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歪みきった征服ゲーム――見えない魔王を一緒に討伐しよう!  作者: 純白
【第二部】 第八章—— 竜の遺物
229/281

228 制御不能!

一方、竜血島――――


ぽちゃん――白い果実が一つ、深湖の水面に浮かぶ。


「………………」

セランとブラミィはそれを見つめたまま固まる。


「これ……蜻蛉の卵も毒で死ぬんじゃね……」

セランがぼそっと言う。


「大蛙、そもそも果物に興味ないし……」

ブラミィは大きく落胆した。


彼らの蜻蛉育成計画は、完全に行き詰まっていた。



猟竜団――――


「………………」

数十人が顔を上げると、ついに山脈の上に巨大な龍の頭が姿を現した。


「ナスティア様、ここで野営できますか?」

カルロフが問う。


「…………うん。洞窟を探して……野外はもう危険すぎる」

ナスティアは唾を飲み込み、厳しい表情で答える。


猟竜団はついに、上位竜族の領域――山脈の縁へと到達した。



ブゥン――水蛍蜂の群れが大草原を高速でかすめる。


羽がちぎれそうなほど振り回し、必死に前へ突き進む。腹部には白い果実を一粒挟んでいる。


「旋回!」

セランが尾を振るように右へ滑り、後続の蜂群もその軌道をなぞって疾走した。


「だめだ……曲がりすぎだ! 飛ぶ距離が……どんどん伸びてる!」

ブラミィは息も絶え絶えで叫び、蜂の脚も痺れて白い果実をうまく挟めない。


「バカか! 直線で飛んだら追いつかれるだろ! 曲がれ!」

セランはプロのレーサーのようにS字軌道を描く。太い腹部を左右に振りながら、一気に加速した。


「ギィィ~~グォ!」

斑点野猪が追ってくる――狙いは白い果実だ。


猪は圧倒的な筋力を誇り、蹄で地面を蹴るたび数メートル跳ぶ。全身は鍛え上げた肉体のように隆起した筋肉で覆われ、着地の衝撃が波紋のように四肢から背へ伝わる。


あっという間に距離を詰めてきた。


蜂群はすでに限界で、安全距離を維持できない。ブラミィはさらに五個の白い果実を捨てた。


「もうない!」

AIの水蛍蜂が次々と力尽きて墜落し、ブラミィも限界に達して草の上で休む。


セランは一言も発さず、冷静に迎え撃つ。反射する羽をバックミラーのように使い、猪の動きを捉える。泥色の大きな牙を剥き、唾を撒き散らしながら最後の蜂へ噛みつこうとしていた。


「ハンドル……クラッチ……アクセル……行けぇ!!!」

セランは命がけのレースに完全に没入し、頭の中では頭文字OのBGMが鳴り響く。


「Stop~ your self control~~」


ヒュッ――蜂群は軽やかにテールを振り、再び猪を引き離す。タイヤ二本分ほどの差を作った!


「まさか……これは……」

ブラミィは口元を押さえ、震える声で呟く。


「勝負は……最後のヘアピンだ!」

セランは高らかに笑い、蜂群を深湖へ一直線に導く。


「グルルル!」

猪は怒り狂い、尻の筋肉を締め上げ、尾を一直線に伸ばす。速度がさらに五%上昇した。


「フン……たかが5%!」

セランは即座に差を詰められるのを見て、ドリフトで突入し再び急旋回する。


「ギャオオオオ!!(二倍速)」

猪が騎兵スキルを発動し、全身を赤く輝かせて弾丸のように突進した。


「なにぃ!?」

セランは驚愕する。AO86にはGTOの爆発力はない。


ガチャ――

加奈が制御室の扉を開け、騒ぎの元を覗く。


「気をつけろ!!」

ブラミィが飛び上がって叫ぶ。


「うおおお!!」

セランは全力で前へ!


蜂群は草原で三十度の鋭角ドリフトを決めた。


猪は赤い残像を残すほどの速度で突進し、口を開いて――パクッ!


紙一重で蜂群は噛みつきを回避し、生還する。


加奈は猪と蜂と二人のバカを見て、半秒固まり、静かに扉を閉めてその場を去った。


「ダメだ! 白い果実は捨てる!」

セランはもう余裕がなく、AI蜂の白い果実をすべて放棄した。


「バカ!! お前――」

ブラミィは全身を震わせ、怒り狂って叫ぶ。


「黙れ! 走りの神の前で逃げ方を語るな!」

セランは一言一言叩きつけるように言い返す。


「違うだろ! 方向間違ってるぞバカ! 逆だ、深湖はそっちじゃない!!」

ブラミィは肺が裂けそうな勢いで叫び、血を吐きそうになる。


「な……なに!?」

セランは愕然とする。さっきのドリフトに夢中で、深湖の位置を見失っていた。


頭上が暗くなる。


気づいたとき、すでに猪の口の中だった。


「やば――」


横からの衝撃に弾き飛ばされた!

ブラミィは数匹の水蛍蜂を操り、猪の口の中へ突っ込ませてセランの魂が憑依した蜂を救い出す!


パクッ――猪の口が閉じ、水蛍蜂の群れは同時に全滅。しかし猪は止まらず、そのままセランを追う。


セランは樹林帯へ飛び込み、密林の中で若木を避けながら左右に躱す。


深湖はすぐ前だ!


猪は力任せに若木をなぎ倒し、道を切り開く!


「行けぇ!! あと少しだ!!」

ブラミィが叫ぶ。


ここではドリフトする余地がない。セランは目を閉じ、必死に羽ばたきながら祈る。


「うおおお!!」


水面のきらめきが目前に迫る――その瞬間、視界が闇に覆われた。


次の瞬間、巨大な牙に噛み砕かれた。

………………


ドボン――


猪が跳び上がり、水蛍蜂と白い果実をまとめて飲み込み、そのまま湖へ落ちる。


突然、四肢を痙攣させ、水面で暴れ回る。やがて一分ほどで動きを止め、静かに浮かんだ。


「成功した!?」

セランの意識が制御室へ戻り、ブラミィの視界越しに浮かぶ猪の死体を見る。


「ま……まだわからない……」

ブラミィは鋭い視線で水中の動きを見張る。


……水が突然濁り、大量の泥が巻き上がる。


数百匹の大蛙が水面に押し寄せ、競うように猪の死体を食い荒らす。


水しぶきが飛び散り、凄惨な光景に二人は息を呑む。


ゲロゲロゲロゲロ――


やがて、黒く濁った水面に、腹を上にした大蛙の死体が数百匹もぷかぷかと浮かび上がった。


「……成功だ!」

二人は興奮して叫ぶ。


「うるさいわよザコ!!」

加奈がドアを蹴り開け、怒鳴り込んできた。


「か……加奈様! すみません、でも成功しました!」

セランは慌てて飛び寄る。


「アンタ……チッ。静かにしてよ、うるさいのよ」

加奈は眉をひそめ、そのまま気まずそうに去っていく。


「ん?」

セランは不思議そうに見送る。


加奈は苛立ちながら考え込む。


「『いい態度』って……なんなのよ、もう……」


竜首山脈は、ごつごつとした黒石が積み重なってできており、鋭い峰には白雪がうっすら積もっていた。


近衛兵の鉄靴は尖った石を踏むたびにじわりと痛み、魔導士系の職はシステムにより移動速度が1%低下している。だが、皮鎧をまとった弓職だけは身軽に駆け回り、足取りも軽かった。


うねうねと曲がる山道が、プレイヤーたちを頂上の竜首へと導いていく。


生き残った数十名の猟竜団の面々は、二つの壮大な山脈に挟まれたガレ場の斜面を、苦しみながら進んでいた。


冷えた高山を登る彼らの周囲には、薄い白い霞がたなびいている。


振り返って南の山麓を見下ろすと、竜血島の奇妙な景色が一望できた。墨緑の樹林帯、黄緑の草原、淡い青の浅湖、そして赤い砂浜。どの区域も鮮やかな色でくっきり分かれ、色付きの水盤のように幻想的だ。あれほど巨大だった旗艦も、今では遠い海岸線に落ちた小さな塵のように見える。ナスティアは小さくため息をつき、一刻も早く帰路につきたいと強く願った。


山々の奥から、かすかに竜の咆哮が響いてくる。皆は唾を飲み込み、そのまま前へ進み続けた。


「カルロフ、今日はこのへんでいい」

ナスティアがカルロフに声をかける。


「了解だ。洞窟を探して一晩明かそう」


ナスティアは微笑んでうなずき、胸のつかえを少しだけ下ろした。だがサーバー時間を確認した瞬間、ほどけかけた心臓は再びきつく締めつけられる。

「あと数時間で攻城戦が始まる……時間がない……」


「ナスティア様、カルロフ隊長がお呼びです。洞窟を確認してほしいと」

哨兵がそう告げる。


ナスティアは手も使いながら右手の細い山道を登っていく。ようやく尖った硬いガレ場を離れ、柔らかな雪を踏んだ彼女は、思わず小さく吐息を漏らした。足裏を冷たい積雪に押しつけ、痛みをやわらげる。


「洞窟? どうして私が確認するの?」

ナスティアは道の先を見やるが、洞窟の入り口は見えない。


「この先を右に曲がれば見えます。理由はわかりません。カルロフ隊長が、ほかの者は中に入れるなと」

哨兵に案内されて進むと、角を曲がった先の雪道に、五人の猟竜団員が座って休んでいた。彼らはナスティアの姿を見るなり慌てて立ち上がり、軽く会釈して道端へ下がる。


その背後の山肌には、直径五メートルほどの真っ黒な円形の洞口がぽっかりと開いていた。カルロフが入り口で手を振っている。


「どうしたの?」

ナスティアは眉をひそめ、そのままカルロフに続いて洞窟へ入る。


「俺たち……たぶんエレナの猟竜団を見つけた」


「…………全滅?」

ナスティアはもう慣れきった冷えた声で聞く。


カルロフは黙ってうなずいた。


洞窟の奥には、いくつもの光塵が浮かんでいる。



どうやらセラン家は、豆腐屋をやっているみたいだ……( ̄∀ ̄)ニヒヒ


あの操縦、どう考えても本職じゃない……

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