349 絶滅の円舞曲
本サーバー連合軍とドイツ軍の正面決戦が、ついに始まった。
数で勝る連合軍は、各方面からドイツ本隊へ迫っていく!
だが、包囲されているのは本当にドイツ軍なのか――?
同じ頃、主戦場の側翼では、ドイツ軍を援護するNPC海賊団が、彼らにとって天敵とも言える存在――ゴーストと遭遇していた。
「撃て……早く撃て!!!!」
パンパンパンパンパンパン!
密集した弾丸がヒュンヒュンヒュンヒュンと音を立て、無音で漂ってくるゴーストたちをすり抜けた。ゴーストたちは鬼の鎌を掲げ、無慈悲に振り下ろした。
「海賊たちは僕のゴーストに押さえ込まれている! 今のうちに突っ込め!!!」ノクスは小隊を率いて海賊陣線へ攻め込んだ。
現場は血みどろの惨状となった。海賊たちは発砲後、慌てて弾を込め直そうとしたが、バーサーカーたちは大斧を横なぎに振るい、彼らの腹を裂いて、大きな損害を与えた。
薄暗い黒の森は巨大な炉と化し、空いっぱいの梢が燃え上がっていた。
白灰色の燃えかすが熱気に押し上げられて宙へ舞い、それから柔らかな雪のようにゆっくりと降っていく……。
……
「天虹衝撃!!!」
アンドリアは翼騎兵を率いて空へ駆け上がり、全身に星火をまとって虹の光となり、ドイツ軍の後衛クラスへ急降下した。
「聖所の高壁!」パーカーは空へ向かって手のひらを開いた。
ドイツ軍の枢機卿たちは動きを揃え、金色の結界を呼び出して銀龍の刻印の空挺部隊を防いだ。
「絶対に砕きなさい!!! 私についてきて!!! 七倍速!」
アンドリアは敵陣へ飛び込み、防護結界を砕くと、氷竜を駆って乱戦へ突入した。
彼女は勇敢に戦ったが、瞬く間に幾重もの包囲に陥り、魔法が四方八方から飛んできた。
忠実な騎兵の一人が駆け寄り、彼女の代わりに致命的な氷刺を受け止め、次の瞬間、竜の背から墜落した。
「Kanatheonの部隊は?!」アンドリアは彼らが時間通りに到着していないことに気づいた。今の彼女には、もはや自力で逃げ出すことなど不可能だった。
「アンドリア様!! お気をつけください!!」次の魔法の波が再び襲いかかった。今度こそ逃げ場はなく、まさに直撃を受ける寸前、金色の結界が突然現れて彼らを守った。
「聖庇所!」
後方から鬨の声が沸き起こった。ついにKanatheonの主力が到着し、三方からの包囲攻撃の形ができあがっていた。同時に聖術でアンドリアの騎士団を守ったのだ。
「突撃だ!! 我が友たちよ!! ここで侵入してきた魔王を打ち破る!! 奴らを我らのサーバーから叩き出すぞ!!!」パシュスは前衛たちを率いて突撃し、ドイツ軍と激しくぶつかり合った。
連合軍は数百の死傷者を出しながら、ついにドイツ軍を包囲した。敵の完璧な円陣に、ほころびが生まれ始めていた。
あとは銀龍の刻印の大部隊が左翼から攻め込めば、四方包囲が完成する。
だが彼らには、一つ見落としがあった……。
……
「エデンの聖門!」「慈悲の涙!」「聖火浄化!」「聖母の祝福!」
ニフェトは一度も詠唱を途切れさせず、喉は乾ききって裂けそうだった。だが味方の劣勢はすでに明らかだった。
Kanatheonはもともと人数が多くない。ドイツ軍のテイマーを食い止めるために部隊を割いたことで、さらに戦力は薄くなり、二つの戦線のどちらでも敵を押し返せなくなっていた。
その混乱の中で、一つの冷徹な視線がすでに一樹を捉えていた……。
パン——
一本の注射器が、混乱する戦場の中からこっそり飛んできて、一樹に突き刺さった。
「しっかり働いてくれよ……ひひっ」
片眼鏡をかけ、大きな木箱を背負った茶髪の男が、静かにドイツ軍の仲間の背後へ下がった。彼こそ最後の大将、ヴェッカー――毒剤師の上位四次職、錬金術師だった。
「ザコ!! 大丈夫なの?!」加奈は大きく驚き、急いで一樹のそばへ駆け寄った。
「大丈夫だ」一樹は注射器を抜いたが、不調は感じていなかった。
「でも、あなた………」加奈は、一樹の身体が暗赤色に変わっているのを見て愕然とした。
「だい……じょうぶ………」彼の四肢が熱を帯び始めた。
「聖火浄化!」ニフェトは一樹を見て顔色を青くし、彼を浄化したが、効果はなかった。
「ザコ………」加奈は、一樹の両目が暗赤色に変わり、濃密な殺意が湧き上がっているのを見た。
【警告: 混乱状態 残り時間 05分】
「混乱状態に入った!!!」桐司は加奈の悲鳴を聞き、振り返って一樹の変化を見た。
一樹は群衆の中から突風を吹き出し、味方の薄い陣形を吹き散らした。テイマーたちはその隙を逃さず、再び攻勢を仕掛けた。
「撫霊聖触!」ニフェトが一樹の額を指さすと、彼の両目の暗赤色の光はすぐに薄れた。だが顔は歪み、凄まじい精神反動に襲われていた。
「ザコ!」加奈が一樹に触れようとしたが、ニフェトがそれを止めた。
「駄目………私はただ無理やり……彼の状態を押さえ込んでいるだけ。おそらくソフィアの教皇スキルでなければ助けられない」ニフェトは額いっぱいに汗を浮かべていた。一樹が、尋常ではない毒を受けたことは明らかだった。
……
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
「くそっ……どうしてドイツ軍の防衛線はまだあんなに固いんだ?!」ある戦士は苦労の末、ようやく一人の敵兵を倒した。だがその穴は、すぐに敵によって埋められた。
「おい!!! 自分の位置に気をつけろ!!!」隊友が慌てて叫んだ。
「何だ……まずい――」戦士は自分がすでに味方の陣線から離れていることに気づいていなかった。突然、複数の魔法を集中して浴びせられ、一瞬で灰となって戦死した。
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
「パシュス!! 俺たちは一度下がって立て直すべきです!!!」桐司は全身を血に染め、前線で奮戦しているパシュスのそばへ駆け込んで言った。
「だが、俺たちが撤退すれば、アンドリアへの支援がなくなる!」パシュスはニフェトのほうを振り返り、彼女が狂いかけた一樹を押さえ込んでいるのを見て、軽率に動けなかった。
ヴェッカーの毒針は、テイマーの一団よりも致命的だった。
一樹を放てば、彼は連合軍を吹き散らした後、ドイツプレイヤーに殺される。
一樹を放さなければ、Kanatheon全員が一人ずつ撃破される。
「凝氷術!」加奈はなりふり構わず黒外套をまとい、一樹を巨大な氷柱に閉じ込めた。
「加奈、それは危険すぎるでしょう?!」ニフェトは激怒した。銃弾と砲火が飛び交う戦場で黒外套をまとえば、味方と敵の両方から砲火を浴びることになり、間違いなく死ぬ。
「桐司! 私を教皇都市へ送って!」加奈は重力歪曲を使い、一樹を浮かせた。
「だが――」桐司はニフェトのそばを離れたくなかった。
「先に行け!」パシュスが急いで言った。
桐司は石竜を呼び出し、加奈と一樹を乗せて教皇都市へ戻らせ、戦場から離脱した。
「ニフェト! 俺のために安全な空間を作れ!!!」パシュスが叫んだ。
ニフェトが神杖を突き立てると、味方の足元に金色の聖陣が浮かび上がった。
「私の呼びかけに応えなさい、聖徒ガオファン!」
巨大なガオファンが突然現れ、白い蝋燭を手に頭を垂れて祈る。その神威が周囲の敵を押し退け、混乱する戦場に一つの安全地帯を切り開いた。
「行くぞ!」パシュスは即断し、Kanatheonを率いてその穴から撤退した。
「ふん……聖徒を召喚しただけでしょう……何がそんなに大したことなの……」
ドイツ軍の大将パーカーが冷たく言った。
……
「ここで奴らを食い止めろ!!!」雨間刻は影の旅団の精鋭部隊を率いて猛攻を仕掛けた。
わずか三十メートルほどの距離で、すでに何人もが灼熱の魔法射線に撃ち殺され、道中にはいくつもの死体が残された。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」どうにかドイツ軍に接近した前衛たちは、全力で武器を振るった。だがすべて氷の盾や泥沼に阻まれ、その直後、さらに恐ろしい魔法に呑み込まれた。
「来い、友よ!! あと少し前へ出れば勝てる!!」雨間刻は攻勢が止まったことに気づき、慌てて近くの友軍を鼓舞した。
「銀龍の刻印、参上!!!!!!!!!」
その時、ノクスが率いる大部隊がついに到着し、ドイツ軍への包囲を完成させた。
「パーカー大将閣下に報告。敵軍が我が方を包囲しました」ドイツ軍の伝令兵が混戦の中で報告した。
「よし、頃合いね……オットーに準備させなさい。全軍、敵を誘導地点へ引き込め!」パーカーは頷き、大声で命令を下した。
「了解です! 大将閣下!」全部隊を一斉に後退させたドイツ軍は、周囲へ大量の広域魔法を仕掛けた。
「危ない!!!」雨間刻はすぐに突撃を止めた。だが一部の連合軍には命令が届かず、狂ったように突っ込んでいった……。
ドドドドドド!
「うわああああああああ!!!!!!!!!」
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
彼らは一瞬で急速凍結されて氷柱となり、その後、数百発の念力弾に撃ち砕かれた。
連合軍は恐怖に駆られて慌てて足を止め、びっしりと敷かれた魔法罠の縁でかろうじて停止した。
……
ドイツ軍陣内、戦闘が最も激しい場所――。
「俺たちのサーバーから出ていけ!!!!」
火野良が重く斬り下ろすと、オットーは左右に引き、巨大な大鎌で彼の大剣を絡め取った。
双方は死力を尽くして力比べをした。火野良が限界を超えて力を振り絞っても、オットーとは互角だった。
「力は……悪くないな……だが、それでも……弱すぎる!」
オットーは突然さらに力を込め、火野良の大剣をゆっくりと持ち上げ、もう一本の鎌で反撃した。
「何という怪力だ?!」
火野良は相手が反撃できるとは思っておらず、間一髪で大剣を手放して後退するしかなかった。
「ふん……土着の最強戦士とやらも所詮――」
火光が一閃し――ドン!!!
火野良は突然グリフォンを召喚し、強靭な双爪でオットーを押さえつけた。
「まさか複合四次職とは……油断した……」オットーは巨大なグリフォンに押さえ込まれ、身動きが取れなくなった。
「死ね!!!」
火野良は巨大な騎槍に持ち替え、オットーへ勢いよく突き下ろした――。
パシッ――オットーはなんと、両手で彼の巨大なランスを掴み止めた。
「複合職など……見栄えのいい見世物にすぎん……実戦の価値などない……」オットーは全身を震わせ、全力で火野良を逆に持ち上げた。
「まずい!」
火野良は一瞬、グリフォンの手綱を掴み損ねた――。
【警告: 騎乗生物の制御を失いました】
【システムメッセージ: 乗騎 グリフォン が回収されました 強制クールタイム 5分】
グリフォンは小さく鳴いて消え、火野良はそのまま落下した……。だが、オットーはすでに巨大鎌を握って彼を待ち構えていた……。
「来い……土着の最強戦士、火野――」
ヒュッ!
強烈な黒い槍が遠方から一直線に飛来し、正確にオットーの肩へ突き刺さった。
「助かった……恩に着る……」火野良はよろめきながら立ち上がり、それが雨間刻によるものだと気づいた。彼は一対一の矜持を捨てて、投げ槍でオットーを奇襲したのだ。
「オットー、そろそろよ!」パーカーが混戦の中から駆けつけた。
「ああ……来い」オットーは頷き、肩に刺さった黒い槍を引き抜いて、片手でへし折った。
「応えてください、聖女エリー!」パーカーが天へ手を掲げると、銀の法衣の聖女が突然ドイツ軍の陣中に立った。
オットーは聖女の掌へ跳び乗った。
「烈焔の輪!!」和也が狂ったように吼えた。
ドイツ軍全軍がほぼ同時に火の輪を呼び出し、戦場は突然、煉獄のような酷熱に包まれた。
「まずい……」連合軍は内心で危険を悟った。
「逃げて!!!!!!!!!」遠くにいたニフェトは聖女エリーの出現を見た瞬間、悲鳴を上げた。
「後退!!!」パシュスはすぐに命令を下した。アンドリアと火野良も戦闘に執着せず、全軍が後退した。
「早く逃げろ!!!」
オットーは聖女の掌の上で巨大鎌を抜き、身体を縄のようにねじった。
「死亡旋渦!」彼は四肢の力を抜き、聖女の掌の上で回転斬りを始めた。
聖女は突然腰を落として構え、オットーと同じ超巨大な魂の鎌を両手で握った。
「死亡旋渦………」聖女は、なんとオットーのスキルを複製した。
銀の魂鎌が猛烈に振るわれ、その刃が千もの火魔法陣を突き破り、一瞬で巨大な火の鎌へ変わった。
【システムメッセージ: フィールド効果により 火属性ダメージ3%追加】
【システムメッセージ: フィールド効果により 火属性ダメージ3%追加】
【システムメッセージ: フィールド効果により 火属性ダメージ3%追加】
【システムメッセージ: フィールド効果により 火属性ダメージ3%追加】
【システムメッセージ: フィールド効果により 火属性ダメージ3%追加】
【………】
「火神の円舞!!!」ドイツ軍が声を揃えて叫んだ。
ブォン………
巨大な火の鎌は、燃え盛る風車の刃のように戦場を水平に薙ぎ払った。空中に血煙と焔の残像を残した。
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー xxx HP残り0%】
【………】
連合軍の百人近くが瞬殺された。
生き残った者たちは、地獄のような光景を呆然と見つめていた。だがドイツ軍は止まらなかった……。
「反攻開始!!」
テイマー部隊が後方から駆けつけ、Kanatheonの残存部隊を包囲した。
「まずい!!! 俺について包囲を突破しろ!!!」パシュスは敗北が決定的になったことを即座に悟り、生き残ったメンバーを率いて逃走した。
戦況は一気に崩れた。しかも彼らはまだ、教皇都市が屍人に包囲されているという知らせを知らなかった……
……
前線は崩壊――だが、本当の絶望はまだ届いていない……




