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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第二十三章——マグドール大書庫
291/353

290 歪みきった試練

「魔獣使いの四次転職って、一体なんなんだろ……?」

真子は空羽谷で魔物を斬りながら、転職条件について考え込んでいた。


「すみません、真子さんですか?」

突然、後ろから女性プレイヤーが大声で呼びかけた。


真子は振り返る。

見知らぬ相手だった。


「真子に何か用?」

真子は見ず知らずの相手を前に、警戒を解かなかった、探るように返した。


「やっぱり真子さんですよね? 紫のウェーブ髪に白ローブ、それに大剣を背負った魔導士なんて他にいませんし」


真子は視線を落とす。

確かに、自分の見た目はかなり特徴的だった。特にあの大剣は隠しようがない。


「……うん」


「さっき、あるプレイヤーからこれを真子さんに渡してくれって頼まれたんです」

女プレイヤーは赤い封蝋で閉じられた手紙を差し出した。


「え? 誰から?」

真子は驚きながら封筒を受け取る。しかし差出人の名前はどこにもない。


「知らないですよ~。500竜貨もらって、渡せって言われただけなんで。それじゃ、失礼しまーす」


真子は背中の木製大剣の柄へそっと触れ、風の流れや地面の振動へ耳を澄ませた。

異常は感じられない。


追跡されていないことを確認するため、崖沿いの巨岩の陰へ隠れてから封を開く。


「人を信じ、甘さを見せた代償は十分味わったか?

絶望から得たものはあったか?

周囲を守るため、自ら堕ちる覚悟はあるか?

答えを知りたければ、ハゲグの酒場へ来い」


その手紙は隕石のように真子の記憶の海へ落ち、大量の血塗れの記憶を呼び起こした。


あの小屋……

あの手枷……


復讐の快感を、彼女はまだ覚えている。


真子は怒りで胸を震わせ、紙をぐしゃぐしゃに丸めて崖下へ投げ捨てた。


「出てきて!」


返事はない……。


「くそっ……」


ハゲグ酒場――


「いらっしゃいませ真子様、本日は―――」

NPCメイドは真子を見るなり愛想よく声をかけたが、完全に無視された。


真子はホール中央の空席へ向かい、ドンッと大剣を叩きつけるように置いて腰を下ろす。

その音だけで酒場中のプレイヤーが静まり返った。


それでよかった。

自分がここへ来たことを、全員に知らせたかった。


真子の胸の奥では、名もなき怒りが燻り続けていた。まるで炉のように熱く、激しく。


――だが。


その異常な精神力は抗体のように感情を呑み込み、二分後には船を漕ぎ始めていた。


ツンツン。


「すみません、真子さんですか?」

誰かが真子の肩を軽く叩く。


真子は飛び上がるように驚いた。


「誰!?」


茶髪の男プレイヤーは慌てて紙を置き、そのまま真子から逃げるように離れていった。周囲の客たちも奇妙そうな目を向けてくる。


真子は一気に顔を真っ赤にし、紙を拾って酒場を飛び出した。


「北の山岳地帯に狼煙が上がっている場所がある。

洞窟へ入れ。

試練がお前を待っている」


真子は街の大噴水で顔を洗い、無理やり頭を冷やした。

その後、手紙を燃やしてから出発する。


北の山々へ辿り着いても、狼煙は見当たらない。


真子は次第に不安になっていった。

「……からかわれてるの?」


さらに山脈へ近づくと、森の中から一本の濃い煙が立ち昇っているのが見えた。

明らかに誰かが自分を監視している。


真子は即座に大剣を抜き、魔狼を呼び出して前進した。


山岳地帯の中央へ辿り着く。

そこには小さな平地があり、大小無数の穴が地面に空いていた――だが、一つだけ巨大な洞穴の前に白煙を上げる焚き火が置かれている。


真子は足音を殺して洞窟入口へ近づき、そっと中を覗き込んだ。

奥には開かれた鉄扉がある。


真実はすでに禁断の果実となり、真子は抗えなかった。

ステータス画面を開き、異常状態がないか確認する。そして毒で眠らされないよう、鼻の下へ対毒軟膏を塗った。


深呼吸――。

真子は大剣で鉄扉を押し開き、三匹の魔狼を連れて中へ進む。


暗い洞窟は地下深くへ続いており、最奥からかすかな火の光が漏れていた。


真子は炎の大剣を呼び出し、鉄扉を破壊する。

閉じ込められる危険を防ぐためだ。


「よし……行こう……」

準備を整えた真子は地下道へ踏み込んだ。


湿気が濃くなり、鼻の奥には埃の匂いが詰まる。


真子は鼻を押さえながら炎の大剣を掲げ、さらに奥へ進んだ。

やがて階段の最下層へ辿り着く。


身をかがめて石造りのアーチ門を潜った瞬間、耳に無数の反響音が飛び込んできた。

どうやらここは巨大な密閉空間らしい。


「ぅぅ………」

死にかけたような呻き声が、暗闇の中で反響する。


「えっ!?」

真子は気づいた。

先ほど地下道の奥で見えていた火の光が消えている――誰かが火を消したのだ。


真子の驚きに満ちた声が洞窟全体に反響し、それに応じるかのように、不気味な呻き声が闇の奥から次々と湧き上がってきた。


まるで幽霊屋敷へ迷い込んだようで、恐怖に足が震えた。


突然、足元を何かが掠める―――


「ひゃああっ!!」

真子は裏返った悲鳴を上げ、魔狼たちが即座に飛び出して熱い体で彼女を囲った。


恐る恐る下を見る……。

そこにあったのは篝火の鉄皿だった。


真子は大きく安堵し、鉄皿の薪へ火を灯す。

すると暗黒だった空間の全貌が明らかになる。


「ここ……一体どうなってるの……」


全身傷だらけの人々が、両手を鉄鎖で吊るされ、半ば膝をついたまま並んでいた。


真子は意を決して、最も近くに囚われている者へと足を進めた。


「勇……勇者様………助けて………」

その男は弱々しく呟いた。


「NPC!?」


真子は地下空間の奥を見つめる。

その闇は果てが見えなかった。


「ここには三十四人のNPCがいる」

遠くから冷たい声が響く。


「誰!? どうして私をここへ連れてきたの!?」

真子は即座に戦闘態勢へ入り、黒のローブまで装備した。先手必勝で仕掛けるつもりだ。


「真子……ここが、お前の修練場だ」


六口弥生が影の中から姿を現し……冷たく言った。


「六口お姉ちゃん!?」


六口弥生は真子へ歩み寄りながら、バッグから木椅子を二脚取り出す。


真子は疑うことなく腰を下ろした。


「真子……まず私が夢葬者に化けた偽物じゃないか確認しなさい……」

六口弥生は呆れたように溜め息をつく。


「しまった!」

真子は慌てて立ち上がり、大剣を向けた。


【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 ログイン】


【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 ログアウト】


「おいで、バカ」

六口弥生は苦笑する。


「六口お姉ちゃん、ほんとに怖すぎるよ……」


「ここが怖いのは事実よ。私でも残酷すぎると思う」


「このNPCたちって、魔王と関係あるの?」


「違う………全員、一流の商人や鍛冶師、それに調教師たちよ」

六口弥生は眉をひそめた。

燃え盛る薪の火が、二人の影を壁へ揺らしていた。


「商人、鍛冶師!? どうして?」


「ナスティアは知っているでしょう? ロシアサーバーの鍛冶師商会は、彼女のために革命を起こして、ボス級NPC化して彼女の陣営に加わって戦った。実力は平凡だけど、HPは異常に高い。そのうえ状況を自分で判断して自律行動する。万が一、うちのギルドが通信不能の窮地に陥ったり、分断包囲されて統一行動できなくなったりした時、このNPCたちは役に立つわ」

六口弥生は重々しく言った。


「えっ!? NPCの好感度って、そんなに多くの設定を引き出せるの? でも………六口お姉ちゃんと彼らの好感度、氷点下まで落ちてない?」

真子はずっと本サーバーに残っていたため、ロシアサーバーの状況を知らなかった。


「私は闇市の名義で彼らをここへ誘い出し、武力で監禁した。最初から最後まで黒衣をまとっていて、正体は明かしていない。だから今こうして素顔で会っても、彼らは私に何の感情も持っていないわ」

六口弥生は笑った。


「それで……私の修練って?」


「あなたには彼らの精神を砕いてもらう。そのうえで、あなた独自の方法で好感度を上げ、NPCボス軍団を作る」

六口弥生は一息で、簡潔に答えた。


「NPCボス軍団………?!」

真子はたちまち青ざめ、壁の拷問器具を見た。


「これが……あなたの試練よ……」

...


ハゲグ北の森、リオの秘密実験室――


「護心石がある……怖くない……」

リオは白い圧縮魔力結晶が詰まった大袋を抱え、湯気を上げる大鍋へ流し込んだ。


「来い! 俺を新世界の王にしてくれ!!」


大鍋が突然、強烈な光を放つ―――


ドォン!!!!


【システムメッセージ: フレンド リオ HP残り20%】


【システムメッセージ: フレンド リオ HP残り0%】


森の中に巨大なキノコ雲が立ち昇った………



待ってくれ……リオ、お前まさか本当にやったのか……?

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