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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
【第二部】 第二十二章——冷戦
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286 「人間は、結局いつも同じ過ちを繰り返す……」

ロシアサーバーのハゲグ城を攻略したという報せは、瞬く間に本サーバーへと伝わった。しかし、征服と勝利の余韻に浸っているその裏で、水面下の危機はすでに動き始めていたのだ――

【システムメッセージ: 第五回王都戦争 終了】


【ムー大陸各王都の戦報。

プラムス中央要塞──防衛成功。反乱軍ギルドが支配中。

ヴィニフ宮殿──防衛成功。反乱軍ギルドが支配中。

グズ湿台──防衛成功。黒獅子ギルドが支配中。

ハゲグ──防衛失敗。02日09時間前より基虫族が支配中】



【システムメッセージ: ハゲグの鍵 獲得】


一本の鉄の鍵が魔都制御室の上空に浮かび、ゆっくりとニフェトの前へ降りてきた。


「みんな……私たち、ロシアサーバーで初めての王都を落としたよ!」ニフェトは鉄の鍵を高く掲げた。


「最高だ!!」

皆から熱烈な拍手が湧き上がった。



「彼女たちは承諾してくれると思う?」ナスティアは不安そうに尋ねた。


「ニフェトはかなり説得しやすいけど、残念ながら副長の六口弥生の立場は、岩のように固いんだ。たぶん承諾しないと思う」

一樹かずきは苦笑した。


「ハゲグを一か月だけ持たせてもらって、財産を蓄え、人手を集めるだけだ。やりすぎじゃないだろ? 俺たちは神官が深刻に足りない。今は傷の手当てもニーナ一人に頼っている。危険すぎる」

カスターは一樹かずきに理詰めで訴えた。


「もちろん分かっています。でも、僕の影響力も限られていますし……」


ナスティアの部隊は魔都の城壁下まで来ていた。

「分かってる。一樹君、無理しなくていいから……」


「できるだけ――」

一樹かずきが真剣に答えようとした瞬間――ヒュン!


一本の弩矢が彼の眉間を貫いた。


一樹かずきは白目をむき、鼻血を噴いて倒れ、気絶した。


「一樹君?!」ナスティアは驚愕し、すぐに魔都を見上げた。


「自殺任務に参加して格好つけたかったんでしょ! だったら叶えてあげるわよ!!」

城壁の上から加奈の怒号が響いた。


黄肌のゴブリンの一団が城内から走り出し、一樹かずきを担いで制御室へ戻した。


「加奈! お腹を撃つって言ったじゃない!」ニフェトは仰天し、急いで一樹かずきを転送門から本サーバーへ戻させた。


「安心して。あの弩は加奈の特注品だよ。弦には普通の牛毛しか使ってないから、殺傷力は道端の小石を蹴った程度。頭に当たっても即死しないよ。ひひ」

リオはずる賢く笑った。



「ハゲグをあなたに持たせる……」

ニフェトはナスティアの提案を真剣に考えた。


「却下。彼女がハゲグを狙っていることは最初から分かっていた」

六口弥生は即座に拒絶した。


「でも、彼女がハゲグを引き受ければ、私たちは守れる場所を持てる。前みたいに巣穴を奇襲される危険もなくなるよ」

ニフェトは問い返した。


「私はむしろ、彼女が何を根拠にハゲグを管理できると自信を持っているのか気になるわ。彼女の部隊は十人もいない。それに、ロシアサーバー中が、ハゲグを落としたのは魔王だと知っている。誰がわざわざ近づくの?」

アンドリアは不思議そうに尋ねた。


「それでも一か月くらいは守れるでしょ? 城戦が近づいた頃に領主の鍵を渡してもらえばよくない?」

ニフェトは双方に利のある案を出した。


「彼女が私たちを裏切ったら? 私たちは攻城戦で資源を使い切って、白獣人の東部森林地帯へ移らなければならない。この可能性をどう解決するの、ニフェト?」

六口弥生は問い返した。


「私たちだって最初は信頼を前提に――」


「彼女は、私たちがハゲグの鍵を白獣人へ渡すと知っているわ」

アンドリアはニフェトの言葉を遮った。


「だからこそ、彼女も利益を分けてもらいたいんでしょ? 別におかしくないよね?」

ニフェトは周囲の反対を押し切り、理屈で食い下がった。


「でも、余計な火種は増やさない方がいいかな~。それより私は、このレジェンダリークエストの報酬が何なのかの方が気になるし」

アンドリアもハゲグの鍵を渡すことに反対した。


「ニフェト~。直接お金と装備を渡せばいいじゃん? 彼女なら聖職者を集める方法くらいあるでしょ」

六口弥生は別案を出した。


最終的にニフェトは二人の意見に同意し、ナスティアの前へ戻って、自分たちの懸念を正直に伝えた。


カスターはすぐに警戒心を強め、彼女たちをじっと見つめた。


ナスティアは大袋いっぱいの竜貨を持ち上げ、苦笑した。

「うーん、まあ。あなたたちが承諾しない可能性が高いことは分かってたよ。でも、このお金はちょうど必要だった。最低でも一人か二人くらいは聖職者を引き込めるかもしれないしね」



「私たち、砲台の牽制を任せるって約束してたよね? どうして直接ギルドの礎石を攻撃する方を選んだの?」

六口弥生は不意に問いかけた。


「俺の提案だ。直接ギルドの礎石を狙った方が、ハゲグを早く落とせるだろ?」

カスターは自分から名乗り出て、逆に問い返した。


「へぇ~、賢いじゃない」

六口弥生は笑顔だけ浮かべ、心の中でカスターの顔を刻み込んだ。


両陣営は広場で黙ったまま見つめ合い、気まずい空気が流れる。


「加奈! お前、もう少しで俺を殺すところだったぞ! ソフィアが大聖堂で待機してなかったら、出血死してたんだからな!」

一樹かずきは尖塔から浮かび上がり、加奈へ怒鳴った。


「はぁ? あんたって死ぬの怖いの? ナスティアに協力する時はあんなに格好つけてたくせに。それに、なんであの夜は接続状態をオフラインにしてたのよ!?」

加奈は激怒して言い返した。


一樹かずきはすぐに後ろめたそうな顔になった。

あの夜、ナスティアとデートしていた時、状態をオフラインにしていたため、皆は何が起きていたのか知らなかったのだ。


「な……何してたって!? ちょっとくらいプライバシーがあってもいいだろ!?」


「ダメ! 絶! 対! に! あんたは今後、おとなしく魔都の中にいなさい!」

加奈と一樹かずきの口喧嘩は終わる気配がなかった。


ナスティアは思わず吹き出した。

「このサーバーのプレイヤーたち、うちのサーバーよりずっと面白いね」


「もうやめなよ。早く幽語の森へ戻って、できるだけ早くハゲグの鍵を族長へ渡して」

ニフェトは笑いながら、ナスティアの部隊と一樹かずきを魔都から送り出した。



深夜、魔都には数人しか残っていなかった。


「ふぁぁ~……」

リオは大量の魔力の欠片が入った箱を転送門へ運び、本サーバーへ送ろうとしていた。すると、加奈が城壁の上に座っているのを見つけた。


「寝ないの?」

リオは加奈へ歩み寄って尋ねた。


加奈は考え込んでいて、リオが近づいたことに気づかなかった。慌てて何かをバッグへ押し込む。


「べ……別に、あんたには関係ないでしょ!?」


「なんか元気なさそうだったから、心配しただけだよ」

リオは眉をひそめて言った。


「余計なお世話! ザコ!」


「はぁ~ほんと素直じゃないな。一樹の言う通り、もう少し態度が良ければ絶対モテるのに~」

リオは気まずそうに振り返り、その場を離れた。


加奈はバッグから小さな黄色い花を取り出し、大切そうに握りしめて見つめた。


「誰かは、あんたのために咲いてるんだからね~」

脳裏に、あの時の言葉が蘇る。


「ふんっ!」

加奈は突然腹を立て、その小さな黄色い花を城壁の外へ投げ捨てた。

「別に、あんたが死のうがどうでもいいし……!」


ロシアのハゲグ城を攻略したその時、本サーバーに潜んでいた陰謀もまた動き始めていた……。



本サーバー――


「これで終わり?」

真子は、今回の攻城戦が妙に静かだったことを不思議に思った。


「それだけじゃない。俺たちは二回も魔都へ偵察を送ったけど、霊体は見つからなかった。もしかしたら、新しい魔王はまだ侵入してきていないのかもしれない」

パシュスは答えた。


「この関所をしっかり守ろう。絶対に西軍をここから越えさせるな」

ノクスは眉をひそめて言った。


「真子もそろそろ四次職の研究を始める頃じゃないか?」

古志は、また長い待機期間に入りそうだと察し、話題を変えた。


「私は魔獣使いの四次職、まったく見当がつかないんだよね。何か情報ある?」

真子は逆に尋ねた。


「このゲームに進化図鑑でもあればよかったんだけどな」

古志は苦笑した。


「真子、今の平和な時代のうちにしっかりレベルを上げておけ。歴史上、どれだけ強大な帝国でも、いつかは崩壊する」

ノクスは意味深に言い、西方へ続く街道を見つめた。


羅刹教の血掌軍旗が、彼らへ向かって進んできていた。


「起立!」進軍してくる軍旗を確認したパシュスが鋭く命じると、数百人のプレイヤーが同時に立ち上がり、


「レナ副長、こんにちは~」

ノクスは笑顔で前へ出て、レナを迎えた。


「ノクス、これはどういう意味かしら?」

レナは手を上げ、背後の信徒たちを止めた。


「アンドリア様から、ワスティン大聖堂南部の東西交差路を警備するよう命じられてるんです。ムー大陸で面倒なことが起きないように、ってだけですよ」

ノクスは愛想笑いを浮かべ、部下にレナへ補給品を渡させた。


「銀・K同盟は、王都以外の争いには介入しないって言ってなかった? 前言撤回かしら?」

レナは眉をひそめて尋ねた。


その冷え切った視線だけで、今回の羅刹教の進軍が並の事態ではないと分かった。


「西城勇教主は? 一か月くらい姿を見てないけど」

古志は尋ねた。


「あなたには関係ないわ。さっさと道を開けなさい」

レナは軽蔑したように答え、羅刹教の信徒たちを連れて強引に進もうとした。


「待って! レナ、落ち着けって。何かあるなら腹を割って話そう? 俺たちだって、そんな殺気立った羅刹教を東へ向かわせるわけにはいかないって分かるだろ?」

ノクスは慌てて手を伸ばし、レナを止めた。


「へぇ~。私たちが東へ向かうって知ってるのね。なら、影の旅団が何をやったかも知ってるのかしら?」

レナは逆に問い返した。


皆は顔を見合わせたが、まったく心当たりがなかった。


「知らないなら、そこをどきなさい!」

レナは顔を背け、羅刹教は再び前進した。


連盟部隊はすぐに盾陣を組み、剣呑な空気が張り詰める。

両陣営は胸が触れ合うほどの距離で睨み合った。


「レナ。俺たちは、お前たち羅刹教を通すわけにはいかないんだ。感情に任せて間違いを起こすな。君たちのギルドは、まだ銀・K同盟へ挑めるほど強くない……分かるよな?」

ノクスは態度を強硬に変えた。


「それがあなたたちのやり方? プレイヤーの自由意志を押さえつけるの?」


「西の羅刹教だけじゃない。東の影の旅団も同じだ。どちらも絶対に通さない」

ノクスは胸を叩いて断言した。


「あなたたちはロシアサーバー侵攻で忙しくて、卑劣な小細工に気づいてないのね」

レナはそう言うと、数十枚もの影の旅団のギルド旗を地面へ投げ捨てた。


「最近、羅刹教が大規模に兵を動かしてたのって、その布切れのため?」

ノクスはわざと軽く扱うように言った。


「布切れ? 一枚ごとに、うちのギルドは数千から数万竜貨分の荷を失ってるの。それに、十人以上のメンバーが暗殺された。これをどう我慢しろっていうの?」


「安心してくれ。連盟が真相を調べる。火野良にも、きちんと説明させるよ」

ノクスは慌てて相手をなだめた。


「あなたたちに心配してもらう必要はないわ。今から直接、火野良を訪ねて問い質してくる」


羅刹教の連中が同盟軍を挑発するように睨みつける。

パシュスは即座に部隊を十メートル後退させ、衝突を避ける。


「ムー大陸は今、すべてが繁栄している。羅刹教だって、この時代だからこそ勢力を伸ばせたんだ。一時の怒りで全面衝突する必要があるのか? 信じてくれ。もし火野良が本当に戦争を煽ったなら、銀・K同盟は絶対に見逃さない。でも今日、この場所で羅刹教が強行突破するなら、レナ、お前が全責任を負うことになるぞ!」

ノクスは、交渉が限界に達したと悟り、武力で威圧した。


レナも同盟の軍事力の強大さを理解していた。

自分たち一ギルドだけでは対抗できないと判断し、羅刹教を後退させる。


「もし今後、うちの縄張りでまたこの旗を見つけたら、全部あなたの責任にするわ。行くわよ、紅蓮山へ戻る!」

レナは小旗を指差し、鬼のような形相でノクスを脅すと、羅刹教を連れて西へ戻っていった。


「休め!」

パシュスは冷や汗を流し、数百人の同盟軍もようやく安堵の息を漏らした。


「皆、平和を当たり前だと思って育った、大人になったらその価値を理解しないんだな」

古志は感慨深そうに言った。


「人間は、結局いつも同じ過ちを繰り返す……」

ノクスは眉をひそめた。



更新が遅れてしまい、大変申し訳ありません! 

( ; ∀ ; )


実は寝坊してしまいました……

そのお詫びとして、今回は一話追加で更新いたします! 

皆さんに楽しんでいただければ幸いです!


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