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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第十九章——戦火に散る華
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277 戦火に散る華

二人は慎重にあとをつけ、街の西端にある人通りの少ない住宅街へ向かった。


少年はこそこそと振り返り、誰にも尾行されていないことを確かめてから家の中へ入った。


「アンドリアに報告する?」真子は原木の大剣を掲げて訊いた。


「あの人? やめておくわ。きっと数百人を送り込んで、ここを丸ごと壊すだけよ。そうなったら情報なんて何も手に入らない。警戒されないように、私たちだけで調べてみましょう」柑々は手に入れ直した幻音の魔杖を抜き、真剣な声で小さく言った。


...


「鍛冶屋の見習い、牛乳売り、衣装屋の助手、鑑定士……どうしてこんなにたくさんのNPCがこの家に集まっているの?!」真子は驚いた。


二人は柑々の鏡の盾を通して覗き見していた。小屋の二階には何人ものNPCが立っていた。彼らは木の机を囲み、ひと言も話さず、机の上を指さして何かを示しているが、細かいところまでは見えなかった。


「NPCの互助会みたいな組織だったりして?」柑々は説明を試みたが、思わず小さく笑った。


「惜しい、机の上が見えないわね」真子と柑々は壁際に伏せ、小さな鏡を見上げていたせいで、首がひどく痛くなっていた。


「あれ! 口が動いた? 私の見間違い?」柑々は驚き、真子の肩を強く叩いた。


「暗すぎる。部屋の中にもう一枚鏡を出せる?」真子は目を細めたが、小さな鏡の映像を見てもはっきり分からなかった。


「窓の隙間から少しずつ鏡の盾を染み込ませてみるわ」柑々は魔符の右腕を伸ばし、手術のように精密な魔法演算を始めた。かなりきつかった。


「ん?」真子は煙突から数羽の小鳥が飛び立ち、教皇都市の方角へ向かうのを見た。


「ここで待ってて……」真子は原木の大剣を抜き、柑々からそっと離れた。


「ちょっと、勝手に走り回って私一人にしないでよ!」柑々は粉状の鏡体を全神経で操作していたため、真子の護衛を失った途端、不安でたまらなくなった。


真子は隣の空き家へ回り込み、二階へ上がって窓を開けた。


「氷牢」真子は小声で詠唱し、氷の大剣を外壁に凍りつかせた。そして大剣を足場に屋根へ登り、さらに蛙を一匹召喚して待ち伏せさせた。


やがて、また小さな白い鳥の群れが飛び出した。蛙が素早く舌を伸ばし、一羽の白い鳥を絡め取った。


真子は急いで鳥の足に結ばれた紙片を読んだ。


【ブラウン村村長へ:我々はあなたの条件を受け入れることに決定した。鳥人の狩人を追い払う代わりに、村民50名を我々人類自衛同盟へ追加参加させること。 同盟議会より】


「人類自衛同盟?」真子はその組織を一度も聞いたことがなかった。彼女が考え込んだその時、蛙が白い鳥を飲み込み、角笛のように響く大きな蛙の鳴き声をした――


二階のNPCたちは一瞬で動き出し、四方の窓から飛び出した。


彼らは山猫を思わせる身のこなしで、木窓の縁を掴んで跳び上がるだけで屋根に到達した。同時に一階からもプラムスの衛兵NPCが何人も飛び出し、二人を完全に包囲した。


彼らは問答無用で二人へ襲いかかった。


「雷導術!」真子が先に仕掛けた。だが、鍛冶屋の見習いは雷撃を回避し、そのまま粗末な片手剣を抜いて反撃してきた。しかし体力はかなり低く、真子に二太刀で斬り殺された。


残ったNPCたちはそれを見るや即座に逃走した。そのうち一人は羊皮紙を胸に強く抱えており、どうやら極めて重要な物らしかった。


彼らの身のこなしは真子よりも遥かに俊敏で、数度跳躍しただけで大通りの中へ消えていった。


一方その頃、柑々は八人の衛兵に包囲されていた。


「ま、待って! 私は教皇都市の管理人よ! あなたたちは――」何かを顔めがけて投げつけられ、毒煙で焼かれた。呼吸ができず、同時に手足が痺れて地面へ倒れ込む。


衛兵たちは一斉に飛びかかり、大剣を振り下ろした。


柑々の意識はぼやけ始めた。ただ、自分が光に包まれていくのだけが見えた。やがて周囲は静まり返り、聴覚まで失われた。


口の中へ突然、腐った魚のような生臭さが広がる。柑々の腹が激しく痙攣し、「うっ」と大きな黄緑色の吐瀉物を吐き出した。口元を拭うと、身体の痺れは消えていたが、まだ力が入らない。


背中を支えられ、水がゆっくり口の中へ流し込まれる。生臭さが洗い流され、少しずつ力が戻ってきた。


再び視界がはっきりした時、衛兵たちはすでに死体となって地面に転がっていた。裏路地一帯は血で真っ赤に染まっている。


全身を血で染めた黒甲のプレイヤーが、優しく自分を抱き起こしていた――雨間刻。


「どうしてここに?」柑々は驚きと喜びを混ぜた声で訊いた。


雨間刻は答えず、静かに柑々を立たせるだけだった。


「柑々お姉ちゃん! 早く上がって!」真子が二階から叫んだ。


柑々と雨間刻は急いで二階へ駆け上がる。熱気が顔を打ち、木箱が激しく燃えていた。


「その箱から離れて! 危ない!」柑々は慌てて真子を木箱から引き離した。


「だめ! 早く水魔法で消して! 中の物が全部燃えちゃう!」真子は柑々以上に焦り、必死に服の裾を引っ張った。


柑々ははっと我に返り、水魔法で消火した。部屋はすぐ暖かな白煙で満たされる――だが、もう遅かった。


木箱の中身はすべて焼け焦げ、黒い塊になっていて判別不能だった。


「なるほどな。あいつらが命懸けで戦ったのは、証拠を焼き払う時間を稼ぐためか」雨間刻はランスで炭を突きながら言った。


「人類自衛同盟……さっき白い鳥を捕まえた時、あいつらがそう名乗ってた」真子はすぐに情報を共有した。


「急いでロシアサーバーへ向かい、六口とアンドリアに報告しましょう」柑々は険しい表情で言った。


...


「Wir werden angegriffen.(我々は攻撃されている)」


「Entdeckt?(見つかったのか?)」

冷たい声が尋ねた。


「Noch nicht, aber wir sind verdächtig.(まだだが、疑われている)」


「Karte zerstört?(地図は処分したか?)」

冷たい声が再び訊いた。


「Jawohl, mein Führer!(はい、総統閣下!)」


「Gut, gehen wir offline.(よし、全員ログアウトだ)」


冷たい声がドイツ語でそう告げると――本サーバー魔都制御室の青い光が消え、再び闇に包まれた。


不明地――


およそ七百名の守魂衛が、血のように赤い二メートル級の大盾スクトゥム(スクトゥム)、亀甲盾陣テストゥドを形成していた。その周囲では少数の遠距離職が後方支援として部隊を援護している。


軍陣の前には丸太を積み上げた薪の山が組まれ、その上に六十名以上のプレイヤーが縛り付けられていた。


全員の身体には銃痕や刀傷、蹄鉄で打たれたような血痕が無数に刻まれている。裸にされた身体は、もはや聖光に守られておらず、全てが露わになっていた。


「Ehi! Vieni a salvare i tuoi amici(おい~仲間を助けに来いよ!)」

積み上げられた薪の山の横に立つプレイヤーが、イタリア語で雄大な緋桜の要塞へ向けて嘲笑した。


「제발 살려줘!(助けてくれ!)」

縛られたプレイヤーたちが泣き叫ぶ。


ゴゴゴゴ……


大桜門がゆっくり開いた。ローマ軍団は一斉に一歩後退し、盾を構える。


数十メートルもの高さを持つ大桜門の下から現れたのは、たった一人の武士だった。


「だから忠告したんだがな……」

武士は独り言のように呟き、腰の刀に手を添えながらローマ軍団へ歩み寄る。


「お前の同盟軍はすでに我々が殲滅中だ。お前の勢力圏も、残るのは数勢力のみ。もし城門を開き、我々を中へ入れるなら、毎週資源を献上する限り城内の者は殺さない。(システム翻訳共通語)」

イタリアの枢機卿が大声で叫んだ。


「ごきげんよう。閣下に緋桜の要塞を落とす力があるなら、とっくに攻めているでしょう。なぜ今さらこんな真似を?」

名も無き武士は笑みを浮かべて答えた。


「同盟者を見捨てるのか?」

イタリアの枢機卿は松明を掲げ、脅しをかける。


武士は薄く笑っただけで、返答しなかった。


怒ったイタリア人たちは韓国プレイヤーたちへ火を放った。瞬く間に阿鼻叫喚が響き渡り、黒煙が空高く昇っていく。


「さあ、お決まりの儀式だ。時間の無駄はやめよう」

武士は笑いながら言った。


イタリア人たちは顔を曇らせ、後ろの仲間へ耳打ちする。


ローマ軍陣の中から、一人の巨漢が姿を現した。


身長二メートルを超えるそのプレイヤーは巨大な剣を持ち、全身を岩のように重厚な鎧で包んでいる。


その時、緋桜の要塞の城楼から、三味線の鋭く張り詰めた音色が響き始めた。


「この曲は好きだな~」

武士は音を聞いて微笑み、ゆっくり巨人へ歩み寄る。


二人は広場で対峙した。その勝敗次第で、今日どれだけの命が失われるか決まる。


巨人は荒々しく息を吐き、武士は静かに立っていた。


やがて巨人は耐え切れず、大剣を振り上げて正面から叩き斬りにいく。


抜刀――ザシュッ。


無駄な動きは一切なかった。


武士は瞬時に踏み込み、一刀で巨人の首元――紙一重の装甲の隙間を突き刺した。


巨人の動きが硬直する。大剣を落とし、膝をつき、泉のように噴き出す血を押さえ込んだ。


武士は長太刀を引き抜き、相手の横を静かに通り過ぎ、そのままローマ軍団へ向かって歩き出す。


「ふん……」


鋭い眼光が走る。


振り返りざま、武士は一太刀で巨人の首を斬り落とした。


巨人の首は南瓜のように地面へ転がり落ち、大量の桜の花びらを舞い上げる。


武士は手首を返し、飛び散った三滴の返り血を刀身で受け、鋭い気合と共に一閃――見事な血振りを披露した。


地面には弧を描く血の線が残った。だが刀身にも衣にも、一滴たりとも血は付いていない。


長太刀が静かに鞘へ収まり、武士はゆっくり顔を上げて笑った。


「どうやら、また俺の勝ちだな」


「調子に乗るなァァァッ!!!!」

枢機卿が怒号を上げると、守魂衛たち全員が同時に青い光を放ち、緋桜の要塞へ向けて、総攻撃の構えを見せた。


だが次の瞬間――三味線の音が唐突に途切れる。


周囲の草むらから、完全武装した数百人の武士が姿を現し、逆にローマ軍団を包囲した。


「お前……たったこれだけの兵力で、全滅させられるのが怖くないのか?!」 枢機卿は愕然とした。


「試してみるか?」

武士は微笑んで答える。


「チッ……撤退だ!」

ローマ軍団はたちまち動揺し始めた。枢機卿は今日の攻城は不可能だと判断し、撤退を決める。


……


武士たちはゆっくりと緋桜の要塞へ戻っていった。


「まずいな。いつか必ず奴らに押し切られる。援軍が必要だ」 城楼へ戻った武士は、白衣の男を前にして思わず弱音を漏らした。


「もう少し耐えてくれ……。今の俺たちには、この結晶はあまりにも貴重すぎる」

白衣の男は、菱形の深青色の水晶を取り出し、掌の上へ浮かせる。


「こちらは兵力不足で境界の外へ進軍できない。だが向こうは結晶で延々と兵を補充できる……。危険でも結晶を使うべきだ。このまま守り続ければ、いずれ必ず落ちる」

武士は眉をひそめて言った。


「本気か? 援軍の質なんて保証できないぞ?」

白衣の男は問い返す。


「少なくとも五次職だ。弱くても戦力にはなる」

武士は答えた。


「お前が行くか?」

白衣の男は結晶を武士の前へ差し出す。


「いや。俺は緋桜の要塞を守らなきゃならない。お前が行け」

武士は力強く頷いた。


白衣の男は掌を握り締め、水晶を握り潰す。


【システムメッセージ: アトランティス原石x1を使用】


「後は運任せだな~」

白衣の男は苦笑した。




世界って……思ったより大きいんだねぇ……ヒヒッ……

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