233 尖峰の竜輪舞
ほかの者たちは小声でくすくす笑ったが、カルロフが不機嫌そうに鼻を鳴らすと、全員すぐに黙った。
隊の空気はふっと軽くなり、束の間の静けさを味わう。
そのとき、不意の浮遊感がナスティアの体をふわりと浮かせた。
彼女はすぐに目を開いた。尖峰の竜首岩が、まるで超弩級宇宙戦艦の艦首のように眼前へ突き出していた。竜頭の岩の前では、プレイヤーたちは砂粒のように小さい。
猟竜団はついに竜首山脈の頂上平原へと辿り着いた。そこは一面の広い雪原だった。
よく見れば、尖峰の竜首岩は白雪をかぶっており、その下からは星のような光がちらちら反射している。表面の粗い鉱物層でもあるかのようだった。
遠い空に、銀青色の体へ白い稲妻を巻きつけた雷竜が一頭、飛び去っていく。まだこちらには気づいていないようだった。
竜首石の前方には巨大な竜骨が横たわっていた。その大きさは上竜種をはるかに凌駕していた。
一行はその前まで進み、地面に描かれた黒い竜のトーテムに気づいた。三本の尾を持つ竜が描かれているが、それ以外は他の上竜と大差ない。
「ふん、尾が二本多いだけだろ~? 頭がもう一つあるほうが怖いっての!」カルロフは冗談めかして言った。
一人の狙撃手が無表情のまま、前方の巨大な竜骨を指さした。
カルロフが横へ回り込み、ようやくその全体像を目にする。
その遺骸は火竜の三倍はあった。前肢だけでも火竜より高い。そして何より——尾骨が三つに分かれている。トーテムに描かれていた竜そのものだった。
カルロフは言葉を失う。この巨竜は強力な遠距離火力の支援なしでは、攻撃さえ届かない。
竜首石の口には、象の牙でできた角笛が吊るされていた。
一行がその前に立つと、突如ウィンドウが表示される。
【システムメッセージ:竜の笛を吹き鳴らし、太古の力を呼び覚ませ】
「太古の力……?」隊員たちはざわめいた。
「スタスがここまで来たことがある。上竜に囲まれて、謎の力に弾かれたって言ってた。たぶん……これを吹いたんだろう……」ナスティアは迷いながら言った。
「吹く必要あるのか? この三本尾竜を呼び出したら、まず助からないぞ。」司教が不安そうに言う。
「一体ずつ上竜を探して狩っていたら、攻城戦に間に合わない。この三本尾の竜は明らかに竜族のボスだ。倒せば竜玉が落ちる可能性が高い……やるわ。」ナスティアは竜の骨の前に立ち、唇を角笛に当てて思いきり吹いた。
ブオォ……
竜の咆哮のように重い音が、平坦な氷原に響き渡る。
竜トーテムが暗赤色の光を帯びた。
ナスティアは深く息を吸い、もう一度、全力で吹く。
ブオォォ……
トーテムの光はわずかに強まるが、まだ十分とは言えない。
「グォォォ……!」周囲から竜の咆哮が応えるように響き始めた。
ナスティアはつま先立ちになり、角笛にしがみつくようにして、全力で息を吹き込み続ける。まるで虚無がすべてを吸い尽くすかのように。
ブオォォ……
しかし力尽き、息を切らして後退した。
トーテムの光は一瞬揺らいだだけで、むしろ暗赤色が薄れていく。
そのとき、一人が彼女を突き飛ばした—————
ブオォォォォォォォ!!!!カルロフが全力で吹き鳴らす。船の汽笛のような轟音が大地に響き渡り、竜トーテムは一気に褐紅色へと変わった。
「グルルルルルル~~ガオォォ~~~」
右からは銀青色の雷竜と茶緑色の毒竜が二体、左からは火竜が一体、飛来する。
「来た!!」ナスティアは叫び、賢者たちとともに地面へ複数の地形トラップを展開した。
「砲を設置しろ!」狙撃手たちは重狙撃銃の二脚を据える。
「カルロフはそのまま吹き続けて! 他は迎撃準備!」ナスティアはすでに隊員の周囲へ無数の魔法陣を展開していた。竜が降りれば、確実に混乱に陥る配置だ。
狙撃隊長は望遠鏡を掲げて三体の竜を観察する。雷竜と火竜の表面は光を反射しているが、毒竜だけは鈍い質感で光らない——装甲がないと判断した。
「毒竜を狙え! 初弾は徹甲弾で射程を二十五パーセント延長、腹を狙え!」狙撃隊長は立ち上がり、望遠鏡越しに毒竜を捉えた。
カチャリ――およそ二十名の狙撃手が一斉弾薬を装填する、20倍の超長距離スコープへと目を押し当てた。
一キロ先の毒竜は肉眼では豆粒のように小さいが、狙撃用スコープの中ではトラックほどの大きさに拡大され、はっきりと見える。
前衛職と魔導士には、ただ焦りながら見守ることしかできない。毒竜の姿すら、まともに確認できないのだ。
ナスティアは自分の役割に徹し、防御魔法を整えながら、心の中で仲間の無事を祈った。
冷たい風が咆哮を上げ、髪を激しく乱す。その寒風が、竜狩りの過酷な現実を、これでもかと突きつけてくる。
「マーカー弾、一発!」狙撃隊長が大声で命じる。
バン!
一人の狙撃手が蛍光緑の弾丸を撃ち出し、空にくっきりとした軌跡を描いた。
弾は右へ流れ、毒竜には当たらない。
「風向き左にプラス三十二、二クリック修正。高度一クリック上げろ。マーカー弾、二発目!」隊長が手を振ると、二発目は正確に毒竜へ命中した。
毒竜は不意打ちを受け、空中でわずかに体勢を崩し、黒い大口を開けて怒りの咆哮を上げる。
「よし! 全員、徹甲焼夷弾に切り替えろ!」隊長の号令で、狙撃手たちは一斉に再装填した。
スコープの中で毒竜は急速に大きくなり、口内から煙を上げる強酸が溢れ出す。
歴戦の兵は恐怖を押し殺し、震える手を抑え込むように銃を握りしめる。新兵は引き金に指をかけたまま、焦燥に駆られていた。
「……撃て!」
ドォン!!!
整然と並んだ橙赤の弾道が、一直線に空の彼方へ突き抜ける—————
空中で赤い爆煙が炸裂した。
毒竜の頭部と胸部に、バスケットボールほどの大穴がいくつも穿たれ、傷口は焼け焦げている。数十メートル落下したのち、ようやく体勢を立て直し、なおも飛び続けた。
銃声に激昂した雷竜と火竜が、速度を上げて迫ってくる。
「散弾装填!」赤熱した銃身が冷えるのを待ち、隊長は再び命じる。裂傷を拡げるための特殊弾だ。
「撃て!」
ドォン~~!
遠方で血飛沫が大きく弾ける。毒竜の左翼に二つの穴が開き、飛行速度が急激に落ちた。
「炸裂弾! 胸と翼を狙え! 撃て!」
ドォン—————ドォォン!
毒竜の左翼が吹き飛ぶ。巨体は小鳥のように谷へと墜ち、そのまま再び浮かび上がることはなかった。
「やったぞ!!!!」猟竜団から歓声が上がる。
「カルロフ、早く! もう来てるわ!」ナスティアが焦って叫ぶ。
カルロフは汗だくで顔を真っ赤にし、荒い息をつきながらも再び角笛を吹き鳴らす。雪原の竜トーテムはすでに赤く発光し始めており、あと少しだ。
そのとき、左側から最も速い火竜が、すでに賢者の射程に入っていた。
「極白パルス!」ナスティアが即座に迎撃する。
火竜は急停止し、身を翻して白雷を回避した。それ以上、単独で猟竜団へ突っ込むことはしない。
「油断するな! 竜族用麻酔弾! 次は一番遅い雷竜だ!」隊長が即座に指示を飛ばす。
狙撃手たちは一斉に雷竜へ照準を合わせた。
「撃て!!!!」
バンバンバン!
雷竜の体表で銀色の粉状の鱗が弾け、右翼が痙攣して折れ曲がり、そのまま雪原へ墜落する。
この広い氷原では、狙撃手たちの遠距離火力が圧倒的な優位を誇っていた。
雷竜は頭を振って意識を立て直し、次の瞬間、獅子のように地を蹴って猟竜団へ突進する。
火竜もそれを見て急降下攻撃に出ようとしたが、ナスティアが連鎖吹雪で押し潰した。
雷竜は休むことなく側面から突進してくるが、狙撃銃はまだ冷却中だ。
「グオォ~~ジジジジジジジジ~~~~」
雷竜は尾をまっすぐに伸ばし、体を一直線にして、深い青の大口から細い青光をプレイヤーへと放った。
威力はほとんどないが、回避は不可能で、狙撃手たちを正確に照射していく。
「はっ、ナスティアの———」狙撃手たちが嘲笑しかけた、その瞬間。
バチィィィィィィィィィィィン!!!ドォォン!!!
銀青色の雷柱が空から叩き落とされ、猟竜団を中央から吹き飛ばした。
「カルロフ!早く!」数名の司教が慌てて魔力盾を展開し、雷撃を防ぐ。
ブオォォォォォォォ!!竜トーテムがついに完全な真紅へと変わった。
「グオォ~~ガガガガガガガ!」雷竜と火竜はトーテムを見た瞬間、即座に後退し、巨竜遺骸の範囲から離れる。
「気をつけて!強い力が——」ナスティアはスタスの言葉を思い出し、警告しようとしたそのとき。
ゴォォォォォォォ……
突如、上空から暴風が吹き下ろされ、すべてのプレイヤーが雪原に叩きつけられる。
「助け……うわぁ———」二人の賢者が強風にさらわれ、叫びごと白い霧の中へ消えていった。
指を爪のように立てたり、武器を雪に突き刺したりして、必死に体を固定し、暴風に耐える。
やがて、風が止んだ。
体に積もった雪を払い落とすと、周囲は真っ暗で、手を伸ばしても何も見えない。
見上げた瞬間――純白の巨体、燃えるような瞳、背一面に槍のような白い棘を生やした三尾の巨竜が現れていた。自分たちはその腹の下にいる。
【システムメッセージ:竜王——ブレイラス 出現】
ついに、来ますよ……




