333 深淵へと続く転送門
「氷晶嵐!」
ババババババババババッ!
守備軍の大盾は、まるで紙切れのように高速の氷晶に貫かれた。第一防衛線の兵たちは悲鳴を上げる暇すらなく、肉体を一瞬で蜂の巣にされ、血だまりの中に崩れ落ちていった。
近くの守備兵たちは前方で血肉が飛び散るのを見て、ただちに異変を察した。
「なんだあの魔法は!?」彼らはようやく気づいた。氷晶の攻撃力はナスティアのものではなく、ニーナが呼び出した黒い魔法陣によるものだったのだ。魔法陣をくぐり抜けた氷晶は、その速度を数倍へと跳ね上げられ……恐るべき貫通力を持つ砲弾へと変わっていた!
ババババババババ! 氷晶はさらに後方の第二防衛線へ撃ち込まれ、何人もが被弾して倒れた。質のいい盾はどうにか氷晶を防いだが、砕けたあと無数の小さな破片となって飛び散り、広範囲に出血の異常状態を引き起こした。
「ヒーラーは早くこっちを支援しろ!! 遠距離部隊は見てるだけか!?」ナスティアとニーナに撃ち込まれて顔も上げられない重装兵たちが怒鳴った。
「無理だ! この城門の構造のせいで、こっちの射線じゃ敵の遠距離部隊に届かない!! 持ちこたえろ、ヒーラーはすぐにそっちへ向かう!!」近くに潜んでいた遠距離部隊が叫び返した。
「でも――」重装兵は言い終える前に、ザシュッと首を斬り落とされた。
切裂魔が大量の虫族を率いて防衛線の綻びへ猛攻を仕掛け、西側戦線はたちまち歪み、陥落寸前となった。
その時、最精鋭の装備を身にまとった守備軍が戦場に駆けつけた!
「ナスティアを食い止めろ!!!」
ロコフ自らが黒獅子軍の精鋭団と大量の枢機卿を率いて西防衛線へ援軍に入り、戦線を即座に立て直した。
各入口で激戦が続くなか、北側の入口には大量の狙撃手が配置されていた。虫族は何度も重装防衛線を突破しかけたが、そのたびに撃ち返され、ボロボロの虫の死骸が小山のように積み上がって入口を塞いでいった。虫族は攻撃をいったん止め、仲間の死骸を押しのけてからでなければ、先へ進めなくなった。
…
「左から一匹入り込んだぞ!」
「右に三匹!」
「上に一匹だ!」
ダダダダッ――
ダダダダダダダダッ――
ダダダッ――
ダダダダダダダダダダッ――
カチャカチャカチャ――
「まずい、リロードだ!」
「こっちも装填しなきゃ!」
彼らの火力は本来、ぎりぎり虫族を食い止められる程度には足りていた。だが、次々と虫族が防衛線の内側へ突破してきて守備軍の火力を分散させ、ついに火力の空白が生まれた瞬間――。
「突っ込め!! あいつらリロード中だ!!」ニフェトが好機を見て叫んだ。
虫族の群れが同時に雪崩れ込み、水の流れのように地面や壁、天井を伝って四方へ走り回った。
「炎竜の息吹!」一人の勇敢な魔導士が前方の屋根へ飛び移り、炎を吐いて虫族の大軍を食い止めた。
入口付近の原基虫はたちまち丸焦げになり、地面に倒れてもがいた。
「今だ、押し返せ! 同志たち!!」重装部隊はそれを見て前へ突撃し、原基虫を入口まで押し戻した。
カチャ――ダダダダダダダダダ!
狙撃手たちは装填を終え、再び火力で入口を封殺した。
「早く戻れ!」彼らは魔導士に手招きした。
魔導士は手足を使って後方へ這い戻り、息を切らして言った。
「さっきは本当に危なかった。俺――――」一本の短刀が正面から飛来し、彼の眉間に深々と突き刺さった。
魔導士は白目をむき、地面に倒れて死んだ。
「なに…… 短刀?!」
狙撃手たちは顔を真っ青にし、頭の中が真っ白になった。
「やあ!」
黒い影がひらりと舞い、カスターが突然、彼らの伏せていた屋根の上に現れた。小刀を弄びながら、いやらしく笑っている。
「防衛に集中しろ! 虫族を中へ入れるな! お前、一体何がしたいんだ?!」
虫族が再び押し寄せてきたため、狙撃手たちはカスターへ反撃できなかった。彼らが射撃を止めた瞬間、防衛線は崩れ、前方の戦友たちは命の瀬戸際に立たされる。
「うわ……君たちの職業、こんなに刺激的だったんだね!」カスターは彼らのそばに伏せ、狙撃手たちが虫族を撃ち殺していく光景を間近で楽しんだ。
「このクソ野郎!! 他の狙撃班は何をしてる?! こっちはもう持たない!!」
虫族はすでに内壁を埋め尽くしており、狙撃手たちはもはやスコープを覗く必要すらなかった。
ザシュ、ザシュ!
カスターは突然、身軽な動きで二人を殺し、死体を通りへ投げ落とした。さらに最後の狙撃手にも重傷を負わせ、その身体の上に馬乗りになった。
「この景色を一緒に眺めよう……」カスターは彼の頭をつかみ上げ、笑って言った。
「上から突破された!!!」
「左に気をつけろ!!」
「後ろに一匹いるぞ!!!!!」
「隊長、後退しますか!?」
「だめだ!!! 全員、死んでもここを死守しろ!!!!!!」
虫族は天井から守備軍の防衛線の背後へ飛び降り、すぐに彼らを包囲して攻撃した。
何人もの兵が何度も引っ張られ、仲間まで一緒に連れ去られないよう、彼らは慌てて仲間の腰の革紐を切った。
プレイヤーの陣線には次々と血の花が咲き、入口は血の川となり、防衛圏はどんどん縮んでいった。
「お前は何を証明したいんだ?!」狙撃手は仲間が一人また一人と戦死していくのを目の当たりにしながら、自分では何もできず、絶望の怒りを燃やした。
「私は唯一、魔王を理解している人間だ。奴らは手段を選ばず、私たちを殺しに来る。私はこの手で……ナスティアの夢の泡を突き破ってやる」カスターは笑って言った。
「魔王を助けて……自分を証明するつもりか?!」狙撃手が怒鳴った。
カスターは下にいる原基虫へ口笛を吹き、十数匹の原基虫の注意を引いた。
「奴らが来れば……真実は明らかになる」カスターは再び耳元でささやき、それから彼を地面へ蹴り落とした。
「うああ!! カスター!!おのれぇえ……ああ!!!」
狙撃手はすぐに虫族に八つ裂きにされた。カスターは屋根の上に立ち、冷ややかな視線でその光景を見届けた後、身を翻して中空のピラミッド内部へと駆け出した。
……
「ロコフ大公、北門が陥落しました!!!」中央にそびえ立つもう一つの小ピラミッドの守備兵が、西側戦線へ駆け込んで報告した。
「北門だと?! どう……どうしてだ?! あそこは最も守りが厚いはずだろう!!」氷片が飛び散る前線で指揮を執っていたロコフは、北門陥落の報を聞いた瞬間、身体を強張らせ、激しく叫んだ。
「大量の狙撃手が暗殺され、前線は火力支援を失って敗退を続けています! 現在、数百匹の虫族がすでに城内へ浸透し、全速力で他の防衛線へ向かっています!」伝令兵が慌てて言った。
「どうしてこんなことに………」
ロコフは、グズの城が入口でしか防衛に適していない造りだと分かっていた。そこを放棄すれば、虫族は何の障害もなく城内へ流れ込んでくる。
近くの通りで黒い影が揺れた。北から浸透してきた原基虫が、すでに壁を伝って迫っていた!
「もう仕方ない!! 後退! 全軍、内側の金字塔へ退け!」ロコフは即座に命じた。
周囲の幹部たちはすぐに笛を吹き鳴らし、他の戦線はその音を聞くと、整然と後退を始めた。
「隊形を維持しろ!!!」
彼らは戦いながら後退し、虫族は波のように追いすがった。
一人が地面の死骸につまずいて転び、反応する間もなく虫兵に足を噛まれた。
「うああ! 俺の足が!!!!」
「早く引っ張れ。でないと――うああああああ!!!!!!」
背後の戦友が振り返った瞬間、結ばれた革紐ごと虫の群れへ引きずり込まれ、あっという間に地面いっぱいの肉片へと引き裂かれた。
「早く……早く下がれ!!!」近くの守備兵たちはその光景に肝を潰した。仲間を顧みず、腰縄を解いて勝手に逃げ出す者まで現れ、秩序は崩れ始めた。その結果、前線に残った守備兵たちは一瞬で援護を失い、多くがその場で戦死した。
「他の王都からの援軍はいつ到着する?!」ロコフは内側の金字塔へ戻るなり、急いで尋ねた。
「三十分……」幹部は地図を開き、苦い顔で答えた。
「三十分も持つか!!」ロコフは城内を振り返った。虫族は海水のようにグズへ流れ込み、周囲の家々を呑み込み、城内の火明かりを覆い隠していた。
内側の金字塔は、虫の海に浮かぶ孤島の灯台のようにそびえ立っていた。
ナスティアは赤旗を手に、西側の市街地へ入った。
「最後の総攻撃、開始!!!」遠く離れた魔都から、ギルドチャンネルを通じてニフェトの冷徹な号令が響き渡る。それを合図に、虫族は内殿の金字塔を登り始めた。
「ギルド金庫を開けろ。すべての防衛資材と消耗品を叩き出し、障害物にしろ! 同志たちよ、恐れるな。俺はお前たちと最後の瞬間まで死闘を続ける。国を失った負け犬の奴隷には、決して成り下がらない!」ロコフは大剣を抜き、最前線へ歩み出て叫んだ。
「我らのサーバーのために!! うおおお!!」
守備軍は腕を振り上げて叫び、士気は下がるどころか高まった。彼らは虫族との決死戦を覚悟した。
……
ロシアサーバー、魔都制御室――
「ついに、この時が来た……私たちのメインキャラの到着を首を長くして待っていなさい……ロシアのプレイヤーたち……」ニフェトは自信ありげに微笑み、誰もいない魔都制御室を振り返ると、静かに転送門をくぐって本サーバーへ戻った。
「カミコ、こっちへ来て」六口弥生は真剣な顔で、カミコに耳打ちした。
カミコは聞きながら、少しずつ眉をひそめていった。
「え……まさか。本当にそんなことが起こるの?」
「ふん、見ていなさい……」六口は冷たく笑って言った。
……
「なんてことだ………」千名近い援軍がグズの城外へ到着した時、城内では、炎が天を焦がさんばかりに燃え上がっていた。虫族がすでに攻め込んでいるのは明らかだった。
血は滝のように階段を流れ落ち、内側の金字塔の下には死体が山のように積み上がっていた。
瀕死の守備兵たちは虫の死骸の山に横たわって呻いていた。全員が腕を失うか、足を潰され、ゆっくりと血を流して死んでいく。
金字塔頂上の広場に残っていたのは、最後の一人……ロコフだけだった。彼は大剣にすがり、壊れかけた身体を支えながら息を切らしていた。
原基虫は待機命令を受け、金字塔頂上の平台の外で控えていた。
「ロコフ、あなたの負けよ」ナスティアはゆっくりと彼の前まで歩き、冷たく見下ろして言った。
「それが……自分のサーバーへの報いか……ナスティア」ロコフは苦しげに顔を上げ、弱々しく言った。
「安心しなさい。私はギルドの礎石を壊すだけ。逃げたいなら止めないわ」ナスティアは眉をひそめて言った。
「ふ、ふふ……それで? 魔王に俺を殺させるのか?」ロコフは口の端を歪めて冷笑し、血を口元から滴らせた。
「私たちは、投降したロシアプレイヤーを全員殺さないと取り決めているわ」
「その取り決めに……俺は含まれているのか?」ロコフは笑って尋ねた。
ナスティアははっと悟り、首を振って否定した。
「彼らはあなたを高く評価している……同時に、あなたの脅威が大きすぎるとも考えている……」
「どうやら私たちに共通認識は存在しないようだな、ナスティア」ロコフは大剣を支えに立ち上がり、ゆっくりと彼女を指した。
「諦めなさい。もう立っているのもやっとなのに、どうやって戦うの?」ナスティアは無用な殺しをしたくなくて、必死に説得した。
「俺が背負っているのは……サーバーの栄光だ……分かるだろう? ナスティア……」ロコフのその言葉は、彼女の最も脆い心の守りをまっすぐ貫いた。
「私はまさにあなたたちに裏切られたのよ!! だからサーバーは家も国も失った。今なら分かる?! ロコフ?!」ナスティアは激怒して言い返した。
「俺は名誉をまとって死ぬ。最後の一秒まで格言を守り抜く。これ以上誇れることがあるか……」ロコフの腕は弱り、大剣を持ち上げることもできなかった。それでも、彼は揺るぎない笑みを浮かべた。
ナスティア、一樹、カルロフは、彼の前にある小さな黒いレンガの上へ立った――ギルドの礎石を破壊するために。
ロコフは一歩前へ出て、自分の身体でギルドの礎石を守ろうとした。
「すまない……」
強壮なカルロフが軽く引っ張るだけで、ロコフは横へ引き離された。
ナスティアは身を横へずらし、一樹にうなずいた。
一樹はゆっくりとしゃがみ込み、手のひらを黒い床レンガに当てた。すると、それはゆっくり浮かび上がった。
「始めるぞ!」一樹は短刀を突き立て、激しく斬りつけ始めた。
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(99/100)】
一樹は一撃一撃、力強く突き下ろし、突く速度はどんどん速くなっていった!
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(76/100)】
数か月に及ぶ血なまぐさい征戦を経て、彼らはついに本鯖のメインキャラたちを呼び寄せるための転送門を開こうとしていた!
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(53/100)】
その時、二つの高らかな角笛の音が城門から響き、死んだように静まり返ったグズの城内にこだました!
「ロコフ様!! 我々が来ました!!」他の王都からの援軍が、ついに到着した。彼らは北と東、二つの入口から城内へなだれ込み、内側の金字塔へ猛攻を仕掛けた。虫兵はすぐに振り返って迎撃した。
「一樹君! 早く!!」ナスティアは魔杖を構え、ニーナと一緒に警戒した。
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(37/100)】
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(36/100)】
「追いつけええええ!!!!」
新たな激しい市街戦が再び始まった。ロシアプレイヤーたちは防御を完全に捨て、虫の海の中で必死に斬り込み、前へ押し進んだ!
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(03/100)】
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(02/100)】
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(01/100)】
チン――バキン!
「Нет!!!(やめろ――っ!!)」ロコフが悲痛に叫んだ。
【システムメッセージ: ギルドの礎石耐久度(00/100)】
【システムメッセージ: グズ湿台にある黒雄獅子ギルドの礎石が破壊されました】
【システムメッセージ: グズ湿台の王都戦争は終了しました。すべての王都戦争が完了するまで、殺戮モード機能を一時封鎖します】
グズの城内にある黒獅子の旗はすべて白へ変わり、黒獅子軍はグズの城の支配権を失った。
援軍は泣き叫び、足を止めて攻め込むのをやめた。虫族も内側の金字塔の下へ引き戻った。
一樹は床レンガの破片の下に鍵穴があるのを見つけると、何も言わず神殿のキーストーンを差し込んだ。石はぴたりとはまり込み、彼が手首をひねった。
ゴゴゴゴゴゴゴ――
内側の金字塔全体が震え出し、最上層エリアの中央に黒い転送門が盛り上がるように現れた!
ゴゴゴゴゴゴ……
……
ついに成功した……!
ここから一体、どうなってしまうのだろうか……




