336 遅れて届いた便箋
「くそおおおおおおおおおおおお!!」
カスターが殺されたのを見て、ニーナとカルロフは応戦した!
六口弥生は一足飛びにナスティアと一樹の間へ入り込み、片手で彼女を地面に押さえつけた。
「Kanatheonのために……死んでもらうわ……」
「だめだ!!!」一樹は激昂して怒りの雷を呼び出したが、そのすべてが外れた。
彼は愛する少女が目の前で六口弥生に処刑されようとするのを、ただ見ていることしかできなかった。
六口弥生が指に力を込め、ナスティアを切り刻もうとした瞬間――
【しばらくお待ちください――――】
六口弥生の視界が暗転した。再び目を開けた時、彼女は本サーバーの大聖堂、聖嬰室にいた。
【システムメッセージ: あなたはギルドから除外されました】
【システムメッセージ: 魔王プレイヤー資格を失いました】
【システムメッセージ: ワスティン大聖堂聖嬰室へ転送されました】
六口弥生は胸の奥が冷え、震えながらギルド画面を開いた。
【システムメッセージ: あなたはどのギルドにも加入していません】
彼女は黙って腕を下ろし、大聖堂の外へ歩いて、ムー大陸の月光を見つめた。
「まさか……最後がこんな形になるなんてね……」六口弥生は淡く笑った。
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
彼女は黒い影となって、ムー大陸の上から静かに消えた。
……
【システムメッセージ: 六口弥生 がギルドから除外されました】
「嘘だろ……六口……」六口弥生が宙に消えたのを見て、彼女がギルドから除外されたと知った一同は大きな衝撃を受けた。
「彼女は暴走した……怒りが収まったら、また戻せばいい」ニフェトは怒りで顔を真っ赤にしながら、ギルド画面を閉じた。
「………………」
誰もが動きを止め、静まり返った。
「あなたたち、すぐに放しなさい」ニフェトはカミコと松美を指さし、厳しく言った。
二人は呆然としたまま、カルロフとニーナを放した。
「あなたは自由よ、ナスティア。私たちとは、もうこれで終わりよ」ニフェトは眉をひそめて言った。
「でも、あなたは……」ナスティアはまだ恐怖から抜け切れず、ためらいながら言った。
「早く行きなさい。私の気が変わる前に」ニフェトは聖杖を掲げ、ナスティアを脅すように向けた。
ナスティアは一樹と視線を交わした。一樹はすぐに彼女の意図を理解し、黙ってうなずいた。
「俺はここに残らなきゃならない………さよなら、ナスティア」
Kanatheonの全員が、瞬く間にナスティアへ敵意を向けた。
加奈は六口弥生がギルドから除外されたことに強い不満を抱き、魔法杖を握りしめて怒鳴った。
「ここにあなたの居場所はない!」
「早く行け。この先のことは、もっと複雑になる」一樹は急いで三人を押し出した。
「また会えますか、一樹さん?」ナスティアは名残惜しそうに涙を流した。
「会えない……永遠にさよならだ、ナスティア」一樹はこらえきれず、大粒の涙をこぼした。
カルロフはニーナとナスティアを引き連れ、階段を駆け下り、虫族の間を抜けて去っていった。
黒い転送門に再び波紋が広がる――真子が重い足取りで現れた。
「ナスティアは?」真子の第一声は仲間への挨拶ではなく、ナスティアの姿を探すものだった。
「行ったわ。何日も姿を消して、何をしていたの?」ニフェトはこのタイミングで真子が現れるとは思わず、驚いて尋ねた。
真子は誰とも目を合わせず、黙ってニフェトの前まで歩き、一通の手紙を差し出した。
「さよなら」
【システムメッセージ: 真子 ギルドを脱退しました】
「………」一同は真子が消えていくのを見送った。
Kanatheonがロシアサーバーに侵攻した時の勢いは、すっかり消え失せていた。現場には重苦しい空気だけが漂っていた。
ニフェトとアンドリアは一緒に真子の手紙を開き、それが六口弥生の筆跡だと気づいた。
【私は、うまく気持ちを伝えられる人間ではありません。だから真子の手を借りて、この手紙を渡します。
あなたたちと出会えたことは、本当に幸せでした。私はみんなの、本物の温かさに触れることができました。
あなたたちとギルドを組み、このゲームをクリアして、それから次のゲームを一緒に遊び、老いるまで友情を続けていく。そんなことを、私は夢見ていました。
けれど現実は、それを許してくれません……私は海外へ移住することになりました。みんなとは遠く離れ、もう会えなくなってしまいます。
この日が来ることは分かっていました。でも早すぎました。私は離れたくなくて、出発の引き延ばしを重ねました。どうか、私がなぜ焦るようになったのか、あなたたちに早く成長してほしかったのか、早く独り立ちしてほしくて強硬な手段に出たのか、そしてあなたたちを傷つけてしまったのか、理解してくれると嬉しいです。
私は愛する人と離れるのが怖くて、ずっとわざと自分を閉ざしていました。
でも、あなたたちの熱意は私に拒ませてくれませんでした。私は気づけば心を開いていました。
Kanatheonの一人一人を、私は忘れません。そして、あなたたちの副長でいられたことを誇りに思います。
私のわがままを許してください。もし自分の口で別れを告げたら、きっと離れられなくなります。
最後まで、冷たい私のままでいさせてください。
いつか縁があれば、また会いましょう。
皆さんの無事を祈っています。
Kanatheon副長
六口弥生】
「なんてこと……」ニフェトは途中まで読んだ時点で、涙が堰を切ったように溢れ出し、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚に襲われた。
【密書 宛先(六口弥生): 六口! ごめんなさい。早く戻ってきて、直接謝らせて!】
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
【密書 宛先(六口弥生): 冗談でしょ!? 直接謝らせてよ!】
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 オフライン】
「いや……いやだ!!! 六口!! ごめんなさい!!」ニフェトは崩れ落ちるように泣き叫んだ。
六口弥生の手紙はメンバーたちの間で回し読みされ、全員が沈痛な表情になった。
一樹はようやく理解した。六口が背負おうとしていたものを、自分は何一つ理解していなかったのだ。
「泣いてばかりいないで………私たちはちゃんと彼女の意志を継ぎましょう。ロシアサーバーをきっちり攻め落として、掲示板で私たちの戦果を見せてあげるのよ!」アンドリアはニフェトを支え起こした。
「私はもう、過ちを重ねない……六口、あなたを失望させたりしない!」ニフェトは悔恨の涙を拭い、その瞳に冷徹な光を宿した。
「出陣よ。今この瞬間から……ロシアプレイヤーを全員殺しなさい!」アンドリアは一声笑い、同盟軍は整然とグズ砦から歩み出て、周辺のロシア軍の掃討を開始した。
……
本サーバー、魔都制御室――
「彼らは異世界への門を開いた。大半のプレイヤーがグズ砦へ向かっている」
「よし。三日後に攻城戦が始まる。我々の内通者は何人いる?」
「二百人近くです。腕に布を巻いて目印にします」
「よし……驚かせてやろう」ドイツサーバーの指揮官は、掌の上に浮かぶ七つの神殿のキーストーンを見つめ、自信ありげに笑った。
それが彼女なりの、不器用な愛の形だったのかもしれない……
次章、終焉の序曲!
【本日は、以前お約束していた通り二話分を追加更新いたします!皆さんにお楽しみいただければ幸いです。もし気に入っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や感想をよろしくお願いいたします!】




