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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第三十八章——百賢始動
352/450

351 抗いの果て (R15)

本サーバー連合軍は黒い森の決戦で次第に劣勢へ追い込まれていた。

その状況を察したアンドリアは危険を承知で戦場を離れ、ドイツ軍の転移門を奇襲することを決意した……


※本話には残酷な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。



黒い森の決戦は白熱の一途をたどっていた。


連合軍はありとあらゆる手を尽くして攻め立てるが、ドイツ人プレイヤーたちは地面に根を張ったかのように一歩も退かず、双方は前線で壮絶な死闘を繰り広げていた。


だが、かろうじて保たれていた戦線も、ついに崩れ始める……


火野良と雨間刻は互いを援護しながらドイツ軍の陣へ突入することに成功し、害虫を駆除するかのように魔導士たちを狩り立てた。


しかし、二人の前に突如として炎の壁が立ちはだかった。


「土着最強の戦士、火野良……お前が西城勇より強いか、見せてもらおう……」

和也がドイツ軍の陣からゆっくりと姿を現した。


雨間刻は問答無用で駆け出し、一気に和也の懐へ飛び込んだ。


「待て、雨間刻! そいつは――」

火野良が止める間もなく、雨間刻は研ぎ澄まされた和也の体術によって腕をつかまれた。


「なにっ!?」雨間刻は源魔師(ソース・メイジ)がこれほど素早いとは思わず、すぐさま力任せに振りほどくと、後退して距離を取った。


「足運びがなっていない!」

和也は乱戦のさなか、巧みに雨間刻の軸足を払って体勢を崩し、掌に雷の槍を呼び出すと、勢いよく突き刺した。


「俺の仲間に手を出すなあ!」

火野良は間一髪で大剣を差し入れ、雨間刻を攻撃の軌道から跳ね飛ばした。


バチバチバチバチ――ドン!!!!!!!


地面から凄まじい電流が噴き上がり、幾重もの電撃を浴びた火野良は身動きが取れなくなった。「ぐああっ!!」


「さっきは邪魔が入ったが……これで続きを始められる……」オットーが再び大鎌を担いで姿を現した。


「ここは任せたぞ、オットー大将閣下」


和也は負傷した火野良をオットーに任せ、自分はすでに人混みへ逃げ込んだ雨間刻を追って仕留めにかかった。


「いったい……お前たちはどこまで強いんだ……。魔導士の体術まで、俺たち前衛を上回るなんて……あり得ない……」

火野良は大剣を杖代わりにして体を支え、息を切らしていた。


オットーは攻撃せず、火野良が再び立ち上がるのを辛抱強く待つと、大鎌を突き出した。

「来い、最強の戦士。ここで俺がお前を倒す」


「面白い!!!」火野良は大剣を振り上げ、そのまま斬りかかった。


ガキィン!!


二人の暴君が再び激突した。大剣と大鎌が激しく交錯し、一撃ごとに互いの命を狙っていた。


火野良はまだ電撃から完全には回復しておらず、動きがわずかに鈍っていた。オットーはその隙を見逃さず、瞬時に大鎌を逆手に跳ね上げて火野良の腕から力を奪うと、さらに一歩踏み込み、もう一方の大鎌を振り上げて斜めに振り下ろした!


ザシュッ! 血飛沫が舞い散った……。


火野良は左肩から右脇腹まで切り裂かれ、二歩後ずさった末、ついに倒れた。


【警告: 致命な出血 HP全損まで残り600秒】


「火野良ギルドマスター!!」

影の旅団の全員が驚愕し、一斉に猛攻を仕掛けてオットーを退かせると、意識を失った火野良を前線から引きずり出した。


和也は大軍の中を縫うように進み、自分が雨間刻にひそかに狙われていることには気づいていなかった。


「くそっ、確率なんか信じるんじゃなかった……」

雨間刻はクリティカルの魔鈴を必死に振り続けていたが、いつまで経ってもクリティカルを引き当てられずにいた。


和也は鈴の音に気づき、ようやく音を辿って雨間刻を見つけた。その瞬間――


チリンッ――クリティカルの魔鈴が発動した。


「死ねえ!!! 源魔師!!!」

雨間刻は右腕に力を込め、黒い槍を全力で投げつけた。


黒い槍は、たまたま後ろへ下がったドイツ人プレイヤーの頭部を貫き、その場で絶命させた。それでも勢いは衰えず、まっすぐ和也の胸へ飛んでいく。


「くそっ……来い!」

和也は後方の仲間に当たるのを恐れ、かわさないことを決めると、飛んでくる槍の軌道を見極めて両手で受け止めた。


「氷結術!」和也は自分もろとも黒い槍を氷漬けにした。


だが、雨間刻の力は和也の想像をはるかに超えていた。黒い槍はザシュッと音を立てて体に突き刺さり、HPゲージが瞬く間に赤く染まり、あと一歩で即死するところまで追い込まれた。


「早く和也を救い出せ!!」

ドイツ軍はすぐさま和也を陣の中へ引きずり戻し、治療を始めた。


……


一方、グズの城への奇襲――


「自分たちのサーバーへ帰れ!! 天虹衝撃!!」アンドリアは全身の力を振り絞り、転移門へ体当たりした。


「位相シフト……」


ドン!!!


アンドリアは硬い鋼鉄の壁に激突した。顔を上げると、ドイツ軍の守魂衛たちが転送で戻っており、盾の壁を築いて目の前に立ちはだかっていた。


「痛い……くそっ……」アンドリアの全身を激しい痛みが走り続けた。


転移門は守魂衛たちのすぐ後ろにあり、あと数歩の距離しかなかった!


「こうなったら、やってやる!!!!!」アンドリアはなりふり構わず小さな騎兵盾を掲げ、全身の力でドイツ軍の鋼鉄の防衛線を突破しようとした。


「勇敢な娘だ」

ビスマルクが突然、守魂衛の背後から姿を現し、微笑みながら言った。


「そんな……」

アンドリアの心は鉄の塊のように重く沈み、胸に抱いていた希望も地の底へ沈んでいった。


この敵には……勝てない。


「だが、勇気だけでは実力差を埋められない……さらばだ」

絶望の化身と化したビスマルクは、アンドリアへ向けて聖樹の杖を掲げた。


バチィッ!!!! プラットフォーム全体が雷光に包まれた。


アンドリアは立て続けに電撃を浴び、地面に倒れて麻痺した。


転移門まであと数メートルしかない。それでも、その距離は銀河の彼方ほど遠かった。


内側のピラミッドは静まり返った……。アンドリア騎士団の奇襲は失敗に終わり、全員が戦死するか捕虜となった。


ビスマルクがゆっくりとプラットフォームの端へ戻ると、ドイツ軍は捕虜たちを連れてきた。


ビスマルクは長杖を収め、首を傾げながらアンドリアをじっくり観察した。


アンドリアは死ぬ時が来たことを悟りながらも、なお黒い森の主戦場を案じていた。


ビスマルクが手招きすると、一人が階段を上ってプラットフォームへ姿を現した――春野玄だった。


ドイツ軍はアンドリアを丁重に立たせたが、その顔に笑みはなかった。


「Ist sie die Gildenmeisterin von Silberdrachen?」ビスマルクは春野玄にドイツ語で尋ねた。


「彼は……あなたが銀龍の刻印のギルマスなのか、と聞いている」春野玄は慌てて自分のメモをめくりながら尋ねた。


「お前……この裏切り者め!!!!!!!」


春野玄が本サーバーのプレイヤーだったと知ったアンドリアは、怒りを爆発させた。


そばにいた守魂衛がアンドリアの腹部を殴りつけると、彼女は息を詰まらせ、己が囚われの身となった現実を突きつけられた。


「そうだ……私が銀龍の刻印のギルマス……アンドリアだ……」

アンドリアは誇らしげに顎を上げ、少しも敗者らしい態度を見せなかった。


ビスマルクは微笑みながら、アンドリアへ歩み寄った。


「Andoria … du wirst öffentlich hingerichtet.」

ビスマルクがそう告げると、春野玄の顔色が変わった。


「彼はなんて……」疲れ切ったアンドリアが息を切らしながら尋ねた。


「あなたは……公開処刑される」春野玄はうつむいて答えた。


「……」


……


黒い森の激戦地――


鉄牛の群れが突如としてKanatheonの陣へ突入し、その部隊を中央から分断して南北二つに切り離した。


Kanatheonは前後の部隊が連携できなくなり、陣形を大きく乱した。


【エリア放送: 銀龍の刻印のギルマスは敗北した。これより公開処刑を行う】


ドイツ軍は再びアイテムを使用した。


二頭の石竜が広範囲の木々をなぎ倒し、ドイツ軍の陣の後方へ降り立った。


ビスマルクが親衛隊を率いて黒い森の戦場へ到着した。


激しい戦闘が瞬時に止まった。連合軍が石竜を見上げると、アンドリアと数人の翼騎兵が、石竜の背に立てられた木柱へ縛りつけられていた。


「嘘だ……」ノクスは驚きのあまり武器を取り落とした。


源魔師が一人目の翼騎兵へ火を放った。


「ぐあああああああああ!!!!!!!!!!!」その翼騎兵は瞬く間に炎へ呑み込まれ、激しくもがき続けた。


続いて二人目。そして次は、アンドリアだった……。


「ごめんなさい……みんな……私は失敗した……」

全身傷だらけのアンドリアが、連合軍へ謝った。


アンドリアの涙がこぼれ落ちると、本サーバー連合軍は自分たちの敗北を悟り、戦意を失った。


源魔師がアンドリアの背後に立ち、ゆっくりと掌を開いた。


「アンドリアに触れるなあああ!!!」ノクスは声の限りに咆哮し、自分の体よりも巨大な分銅を取り出して天秤へ投げ載せた。


「秤魂者(しょうこんしゃ)の状態異常だ……」石竜の近くにいたドイツ人プレイヤーたちが、一斉に激しく嘔吐した。


「アンドリア様!!!!!!」銀龍の刻印の幹部たちの一部が決死の突撃を開始し、ドイツ軍の手からアンドリアを救い出そうとした。


「まだ降伏しないのか……全員殺せ」ビスマルクは将軍たちへ向けてうなずいた。


「一人も生かすな!」


命令がドイツ軍の中に響き渡り、再び攻撃が始まった。銀龍の刻印のメンバーが次々と倒されていく。


「逃げろ……逃げろおお!!!」

「俺たちの負けだ!!」


すでに戦意を失っていた連合軍は、抵抗する銀龍の刻印がドイツ軍に容赦なく殺されていくのを目にして恐怖に駆られ、ついに敗走を始めた。


アンドリアの隣に捕らえられていた男女二人の翼騎兵は、自分たちのギルドメンバーが血まみれになって戦う姿を目にした。しかも、二人には護心石がない……。


「銀龍の刻印……万歳!!」


二人は同時に過負荷を発動し、自分たちを縛っていた縄を引きちぎると、それぞれ飛竜を呼び出した。女の翼騎兵がアンドリアを抱えて飛び立ち、男もその後を追った。


ビスマルクは銀龍の刻印の者たちがまだ諦めておらず、しかも過負荷で逃げ出すとは思っていなかった。すぐさま魔導士たちへ一斉射撃を命じた。


数百もの魔法が流星のように後を追った。


「来いよおおお!!!!!」男は飛竜を反転させ、女の翼騎兵をかばうように立ちはだかった。飛竜は竜翼を大きく広げてすべての魔法を受け止め、腹を引き裂かれ、全身を氷の棘に貫かれた。男自身も致命傷を負いながら、瀕死の飛竜を必死に操り続けた。


それでも瀕死の重傷を負った飛竜を必死に操り続け、女の翼騎兵が次第に遠ざかるのを見届けて、ようやく笑みを浮かべた。


「まさか……こんな結末になるとはな……」


ドン!!!!


男の翼騎兵は上空で爆散し、肉片となって群衆の中へ降り注いだ。


「逃げろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」


アンドリアが死の淵から逃れたことで、連合軍には再び生き延びようとする意志が燃え上がった。それと同時に、巨大な波のような恐怖が押し寄せた。


「うわあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


戦線は完全に崩壊し、銀龍の刻印は南の紅蓮山へ逃走した。分断されたKanatheonは一隊が北へ、もう一隊が東へ逃げ、他のギルドは教皇都市を目指した。


ドイツ軍の将軍たちは、それぞれ本サーバーのプレイヤーを追撃した。


敗走は雪崩のように広がった。本サーバー連合軍には立ち止まって部隊を立て直す時間すらなく、追い立てられるまま散り散りになっていった。


ドイツ人プレイヤーとの決戦は――完全な敗北に終わった。


「和也、お前が提案した目標は教皇都市だったな?」

本サーバーのプレイヤーの死体で埋め尽くされた黒い森を眺めながら、ビスマルクは満足そうにうなずいて尋ねた。


「はい、元首」


「では……今すぐ出発しよう」


ビスマルクと和也は大部隊を率いて教皇都市へ進軍し……侵攻の最終段階――教皇狩りを実行に移した。


……


「止まれ!!!」ソフィアは援軍を率いて黒い森の外れへ到着した。各ギルドの者たちが入り乱れ、尻尾を巻いて必死に逃げてくる姿を見て、戦況がまずいことを悟った。


「まずい! 早く飛び乗れ! ニフェトのところへ急がないと!」

桐司は驚き、慌てて石竜を呼び出すと、加奈と一樹を乗せて北東へ向かい、ニフェトを捜しに行った。


「和也……あいつらを逃がすな」


ビスマルクは和也と少数の源魔師(ソース・メイジ)を送り出し、三人の追撃を命じた。


「はい、元首」和也は石竜の後を追い始めた……。


「さあ……我々の最後の仕事だ」ビスマルクが本サーバーの援軍を指さすと、魔導士たちは即座に魔砲を一斉に放った。


ドン!!!


ソフィアは片手で黄金の聖盾を呼び出して攻撃を防ぎ、初めて自分の目でドイツ軍を見た。

「あいつらが……魔王軍を演じている連中……」


「教皇自ら前線へ来るとは……」ビスマルクは教皇の登場に、わずかな警戒を見せた。


二人は離れた場所から互いを見つめた……。


この時、ドイツ軍はすでに連合軍を撃破し、再びビスマルクの軍旗のもとへ集結していた。


「教皇都市まで退く……」

ソフィアはドイツ軍の陣容を見ると、すぐに撤退を命じた。


「だが、黒い森の仲間たちは――」すぐに反対の声が上がった。


「もう誰も残っていない……退け……教皇都市での籠城に備えるんだ……」


……


教皇都市は大混乱に陥っていた。大聖堂から数百人の聖職者が西門へ駆けつけ、負傷者の手当てに追われていた。多くの者がひどい火傷を負い、皮膚はチーズのように溶け落ち、辺りには悲鳴と呻き声が満ちていた。


街中で負傷者の救助が続くなか……NPC衛兵が、教皇都市へゆっくりと進軍してくるドイツ軍を発見した。


「ソフィア……………」


街中のプレイヤーがソフィアのもとへ集まってきた。


ソフィアはすぐに味方の戦力を確認した。都市に残っているプレイヤーの大半は初心者で、戦力となるギルドはすべて決戦で敗れていた。これではドイツ軍の侵攻を食い止められない。


「射手は全員、城壁へ急げ! 今すぐ!!! 柑々、すべての炸薬を運び出して! たとえ都市を奪われても、必ず代償を払わせる!!!」


荒道一狼と柑々は慌ただしくNPC衛兵を動かし、籠城戦の準備を始めた。


「どうすればいい…………」ソフィアは年老いた修道女から贈られた木製のロザリオを強く握り締め、思い悩んだ。

……


加奈たち三人は石竜に乗り、草原の上空を北東へ飛んでいた、不安げに遠くを見渡した。


その時、数十本もの雷の槍が不意に眼下から飛来し、石竜の装甲を貫いた。


石竜は左翼に大きな損傷を受け、三人は着陸を余儀なくされた。


一樹はすぐさま巨大な泥沼を作り出し、和也と源魔師(ソース・メイジ)たちを閉じ込めた。


ところが、ドイツ軍は一斉に炎を放って泥沼を焼き干し、その中から歩いて出てきた。一樹の小細工はまるで通用しなかった。


「どうする……」

桐司は悪魔のような敵を前にして、攻撃を仕掛けることすらできなかった。


ドイツ軍は、最も戦闘力の高い加奈へ猛攻を仕掛けた。


加奈は数発の魔法を防ぐことに成功したものの、最後は大波のように押し寄せる念弾に打ち倒され、ドンッと後方へ吹き飛ばされた。


一樹と桐司はすぐさま加奈を抱き起こした。


「桐司……お前は加奈を抱えて先に逃げろ……」

一樹は眉をひそめながら言った。


「ザコ……あんたは五次職……あんたが先に行って……」

加奈は口元から血を流し、痛みに顔を歪めながら体を起こした。


「俺には護心石がある……心配するな。これ、お前にやるよ」


一樹はこんな危機的な状況でも加奈を口説くことを忘れず、小さな黄色い花を作り出して差し出した。


加奈は黄色い花を呆然と見つめ、慎重に指でつまみ上げた。


和也が巨大な雷の槍を呼び出し、他の源魔師たちも炎の魔法陣を展開して攻撃に備えた。


「加奈を無事にニフェトのところまで送り届けろおお!!!」

一樹は声の限りに叫び、手を掲げて宙へ浮かび上がると、竜巻へと姿を変え始めた。


しかし……誰も予想していなかったことが起きた――


和也が突然手を上げ、部下たちの攻撃を制止した。そして目を細め、目の前にいる小柄な加奈をじっと見つめた。

「加奈……」


桐司が加奈を抱え、走り出そうとした、その時――


「待って……」

加奈は顔を紙のように真っ白にし、桐司の胸へ手を当てた。


「お嬢さん、俺を運転手代わりにするのはやめてくれませんか!? こっちはニフェトのところへ急がないといけないんだよ!!!」桐司はこれ以上ないほど不満そうに足を止めた。


一樹も異様な空気に呑まれ、竜巻を解除してゆっくりと地面へ降りた。


和也は魔杖を収め、大股で加奈へ歩み寄った。


「おい! お前――」

一樹が怒鳴ると、和也は片手を振っただけで一樹を氷漬けにし、その動きを封じた。


「宮本加奈……」

和也は重々しくその名を口にした。


加奈は桐司の腕から抜け出し、地面へ飛び降りた。


「宮本……加奈?」


一樹も桐司も、加奈のフルネームを聞いたことがなかった。それよりも――なぜ敵がその名を知っている!?


「宮本和也……」

加奈は、その声だけで和也の正体に気づいていた。


和也は思わず笑みをこぼした。


「可愛い妹よ……まさか、こんな形で再会するとはな」和也は笑いながら言った。


「…………加奈?」一樹と桐司が恐る恐る尋ねた。


「こいつ……前に話した、何をやっても私より上だった兄貴……」加奈は黙ってうなずいた。


「はああああああああっ!?!?!?!?!?!?!」


え……っ、待って……

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