残った資料を救い出す余裕はなかった。


柑々の分身たちは紙を積み上げ、火をつけて燃やし始めた。


「キティ、今すぐ屋上へ行き、翼騎兵が着陸する場所の安全を確保しろ!」荒道一狼が命じると、キティはすぐに黒煙へ変わって姿を消した。


「刻! まだ資料は残っているか!?」荒道一狼は地図の数をもう一度確認しながら尋ねた。


「あと二箱だ、すぐに運ぶ!」雨間刻は全速力で駆け出した。


「ソフィア、あとで石竜に乗ったら、魔法で撃ち落とされないよう石竜を守ってくれ。できるか?」荒道一狼は教皇であるソフィアにも命令を飛ばした。


「任せて!」ソフィアはきっぱりと答えた。


「よし、みんな聞け――」


ドン!!!


雨間刻が向かった方角から轟音が響いた。


全員の表情が一気に険しくなった。


雨間刻は後方宙返りで大広間へ飛び戻ると、隠し扉へ狙いを定めて槍を投げつけた!


一人のドイツ兵がちょうど飛び出してきたところを、飛来した槍に撃ち抜かれて倒れた。


「奴ら、鐘塔の下層から侵入してきたぞ!」雨間刻が焦った声を上げた。


そのとき、扉脇の窓が叩き割られ、全員はすぐさま左右の石柱の陰へ身を隠した。


ドイツ軍の魔導士部隊が大広間へなだれ込み、慎重に奥へ進む。焼かれている書類を見つけると、すぐに水魔法を浴びせて火を消し始めた。。


荒道一狼が先手を打った。銀色の炎をまとって最後尾の源魔師へ突進し、片手で頭をつかんで壁へ叩きつける。


ドガン!!! 石壁に亀裂が走り、源魔師は頭から血を流し、目から火花を散らした。


荒道一狼は相手を背負い投げで宙高く放り上げると、自らも力強く跳躍した。そして上から渾身の拳を腰へ叩き込み、源魔師の身体を腰からくの字にへし折った。


大広間での戦闘はさらに激しさを増していた。


ソフィアの祝福を受けた柑々は魔力を大幅に増し、大量の鏡の盾で源魔師たちを包囲する。そこへ雨間刻が飛び込み、敵を次々と八つ裂きにした。


しかし、扉脇の割れた窓からドイツ兵が次々となだれ込んでくる。


荒道一狼は窓際へ急行し、飛び膝蹴りで一人の頭を粉砕した。反対側では柑々が猛烈な火力で敵を押さえ込む。


「最後まで立てこもっている現地民どもを見つけたぞ!!」


背後の隠し扉からも数人のドイツ兵が現れ、問答無用で魔法を放ったが、ソフィアが金色の盾ですべてはじき返した。


大広間は一瞬で色鮮やかな魔法の光に満たされた。シャンデリアは大きく傾き、飾り窓は砕け散り、石壁も崩れ、無傷の煉瓦など一つも残っていなかった。


荒道一狼はもはや敵を押さえきれず、柑々の鏡像体も次々と粉砕されていく。雨間刻も敵の動きを追いきれなくなり、ソフィアはその場から動くことさえ難しくなった。


ドン!


領主の間の鉄扉が激しく叩かれた。敵軍が扉を破ろうとしている!!


「火霊の触手!」


荒道一狼は炎の触手で源魔師をつかみ、爆発とともに壁際へ叩き飛ばした。


源魔師が反撃の火球を放つ。荒道一狼は避けることなく片手で火球を握り潰し、その隙に一気に踏み込んだ。相手の喉をつかむと、ゴキリと首をへし折る。


両手を血に染めた荒道一狼がゆっくり振り返ると、数人のドイツ兵が大広間で雨間刻から逃げ回っていた。


「固まっていなければ、こいつらの威力は半減する……。よし……来い……」


荒道一狼は深く腰を落とした。全身に刻まれた経文が橙赤色へ変わっていく。


大広間に橙色の光が走った――


ドン!


一人のドイツ兵が一瞬で肉塊へ変わり、次の瞬間には荒道一狼が別のドイツ兵の隣へ移動していた。


「ようこそ……俺たちのサーバーへ……」


ドドドドドドドドドン!!


荒道一狼は橙色の猛獣と化して大広間を蹂躙し、逃げ場を失ったドイツ軍の魔導士を一人残らず殲滅した。


荒道一狼はすぐに過負荷を解除し、その場に座り込んで水を飲みながら息を整えた。

「翼騎兵が……来るまで、あと……」


「およそ十分……」雨間刻が答えた。


鉄扉には次々と亀裂が走っている。敵軍が扉を破って一斉になだれ込めば、もう守れる場所はない。そのまま屋上まで追い立てられ、翼騎兵も着陸できなくなる。


「どうすればいいの?!」柑々が怯えた声で尋ねた。


「柑々とソフィアは防御に徹するしかない。こちらは火力が足りない。雨間刻はスキルを使わなければ源魔師を倒せないが……使えば動けなくなる……」

荒道一狼は必死に思考を巡らせ、一つの結論に至った。この地形で機動力を活かして源魔師を倒せるのは、自分しかいない。


守り切れるはずがない……。誰かが敵を足止めしなければ……。


「え?」怯えていた柑々は、荒道一狼が自分を見つめていることに気づいた。


……


「何をやってるのよ、まだ上がってこないの?!」

キティは、ドイツ人プレイヤーがすでに教皇都市の大半を制圧しているのを見て、翼騎兵が時間どおり到着できるのかと気が気ではなかった。


そのとき、遠方から二頭の小さな黒馬が飛んでくるのが見えた。影の旅団の翼騎兵だ!


……


バン! 屋上の木扉が蹴り開けられた。


雨間刻が意識を失った柑々を抱えて駆けてくる。そのすぐ後ろにはソフィアが続いていた。


「荒道一狼は?」キティが尋ねた。


ソフィアの表情が曇った。


雨間刻は柑々を下ろすと、大旗を振って翼騎兵へ合図を送った。


……


ドガン!!!!!!


領主の間の鉄板で補強された木製扉が、ついにドイツ軍によって破壊された!


大勢のドイツ兵が隊列を整え、大広間へ攻め込んでくる。その先頭を、聖杖を手にした灰色のローブ姿の聖女がゆっくりと進んでいた。四将の一人、パーカーだ!


崩れ果てた大広間は銀色の月光に照らされて青白く染まり、壁に残る血痕をいっそう鮮やかに浮かび上がらせていた。


全身を血に染めた悪魔が、月光を背負って教皇の玉座に腰掛け、ドイツ人プレイヤーたちを待ち受けていた。


「Tapfer, aber dumm.(勇敢だが愚か)」パーカーが無表情で告げた。


荒道一狼は、柑々が手ずから焼いた最後のクッキーを口に運び、ゆっくりと味わってから黙って立ち上がった。


荒道一狼は冷笑を浮かべた。身体から禍々しい赤い光が燃え上がり、画面を指先で軽く押す。


【システムメッセージ: オフライン状態として表示されました】

【警告: フレンド転送システムが使用できなくなります】


「さあ、一緒にパーティーを始めようぜ……」

……



石竜は冷たい雲を突き抜け、殺し合いの音は次第に遠ざかっていった。


銀色の月が空の彼方に寂しく浮かび、ムー大陸を哀しげな青に染めている。


生き残った者たちは、大切な何かを失ったような気持ちだった。まるで体の一部が今も教皇都市に取り残され、連れて帰ることができなかったかのように。


誰も言葉を発さず、重苦しい思いを抱えたままハゲグの領空へ入った。


百基を超える小型砲台が即座に石竜へ狙いを定めたが、教皇都市から逃れてきた避難民だと確認されると、ようやく警戒が解かれた。


ソフィアたちは、無事にハゲグへたどり着いた。


…


「ソフィア!」コリンが中央庭園でソフィアを出迎えた。


ソフィアが竜の背から滑り降りると、すぐにパンと温かい飲み物が差し出された。


小さなカップに入った熱い茶は、手のひらが焼けそうなほどだった。それでも、恐怖が抜けきらず魂まで抜け落ちたようなソフィアは、何の反応も示さない。


「ソフィア……もう大丈夫だ」コリンはソフィアを強く抱き締めた。


「うっ……うぅ……うああああああっ!!!!!!!」


ソフィアはついに堪えきれなくなり、コリンの胸に崩れ落ちて泣き叫んだ。


雨間刻は柑々を抱えて竜の背から降りると、そっと芝生の上に寝かせた。


白い月明かりを浴びた柑々は、地上に舞い降りた天使のようだった。両目を静かに閉じて眠るその美しさに、誰もが息を呑み、起こすことさえためらってしまう。


雨間刻は柑々を見つめた。彼女はもう、すべてを失ってしまった……。


「柑々に、このゲームへの未練はまだあるのだろうか……」


「今がチャンスじゃない。麻酔をかけてあげようか?」キティは冗談めかして言いながら、ブーツのつま先で柑々のチャイナドレスの裾を蹴り上げ、白く滑らかな脚を露わにした。


雨間刻はキティをはたき、怒りを込めて睨みつけた。


「俺は柑々を傷つけたりしない……それが俺の誓いだ」


「ちっ、ただの冗談よ。つまらない男ね」キティは不機嫌そうに冷ややかな視線を浴びせ、その場を立ち去った。


雨間刻は心の中で問いかけずにはいられなかった。もし彼女が選ぶとしたら、その相手は誰なのだろう?


...


三十分前の教皇都市――


バキッ! 鐘楼の大広間を塞ぐ装甲木扉に亀裂が走り始め、隙間から敵の武器がちらついた。


「翼騎兵が到着するまで、あとどれくらいだ!」荒道一狼が尋ねた。


「10分だ!」雨間刻が即座に答えた。


荒道一狼は黙り込み、深く考えを巡らせた。


「大聖堂にはもう聖職者がいません。神の恩寵による加護も、ほとんど消えています。おそらく、複数の源魔師の攻撃を防ぐことはできません……」ソフィアが緊張した様子で告げた。


「柑々、『千重幻影』というスキルは持っているか?」荒道一狼が尋ねた。


「千重幻影? 聞いたことないけど……」柑々は眉をひそめ、スキル一覧を探したが、その技は見つからなかった。


「これのことだ……」荒道一狼は柑々のそばまで歩み寄ると、ゴッ、と後頭部へ拳を叩き込んだ。柑々は瞬く間に視界が暗転し、その場に倒れて気を失った。


全員が驚いたものの、荒道一狼に何か策があるのだと悟った。


「雨間刻、お前は柑々のために死ねるか?」荒道一狼が重々しく尋ねた。月明かりの下、その顔からはわずかに残っていた血の気さえ消えていた。


「どんな計画なんだ……」


雨間刻は高塔に残って柑々を守ると決めた時から、命を捨てる覚悟を固めていた。だが、まさかその日がすぐに訪れるとは思ってもいなかった。


「俺たち二人のうち、どちらか一人がここに残らなければならない」荒道一狼は苦笑した。


「また俺を捨て駒にするつもりか?! 俺はお前の命令なんか聞かないぞ」雨間刻が憤然と言い放った。


荒道一狼は冷笑を浮かべ、何も答えなかった。


「最後の瞬間まで粘ってから塔の屋上へ逃げればいいでしょう?!」全員で無事に逃げ切りたいソフィアは、焦りのあまり涙を浮かべた。


「もしドイツ軍が屋上まで追ってきたら、石竜は図体が大きすぎて攻撃をかわせず、撃ち落とされる。だから大広間で奴らを足止めしなければならない……」荒道一狼は眉をひそめて言うと、怒りで真っ赤に血走った目を雨間刻へ向けた。


雨間刻も一歩も引かず、荒道一狼を睨み返した。


「俺がどれほどお前をぶち殺したいと思っているか、分かるか……。だが、恋愛に善悪なんてない。だから俺は、お前が柑々を追いかけることを受け入れ、ずっと彼女自身に自由に決めさせて、一度も口を出さなかったんだ」荒道一狼は最悪のタイミングで昔の話を蒸し返した。二人は離れたまま火花を散らし、今にも殴り合いを始めそうだった。


「二人とも、やめ――」ソフィアが苛立たしげに叫んだ。


荒道一狼は腕を伸ばし、雨間刻とソフィアを激しく指差した。


「これはお前たちのためじゃない。柑々のためだ! 分かったか?!」


ドンッ!!! 鉄木の扉がわずかに突き破られ、ドイツ軍の指が隙間からねじ込まれた。


ソフィアと雨間刻は思わず一歩後ずさったが、荒道一狼は意にも介さなかった。


「さっき柑々のために犠牲になると約束しただろう! 責任を持て、分かったか?!」荒道一狼が雨間刻に向かって怒鳴りつけた。


「は……あ、当たり前だ……」


片やドイツ軍、片や荒道一狼。雨間刻は両方を同時に相手にすることなどできず、しどろもどろに答えた。


「柑々を守れ! 男なら責任を果たせ、分かったか?!」荒道一狼は興奮のあまり雨間刻の両腕を掴み、力任せに揺さぶった。


ソフィアと雨間刻は怪訝そうに荒道一狼を見つめた。


「飛び立ったら、すぐに高度を上げて砲撃を避けろ……できるだけ雲を利用して身を隠すんだ……」荒道一狼はそう言いながら柑々を抱き上げ、一枚の小さな紙を彼女の帯へ差し込んだ。


「階段は安全です!」ソフィアが慌てて隠し扉を確認しに走った。今のところ、敵はまだ侵入してきていない。


一行は隠し扉へ走ったが、荒道一狼は突然足を止めた。


「彼女はまだ、現実で俺とのデートを受け入れてくれていない……俺はまだ勝っていないし、お前もまだ負けていない。だが、お前の挑戦は受けて立つ」荒道一狼は微笑み、眠っている柑々の顔を見つめながら言った。


「こんな時に何を気取ってるんだ?!」雨間刻が焦って声を上げた。


荒道一狼が柑々を差し出すと、雨間刻は待ち構えていたかのように急いで腰を屈め、両腕で受け止めた。


「5分……長くても6分は奴らを食い止める。なら、お前たちには竜の背に登って飛び立つまで10分ほどある。教皇都市から安全に逃げるには十分だ」荒道一狼は唾を呑み込んで言った。


「あなたは逃げないの?!」ソフィアは愕然とした。


「早く行け……」荒道一狼は静かに扉を閉めようとしたが、雨間刻が手を伸ばして押さえた。


「この蜂蜜クッキー……黒い森へ出陣する前に、柑々が俺にくれたんだ。デートに誘ったが、お前のせいで断られた……このクッキーは、お前が食え。柑々は俺が必ず守る」雨間刻は柑々が焼いたクッキーを荒道一狼へ譲った。


荒道一狼は驚きながらクッキーを受け取り、不意に胸の奥が温かくなった。


「跪け!」ソフィアが突然、荒道一狼に向かって怒鳴った。


「もう行け、お嬢ちゃん……」荒道一狼は困ったように苦笑し、ゆっくりと扉を閉めていく。


「ひざまずいて! もう時間がないの!!!」ソフィアが再び怒鳴った。


「何なんだよ……」荒道一狼は訳も分からないまま、ひざまずいた。


ソフィアは手のひらを開き、目を閉じて祈りを唱えた。


「教皇ソフィアはラロの名のもとにこの者荒道一狼が気高い人柄を持ち己を捨てて人を救い善行を積み重ねたことを証しここに聖教団騎士長へ任じ引き続き神に仕えることを命じます」ソフィアは焦りのあまり、すべての言葉を一息でまくし立てた。


【称号:聖教団騎士長を受諾しますか?(Y/N)】


荒道一狼は目を見開き、選択することができなかった。


「押して! 聖教団騎士長には神官用のスキルページがあるの。疲労度の消耗を抑えるスキルも入っているわ!」ソフィアが焦った声で急かした。


Y。


【システムメッセージ:聖教団騎士長になりました】

【システムメッセージ:新しいスキルページが追加されました。ご確認ください】


ソフィアを包む聖なる光が突然弱まった。異端者を聖教団騎士長に任じたせいだ……。


荒道一狼がスキルページを開くと、大量の回復スキルが並んでいた。だが、彼の魔力では二つ使うのが限界だった。


「幸運を……」ソフィアは螺旋階段を駆け上がった。


雨間刻は荒道一狼と頷き合い、隠し扉をゆっくりと閉じた。


荒道一狼は蜂蜜クッキーを手に王座へ腰を下ろし、鉄木の扉が徐々に炎を上げ、歪んでいくのを眺めた。


「俺は一体、何をしてるんだ……」荒道一狼は誰もいない大広間で物思いに沈み、袋を開けてクッキーを一口だけかじった。


もちろん、柑々が焼いたものだ。甘すぎる。


「英雄気取り……か?」


気持ちがふっと軽くなった荒道一狼は、今度は大口でクッキーを頬張った。疲労度が全回復する。


ドォン!!!


ついに大扉がドイツ軍によって爆破され、白加が魔導士たちを率いて大広間へ入ってきた。


「さあ、一緒にパーティーを始めようぜ……」荒道一狼は最後のクッキーを噛み砕き、最も破壊力の高い赤の過負荷状態へ入った。

...



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