342 終末の使者
「急げ!!」
西城勇は羅刹教の部隊を率いて紅蓮山へ引き返した。その区域はグズから一時間もかからない距離にあり、翼騎兵なら十分以内に飛んで到着できる。
グズの城が陥落したとなれば、彼らのギルド本部も危機に瀕していた。
「ニフェト……軍を集めて。三十分後、教皇都市に戻って集合する」アンドリアが突然言った。
「落ち着いて、アンドリア! 攻城戦はもう終わったの。グズの城は奪い返せない。魔王と戦っても、仲間の命を無駄にするだけよ!」ニフェトは慌ててアンドリアを止めようとした。
「拠点を落とされたのは、あんたたちのギルドじゃないものね……人ごとだと思って、気楽に言ってくれるじゃない!!」アンドリアは激怒し、すぐに飛竜を召喚してプラムスへ飛び去った。
残された百名余りのプレイヤーたちは、大聖堂の外の草原でひそひそと話し合い、魔王の実力について口々に議論した。
「どうするつもりだ、ニフェト」
「ニフェト、俺たちはこれからどうすればいい?」
「どこなら安全なんだ?!」
「銀K同盟は魔王に勝てるのか?」
「うちのギルドはハゲグに大きな屋敷を三つ買っているんだ。何か保証はあるのか?!」
数十もの質問が一気にニフェトへ押し寄せ、彼女を頭が真っ白になるほど追い詰めた。
「六口、あなたなら――」ニフェトは反射的に尋ねかけた。
Kanatheonの面々は暗い顔でうつむいた。副長の六口弥生は、もう消えていた。
ニフェトが六口をギルドから追放して以来、彼女は一度もログインしていない。
六口弥生を失って初めて、ニフェトは自分の両手を切り落とされたようなものだと気づいた。
各ギルドのギルマスたちは声をそろえてニフェトに対策を問い詰め、彼女はたちまち矢面に立たされた。
六口弥生の背後に隠れ、すべての残酷な決断を彼女に任せ、自分だけ清らかなふりをしていられた日々が、どれほど幸せで……どれほど幼稚だったのか、今になって思い知った。
「か……各王都の防衛を強化し、教皇都市周辺の巡回を増やします。魔王の軍勢の来襲に備えるためです」ニフェトは必死に六口弥生のやり方を思い出そうとした。
「それは普段の防衛体制だろ?! 今、魔王は一瞬でグズを落としたんだ。俺たちに必要なのは緊急対応策だぞ?!」多くの者がさらに詰め寄った。
ニフェトは懸命に考えようとした。だが、各ギルドのギルマスたちは明らかに納得していなかった。
三体の石竜が突然降下し、完全武装した者たちが何人も飛び降りてきた。
「ニフェト!! あなたの指示どおり、前哨基地の建設は完了しました。現在、ハゲグとヴィニフ宮殿の間は哨所でつながり、二つの王都の防衛システムは一本の線として連結されています。これからハゲグとプラムスの間の哨所建設も急がせます」古志が突然現れ、ニフェトに助け舟を出した。
彼はもともとパシュスとともに屍の群れと血戦を繰り広げていたが、ギルドの面々が同時に大聖堂へ現れたのを見て、ただ事ではないと悟った。そこで少数の精鋭を急いで引き抜き、大聖堂へ駆けつけてニフェトを支援したのだ。
ニフェトは言葉を失った。前哨基地の建設について、彼女は何も知らなかった。
「これは俺の案だ……分かっているふりをして、うなずいてください……」古志が彼女に耳打ちした。
ニフェトはすぐにうなずいた。
「前哨基地は役に立つのか?」他のギルマスたちはひそひそと話し合った。
「それは後で話します。プラムスも攻撃されています!」古志は慌てて話題をそらし、焦った口調で言った。
「プラムスも落ちたのか?!」草原は水を打ったように静まり返り、彼の答えを待った。
「まだです。ノクスが銀龍の刻印の守備軍とともに粘り強く抵抗しています。パシュスも援軍を率いて城外から連携し、敵を討っています。ただ、不死族の数があまりにも多く、掃討には人手が必要です」古志は各ギルマスに視線で助けを求めた。
彼らはすぐに古志の視線を避けた。
「銀K同盟は我々のサーバーの覇者だろう。莫大な税収を取っている以上、我々を守る責任があるはずだ!」ある禿頭のギルマスが、王都陥落への怒りをニフェトへぶつけた。
「相手は魔王です。普段の防衛とは違います」ニフェトはひどく理不尽に感じながら反論した。
「何が違う?! 君たちは総力をすべてロシアサーバーに注ぎ込んで、本サーバーにどれだけの時間を残していた?!」禿頭のギルマスは怒鳴った。
「魔王の侵攻は全サーバーの危機です。ギルド同士の争いとは当然違う! あなたたちにも故郷を守る責任があるはずだ」古志は前に出て、ニフェトを守った。
フッ!! 火野良が突然グリフォンを召喚した。
「余所者の侵略者どもが、俺の故郷で好き勝手するなど絶対に許さん…………」
彼は眉をひそめて怒り、影の旅団の部隊を率いてプラムスの城へ支援に向かった。
「教皇都市では気をつけろ……」
雨間刻は柑々に慌ただしく別れを告げ、大部隊について去っていった。
禿頭のギルマスは恥じ入るしかなかった。大半のギルドはそれぞれの利益のために散っていき、影の旅団に続いて銀K同盟を支援したのは、少数のギルドだけだった。
……
「前哨基地とはどういうことですか?!」ニフェトは慌てて尋ねた。
「あなたを助けるための嘘に決まっているでしょう。それより、なぜ皆さんは大聖堂へ戻ってきたのですか?!」古志は急いで尋ねた。
「グズの城が落ちました……」ニフェトは恥じ入るように言った。
「グズの城が落ちた?! プラムス中央要塞は一万を超える屍人に包囲攻撃されているんだぞ。魔王には、まだグズを落とす余力があったというのか?!」桐司は衝撃を受けて言った。
「ニフェト、何か考えはありますか?」古志は真剣に尋ねた。
「私は……私たちは防衛を強化しなければなりません」ニフェトには防衛しか思い浮かばなかった。だが、魔王を止めるために何ができるのかは、まったく分からなかった。
「すぐに各王都の間へ前線基地を築きましょう。そうすれば守備軍をより柔軟に配置できます。加えて、我々は全戦力を集め、魔都を攻略するべきです」古志の提案は、暗闇に差し込む一筋の光明のようにニフェトの心を救った。
「精霊女王・蕾と、彼女の隠れ住むエルフの集落にも、魔王との戦いへ加わってもらう必要があります」桐司も同調して言った。
「でも、彼女はとても頑固です……」ニフェトは蕾を説得できるか不安だった。
「真子が必要です……ですが、彼女はすでに音信不通です……」古志は重く言った。
「真子……全部、私のせいです……」ニフェトは、真子が六口弥生の件で自分を心底恨んでいるに違いないと分かっていた。
「カミコ、あなたは真子の代わりに、蕾を説得しに行けますか?」桐司が尋ねた。
「できる限りやってみます」カミコはうなずいた。
……
紅蓮山――
「余った財物はすぐにギルド倉庫へ入れて施錠しろ。城壁には守備部隊を常駐させる。ここの金を持って食糧を買い集めろ。長期の籠城戦に備えるんだ!」西城勇は二万竜貨を数名の信徒へ投げ渡し、周辺の村々へ急いで食糧を買い集めに行かせた。
「はい、西城教主!」
三人は金を受け取ると、すぐに駆け去った。
「西城勇様、私たちはムー大陸の他のギルドから遠く離れています。万が一包囲されたら、単独で守り切るのは難しいです!」レナはギルド本部に立ち、不安げに言った。
「紅蓮山は俺たちの家だ! レナ!」西城勇は不快そうに言った。
「私たちのギルドメンバーこそが本当の家です。ここの煉瓦一つ、瓦一枚ではありません!!!!」レナも、仲間たちと一緒に築いた羅刹山城を捨てたくはなかった。だが、それ以上に羅刹教が滅ぼされるところを見たくなかった。
「ゲームの中でも死ぬのが怖いのか、レナ……」西城勇はレナを見つめて尋ねた。
レナは西城勇の視線を避け、唇を震わせた。
「怖い……です」
「羅刹教が求めるのは痛快な戦い、刹那の輝きだけだ。誰がだらだらと時間を無駄にしたいものか?!」西城勇が怒鳴ると、他の信徒たちも同意するようにうなずいた。
「西城勇様、私はそういうつもりでは――」レナは落ち込んだ様子で弁解しようとした。
ドン!!!!!!
山の下で激しい爆発が起き、遠く山頂にある羅刹山城まで震動が伝わった。
彼らはすぐに城壁へ駆け上がり、遠くを見渡した。
氷と炎が入り乱れ、山の下ではいくつもの魔法の光が輝いていた。
【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX HP残り0%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX HP残り0%】
ズン――重く鈍い打撃音。
一人の信徒が爆風で高空へ吹き飛ばされた。
数本の雷の槍が凄まじい速さで追いかけ、瞬く間に彼の身体を貫いた。
【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX HP残り20%】
【システムメッセージ: ギルドメンバー XXXX HP残り0%】
五人の黒衣の魔導士が、瀕死の信徒をもう一人引きずって山を上がってきた。彼らは光り輝く長杖を手にしており、それが多重付与された伝説武器であることは明らかだった。
「全員準備! 外へ出て救出する!!」レナが怒鳴った。
「やめろ……あいつらはもう助からない」西城勇は眉をひそめ、山の下の濃煙を見つめた。
黒衣の魔導士たちは自信に満ちた足取りで一歩ずつ進み、まるで庭園を散歩するような気軽さで羅刹城の前まで来た。彼らは重傷の信徒をゆっくり城門の前へ置くと、大きな革袋を開け、西城勇の二万竜貨をゴミのように信徒の上へぶちまけた。
「羅刹教主、西城勇。こんにちは」五人の魔導士は同時にフードを下ろし、素顔をさらした。
彼らは百名を超える教徒の中から一目で西城勇を見つけ、彼へ挨拶するようにうなずいた。
「お前たちは何者だ?!」西城勇が怒鳴った。
「俺は終末の使者……和也だ」深緑の髪をした魔導士が笑って言った。
「魔王の使者だろう?!」レナが怒鳴った。
和也は淡く笑い、倒れている信徒を指さした。
「人も金も返してやる……条件は……誰かを俺と一対一の決闘に応じることだ」和也はたった一人で、羅刹教のギルド本部の前に挑戦状を叩きつけた。
「俺の名前を知っていて……わざわざ決闘を挑みに来たのか?」西城勇は内心、少しおかしくなった。
和也は黒衣の下から五環魔杖を抜き、ドンと地面に突き立てた。周囲に火の円を描き、顔を上げて微笑む。
「怖いのか?」
なんという自信。ほとんど傲慢と言ってよかった。
「西城勇様、罠に乗ってはいけません! 魔導士が固定範囲であなたと決闘するなんてありえません。絶対に何かあります」レナはすぐに西城勇を止めようとした。
「心配するな。お前が俺の背後にいるだろ!」西城勇は笑い、城壁から身を躍らせて火の円の中へ飛び込んだ。
「西城勇様!!!!!!!」レナは取り乱して叫んだ。
……
「どう戦う?」西城勇は戦いへの欲求を抑えきれず、異サーバーから来たこの魔導士に興味を抱いていた。
「死ぬまでだ」和也は淡く笑い、構えを取った。五環魔杖が光り始める。
四人の魔導士は石のそばに適当に腰を下ろした。まるで和也の勝利を知っているかのようだった。
二人は羅刹山城の下で互いに見据え合った。
「ちょうどいい。お前たちにはロシアプレイヤーの代わりに死んでもらうぞ!!!」西城勇は怒鳴り、拳を振るって殴りかかった。二人の決闘はすぐに始まった。
……
ドイツプレイヤーとの初戦……一体、どのような戦いになるのだろうか――?!




