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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第八章—— 竜の遺物
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229 狂乱する侵蝕者

二人はしゃがみ込み、残されていたバッグを一つ拾って中を調べた。


中には、ナスティアが自らエレナに使い方を教えた捕竜網や、対竜用の特殊麻酔液が入っていた。さらに火竜の光鱗や、竜族の砕けた牙も少量残っている。彼らが上位竜族を討ったことは間違いなく、ここにいるのは猟竜団の面々だと断定できた。


「でも……」

ナスティアはバッグを無造作に放り捨て、次の光塵へ向かう。軽く中を確認すると、また別の光塵へ走る。


洞窟の最奥に浮かぶ一団の光塵の前に立つ。ナスティアは深く息を吸い、バッグを拾って中を見る。だが半秒もしないうちにそれを投げ捨て、その表情はますます冷えきっていった。


「どうした? 顔色が悪いぞ」

カルロフはナスティアの様子がおかしいことに気づき、慎重に問いかけた。


「森の野営地でエレナ隊の遺品を見つけた時……あの装備はまだ使えた……」

ナスティアは上の空でつぶやく。


周囲を見回しながら洞窟の内壁を注意深く観察し、滑らかな大きな裂け目に手を差し入れて、雪の粉のように細かい石粉をすくい上げた。


「そうだな、使えた。それがどうした?」

カルロフは不思議そうに問う。


ナスティアは答える気もなく、振り返って別の遺品袋を拾い上げて再び中を確認し、そのまま虚ろな目で考え込む。

「おかしい……岩壁の傷が不自然……」


「理解できない……教えてください、ナスティア様」


「見て……バッグの中の防具の状態に注目して」


「聖殿の鎧……耐久値0、修理が必要なのか?」

カルロフは眉をひそめる。


「他も見て……」


「え……? 本当だ……全員、防具の耐久値がゼロになってる?」

カルロフはいくつかのバッグを開きながら驚いた。


「上位竜は魔法と物理で攻撃する。でも胸当てだけを狙うことはない。ここにある死体は胸甲だけが破壊されている……竜の攻撃パターンと一致しない。もう一度、洞窟の裂け目に触ってみて……」

ナスティアの背筋に冷たいものが走る。


「ん……これで……?」

カルロフは怪訝そうに黒い粉を二握りすくい上げた。粉は指の間をさらさらと流れ落ちる。


「絹みたいに滑らか……そうでしょ?」

ナスティアは目を見開き、焦るように問い詰める。


「……ああ」


ナスティアは無言で薔薇水晶の杖を引き抜き、全身を震わせる。

「上位竜の体ではこの洞窟に入れない。岩壁の裂け目……大剣の痕よ。エレナの部隊は……殺された……」


「殺された!?」

カルロフは思わず叫ぶ。


「カルロフ!少しは学びなさい!静かにして!」

ナスティアは怒鳴るが、両手は恐怖で震えていた。


「おかしいだろ!PVPで瞬殺されたなら、バッグにスタミナポーションとか残ってるはずだ!」

カルロフは反論する。


「分からない……でもNPCじゃない。竜血島に人型モンスターはいない。プレイヤーが上陸している……!」

ナスティアは危機を悟り、カルロフとともに急いで隊のもとへ駆け戻る。

「ヴラジでも地上でエレナには勝てない……一体誰が……」


轟音が響く。


山脈が突然、大きく揺れた。


洞窟の入口で待機していた隊員たちの前に、世界を覆い尽くすような巨大な雪崩が津波のように押し寄せる。


誰も叫ぶことすらできず、頭上に迫る膨大な雪を呆然と見上げた。


「複数詠唱!」「強制詠唱!」「広域展開!」


ナスティアは叫びながら薔薇水晶の杖を突き出す。

「重力歪曲!」


ぼふっ――


雪山そのものが小道へと崩れ落ちる。


その瞬間、巨大な重力場が彼らを覆い、透明な天井のように雪崩の重量を支えた。雪の下に一本のトンネルが形成される。


「ИДИ,ИДИ,ИДИ!(行け!行け!行け!)」

カルロフは怒号を上げ、隊員たちにトンネルを突破させる。


彼らは出口の光へ向かって全力で走る。頭上からは絶えず粉雪が降り注ぎ、状況は一刻の猶予もない。


ドン――


ナスティアはほぼ全魔力を使い切りながら、最後の一人が抜けるまで重力場を維持した。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ――


再び大地が激しく揺れた。


ゴゴゴ……

ゴゴゴ……

次々と衝撃波と轟音がガレ場から炸裂する。


彼らは残った力を振り絞って山道の曲がり角まで駆け上がり、下を見下ろした――


下方のガレ場では、極彩色の魔法が弾け、狙撃手たちの金色の弾道が一点に集中している。


「うあああっ!」

十数人が突如として宙へ吹き飛ばされ、身体を真っ二つにされて惨死した。


その血霧の中から、一つのぼろぼろの人影が現れる。


破れた毛皮の重装鎧、傷だらけの体、右半身には血塗れの肉の繭が絡みつき、右手には巨大な紫黒の大剣を引きずっていた。


ナスティアが陣形を指示しようとした瞬間、心臓が一拍止まる。


その大剣を持つプレイヤーを、見間違えるはずがなかった。鮮やかな橙色のショートヘア、左耳から後頭部へ回した編み込み。


見覚えのある髪型、見覚えのある背中――


「エレナ!!」


エレナはゆっくりと振り返る。金紅の瞳はもはや人間の丸い瞳ではなく、竜族特有の縦に裂けた鋭い瞳孔だった。


「フー……グル……フー……グル……」

低く唸るその声は、完全に竜のものだった。


「ブラウンベア陣形!重装前列、魔導士は左右に展開して包囲、遠距離で制圧!」

カルロフは即座に、最も防御力の高い陣形を展開する。


生き残った隊員たちは慌ててカルロフのもとへ集結した。


騎兵隊はほぼ壊滅し、伝令に回れる者がわずかに残るだけ。

近衛兵も二十人に満たず、狂戦士と血魔が前線に出て穴を埋めるしかない。

幸い、数名の魔獣使いが火の巨猿と甲殻亀を召喚し、壁として側面の防御を補った。


「エレナ!この裏切り――」

カルロフが怒鳴るが、その言葉が終わる前にエレナは目の前から消えた。


「カルロフ、上!」

ナスティアが叫び、すでに薔薇水晶の杖を掲げている。


「竜怒の焔!!」

怒りに満ちた竜の咆哮が空から降り注ぐ。


カルロフが見上げると、金の竜瞳を宿したエレナが高速で突っ込んでくる。紫黒の大剣が、空中に墨のような残像を引き――


「盾構え!!」

カルロフは恐れもなく号令をかけ、重装隊を率いて迎え撃つ。


轟ッ!!


強烈な衝撃波が重装の隊列を真っ二つに弾き飛ばし、数名が十メートル以上吹き飛ばされた。


大量の岩が崩れ落ち、山下へと転がっていく。


幸い、聖職者が即座にダメージ軽減の祝福をかけたおかげで、この一撃で即死者は出なかった。


「うああっ!わあああっ!!」

三人の司教の体が突如として黒い炎に包まれ、地面を転げ回って絶叫する。他の司教ではその状態異常を解除できない。


「竜焔!?」

「神術の反動!?まさか竜怒の焔の効果か!?」

猟竜団の隊員たちは一気に恐慌状態に陥った。


その間にも、エレナは戦場で暴れ回る。


四方八方から魔法が叩き込まれるが、右半身の肉繭は虹色の膜に覆われ、魔法ダメージを50%軽減していた。しかし、露出した左半身は直撃を受け、半身が血に染まる。


それでも、包囲して攻め込もうとした者は即座に大剣で斬り捨てられた。他の者たちは恐怖に縛られ、距離を取ることしかできない。


「ぐっ……!」

カルロフは最初の落下斬撃を真正面から受け止め、盾は粉砕され、そのまま重傷で意識を失った。しばらくして激痛で目を覚ますと、左腕が消えていることに気づいた。


力を込めようとした瞬間、傷口にヤスリで削られるような狂いそうな激痛が走り、思わず意識が暗転しかける。だが、仲間の悲鳴が闘志を呼び覚ました。


「くそっ!!」

激痛に耐えながら上体を起こし、片手剣に体を預けて立ち上がる。


エレナはちょうどカルロフの前で別の隊員を斬り殺し、二人の視線がぶつかった。


「フー……グルアアアア!!」エレナは一直線にカルロフへ突進する!


カルロフは一歩も退かず、残された右腕を掲げて受け止めようとする。


「霜風!」


背後から吹きつけた冷気がエレナを包み込み、皮膚に霜を張りつかせ、移動速度を70%低下させた。


ナスティアは即座にカルロフを引き離す。

「距離を取って!無理にぶつからないで、もう十分よ!」


「霜風!」「天洪!」「ブリザード!」「氷牢!」

混乱の中で魔導士たちを再集結させ、暴走するエレナへ移動阻害の魔法を連続で叩き込む。


ガレ場の中央には、百年に一度とも思える吹雪が巻き起こり、円形の雪原が形成された。


エレナの動きは石化したかのように鈍い。


「撃て!!」


ドドドドドドドド――


狙撃手の弾丸がエレナの身体を貫き、血しぶきが雪上に赤い花を咲かせる。

「竜……怒……」

魔力反動のスキルを発動しようとするが、詠唱が途中で途切れる。


「黒雷!」ナスティアが凍りついた左腕を粉砕した!


「グルル……」エレナはよろめきながら後退し、必死に体勢を保つ。


「どうして裏切ったの!?」ナスティアはガレ場の上から薔薇水晶の杖を掲げて怒鳴る。


「グル……グ……」エレナの竜の瞳が揺らぎ、荒い息を吐きながら一歩も動けない。


「私が密かに渡した伝説級武器 復讐の双極槍はどこ?!その新しい武器のために裏切ったの?ムー大陸に戻れなくなったの?!」


「グ……グル……」


「これが最後よ、裏切りの理由を言いなさい!」ナスティアは怒りを抑えきれず、薔薇水晶の杖が光を帯びる。


信じた者たちは、何の別れも説明もなく次々と消えていった。再び出会った時には敵となり、自らの手で斬るしかない。もうこんな現実には耐えられない。彼女は決めた――裏切り者に慈悲はない。殺す。


「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」エレナが天を仰いで咆哮し、首元の肉繭が激しく脈打つ。


その竜の咆哮が山谷に響き渡る――


ナスティアは腕を振り下ろす。


バチバチバチバチバチ――ドォン!!


数十本の太い黒雷が同時にエレナへ叩き込まれ、周囲の黒石を灰へと焼き、地面には放射状の亀裂が走った。


濃煙が立ち込め、全員が息を呑んで見守る。


やがて煙が晴れた時、そこに立っていたのは――無傷のエレナだった。


ナスティアと賢者たちは顔面蒼白となり、信じられないといった表情を浮かべる。


エレナの表情がふっと穏やかになり、紫の唇がわずかに開いた。


【システムメッセージ: プレイヤー エレナ の最後のメッセージ】



あの時、彼女は何を伝えようとしていたのか……

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