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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第二十六章——極限の火種
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304 要衝の死守

五人の暴君が同時に膝を沈め、攻撃態勢を取る。


「西城勇様……一度退いて、改めて話し合いましょう」

レナは西城勇へ撤兵を懇願した。


「レナ、腰はまだ痛むか?」

西城勇はレナの腰へ手を当て、静かに尋ねる。


「大丈夫です……問題は―――」

レナが慎重に答えた瞬間―――


ドン!


西城勇が突然拳を放ち、二人の暴君がそれをその一撃を阻んだ。


「うおおおおおおお!!!!!!!」

周囲の教徒たちが同時に過負荷へ突入する。


事態は一気に制御不能となり、桐司たちのパーティは、狂信者どもの猛攻に巻き込まれた。


「来るぞ!!!」

女暴君が叫ぶ。


「暴虐の旋風!」

「暴虐の旋風!」

「暴虐の旋風!」

「暴虐の旋風!」

「暴虐の旋風!」


五人の暴君は巨大剣の竜巻と化し、突破不能の障壁を作り上げた。


二人の狂信者がちょうどタイラントたちの間に挟まれ、わずか一瞬で激しい血沫を上げて弾け飛んだ。


西城勇が突然指を組み、背後の六本の魔腕を巨大な掌へ融合させ、女暴君へ叩きつけた。


女暴君は慌てて回転を止め、大剣を横に構えて焔の掌を受け止める。


「こ……この馬鹿力は……うぐっ……」

全身の骨がミシミシと軋み、片膝をついた。


「耐えろ!!」

一人のタイラントが、押し潰されそうな仲間を見て、急いで援護へ駆け込む。しかしその瞬間、自分の防御を忘れてしまった―――


バシュッ! バシュッ! バシュッ!


複数の紅蓮の腕が、その身体を貫いた。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 名前は重要じゃない HP残り20%】


【システムメッセージ: ギルドメンバー 名前は重要じゃない HP残り0%】


暴君の心臓は焔の腕に抉り出され、そのままボウッと灰へ焼き尽くされた。彼は膝をつき、そのまま静かに倒れて死んだ。


「…………」

Kanatheonの小隊はその場で凍り付き、仲間が光の塵となって消えるのを見つめる。


「ぶっ殺してやる!!!」

女暴君は怒号と共に立ち上がり、西城勇の蒼い腕を力任せに押し返すと、防御を捨てて跳躍した。そして全力で下の敵へ大剣を叩き落とす!


バシッ! バシッ! バシッ! バシッ!

十数本もの悍ましい魔腕が空中で彼女の身体を掴んだ……


「くそっ……この数頼みの卑怯者ども!!」


ちょうどその時、桐司が竜の首を振り返り、彼女と目が合う。


「うあああ~!」

女暴君は羅刹教の軍勢中央へ引きずり込まれた。


「愛莉!」

桐司は竜翼を激しく叩きつけ、周囲の敵をまとめて押し潰し、その勢いのまま愛莉へ突撃する。残る三人の暴君も竜尾に続いて突破した。


信徒たちは無数の魔腕を呼び出し、愛莉の悲鳴は人波の中へ飲み込まれていく。


ドゴォン!!


前方で血煙が炸裂した。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 愛莉 HP残り20%】


【システムメッセージ: ギルドメンバー 愛莉 HP残り0%】


「お前ら………」

桐司の目が怒りで真っ赤に染まる。金竜は咆哮しながら天高く舞い上がり、追撃する光の腕は翼騎兵の速度に追いつけず空中で止まった。


金竜は上空で翼を畳み、そのまま地面へ急降下する。

「死ねぇ!!」


ドガァン!


強烈な広域制圧技が一帯の教徒を地面へ叩き伏せる。暴君たちはその隙に大剣を振るい、敵を斬り伏せていった。


「俺について来い!! 長居するな!!」

桐司は戦況が急激に悪化しているのを見て、仲間のために血路を切り開く。


西城勇は巨大な魔腕で竜尾を掴み、全身全霊で桐司を引き止めた。周囲の修羅たちも一斉に拳を叩き込む。


暴君たちは大勢の敵を相手に踏ん張るが、徐々に押され、金竜の腹下へと退き、防衛線を死守した。


「逃げろ!!! 突っ込――――――」

桐司は即座に金竜を解除し、鉄甲犀てっこうさいを呼び出そうとした瞬間、西城勇の三本の魔腕に捕まった。


「属性重ね!」

西城勇の全身から蒼い業火が噴き上がる。


「早く振りほどけ!!」

暴君たちは身動きが取れず、桐司が高空へ持ち上げられるのを見守るしかなかった。


西城勇は両掌を合わせる……。


ドゴォォォン!!!!!!


【システムメッセージ: ギルドメンバー 桐司 HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー 桐司 HP残り0%】


生き残った暴君たちは愕然と空を見上げ、桐司の身体が光のポリゴンとなって激しく弾け飛び、眩い破片となって地面へ降り注ぐのを見た。


「突撃だ、我が友よ!」

レナは桐司が殺されたのを見て、もう後戻りできないと悟り、羅刹教徒たちへ進軍を命じる。


「戦闘開始だ!」

白が命令を飛ばした。影の旅団の部隊も再び武器を抜き、羅刹教の大軍を迎え撃つ。


その時、夜空に純白の光粒が現れ、両軍の中間地点上空へ飛来する。


東西両軍は気に留める余裕もなく、戦闘へ意識を集中させていた。


「全員、武器を下ろしてください!」

一人の少女が叫ぶ。


「柑々?!」

雨間刻が驚愕する。


夜空から温かな陽光が差し込み、一枚の聖旗が両軍の間へ現れた。


「魂の終着駅!」


ヒュンッ―――。

金の翼を持つ紅衣の女天使が聖白花の旗を握りしめ、両軍の中央へ急降下する。


ドンッ!! ブゥゥゥン―――


凄まじい音波が両軍を震撼させ、眩い聖光が全員の視界を一瞬の間ほど奪った。


「ラロ神がお許しにならない戦い……起こしてはなりません!」

ソフィアはラロ教典を手に、聖光を浴びながら姿を現す。背中の光翼は羽根となって散っていった。


聖旗は地面へ神聖結界を焼き刻み、すべてのプレイヤーの侵入を拒絶して両軍を隔てる。


パシュス、柑々、そして三十名以上の聖なる園の上級プレイヤーたちが石竜から飛び降りた。


「ここまでだ!」

パシュスはKanatheonの大旗を掲げ、怒号した。


西城勇はソフィアの聖域へ突入しようとするが、神力によって弾き返される。


羅刹教は足を止めざるを得ず、聖なる園の部隊を睨みつけた。


「桐司はどこだ?!」

パシュスが焦った声で問いかける。


「羅刹教に殺された!」

生き残った暴君が怒鳴った。


それを聞いたパシュスは顔色を変え、羅刹教の陣前へ進み出る。


「西城勇、お前……結果が分かっているのか?」


「その聖域から出てきてから話せ……」

西城勇は態度を一変させ、地面の黄金結界を指差した。


「質問に答えろ、西城勇」


「羅刹教のギルドホールが襲撃されたんだ」

レナが慌てて説明する。


「俺たちも大量の魔王の拠点を発見した。今回の件と関係している可能性がある」

パシュスは人類自衛同盟の情報をすべて明かした。


「魔王が毒ガス弾を作った? 証拠は?」

レナは眉をひそめる。


「俺たちは……推測している」


「一度も姿を見せない魔王へ全部押し付けるつもり? 都合が良すぎるでしょう。それに聖なる園はなぜ介入するの?」

レナはソフィアを睨みながら問い詰めた。


「私たちは長く大聖堂を守っていました。ちょうどパシュスの救援を受けただけです。それには……私なりの理由がございます」

ソフィアはステータス画面を開き、満足そうに微笑む。


「その人数で……羅刹教を止められると?」

レナはKanatheonと聖なる園を脅すように嘲笑した。


「桐司を殺した時点で、もう敵対状態だ。ニフェト本人が処理するまでな!」

パシュスは一歩も引かず、ギルドの誇りを守ろうとする。


「ねぇ……私、ここで死ぬ気ないんだけど」

柑々はソフィアの袖を軽く引っ張り、不安そうに呟いた。


「状況が不味くなったら私は逃げるから、絶対に私のそばを離れないでね」

ソフィアは黒真珠の戦いを経て幾度も死線をくぐる。今や彼女は、一流の戦場経験を持つ数少ない枢機卿の一人であり、無駄死にする気など当然ない。


「どいて。あなたたちじゃ絶対――――」

レナは背後に迫る旅団の軍勢に怯え、懇願するような目を向けた。しかし西城勇は彼女の肩を強く掴み、険しい表情で前方を見据えたまま動かない。


聖なる園の後方には、数十本もの影の旅団の軍旗が並んでいる。


「火野良、待て。今は俺が処理している!」

パシュスは慌てて東軍を制止した。


「今日は火野良はログインしていない……」

白が苦々しく呟く。


「柑々! こっち来い!」

雨間刻が急いで柑々へ手招きした。


柑々は嬉しそうに、すぐ影の旅団の軍勢へ駆け込む。


「ふん、腰抜けが」

西城勇は雨間刻を見下して吐き捨てた。


「西城勇。影の旅団とお前の因縁は知らない。でも今日は俺が指揮官だ。やるなら受けて立つ。一歩たりとも譲らない」

雨間刻は一切怯まずに言い返す。


「西城勇様……状況が変わりました……退きましょう」

レナは必死に西城勇を引っ張った。


「俺ならこいつら全員殺せる!」

西城勇は怒鳴り、腕を振り払う。


「でも……向こうも私たちを殺せます……」


西城勇は背後の恐れを見せない教徒たちを見渡した。勝ち切れる保証のない戦争は、彼の迷いを大きくしていく。


「パシュス……今日、羅刹教の本城で20人以上が爆死した。誰が責任を取る?」

西城勇が問う。


「俺が取る!」


「いいだろう! 俺の拳を三発受けろ。それで今日の件は終わりだ」

西城勇は真顔で言った。


「三発か。いい!」

パシュスは即答し、自身へバフを重ね始める。


「聖職者の加持は禁止だ……」

西城勇は人差し指を軽く振る。


パシュスは一瞬固まった。減衰加持なしでは、狂信者の瞬間火力は源魔師にも匹敵する。


だが今の彼はKanatheonの最高責任者だ。すべての視線も、行動も、自分が模範にならなければならない。


「……いいだろう!!」


「ちょっと……過負荷状態の知力クリティカルは洒落にならないわよ。本気なの?」

ソフィアが驚いて問いかける。


「西城勇。俺が三発受けたら、軍を引いて今回の件は追及しない。それでいいな?!」

パシュスは念押しした。


「その通りだ」


「ソフィア……聖域を解除してくれ……」

パシュスは重々しく言う。


ソフィアはすぐ聖なる園の面々を影の旅団側へ下がらせ、掌を差し出した。聖旗は羽毛となって消え、地面の聖域結界も同時に解除される。


パシュスは西城勇の前へ立ち、胸を張って向き合った。


「来い」

西城勇は笑う。


ボウッ―――


彼の全身から灼熱の蒼焔が燃え上がり、背中から六本の蒼炎腕が伸びた。


その腕はすべて筋肉が異常膨張しており、闘技場戦の頃より遥かに強くなっているのが分かる。


「第…………一撃!」


ドゴォン!!!


西城勇は片手で地面を叩き、三つの魔拳を地中から噴き上がらせ、パシュスの顎へ直撃させた。


パシュスは一瞬で高空へ吹き飛ばされ、視界が揺れ、前歯も数本砕け散る。


「二撃目!」


左右から三つずつの蒼拳が、パシュスの頭部へ挟み込むように襲いかかった。


鈍い破砕音が響き、パシュスの銀鋼兜は粉砕される。左頬骨は陥没し、目尻から鮮血が滲んだ。


「西城勇様……やめ―――――」

レナが悲鳴を上げ、慌てて止めに入る。


「三撃目!」


12本の蒼腕を、一本の大蛇のような巨腕へと融合させ、天地を断つ勢いで正面から薙ぎ払う。


「魂の盾!」


ドン!!


ヒュウ――――


パシュスの身体は弾丸のような速度で吹き飛んで空中で掻き消え、数秒後、数百メートル離れた鉄耳山脈から轟音が響いた。


【システムメッセージ: ギルドメンバー パシュス HP残り20%】


暴君たちはすぐに胸を撫で下ろした。


「影の旅団……もし俺の領地がまた荒らされたら、誰がやったかなど関係なく、お前たちの責任にする。羅刹教は玉砕覚悟で、東部の全ギルドを滅ぼす」

西城勇は焔腕を収め、羅刹軍を率いて引き返していった。


全員が重荷を下ろしたように息を吐き、それぞれ今夜も生き延びられたことを密かに喜んだ。


ソフィアはすぐに人を連れて鉄耳山脈へ駆けつけた。パシュスの全身鎧は枯葉のように潰れ、四肢はすべて折れ、血肉で潰れた顔は目も耳も口も判別できず、虫の息で草むらに倒れていた。


その時、彼女の前に突然システムメッセージが表示される――


【システムメッセージ: 教皇神託 『暴動を止めろ』 をクリアしました】


「ひひひひ……」

ソフィアはこっそりメッセージを消し、得意げに重傷のパシュスを抱き起こした。

...



パシュスは少し鈍感なところもありますが……今回のこのシーン、ちょっと格好良かったですよね! 皆さんはどう思いましたか?

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