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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第二十三章——マグドール大書庫
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291 マグドール大書庫

ロシアサーバー、幽語の森――


ナスティアの小隊は族長の手がかりに従い、流れの緩やかな泥の川を見つけると、迷わず飛び込んだ。

水は顎まで届き、彼らはつま先立ちで顔を上げながら進まなければならなかった。


「まさか森の精霊が我々を認めていないから、水位を下げないのか?」

背の高いカルロフは肩までしか水に浸かっておらず、余裕そうに言った。


「何が……森の精霊だ……。そもそも……まだ潮が引く時間じゃないだろ………」

普段は何事にも動じないカスターも、川の中ではひどく不器用だった。


突然、水位が一気に腰の高さまで下がった。


「ほら~森の精霊に感謝しとけよ」

一樹は冗談めかして言い、片手をかざしてスキルの力で川全体の水位を力技で押し下げた。


だが川の水は何らかの力に守られている。

そうでなければ、一樹はすでに川を干上がらせていた。


小隊は白獣人の手がかりに従い、水面の泡を頼りに潜む巨大蛙を避けながら、左の空に妖精が飛んでいないかをじっと見張った。


「もしかして、妖精ってこの光の点のこと?」

ナスティアは我慢できず、左側の湿った川壁を指さした。


水位が下がったことで、泥壁の中から黄色いダイヤのような粒が少し露出していた。

それはまるで、妖精が飛び去った後に残した光の粉のようだった。


「知るか……さっさと進むぞ……」

カスターは濡れた泥がひどく嫌で、不機嫌そうに言った。


道中、彼らは何も見つけられなかった。

二時間が過ぎ、水位は足首ほどまで下がり、河床には巨大蛙が住む大穴がいくつも見えていた。


「待って……私たち、何かを見落としたはず……」

ナスティアは全身泥まみれのまま、立ち止まって休むことにした。


カスターは後ろを振り返り、怪訝そうな顔をした。


「どうした?」

一樹が尋ねる。


「黄色いダイヤが消えた……」

カスターは左側の川壁にあった黄色い結晶が消えていることに気づいた。


「でも、扉も穴も見つからなかったよね?」

ナスティアが問い返す。


小隊は沈黙に包まれた。

誰にも答えがわからない。


一樹は秘鍵を取り出し、それが淡く光っていることに気づいた。


数歩前へ進むと、秘鍵の光は今にも消えそうなほど弱まる。


二歩下がると、再び光が強くなった。


彼らは元来た道を行ったり来たりして試し、秘鍵が最も強く光る位置に立った。

そこはちょうど、黄色い結晶が最も密集していた場所だった。


「大書庫の扉って……ここにあるのか?」

一樹は首を傾げた。


だが全員で川道を探しても、何も見つからない。


「俺に試させろ」

カスターが一樹へ近づくと、秘鍵の光が再び弱まった。


「止まれ!」

一樹が慌てて叫び、カスターは即座に身体を固めた。


「後ろへ下がってみてくれ……」


カスターが離れるにつれ、秘鍵の光は強くなっていく。


「分かった! みんな、川岸へ上がれ!」

一樹は大胆な仮説を口にし、全員が両側の岸へよじ登った。


秘鍵が突然、眩いばかりの輝きを放つ。

さらにゆっくりと回転し始め、鍵先が一樹の二歩前にある水面を指した。


一樹は浮かぶ鍵を握ったまましゃがみ込み、水へ手を伸ばす。

すると川の水が自動的に左右へ割れ、紋様が刻まれた石板が現れた。


「まさか……」


一樹が周囲の泥を払い除けると、この一帯の河床すべてが紋様入りの石板で敷き詰められていると分かった。

妙に滑らかな感触だったのも、そのせいだ。


彼は石板の中央まで歩き、小さな黒い穴へ秘鍵を差し込む。


「……………………………」


全員が息を呑んだ。


ゴゴゴ……


前方の河床が突然沈み込み、周囲の川水が次々と地下へ流れ込んでいく。


下には隠された排水口があるらしく、川の水が丸ごと干上がっていった。


河床の中から、古びた苔むした石階段が姿を現す………


「……開いたな」

一樹は笑い、小隊を連れて河床の下に広がる未知の空間へ足を踏み入れた。


「狭すぎだろ……ドワーフ用かよ……うわっ!」

大柄なカルロフは腰を曲げないと小さな通路へ入れず、その瞬間に足を滑らせて転倒し、後ろにいたニーナの脚を掴んだ。


【システムメッセージ: マキフ あなたへの好感度-40】


「きゃあ~!」

カルロフとニーナは同時に悲鳴を上げ、そのまま階段の底まで滑り落ちていった。


視界が高速で流れていく。


ドンッ!

カルロフは階段の底にある石床へ激しく叩きつけられた。


「うぅ~あっ!」

後ろからニーナの悲鳴が聞こえる。


カルロフが振り返ると、ニーナはちょうど宙へ投げ出されていた。

大切にしていたイチゴ飴が、パラパラと空中へ散らばり、そのまま頭から地面へ落ちそうになる!


彼は間一髪で腕を伸ばし、彼女を抱き止めた。


【システムメッセージ: ニーナ あなたへの好感度+20】


「ありがとうございます……カルロフさん」


「いや、謝るのは俺の方だ。大丈夫か?」

カルロフはニーナの顔や手に傷があるのを見て、心配そうに尋ねた。


「心配させてしまってごめんなさい……怪我はしてません……」

ニーナは微笑んだ。


カルロフは彼女がまた怪我を隠しているのではと不安になり、そのままニーナを床へ下ろすと、慌てて服の裾をめくろうとした。


「えっ!? や、やめてください……な、何をしてるんですかカルロフさん?」

ニーナは真っ赤になりながら服を押さえた。


【システムメッセージ: ニーナ あなたへの好感度+3】


「ニーナ!」

マキフがよろけながら階段の底へ駆け下り、すぐに彼女を支えた。


「ニーナ、大丈夫か!?」


「怪我してない!?」


他の仲間たちも駆けつけ、次々とニーナを気遣った。

誰一人としてカルロフを気にしていない。


「ほらよ、哀れな奴」

カスターはカルロフへ回復薬を投げ渡した。


「何が哀れだ。俺は怪我なんてしてない」

カルロフは回復薬を受け取り、一気に飲み干す。


「はぁ~、かーわいそっ」


「エルフ………やっぱり加奈の情報は正しかったな……」

一樹は肩に火を灯し、明かり代わりにした。


階段の底には二体のエルフ像が立っている。


一体は重鎧をまとい、弓を構えていた。


もう一体は軽装鎧姿で、剣と盾を握っている。


像の中央には七色の水晶で装飾された石扉――水晶の扉があった。


「扉の向こうの悪魔には気をつけろ………」

カルロフが手をかけて押したが、水晶の扉はびくともしない。


全力を込めても開かず、マキフまで加勢したが無駄だった。


「たぶんギミックだな……」

ナスティアはすぐ周囲を見回した。

だが、あるのは彫像だけで他には何もない。


「配置がアベコベなんだよ?」

カスターは二体の像の装備を入れ替えた。


カチリ、と水晶の扉が解錠される。


「くだらねぇ~」

カスターは鼻で笑い、指一本で水晶の扉を押し開けた。


その瞬間、小隊は目の前の光景に圧倒された。


【システムメッセージ: マグドール大書庫 を発見】


正面には高さ二メートルを超える巨大な本棚。

大量の本が床へ散乱し、本棚に残る本は紫黒い魔力の網で封印され、取り出せなくなっていた。


彼らが大書庫の天井を見上げると、中央の丸いドーム天井から淡い水色の光が差し込み、宝庫内部を青白く照らしていた。


「獣人ってやっぱり………発展の余地がある文明なんだな……」

ナスティアは床の水たまりから水浸しになった本を拾い上げた。

だが文字は滲み、もう読めない。


「想像できるか……ここがマグドール大書庫、古代エルフの蔵書庫なんだ」

一樹は本棚へそっと手を触れ、数千年封印されていた歴史遺産に自分の指紋を残した。


「ただの湿気った書庫の何がそんなに特別なんだ?」

カスターが尋ねる。


「大半の隠し種族、ストーリー、それにNPC攻略法が分かるらしい。運が良ければエルフの魔導書を見つけて秘術も習得できる」

一樹は周囲を見回した。

大書庫もまた円形構造になっており、本棚によって迷宮のように区切られている。


天井の空気密度を操作し、全反射の鏡面を作り出して迷宮全体を俯瞰しようとした、その瞬間――


【警告:現在のエリアでは、すべての魔法およびスキルは『対象無効』となります】


一樹は驚愕し、ナスティアにも試させたが、やはり発動しなかった。


「たぶん……あの悪魔のせいだな……」

一樹は眉をひそめた。


「別れて出口を探すか?」

カルロフが尋ねる。


「絶対に駄目だ。一緒に動く」

カスターは断固として反対した。


小隊は全員で迷宮へ入ることに決めた。


左右へ曲がりながら罠を警戒して進むうち、中心へ近づくほど本棚の封印紋が増えていくことに気づく。


複雑な迷宮で一時間ほど迷った末、ようやく出口へ辿り着いた。

淡い青い光が彼らを待っている――


「嘘だろ………」


全員が同時に足を止め、息を呑んだ。


大書庫の中央には、巨大な女エルフが囚われていた。

その身体は蔦に絡みつかれ、身動き一つできない。


漆黒の甲冑をまとい、両手で巨大な槍を握ったその女エルフは、円形の魔法陣の上で片膝をついていた。

石盤の周囲には、紫色に光る十二枚の魔石が並んでいる。


「こんなデカいエルフがいるのかよ!?」

カスターは驚愕し、呆然と立ち尽くした。


「大天使長………」

一樹は額に大量の汗を浮かべ、顔色を青くしていく。


「大天使長って……精霊女王のライと共に前線に立ち……あの大天使長?!」

ナスティアは必死に声を抑えながら、震え声で問いかけた。


「そうだ……しかも俺は、こいつの名前を知ってる…………」

一樹は黒い片翼と巨大な槍を見た瞬間、このエルフの正体を悟っていた。


「ブチャ………」


一同は恐怖で一歩後ずさる。


ロシアサーバーのブチャはゆっくりと顔を上げた。

だが一樹が見たのは、かつての優しい眼差しではない――悪魔のように凶暴な赤い瞳だった。


ロシアサーバーの深層が、ついに姿を現します。


そしてここから、物語はさらに大きく動き始めます。


ブックマークも本当にありがとうございます!

皆さんに楽しんでいただけていることが、何より嬉しいです!


その感謝も込めて――

このあと、追加でもう1話更新いたします!


さらに明日も追加更新予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください!


それでは、新エピソードへ――!

。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。

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