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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第二十章——深夜の訪問者
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280 【警告: 攻撃を受けています】

数日後、皆は攻城戦の準備を始めた。


「原基虫は物理耐性こそあるけど、HP自体は高くない。集中攻撃を受けたら一瞬で落とされる」ニフェトはユニット画面を開いて言った。


「心配いらない。こちらには数の優位がある。問題は、どこから攻めるかだ。ロシアサーバーのハゲグはすでに人類に占領されていて、建築様式も人類式の石壁と瓦屋根に変わっている。大通りには石畳まで敷かれているから、私たちの地中潜行ユニットでは床を掘り抜けない。正面突破するしかないわ」六口弥生はハゲグの模型を見つめながら言った。


「何か意見はありますか、ナスティアさん」一樹は自らナスティアの野営地を訪れ、尋ねた。


「ハゲグは円形要塞です。東側は海に面していて、港があります。城壁の外では長年耕作が続いていたため、一帯の農地は柔らかい濃茶色の湿地になっています。虫族にとっては理想的な奇襲地点でしょう。ただ、黒邪翼が統治していた時代から、ハゲグの城壁には連装砲が三基、重砲台が二基設置されています。大きな脅威になるはずです」ナスティアは本サーバーの者たちへ、ロシア側ハゲグ城の情報を包み隠さず共有した。


「地面を掘って城壁の下から奇襲すれば、開けた農地を避けられる。同時に銀羽蜻蛉を空から突入させて、敵の火力をかく乱する」ニフェトは城壁を指差して言う。


「もう一つ考えないといけない。虫族ユニットの中で、ギルドホールの鉄門を破れるのは重殻虫だけ。でも移動速度が遅すぎるから、確実に集中砲火を浴びる。ハゲグ城内に突入して、敵の遠距離火力を抑え込む精鋭部隊が必要になる。銀羽蜻蛉だけでは厳しいでしょうね」アンドリアも議論に加わった。


「ナスティアさん。誰かを城内へ潜入させて注意を引きつけ、城門突破部隊に十分な時間を作る必要があります。できますか?」一樹は尋ねる。


「おい、俺たちを捨て駒にするつもりか?」カスターは即座に抗議した。


「綿密な作戦があるなら構いません。でも、仲間の命を危険にさらすつもりはありません。NPCの命も同じです」ナスティアはきっぱり答えた。


「一樹! 彼女に約束を思い出させてよ!」六口は不満げに言う。


「でも、どうやって彼女たちを危険な作戦に納得させればいいんだよ……」一樹は板挟みになっていた。


「もういいわ、あの子はただ……いや、やめておく」六口は言いかけて、議論を打ち切った。


「原基虫は疎水性がある。虫族部隊を彼女たちに同行させて、海路から攻めよう」ニフェトは港を指差して提案する。


「虫族は物量で押してこそ価値がある。少数での隠密には向かないわ。本サーバーで私は似たような失敗をしたことがある」アンドリアはニフェトの案に反対した。


「じゃあ、二方向からの挟撃にする?」ニフェトは再び提案する。


「それじゃ奇襲じゃないわ。そもそも、彼女たちは私たちの陣営に入った時点で危険は承知している。だったら先にこちらが攻撃を仕掛けて、敵の火力を農地側へ引きつければ、彼女たちの危険も減るでしょう」アンドリアは皆よりはるかに攻城戦の経験が豊富で、その判断には自然と重みがあった。


「分かった……」ニフェトは最終的に折れた。


「私たちが先に城壁へ攻撃を仕掛けて注意を引きつける。そのあと君たちが――――」一樹が言いかけた瞬間、カスターが遮る。


「反対だ。俺たちも農地側から一緒に攻める」カスターは断言した。


ナスティアは何も言わず、ふと一樹と視線を合わせる。


「俺も付き合う」彼は勢いのまま、思わず口にしていた。


「おい! 馬鹿か?!」加奈は怒鳴った。


「一樹、勝手なことするな!」六口は鋭く反対する。


「いや……これは一樹の覚悟だよ。私たちは尊重しよう」ニフェトは彼の決断を支持した。


「本気なんですか、一樹さん?」ナスティアは驚き混じりに尋ねる。


「本気かは分からない。でも、もうどうでもいいや」一樹は控えめに笑った。


「一樹さんって……勇敢なんですね」ナスティアは一樹を見直し、思わず唇を軽く噛みながら微笑んだ。


「ナスティア様!!」隣にいたニーナが突然ナスティアへ飛びつく。


ヒュパッ!


「うあぁっ!」ニーナは右腕を撃ち抜かれ、ナスティアの上へ倒れ込んだ。


二人の鍛冶師が即座に立ち上がるが、十数人の暗殺者に滅多斬りにされて倒れる。


「敵襲だ!!」マキフが怒号を上げ、全員が武器を抜いて迎撃した。


だが、暗殺者たちはすでに影も形もなく消えていた。


一行が森の端まで追うと、草原の上に数百人ものプレイヤーが現れる。


「あの黒獅子旗は……ロコフ!」ナスティアは驚愕した。


「全軍出撃! 同盟中のロシア部隊の救出を最優先とする!」六口弥生はナスティアがすでにハゲグ攻略計画の一部になったと判断し、即座に救援を命じた。


「これ以上、蟲どもの好きにはさせん……」ロコフは自信満々に笑う。


一樹は草原へ冷たい霧を吹き広げ、視界を一気に落とした。


ロコフ軍は異常気象など経験したことがなく、ざわめき始める。


白霧の中で見えるのは、一樹の体から放たれる虹色の光だけだった。戦場には似つかわしくない、どこか幻想的な光景だった。


「逃げるんですか?!」ナスティアは驚いて一樹へ尋ねる。


「待って。これ以上北へ進ませちゃ駄目だ。原基虫の巣が見つかる。こっちの部隊も向かってる、もうすぐ着く」一樹が横へ手を払うと、野営地の周囲に背丈ほどの麦草が生い茂り、全員の姿を隠した。


ロシア勢は唖然とし、ナスティアがまた伝説級ボスを従えたのかと思い込む。


「防御陣形!」ロコフの号令一下、黒獅軍は一瞬で陣形を組み替えた。その練度は、誰でも入れる反乱軍とは比べ物にならなかった。


「攻める?」セランはすでに配置につき、問いかける。


「黒獅軍を殲滅できれば、ロシアサーバーは実質的に無力化される。今は反乱軍も不在だ。奴らを滅ぼす絶好の機会だぞ」アンドリアは開戦を主張した。


「ただ、この四百人は簡単な相手じゃない。こちらも全戦力を投入して決着をつける必要がある」六口も、ロシアサーバーを一気に崩壊させる好機だと認めた。


「巣穴の防衛は?」ニフェトは不安げに尋ねる。


「巣では継続的に原基虫を生産している。新兵でも少数の敵なら一定時間は防衛可能。なお、少数の定義は五十人以下」かみこは答えた。


「ついに攻めるのか?!」セランは待ちきれない様子で興奮している。


全員の視線がニフェトとアンドリアへ向く。


二人は静かにうなずいた。


「総攻撃準備! 10、9、8……」かみこがカウントダウンを始める。


「帝国の命運、ここが決戦の舞台というわけね……」六口は笑みを浮かべ、原基虫の意識へ潜った。


全員が拳を鳴らす、敵を八つ裂きにする準備を整える。


「頑張って……」ニフェトは皆の無事を祈った。


「3、2、1――――攻撃」


ボコボコボコッ――黒獅軍を囲む草原が突如陥没し、千体近い虫族戦士が地中から飛び出した! わずか数秒で、黒獅軍は完全包囲される!


虫の海はまるで大洪水のように大地を埋め尽くし、その果ては見えなかった。黒獅軍がどこへ視線を向けても、無数の黒い虫脚で埋め尽くされる。


両軍は星空の下、一秒だけ沈黙した――――――


「撃てぇ!!」ロコフが腕を振り上げて咆哮する。


数十発の火球が白霧を貫いて虫海へ突き刺さり、巨大な風穴を開けた。肉片が飛び散り、十数体の原基虫が一瞬で吹き飛ぶ。


「突撃だぁ!!」虫海は大顎を開き、土砂崩れのような勢いでロシア軍へ押し寄せた。


白霧のせいで狙撃手は照準を定められず、とにかく撃ちまくる。黒獅軍の足元は瞬く間に薬莢で埋まり、カンカンという金属音が途切れなく響き続けた。両軍の間の平野ではレーザーが乱れ飛び、虫族の目に映るのは仲間の緑色の血ばかり。黄金色の弾道が加奈の目の前をかすめ、隣の仲間を粉々に吹き飛ばす。


一同は狂乱の濁流となってロシア軍へ襲いかかり、数の暴力で押し込んでいく。


戦闘開始からまだ一分も経っていないのに、虫族はすでに百体近い損害を出していた。一歩進むたび血が流れ、地面は虫の肉片だらけになる。原基虫は数メートル突撃するたび蜂の巣にされ、骨も肉も吹き飛ぶ。左では氷霧、右では火球。ドォン――衝撃波で体が左右へ吹き飛ばされ、全身泥まみれになった。


だが黒獅軍の火力がどれほど凶悪でも、虫族は少しずつ平原を奪っていく。両軍の距離は数十メートルまで縮まり、間もなく白兵戦へ突入しようとしていた。


「構えろ!!」ロコフが大剣を掲げて叫び、黒獅軍は平原へ大量の橙色の液体を投げつける。


「点火!!」


魔導士たちが同時に橙液を爆発させ、黒獅軍は自分たちの周囲を炎で囲った。致命的な火の壁が形成される。


ちょうど目前まで迫っていた六口弥生は足を止め、回り込もうとした瞬間、パンッと一発の銃弾が前脚を撃ち抜いた。必死に立ち上がるも、直後に魔法で吹き飛ばされる。そこへ黒獅軍の前衛が火壁から飛び出し、大斧で六口を真っ二つに叩き割った。


虫族は平野に二百以上の死体を晒し、さらに火壁で分断され、攻勢を続けられなくなる。


黒獅軍の前衛たちは火壁の隙間から飛び出し、方向感覚を失った原基虫を次々と斬り殺した。腕が痺れるほど斬り続けるが、それでも虫族は絶え間なく押し寄せる。数人が不意に虫海へ引きずり込まれ、悲鳴を上げる暇もなく肉片にされた。


上空の空模様が一変し、巨大な黒雲が星空を覆い隠す。


ポツッ。


パタッ……


パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタッ……………


黒獅軍の頭上へ豪雨が降り注ぎ、火勢が一気に弱まった。


「まずい! 近接を戻―――」ロコフが危険を察した時には、もう遅かった―――


百体以上の原基虫が火壁を突破し、前衛プレイヤーへ飛びかかる。何人もの体がその場で噛み千切られた。


人間の血肉と虫族の緑黒の肉塊が混ざり合い、地面はぐちゃぐちゃの肉の絨毯へ変わる。


天雷が黒獅軍中央へ落ちるが、枢機卿が聖なる障壁で防ぎ切った。


その瞬間――


「うおおおっ!!」宝石騎士マキフが十数人の鍛冶師を率い、黒獅軍へ猛突撃を仕掛ける。ドガァンッ――彼らはプレイヤーの防衛線をほとんど貫通した。


戦況は一気に逆転し、数百体の原基虫が敵陣へ雪崩れ込み、大虐殺を始める。


「ロシアサーバーのために、この場所を死守しろぉぉぉ!!!!」ロコフは大剣を抜き、最前線へ飛び出した。黒獅軍も雄叫びを上げ、凄まじい士気で虫族へ反撃する。


戦場が膠着状態に陥ろうとした、その時だった?


ピ――ピ――ピ――ピ――ピ――ピ――


魔都制御室の青い光幕が、突如として真っ赤に染まる!


【警告:食糧庫 攻撃を受けています】

【システムメッセージ: 自動隔離 女王室 所要時間:02:59】

【警告:食糧庫 攻撃を受けています】

【警告:食糧庫 攻撃を受けています】

【警告:食糧庫 攻撃を受けています】

【警告:遺伝子貯蔵庫 攻撃を受けています】

【警告:貯水池 攻撃を受けています】

【警告:孵化室 攻撃を受けています】


「何が起きた?!」本サーバー軍は騒然となり、虫族は一気に混乱へ陥る。


「ニフェト、報告して!」アンドリアと六口が同時に叫ぶ。


「百体以上のエルフが北側から巣穴内部へ侵入しました!」ニフェトは即座に視界を巣穴内部へ切り替えた。すると複数の女エルフの伏兵が地下道へ侵入し、松明で設備を焼き払っていた。


「撤退! しんがりとして三百体を残せ! 残りは即座に撤退援護に入りなさい! 全速力で巣へ戻り、女王蟲を守れ!!」六口は驚く暇もなく、即断で命令を下した。


虫海は一斉に地下道へ引き返していく。


「効いたぞ! 同胞たち、攻めろぉ!!」ロコフは虫族が次々と地中へ逃げ戻るのを見るや、雄叫びを上げた。


「うおおおっ!!」黒獅軍も腕を振り上げ、獅子のごとく虫族へ反撃する。


「急いで森へ退いて!!」ナスティアは鍛冶師部隊へ撤退を指示するが、黒獅軍に食らいつかれ、状況は危機的だった。


戦況は一気に崩れ始める。勝利は、もはや彼女たちの手から零れ落ちようとしていた………



まさか、巣が崩壊するというのか……!?

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