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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第三十七章——夜のグズ潜入
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346 負け犬の矜持

本鯖最強ギルドの一角として名を馳せた羅刹教は、魔王に敗れ、領地も拠点も失った。

グズを追われた彼らは今、どこで、どのように生き延びているのだろうか……

翌日、教皇都市の宿――


「四人部屋を一つ欲しいんですが、個室風呂はありますか? 友達と一緒に、できるだけ早く疲労度を回復したいんです」数名のプレイヤーが狩りを終え、一時的な拠点としてここに泊まりに来ていた。


「申し訳ございません、お客様。そのタイプのお部屋はすでに満室でございます」メイドは微笑んで答えた。


「そんなわけないでしょ?! ここには百以上の部屋があるはずよ? 私たちは一部屋でいいのに!」女プレイヤーが文句を言った。


「お客様がよろしければ、八人部屋と十二人部屋の大部屋ならまだございます。ただし、お風呂は共用の大浴場をご利用いただく形になります」


「他人と風呂を共用するなんて絶対嫌!」女プレイヤーは不機嫌な顔をした。


「まあいいだろ……食糧を買う金を残したほうが現実的だ。普通の四人部屋も満室なのか?」男プレイヤーが興味深そうに尋ねた。


「そちらもございません。その部屋タイプはギルドが月単位で借り上げています」メイドは思わず甘い笑みを浮かべた。何しろ、大きな利益が入ったのだ。


「どこのギルド?」女プレイヤーが不満げに尋ねた。


「プライバシー保護のため、宿泊者様の情報はお伝えできません。申し訳ございませんね」


……


コンコン……。


「お客様、ご注文のお料理をお持ちしました」NPCメイドがローストチキンと新鮮なパンを二籠抱え、部屋へ入ってきた。


「ええ、テーブルに置いて」レナがうなずいて言った。


「ほかのお部屋のお食事も含めまして、合計九百十五竜貨になります。お客様、今お支払いはよろしいでしょうか?」メイドは料理を置いた後、レナに代金を請求した。


レナは眉をひそめ、半分ほど入った布袋を開いて、硬貨を一枚ずつ数えて出した。羊貨一枚分のチップさえ多く払わなかった。


【システムメッセージ: 宿屋のメイド(No.26)あなたへの好感度-1】


「ちっ……ケチくさい貧乏人が……」


メイドは小声で罵り、口を尖らせて去っていった。


同じ部屋の教徒たちはすぐにむさぼるように食べ始めた。


レナは鶏肉を一切れ裂き、パンを二つ取ってベッドのそばへ向かった。


「西城勇様、少し食べてください」彼女がベッドの帳をめくると、半身に黒い火傷痕を残した西城勇は壁のほうを向いたまま、何も答えなかった。彼の致命傷はすでに癒えており、残る火傷痕も回復職に処置してもらえば消える程度だった。


「西城勇様………」レナはそっと彼の肩を揺らした。


「腹は減っていない」西城勇は腕を上げ、レナを押しのけた。


「西城勇様……一口だけでも」レナは、西城勇はもう二日もゲーム内で何も口にしておらず、アバターは目に見えて痩せ細っていた。


「俺に構うな」彼は再びレナを押しのけた。


「西城勇様、私たちは新しい場所を見つけて、また発展していけばいいんです。気を落とさないでください……」レナは食べ物を置き、彼を慰めた。


「出ていけ、レナ……」


レナは困ったように首を横に振り、食べ物を拾い上げて窓辺に座り、食べ始めた。


コンコン――。


また誰かが扉を叩いた。


彼らはもう料理を頼んでいない。レナが不思議に思って扉を開けると、訪問者を見た瞬間、顔色が沈んだ。


「何の用ですか……」レナは扉を押さえ、敵意をむき出しにして言った。


他の教徒たちはすぐに食べ物を置き、彼女の背後に立った。


「西城勇はいるか?」火野良が、なんと部屋まで訪ねてきて尋ねた。


「何の用ですか?」レナは繰り返し、一歩前に出て鋭く言った。


火野良は衝突を避けるため、おとなしく後ろへ下がった。

「その日のことを知りたい……」


「どうやって私たちを見つけたの……」レナは、火野良がどうして羅刹教の行き先を知っていたのかを、より気にしていた。


「俺のギルドには夢葬者がいる。情報収集でも暗殺任務でも、どんな仕事も綺麗に片づける」火野良が言った。


「暗殺?! このクソ野郎!」レナは瞬時に盾を手に取って後退し、慌てて西城勇の様子を確認した。


彼はまだベッドに横たわっており、傷はなかった。


「安心しろ。揉め事を起こしに来たわけじゃない。西城勇の情報が必要だ」火野良は真剣に言った。


「何の情報ですか?」レナは警戒して尋ねた。


「彼が誰に……どうやって敗れたのかだ」火野良は真顔で尋ねた。


「私たちを笑いに来たんですか?!」レナは激怒した。


「Kanatheonと銀龍の刻印が総動員令を出した。おそらく全力を尽くして魔王を倒すつもりだ。俺には魔王の情報が必要なんだ」


「総動員令?! ……どうして私たちには来ていないの?」レナは驚いて尋ねた。


「知らない……君たちを刺激したくなかったのかもしれないな」火野良は肩をすくめて答えた。


「西城勇様は休んでいます。面会はできません」レナは西城勇が再び刺激を受けないよう、彼らの頼みを拒んだ。


「君は? レナ、君はあの場にいたはずだ。敵の情報を教えてくれ」火野良は機転を利かせ、情報収集の対象を切り替えて尋ねた。


「今すぐグズの城へ突っ込めば答えは分かります。お帰りください」レナは影の旅団に対してまだわだかまりがあり、すぐに拒絶した。


火野良は首を振ってため息をつき、片手を背中の後ろへ回して妙な手話を送った。


部屋の外にいた黒い影はその手話を見ると、姿を消した。


「西城勇はこのサーバー最強のプレイヤーの一人だ。だが俺は魔王の処刑ポスターを見た……敵がどうやって西城勇を重傷に追い込んだのか、俺は知る必要がある。サーバーの生死存亡に関わることだ。どうか情報を共有してほしい」火野良は必死に頼んだが、レナは揺らがなかった。


「入れてやれ………」部屋の中から西城勇の声がした。


「ですが――」レナはためらった。


「構わない……」西城勇は食卓に座り、一枚の白い紙を見つめていた――和也に敗れた後、跪いて命乞いした自分の処刑ポスターだった。


「西城勇様、この紙をどうやって手に入れたんですか?!」レナは大きく驚いた。彼女はギルドメンバー全員に、魔王が彼の降伏をポスターにした件を固く口止めし、この紙が西城勇の目に入らないよう徹底していた。


「やあ……」

いつの間にか、黒い霧の残滓をまとったキティが窓辺に腰掛け、何食わぬ顔でローストチキンをつまんでいた。


「彼女がその夢葬者だ。俺たちを責めないでくれ。西城勇は事態の深刻さを知る必要がある」火野良は、合図を見たキティに部屋へ潜入させ、和也の処刑ポスターを彼へ見せるよう命じていた。


「あなたたち、このクソ――」レナが激怒し、攻撃を仕掛けようとしたその時――。


「構わない、レナ……」西城勇は紙を置き、落ち着いた目で火野良を見た。


火野良は食卓に座り、彼と向かい合った。かつて競技場で見せた自信に満ちた眼差しは消え、今の彼の目には暗い影だけが沈んでいた。


「最強プレイヤー、火野良……何が知りたい?」西城勇が尋ねた。


「敵はどうやって羅刹教を落とした? 羅刹教には百人以上の兵がいる。君たちが山城に立てこもれば、敵も簡単には攻め落とせないはずだと俺は思っていた。奴らは大勢だったのか?」火野良が尋ねた。


「いや……来たのは数人の源魔師だけだ」西城勇は静かに答えた。


「数人だけだと?!」火野良は大きく驚いた。


「奴らは単身で乗り込んできて、俺との決闘を望んできた。俺は喜んで挑戦を受けた」西城勇が答えた。


「源魔師が………君と決闘? 狂信者のほうが本来は強いはずだ。源魔師は範囲魔法の火力に長けた職業だろう。まさか……単体高火力のスキルを突き詰めていたのか?」火野良は冷静さを保ちながら尋ねた。


「分からない……奴の魔杖は属性を自在に強化できる。攻撃は速くなったり遅くなったりした。俺の青い炎の腕も、中距離の優位があるはずなのに押し切れなかった。お前ならどう戦う?」西城勇は火野良に問い返した。


「できる限り接近する」火野良が答えた。


「正解だ……俺もそう考えた。だが、あいつの体術は暗殺者に劣らない。俺は一瞬の油断で喉を片手で押さえ込まれ、そのまま奴は複数の短距離魔法技を叩き込んできた。俺のHPは一瞬で底をついた……レナがいなければ………」西城勇が卓の縁を力任せに握り込むと、木材がミシリと音を立てて砕け、その顔に隠しきれない怒りがにじみ出た。


「そいつは……複合職なのか?」火野良は聞きながら背筋が冷えた。


西城勇は猛然と顔を上げ、絶望に染まった両目で火野良をまっすぐにらんだ。


「違う。奴は近接スキルを一つも使っていない! ただの純粋な源魔師だ!」西城勇はうなだれ、食卓を叩いて言った。


「あり得ない……なら、その体術は?!」火野良は驚愕した。もし複合職のプレイヤーではないのなら……。


「奴はもともとの体術反応がすでに高いということだ。システムが現実のデータをゲームへ取り込んでいる」西城勇は自分の推測を口にした。


部屋は死んだように静まり返った。人を殺し慣れているキティでさえ、驚きを隠せなかった。


「まさか……」


……


グズの城、魔王軍陣営――。


「オットー将軍、これは羅刹教から傍受した情報です」和也は一羽の伝書鳥を、山のような巨躯を持ち、二本の大鎌を背負った紫鉄甲の騎士。


「羅刹教は何人だ?」


オットーは小鳥を受け取り、鳥の脚に結ばれた密書を確認してから、ニフェトたちのサーバー地図を開いた。


「約百五十です」和也が答えた。


オットーは振り返って門を押し開けた。整然と隊列を組んだ五十人の黒衣の魔法職が、すぐに手を上げて敬礼した。


「始めるぞ……」オットーは大鎌を掲げて言った。


「キャロルとパーカーを待たないのですか?」和也が尋ねた。


「不要だ……十分足りる」オットーは答えた。


五十人で十分――その言葉は、果たして傲慢なのか……

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