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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第十八章——秘匿の種族
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274 秘匿の種族

「東は……ここ……なんでアマゾンみたいな熱帯雨林になってるの?」加奈は原基虫の一隊を操り、密林を抜けて流れの速い泥の川辺までやって来た。


「おかしいな。半日も歩いたんだから、幽語の森の端に着いてるはずだぞ!?」一樹が不思議そうに言った。


「本当にここで合っているのか?」カスターは眉をひそめた。


彼らは幽語の森でもっとも原始の姿を残す東部秘境へ来ていた。


原基虫はうなずき、虫脚を地面へ強く突き立てた。


「ここは草原のはずなんだけどな……」一樹は前方を指さし、眉を寄せた。


ニフェトと六口も地図を開いて確認する。ここは本来、目の前のような熱帯雨林ではなく、草原のはずだった。


「もしかして……これを見て……」ナスティアは自分の地図を地面に広げ、加奈に見せた。


「うわっ! ロシアサーバーの幽語の森、なんで本サーバーよりこんなに広いの!?」ニフェトは二枚の地図を見比べ、驚きの声を上げた。


「あなたたちのサーバーの歴史設定を調べたことがある。私たちのサーバーでは、エルフ族はずっと鎖国していて、獣人との交流も拒んでいた。逆にこの森は、あなたたちのサーバーでは昔からエルフと獣人によって共同開発され、平地に変えられていた」ナスティアは説明した。


ロシア側のゲーム地図には地形線がびっしり描き込まれており、抽象画のようで判別不能に見えた。


「俺たちはこの本流のそばにいる……」カルロフはしばらく上流を眺め、しゃがんで地図を指さした。


「うん。この川沿いに下流へ一キロほど進めば浅瀬に出る。そこなら私が一時的に凍らせて渡れる」ナスティアは細い白い指を地図へ置き、慎重に下へ滑らせた。


「上流の流木地帯へ行った方が早いんじゃないか?」カスターも話し合いに加わった。


三人のロシア人は地図を囲み、ロシア語であれこれ議論していた。本サーバーの面々には、それが信じられない光景に見えた。


なぜ彼らは、こんな複雑な地図の中で自分たちの位置を把握できるのか。


一樹と加奈の目には、前後左右すべてが木の葉で、前方に黄色い川が一本あるだけだった。


「行こう、こっち」ナスティアは地図をしまい、下流を指差した。


「どこへ行くんだ?」一樹は間の抜けた笑みで尋ねた。


「えっ………川を渡るんじゃ……ないの? あなたたち、東部秘境へ行きたいんでしょう? 私、勘違いした……?」ナスティアは一樹に話しかけられた瞬間、小さな女の子みたいに緊張してどもり始めた。顔には大げさな笑みが浮かび、手振りまで激しくなる。


カルロフは目を細めて透明な一樹を睨み、魂喰大剣を握る手に力を込めた。


「なんでそのまま川を渡らないんだ?」一樹は不思議そうに聞いた。


「流れが速すぎるの。凍らせられない……」ナスティアは薔薇水晶の杖を持ったまま、慌てて地面をつつきながら答えた。


一樹は「ああ、なるほど」と笑い、川の上へふわりと浮かんで深呼吸する。両腕を左右の河岸へ伸ばし、空中で手を握って勢いよく引いた。


ゴゴゴゴ……。


地面が小さく揺れ、両岸の泥地が細長い土の橋となって持ち上がり、泥の川を横断する橋になった。


今度はロシアサーバーの三人が衝撃を受けた。神業のような魔術を目の当たりにし、一樹がまるで異星人のように、この世界の存在ではないように見えた。


五人はそのまま進み続け、大小さまざまな川や湿地帯を抜け、全身を泥だらけにした。


この雨林には古木が天を突くようにそびえ立ち、緑の樹冠が傘のように強い日差しを遮っている。そのせいで森全体は薄暗く、灰白色の湿った霧が漂っていた。木の根元には直径数メートルもある赤い巨大キノコが生えており、見たこともない新種だった。


だが、彼らは孤独ではない。猿たちは樹冠を飛び回り、虫の鳴き声と蛙の声が絶え間なく響き、大自然の交響曲を奏でていた。


前方に立つ一本の巨大樹が、ねじれた螺旋模様のように見える。


一同は気にも留めず近づいたが、百メートルほどまで迫った瞬間、その木が突然うごめいた。


それは数十メートル級の古代大蛇だった。


幸い、巨大蛇は彼らに興味を示さず、ゆっくりと樹冠へ巻き付きながら姿を消していく。


その瞬間から、一行は完全に気を引き締め、この原始の密林を侮らなくなった。


彼らは木の下で小休止し、ナスティアはすぐ地図を広げて確認を始めた。


一樹は軽く手を振り、ナスティアのそばに滑らかな岩を持ち上げ、腰掛けられるようにした。


「ありがとう……」ナスティアは恐縮しながら、地図で一樹の視線を隠した。


あの日、一樹が竜巻に乗って現れ、数十人の反乱軍を蹴散らした光景は今でも脳裏に焼き付いている。彼女にとって一樹は、まるで神のような存在だった。


「カルロフ……何か食べ物を探してきて」ナスティアは食料を節約したくて、カルロフに周囲の探索を任せた。


カルロフは一樹を睨みつけてから離れていき、一樹はわけが分からず首を傾げる。


加奈が操る数十匹の原基虫が周囲を警戒していなければ、彼らもこんなに気楽には休めなかっただろう。


「東部森林の中心地帯まで、あとどれくらいだ?」一樹は興味津々でナスティアへ身を寄せた。


「数キロ……」ナスティアは地図を指しながら真剣に答えた。


一樹はこれまで、ナスティアの必死に叫びながら戦う姿しか見たことがなかった。だが落ち着いた彼女は、不思議なほど魅力的で、大人びていて頼もしく見える。


そして強大な魔王が隣にいるせいで、ナスティアは見えない圧迫感を感じていた。


突然、一樹の手の中に淡い緑色の真珠が現れ、白い蒸気を立て始める。


「それ……何?」ナスティアは不思議そうに尋ねた。


「エッグフルーツ。食感は卵白みたいで、味はバニラみたいに甘いんだ」


ナスティアがひと口かじると、想像以上に甘くて驚いた。この湿って寒い森の中で、温かい食べ物を口にできるだけで幸せだった。


一樹は満足そうに腰を下ろし、雨林の景色を眺める。


「あなたの職業って何?」ナスティアは怯えながらも、遠回しにせず真っ直ぐ尋ねた。


「原霊……五次職」一樹は微笑みながら答えた。


「すごい………」ナスティアは地図を下ろし、勇気を出して一樹を見つめる。その視線は彼の強さを素直に認めていた。


これまで一樹はギルドで女幹部たちにからかわれ、いじめられてばかりだった。真子だけが彼を庇い、松美やパシュスにも発言力はない。


だからこそ、ナスティアから真っ直ぐ称賛され、一樹は一気に顔をほころばせた。


「そっちには原霊ってないのか?」一樹は逆に聞き返す。


「原霊って、どの職業の派生なの?」


「聖職者の異端者だよ~」一樹は驚きながら答えた。


「ああ~分かった。当時、黒邪翼は異端者が枢機卿より弱いって考えてたの。だから初心者を全部司教系へ誘導して、異端者が存在しなかったんだ」ナスティアは納得したように頷いた。


一樹はそれを聞いて驚愕した。ロシアサーバーは、かつてそこまで体系的に運営されていたのだ。


「全盛期のお前たちって……強かったのか?」一樹は尋ねる。


「うん……四つの王都を制圧したあと、戦力を集めて魔都へ進軍した。その時は五千人近くいた」


「五千!?」


「三次職は三百人しかいなかったけどね。誤解しないで」ナスティアは苦笑した。


「三百人の三次職でも……十分すごいよ……」一樹は内心で驚く。


「その頃、魔都の向こう側が別サーバーだと分かってからは、本格的に現地経済の発展へ切り替えたの。探索イベントも止まって、この森もずっと未開発のまま。でも………全部、過去の話……」ナスティアは適当に草を一本摘み取り、指先で弄びながら寂しそうに言った。


「いや……お前たちは必ずまた立ち上がれるよ」一樹は赤旗を象徴する赤い葉を生み出し、ナスティアへ差し出して微笑んだ。


ナスティアは嬉しそうに赤葉を受け取り、胸の奥が熱くなる。


そうだ。彼女が魔王陣営へ加わったのは、もう一度立ち上がるためだ。


信念のために。

自分のために。

正義を貫くためなら、悪魔へ堕ちることすら惜しまない。


ちゅっ――。


ナスティアは一樹の頬へ軽くキスした。


「спасибо。(ありがとう)」


一樹の身体を包む虹色の光が、一瞬、強く輝いた。彼は呆然と自分の頬に触れる。


今のキスって、礼儀のキスなのか? それとも別の意味が――?!


「おい、早く来い!」カスターが慌てた様子で二人の前へ駆け込んできた。


カスターは二人を数百メートル先の小さな森へ案内し、大岩の陰へ身を隠させる。


森の中央では黒煙が立ち上り、三人のエルフが焚き火を囲んで話していた。


「……あのエルフたち、様子がおかしくない?」ナスティアは眉をひそめる。


「見ろ。肉を焼いてる」カスターは焚き火のそばに立てられた枝を指差した。そこには大量の肉塊が吊るされている。


「肉を焼いてるだけじゃないの?」一樹は特に気にせず尋ねた。


「エルフは菜食主義だぞ! 肉を食うのは祭りか特別な日だけだ。まして森の中で焚き火して肉を焼くなんてあり得ない。それに見ろ、獣皮装備まで着てる。エルフがこんな原始的な格好するか?!」


確かに、その三体の白い人型生物は、エルフの習性とはまるで一致していなかった。


一樹は指で輪を作り、その内部の空気密度を変化させて望遠鏡代わりに覗き込んだ。


そいつらはエルフのような白い肌をしていたが、四肢は異様に発達している。口元からは牙が突き出し、黒髪は細い三つ編みに束ねられていた。


「なんだ~エルフじゃなくて、白い獣人か」


だが、ナスティアとカスターの顔色は真っ青になる。


「どうした? 獣人に分派がいても別に不思議じゃないだろ?」一樹は二人の異様な反応に首を傾げた。


「俺、自分のサーバーで獣人なんて見たことない……」カスターは怯えた目で、遠くの三体の白い獣人を見つめる。


「このサーバーの獣人は………とっくに竜族に滅ぼされたの」ナスティアは震える声で言った。


「そうだ! ハゲグが竜族に滅ぼされ、生き残った獣人たちは幽語の森へ逃げ込んでエルフに助けを求めた。でも拒絶されて………それから……」ロシアサーバーの歴史が、一樹の脳裏によみがえる。


「そのまま幽語の森で姿を消した。以後、誰も獣人を見ていない……」ナスティアが続きを口にした。


「じゃあ、あいつらは………生き残った獣人の末裔なのか!?」一樹はようやく二人が驚いている理由を理解した。

……



一樹って……ちょっとずるいな……


今日、もう一話追加!

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