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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第十二章——第四種接触
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246 幽霊の隠し事

やわらかな風が湖面に皺を寄せ、少女の水面の姿は波紋に歪められていた。ナスティアは歪んだ自分の映り込みを物思いに沈んだ目で見つめ、薔薇水晶の杖で水面をつついて、いくつもの氷花を咲かせていく。


「ナスティア様、近場での勧誘はもう終わりました」カルロフがナスティアの後ろまで歩いてきて言った。


ナスティアは振り返る――魂喰はもうカルロフの半身を食い尽くしていた。

「ギルドに入りたいって人はいた?」


「いません……俺たちが黒邪翼だって聞いた瞬間、逃げるか笑うかでした……」


ナスティアはその返事を聞いて、さらに深くうつむいた。鼻をこすり、ぼろぼろの魔導士のローブを胸元でぎゅっと締める。


竜血島の激戦をくぐり抜けたその魔導士のローブは、もう穴だらけだった。だが、防具を修理できる鍛冶師は王都にしかいない。ナスティアは追われるのが怖くて戻れない。しかも湖畔の粗末なギルドホールに有り金を全部つぎ込んでしまった。今や一文なしで、こんな溶けて崩れそうなローブを着るしかない。


湖面を渡る冷たい風が、ローブの小さな穴から体の中へ入り込む。

「寒い……あなた、誰かに尾けられてない?」


「まずい! 確認するの忘れてた!」カルロフは今さら気づいたように目を見開いた。森に入る前、振り返るのを完全に忘れていたのだ。


「いたよ。狙撃手が二人。でも処理しておいた」カスターが後ろから現れ、血のついた狙撃銃を二丁、二人の前に投げ捨てた。


ナスティアはもう怒鳴る気力すらなく、再び薔薇水晶の杖で湖面に氷花を咲かせ続ける。


二人は、塞ぎ込んだままのナスティアの背中を見て、どうすることもできなかった。


「ナスティア、いい知らせがある! 銀羽蜻蛉の卵は一個あたり五竜貨近くで売れる。今、ギルド倉庫には三千竜貨近い蓄えがある。武器を買って、入会希望者を呼び込めるぞ!」カスターはわざとらしく明るい声を作って言った。


「そう……よかった……」ナスティアは振り返りもせず、湖を見たまま冷たく言葉を返す。

「二人はまた宣伝に行って。今週中にギルド人数を三十人まで増やしたいの。私は一人でこの湖を守ってるから」


二人は眉をひそめ、ため息をついて首を振り、そのまま背を向けて去っていった。


「……あれ、花を摘んでるNPCの女の子だ」カルロフが森の外れにいる女NPCを指差した。


「放っておいて。行って」ナスティアは気の抜けた声で言いながら、薔薇水晶の杖で草地を適当につつく。すると、ぶすっと音を立てて、濡れてぶよぶよした灰色の肉塊に突き刺さった。灰肉の塊はかすかに脈打ったが、ナスティアは気に留める気もなかった。木の根元へ歩いていき、膝を抱えてうずくまり、ただ時間が過ぎるのを待つ。


だが……彼女は気づかなかった。地面の灰色の肉繭がすぐに跳ね、幾本もの小さな肉棘を伸ばして、根のように土へ食い込んだことを。やがて酸性の粘液を分泌し、周囲の土壌から養分を溶かして吸い上げ、さらに多くの肉糸を生やして遠くの土地まで這い広がっていく。瞬く間に、酸に侵された地面は、養分を食い尽くされて灰黒く変色し、死んだように沈んでいく。


地上の植物は死んだ。だが、地下の世界はまったく逆だった。

ニフェトの巣穴は、すでに生命に満ちた地下王国へと変わっていた――猫ほどの大きさをした虫族の戦士がおよそ800匹、大きな円形の穴に閉じ込められている。


「本サバの魔王に新たな動き。奴らは黒獣人を百体近く送り込み、ワールドボスを狩るプレイヤーを奇襲した。幸い、現場のプレイヤーたちが撃退したそうだ」ニフェトは見張りが持ち帰った書簡を読みながら言った。


「ボス出現のタイミングであえて派手に襲撃するなんて、正体が割れるのも構わないってことね。プレイヤーの魂素を手に入れて巣を強化できるから、あえて強行したんだと思う」六口は腕を組んで考え込む。


「何か案はある? かみこは、一週間後に本サバ魔都の防衛システムが起動するって予測してる。その時になれば、ロシアサーバーに戻るには本サバの魔王を倒さないといけない。それに、私たちがロシアサーバーに来てから、もうすぐ一ヶ月になる、いつロシアのプレイヤーに攻められてもおかしくない」ニフェトは不安げに言った。


「かみこ、銀龍の刻印だけで魔都を落として、本サバとロシアサーバーを繋ぐ魔都を再び突破できると思う?」六口は真剣な顔で問う。


「初期成功確率は83.35%です。現在の情報から判断すると、本サバの魔王の黒皮獣人はまだ発展段階にあり、魔都の防備は手薄と推定されます。もしアンドリアが十四日以内に魔都を攻略できなければ、全軍撤退を検討すべきです。さもなければ戦局は消耗戦に移行し、兵力で劣る我々には不利となります」かみこは淡々と答えた。


「こっちの発展を急ぎましょう。萌僧、作業は終わった?」ニフェトが尋ねる。


「で~き~た~よ~、ニフェトちゃん。繁殖湖の森の外縁に、蟻塚を三つ哨戒拠点として設置したよ~」ホールの奥から可愛らしい低い男声が響き、皆が思わず身震いした。


「お……お疲れさま。引き続きセランと一緒にプレイヤー狩りに行って」ニフェトはすぐに次の任務を与え、これ以上喋らせないようにした。


【システムメッセージ: 硬蟲殻 にアップグレード】


硬殻がニフェトによって強化されると、虫族の戦士は一斉に漆黒へと変わった。外見は六足の蜘蛛に似ており、脚は剣のように鋭く、異様に大きな頭部にはV字型の顎が備わっている。あらゆる装甲を引き裂くほどの破壊力だ。細長い脚により、どんな平面でも自在に移動でき、軽やかで俊敏に動き回る。

薄暗い地底には、巨大な蛍のような個体もわずかに存在していた。


およそ千体の悪魔が、地上へ這い出る時を待ち、大虐殺の準備を整えている。


「……あれ、あの子、花を摘んでたNPCの女の子じゃないか?」セランは庭園で足を止め、白髪の少女が沈んだ顔で花園の端に座り込むのを見た。


「報告する~? セラ~ン隊~長~」萌僧が飛び降りてセランのトンボの背に乗り、背中にぴったり貼りついて囁いた。


「近い!」セランは尾で萌僧を弾き飛ばす。


「離れないでよぉ……」萌僧は瞬間移動のようにセランの腹側へ回り込み、尾をくすぐった。それはトンボの求愛行動そのものだった。


「なんであの子がこんな夜中に庭園に……って、おい、いい加減にしろ! あのNPCの子に蜂蜜を持っていけ!」セランは怒鳴った。


しばらくして、萌僧は少女の前へ飛び、優しく膝の上に降り立つ。


「これ、蜂蜜……くれるの? ありがとう」白髪の少女は小瓶の蜂蜜を見て一瞬嬉しそうに笑い、そのあとすぐにまた沈んだ表情へと戻った。


「虫さん、秘密を教えてあげる。村長様も信じてくれなかったの。友だちがね、幽霊の女が家に来て、わけの分からない言葉をいっぱい話したって言ってたの。ママに話したら、嘘つくなって叩かれた。でも本当なの。泣きながらその子の家に行ったら、その子も家族もいなくなってた。もう誰にも話せないから、あなたにだけ教えるね」白髪の少女は唇を尖らせて言った。


セランは考え込む。

「…………幽霊の女?」



ちょっと怖いかも……


今日はもう一話追加です!

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