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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第二十四章——書庫の狩猟
295/342

294 狩人が獲物になる─────

書庫が震えた。今度は中央エリアで四つの魔石が紫の光を放つ。


猟犬はまた頭を垂れ、一番多く攻撃されたマキフの匂いを追い始めた。


「ナスティア様……短剣をお受け取りください。私はもう走れませんが、敵を食い止めることはできます……」マキフは書架にもたれ、痛みに顔をしかめながら傷口を押さえ、苦しげに言った。


【システムメッセージ: 共鳴短剣を獲得】


「耐えて! すぐ戻って助けるから!」

ナスティアは回復薬を数本マキフに残し、その場を離れた。


行き止まりを通り過ぎた時、彼女は奥に何かが隠れているのを見つけた。


「こんな装置があったの!? 最高!」彼女はすぐ行き止まりの入口に白い布を結び、目印にした。



その時、ブチャが翼を広げ、力強く羽ばたいた。


ジィィィィィッ!!!!!


すべての短剣が同時に共鳴し、全員の位置が暴かれた。


ブチャは最も近い音源――東の迷宮へ向かうことにした。


猟犬もすぐ走り出す。ナスティアは書架越しに、それがこちらへ飛ぶように迫ってくるのを見た。


動けないマキフが近くで休んでいる。彼女は猟犬を引き離さなければならなかった。


深呼吸し、歯を食いしばる。ナスティアは突然姿を現し、猟犬と目を合わせた。


猟犬はすぐ血のように赤い大口を開け、追いかけてきた。


彼女は迷わず振り返り、さっき見つけた行き止まりへ走った。


猟犬は速い。一歩ごとに距離が縮まっていく。


「もっと速く……くそっ……もっと速く走れ!」ナスティアは必死に走り、前方の行き止まりだけを見つめた。



一樹とカルロフは、すでに紫に光る魔石のすぐ傍で息を潜めていた。そこへカスターが腹の傷を押さえ、南の迷宮から這い出てきた。


「おい……どうした?」カルロフは声を潜めて聞いた。


「幻影がいる……気をつけろ……」カスターは足を引きずりながら、光紋の魔石の前まで歩いた。


「四つだ。一人足りない……」カスターは息を荒げた。三人では動けない。


「ブチャは?」カスターは急いで聞いた。


「東へ向かった。俺たちも早く――」一樹は眉をひそめて言った。


「東だと!?」カスターはぎょっとした。


「東がどうした?!」カルロフも緊張した。


「ニーナがそっちに隠れている……」一樹は顔が真っ青になった。


「ナスティア、中央へ来て手伝え!!!」カスターは突然天井へ向かって怒鳴り、その声が図書館中に反響した。


カスターは二人を見た。

「走れ!!!」


一樹とカルロフはすぐ迷宮へ逃げ込んだ。



北部迷宮――


猟犬はすでに二度、ナスティアの魔法ローブに噛みついていた。彼女は尾をつかまれた孔雀のように、全速力で行き止まりへ駆け込む。


その時、猟犬は行き止まりの入口で急停止し、ゆっくり彼女へ迫ってきた。


「ナスティア!!! 中央へ来て手伝え!!!」――――


猟犬の耳がぴくりと動き、突然振り返って離れようとした。


「ちゃんと私を見ていなさい、このバカ猟犬!!」ナスティアは焦って怒鳴り、猟犬の注意を取り戻した。


猟犬は無数の水飛沫を蹴り上げて突進し、突然、硬い鉄を踏んだ。


ドン!


「ワン! ワンワンワン!」猟犬は大きな鉄籠に閉じ込められ、動けなくなった。


「やっぱり! 行き止まりの設計には意味があったのね!」

彼女は檻の中で悔しげに吠える猟犬をドヤ顔で見下ろし、鉄籠の天井を蹴り跳び、そのまま中央エリアへとひた走る。


迷宮中央へ戻ると、ブチャが動けないカスターへ突進していた。


光の槍が振るわれる――――


ドン!!!!!!!!!!!!!


【システムメッセージ: フレンド カスター HP残り20%】


カスターは横の書棚へ叩きつけられ、そのまま倒れ込んだ。


「おい!!! こっちだ!!!」カルロフも戻ってきて、ブチャへ向かって怒鳴る。


だがブチャはすでに重傷のカスターを狙っていた。光の槍を携え、じりじりと彼へにじり寄っていく。


カスターは顔中を血で染めながらも諦めず、肘で少しずつ這って逃げた。


「カルロフ、合わせて!」遠くのナスティアが咄嗟にひらめき、隣のカルロフへ短剣を投げた。


「はぁ? 俺は何をすればいいんだ?」

カルロフは宙を飛ぶ短剣を呆然と見つめ、まったく意味が分からなかった。


「早くお前の短剣を投げろ! 共鳴させるんだ!!!」一樹が怒鳴る。


「お任せください、ナスティア様!」

と、合図に気づいたニーナが即座に己の短剣を全力で投げ放った。


二本の短剣は空中で引き寄せ合い、パチンと音を立てて貼りつく。


ブゥゥゥゥン~!!!!!!


高周波の共鳴音が針のように鼓膜を突き刺し、全員が本能的に耳を塞いで後退した。


ブチャは巨槍を止め、振り返って激しく震える短剣へ歩いていく。


その時、迷宮内の短剣は三本しか残っておらず、一つの魔石はギミック制限によって光を失っていた。


彼らはブチャが短剣の耳障りな音に引き寄せられている隙に、カスターの元へ駆け寄る。


「今助けます、カスター様!」

ニーナはすぐ腰袋から止血剤と包帯を取り出し、応急処置を始めた。


「なんで逃げなかったの!?」ナスティアは両手を震わせながら叫んだ。最も身軽なカスターが、一番逃げ遅れるなど想像もしていなかった。


「幻影に刺された……そのあと、これになった……」カスターは半身を血に染めながら、新しい共鳴短剣を差し出した。


「うそでしょ……幻影まで私たちを罠にかけるの!?」ナスティアが短剣を受け取ると、すぐに短剣が起動し、小さく震え始めた。


「よく聞け。次は短剣を持ってる奴が全員中央へ突っ込んで魔石を破壊する。他の奴はブチャを引き離せ。分かったな?!」一樹はすぐカスターの戦術を繰り返した。


小隊は頷き、散り散りになって再び迷宮へ逃げ込む。



その頃、ブチャは短剣を回収し、新たな猟犬を一匹生み出して狩りを続けていた。


カスターは血まみれの手で腹を押さえ、書棚にもたれながら進む。本には血の跡が一本の線となって残っていく。


「カスター様!」

またニーナがカスターの前に現れた。


「またか!?」

カスターは顔を青ざめさせ、即座に背を向けて逃げる。


「待ってください、カスター様!」ニーナは数歩で負傷したカスターに追いつき、肩へ手を置いた。

「その短剣を私に渡してください。もう走れないでしょう!」


「両手を開け。俺に背中を向けろ。」カスターは命令した。


ニーナは素直に従った。武器は何も持っていない。それを確認して、ようやくカスターは警戒を解いた。


「お前……どれだけ危険か分かってるのか……」


「分かっています……でも、みんな頑張ってます。私だけずっと隠れてはいられません。」

ニーナは力強く頷いた。


カスターは本をかき分け、近くの迷宮を覗き見る。猟犬もブチャも近くにいないことを確認すると、他に選択肢はなく、短剣を渡した。


「気をつけろよ……無茶するな!」


「はい、お任せくださいカスター様。どうかちゃんと休んでください!」

ニーナは短剣を受け取ると、慎重に角から外を確認した。安全を確かめてから、その場を離れる。


「ふっ……AI、か……はぁ……」カスターは苦笑し、ようやく水たまりに腰を下ろすと、安心して携帯食料を口にし、休息を取り始めた。



その頃、別の迷宮では激しい追走劇が繰り広げられていた―――


「俺を狙えよ! バカ! 追ってこい!!」一樹は走りながら叫ぶ。


ブチャはますます速度を上げ、額には何本もの青筋が浮かび上がった。この忌々しい迷宮ネズミを必ず殺すと誓うように。


その頃、カルロフ、ナスティア、ニーナはすでに中央エリアへ到着し、三つの魔石を協力して破壊していた。


三人が近づくと共鳴音が激しく鳴り響き、一樹の猿芝居じみた大騒ぎだけでは引き留められない。


ブチャは共鳴音を聞いた瞬間、高空へ飛び上がり、魔石を破壊している三人へ視線を固定した。


「もっと力を入れろ、ほら、お嬢ちゃんたち!」カルロフは軽々と一つの魔石を叩き壊す。


ナスティアとニーナも必死に叩き続けた。あと少しだ。


ブチャは三人へ向けて光の槍を投擲する。


「急げ!!」


その時、ナスティアも破壊を終えた。残るはニーナだけ!


ガァン!


カルロフは立ち上がり、大剣を横に構えて攻撃を受け止めた。しかし光槍は砲弾のように重く、彼は数歩押し戻され、今にも倒れそうになる。


その瞬間、黒い影が上空を掠めた────


ドォン!!!!!!!!!!!!!


ブチャが空から叩き落ち、一撃でカルロフを地面へ踏み潰す。


「ふ……ふざけるなぁ!!」

カルロフは怒号を上げながら身体を起こそうとする。


だがブチャの足はまるで巨大な岩盤の如く重く、彼はまったく動けない。


ブチャは掌を開き、光槍を自動で手元へ呼び戻す。そしてその切っ先をカルロフの眉間へ向けた───


「うおぉ~!」ニーナはカスターの動きを真似し、体重を短剣へ乗せた。ついに魔石ごとルーンを叩き割った。


「うああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

ブチャは再び全身を貫く痛みに悲鳴を上げ、その場へ倒れ込んだ。


三人は短剣を抜き、一斉に大天使長へ斬りかかる。カルロフはさらに一気にブチャの脚部装甲を削ぎ落とし、彼女を一瞬で血まみれにした。


「グオォォォ!!!!!!」ブチャは怒号を放ち、衝撃波で三人を吹き飛ばす。


彼らは完璧な連携で、それぞれ迷宮へ逃げ戻った。


「目覚めよ、我が眷属。」

ブチャは再び黒翼で自身を包み込む。


その周囲から複数の黒煙が湧き上がり………五匹の猟犬が同時に現れた。



カスターは書棚越しにその光景をはっきり見ており、慌てて迷宮のさらに奥へ逃げ込む。


「なんとかして皆に知らせないと……」


ニーナ、ナスティア、カルロフ、一樹――行動可能な四人はそれぞれ迷宮へ潜伏していた。そして場に存在する短剣は三本しかない。


カスターとマキフ、行動力の低い二人は南北それぞれの迷宮へ隠れていた。


猟犬たちは散開し、別々の方向から迷宮へ侵入する。


今やその尾は黒い線となってブチャの手へ繋がっていた。ブチャ自身は微動だにせず、直接猟犬を操っている。


「まずい! 一部の行き止まりには捕獲檻があるって伝え忘れた……水の下に薄い琥珀色の印があるのに……」ナスティアは思い出し、激しく後悔した。


複数の吠え声を聞き、猟犬が増えたと悟る。危険すぎて叫ぶことはできず、彼女は急いで迷宮内の捕獲檻を探し始めた。


その時、彼女のいる迷宮エリア中央へ、一筋の光柱が天から降り注いでいるのが見えた。好奇心に負け、近くまで走って確認するが、特に異常はない。


「……触らない方が良さそうね……」彼女は避けることにした。



猟犬は鼻を水面へ近づけ、慎重に匂いを嗅ぐ。


呼吸で水面の反射が揺れ、血の汚れが広がった。


猟犬は顔を上げると、書棚に残された血痕を辿りながら加速していく………


血の匂いはますます濃くなる。


ブチャは口元を歪めて笑い、猟犬をさらに加速させた。そして突然、尻尾を振るように行き止まりへ飛び込む─────そこには隅で縮こまるカスターがいた。


彼は動かず、身体を丸めて猟犬に見つからないよう祈る。


だが、下には大量の血が滲んでいる。どうして猟犬の鼻を騙せるだろうか。


この行き止まりには捕獲檻ギミックも存在しない。カスターは裸一貫で、まったく抵抗手段がなかった。


猟犬は二度吠え、牙を剥いてカスターへ飛びかかり、そのまま噛みつく。


ブシュッ──


ブチャはすぐ眉をひそめた。この空っぽの感触は………。


猟犬は狂ったように頭を振り回し、周囲の書棚へ大量の血を撒き散らす。しかし咥えていたのは、血塗れの装備品だけだった。


「寒っ………こんな無様なの初めてだ。」


半裸のカスターは震えていた。血塗れの革鎧を行き止まりへ残して猟犬の注意を逸らし、その隙に反対方向へ逃げていたのだ。



ニーナはすでに書棚の隙間から猟犬を発見していた。


だが彼女は逃げず、わざと一定距離を保ちながら猟犬を視界へ収め続ける。



逆に一樹の運は最悪だった。彼の潜伏エリアには二匹の猟犬が捜索に来ていた。


彼もまた怪しい光柱を避け、別エリアへ逃げ込む。幸い霊体の特性のおかげで、走る音はほとんどしない。


二度曲がり、一本の書棚通路へ飛び込む。


その時、一樹は書棚の隙間越しに、隣の小道にいるニーナを見つけた。彼女は険しい表情で前方を睨んでいる。


「ニーナ、早く逃げろ! 犬が来るぞ!」

一樹は声を抑え、書棚越しに呼びかけた。


ニーナはすぐ怯えたように一樹を見つめ、全身を震わせる。


「大丈夫だ、あいつらは俺の後ろ───」

一樹はニーナを安心させようとした。


「早く逃げてください、一樹様!!」

ニーナは書棚へ張り付き、一樹の側へ手を伸ばしながら前方を指差す。


そこには一匹の猟犬がちょうど通路口で匂いを嗅いでいた。そしてゆっくり振り返り、一樹と目が合う。


「冗談だろ……」


一樹は即座に振り返る────すると、もう二匹の猟犬が反対側を塞いでいた。


彼はニーナは書棚越しに視線を交わす………


ニーナは突然息を吸い込み、猟犬の注意を引こうと叫ぼうとした。


一樹は即座に片手で彼女の口を塞ぐ。


「近すぎる! お前じゃ逃げ切れない!」


三匹の猟犬はゆっくり顔を上げ、通路中央で虹色の灯りのエフェクトによって目立っている一樹を見つけ、激しく吠え立てた。


「一樹様!」

ニーナは書架の隙間から手を伸ばし、共鳴短剣を彼の手へと押し込んだ。


一樹は短剣を見下ろし、再び心臓が激しく跳ね始めた。


「よし……お前は逃げろ……走れ、ニーナ!」


「頑張ってください……!」

ニーナは頷き、後ろ髪を引かれるように去っていく。


「ワンワンワンッ!」


猟犬は血塗れの牙を剥き、前後から同時に襲いかかる!


「くそっ! 来いよ!! うおおおぉ!!!!!!」


一樹に聖杖さえあれば、まだ何とか戦えたかもしれない。だが彼は近接武器にはまるで不慣れだった。


三匹の猟犬が同時に跳びかかり、迷宮へ一樹の咆哮が響き渡る。


...


「この光、何なんだ?」


カルロフ――考えるより先に動く彼だけが、迷わず奇妙な光柱へ飛び込んだ。


全員の身体から瞬時に白光が噴き出し、さらに高周波の共鳴音が鳴り続ける。


今回の共鳴音は強烈で、浅い水面へ細かな波紋を無数に立てた。しかし耳は痛くない。


ちょうどその瞬間、三匹の猟犬が一樹へ飛びかかり、噛みついた―――


ぷすっ、ぷすっ、ぷすっ!


猟犬たちは一樹へ触れた瞬間、光の塵へ変わって消滅した。


「えっ?!」


一樹は大喜びし、自分の身体を見下ろす。すると、まったくの無傷だった。


ナスティアは猟犬の背後からすり抜けようとした。しかし突然、身体が発光しながら共鳴音を鳴らし始め、すぐ猟犬に見つかる。


だが猟犬は怯えた悲鳴を上げ、尻尾を巻いて逃げ出した。


「逃げた……?!」


ナスティアは呆然と猟犬を見つめる。



「こ、これは………まさか……」


カスターもこの急変に気づき、発光する自分の身体を見て叫ぶ。


狩人が獲物になる─────


「パックマン?!」


カスターはすでにギミックの正体を察していた!!

...



皆さん、今回のダンジョン編はいかがでしたでしょうか?


もし気に入っていただけましたら、ぜひ感想を書き込んでくださると嬉しいです!よろしくお願いいたします!。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。


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