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十段を三人倒したので俺は十一段です  作者: 三流小説家QIfengRR


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4/11

第4章 公務執行妨害

渋谷警察署の森大輔巡査が木曜日午後三時四十七分に提出した報告書:


「市民からの複数の通報を受け、渋谷スクランブル交差点付近で練習着を

着用した男性が公衆に対して無認可の格闘行為を行っているとの情報に

より現場へ向かった。


午後二時二十二分に到着。対象者は交差点南口付近でコンビニのおにぎり

と思われるものを摂食しながら立っていた。


対象者は現時点で何ら問題行動を起こしていないように見えた。


対象者に近づき本人確認を求めた。


対象者は自分を黒金武志、十一段と名乗った。


巡査は十一段という段位について説明を求めた。


対象者は十段を三人倒したこと、および十に一を加えると十一になることを

説明した。


巡査はこれが武道の段位のあり方ではないと指摘した。


対象者は同意しなかった。


さらに会話が続いた。


午後二時三十一分、三名の人物が対象者に近づき、コンテンツ制作目的で

対象者と戦う意図を表明した。


巡査は当該人物たちに解散するよう指示した。


当該人物たちは解散しなかった。


巡査は状況を評価するために一歩下がった。


状況は約八秒で収束した。


三名に怪我はなかった。ただし、地面に倒れていた。


巡査は対象者との会話を再開した。


対象者はおにぎりを食べ終えた。


会話が続いた。」


報告書には森巡査が前夜動画を三本すべて見たことは記されていなかった。


0:52の投げを約九回見たことも。


三名の人物が近づいたとき状況を評価するために一歩下がった理由の一つが、

何が起きるか見たかったからだということも。


これらの詳細は公式報告書には関係なかった。


――


武志に関わることがそうであるように、これも彼側には特別な意図なく

始まった。


起きて、アパートで壁が狭く感じるまで練習して、そういうときにいつも

行く渋谷に出かけた。


おにぎりを買った。


食べていた。


計画の全容だった。


二口目を食べているところで警察官が現れた。


若かった。たぶん二十六歳。清潔な制服。電車の中でこのやり取りを頭の中

でリハーサルしていたのに、対象者が台本通りに動かないことに気づいた男

の表情をしていた。


「すみません、通報がありまして――」


「食べてる。」


「わかりますが――」


「食べるか?」


警察官はおにぎりを見た。「いえ。」


「そうか。」


「この付近での騒ぎに関して通報があり――」


「それは昨日の話や。」


「すみません――」


「今日はまだ誰も殴ってない。」


「午後二時ですよ。」


「まだ早い。」


警察官は武志を見た。武志はまた一口食べた。


「身分証を見せていただけますか。」


武志はポケットを探った。財布を見つけた。身分証を渡した。


警察官はそれを見た。武志を見た。また見た。


「登録住所は三軒茶屋ですね。」


「ああ。」


「渋谷には何の用で?」


武志はこれを考えた。


「こっちの自販機の方がいい。」


警察官が何かを書き留めた。


「職業は?」


「十一段。」


警察官のペンが止まった。


「それは職業ではありません。」


「今からはそうや。」


警察官は自分の脅威評価を更新している男の表情で武志を見た。


「こちらとしては――」


そのとき山本が現れた。


YouTuberではなかった。


それが武志の最初の認識だった。


YouTuberには特定のエネルギーがある。パフォーマンス的で、カメラを

前面に出し、戦いよりリアクションに興味がある。この三人は違った。

年上だった。三十代半ば。ジム的な美しさではなく、長年の実際の訓練

で作られた体つき。


後ろの一番小さな男が一台のスマートフォンを持っていた。


リングライトは見当たらなかった。


先頭の男は肩幅が広く、少なくとも二回折れたことのある鼻を持ち、

以前にもこれをやったことがあってだいたいどうなるかわかっている

男の落ち着いた表情をしていた。


武志を見た。警察官を見た。また武志を見た。


「あんたが十一段の人やろ。」質問ではなかった。


「ああ。」


「山本。サブミッション・レスリング、十二年。」


ビジネスミーティングの前に経歴を述べる男のように言った。


武志はおにぎりを食べ終えた。


「オッケー。」


警察官が手を上げた。「皆さん、こちらとしては――」


「一分だけ。」山本が警察官に言った。丁寧に。


警察官はわずかに手を下げた。後でその理由を完全には説明できなかった。


山本は武志を見た。


「動画見た。老人は数に入らない。」


「入る。」


「九十歳やで。」


「十段やった。」


「二十年訓練してない。」


武志は彼を見た。表情に何かが変わった。


怒りではなかった。侮辱への反応でもなかった。注意に近いものだった。


「俺が嘘だと思ってるんか。」


「簡単だったと思ってる。本物かどうか確かめたい。」


間があった。


武志は警察官を見た。


警察官はメモ帳を見た。それから山本を見た。それから武志を見た。

それからどちらでもない中間の空中の点を見た。


「こちらとしては二人とも――」と言い始めた。


「二分だけ。」武志が言った。


警察官は止まった。


メモ帳を見た。


公式報告書で後に「介入が即座に必要かどうか評価するために一時停止した」

と表現される決断をした。


武志は空のおにぎりの包みを置いた。


「オッケー。」


山本は上手かった。


すぐに明らかだった。


YouTuberチャレンジャーレベルではなかった。本当に上手かった。動きは

グラウンドに根ざして経済的で、体格が示すより素早く距離を詰めた。


クリンチを狙った。片腕が入った。


もう片腕が想定した場所になかった。


調整した。素早く。上手に。


武志は調整させた。


それから山本のサブミッション・レスリング十二年が準備していなかった

ことが起きた。見たものより速かったからではなかった。強かったからでも

なかった。


存在しない方向から来たからだった。


クリンチの中にいた。ポジションをコントロールしていた。タックルを

仕掛けようとしていた――


地面が来た。


投げられたのではなかった。スウィープされたのでもなかった。


ただ――到着した。


アスファルトが静かな丁寧さで背中に自己紹介した。


そこに寝ていた。瞬きした。


武志は立っていた場所に立っていた。目に見えるほど動いていなかった。


山本は起き上がった。武志を見た。


終わるのに時間がかかる種類の視線だった。


「もう一度。」


武志は彼を見た。


三日間の中で初めて、表情の中の退屈ではない何かに変わった。


「オッケー。」


もう一度やった。


今回は長くかかった。山本が勝っていたからではなく、武志が何かを

気にしていたからだった。山本にできることの端を試していた。方法論

的に。これまで出会ったことのないものの引張強度を確認する男のように。


山本は約九十秒間面白くいられるほど上手かった。


それから再び地面にいた。


今回はしばらくそこにいた。上を見上げながら。


渋谷のスクリーンが見下ろしていた。洗顔料の広告。新型スマホ。


「何やったんや。」山本が空に向かって言った。


「わからん。研究中や。」


山本が起き上がった。武志を見た。終わるのに時間がかかる視線。


「本物や。」


「ああ。」


「どこで練習したんや?」


武志はしばらく黙っていた。


「あちこちで。」


山本はこれを、それしか来ないとわかった男が答えでない答えを

受け入れる方法で受け入れた。


立ち上がった。上着を払った。武志をもう一度見た。


一度うなずいた。


向きを変えた。歩いて行った。二人の仲間が続いた。スマートフォンを

持っていた男がそれを下ろした。


警察官が咳払いをした。


武志は空のおにぎりの包みを手に取って最寄りのゴミ箱に捨てた。


「わかりました。」警察官が言った。


武志は彼を見た。


「こちらとしては――」警察官が言い始めた。


「動画見たんやろ。」武志が言った。


警察官は止まった。


「0:52の投げ。一回以上見た。」


警察官は何も言わなかった。


「一歩下がったやろ。」武志が言った。「あの三人が来たとき。」


間があった。


「評価するために――」


「見たかったんやろ。」


警察官はメモ帳を見た。


長い間。


それから顔を上げた。


「公共の場でこれを続けることはできません。人が怪我をします。」


「みんな大丈夫や。」


「公務執行妨害です。」


「誰も困ってない。」


「私が困っています。」


武志は彼を見た。警察官は武志を見た。


何かが二人の間を通り抜けた。同意ではなく。相互認識に近いもの。


「移動してください。」警察官はついに言った。


「わかった。」


「交差点での喧嘩もやめてください。」


「向こうから来るんや。」


「では見つからない場所に行ってください。」


武志はこれを考えた。


「わかった。」


歩き始めた。


警察官は彼が去るのを見た。メモ帳を見た。武志が歩いていった方向を見た。


報告書に書いた:「対象者は公共の騒ぎをやめて移動するよう指示された。

対象者は従った。」


書かなかった:「対象者は四年の職歴の中で出会った最も危険な人物か、

最も説得力のある狂人のどちらかだ。おそらく両方。0:52の投げは

トリックではない。」


書こうと思った。書かなかった。


メモ帳を閉じた。交番に向かって歩き始めた。止まった。


振り返った。


武志が立っていた場所をしばらく見た。


それからまた歩いた。


――


通りの向かい、カフェの二階で、花はその一部始終を見ていた。


午後二時九分に到着していた。武志より十三分早く。


コーヒーを注文した。ノートパソコンを開いた。観察ドキュメントを開き、

新しいセクションを、タイムスタンプをつけて準備した。


用意ができていた。科学的なフィールドリサーチを行う研究者だった。

この状況を完全にコントロールしていた。


それから武志が来ておにぎりを食べ始めて、彼がおにぎりを食べる方法が

純粋に生体力学的な観点から興味深かったため六分間一字も打てなかった。


体重のかかり方。


肩の無意識の準備状態。


ほとんどの人が一度も経験しないような方法で、同時に完全にリラックスし

完全に体の中に存在している様子。アスリートでさえ。格闘家でさえ。


入力した:


休止状態:対象者は習慣的であり意識的ではないと思われる同時のリラックス

と準備状態を示している。比較できるのは――


入力をやめた。


彼が顔を上げた。


自分の方にではなかった。ただ上に。向かいの建物か、空か、特に何かにでは

なく。でも一秒間、視線がカフェの窓を横切った。


花は動かなかった。


彼は目を下に戻した。食べ続けた。


花は息を吐いた。実際の観察を入力した。


警察官が来た。花は会話を学術的な関心で観察し、警察官のボディランゲージ、

武志が取り調べを受けながら食べる様子、警察官に取り調べられている男の

社会的不安の完全な欠如を書き留めた。


入力した:


権威的な人物に対するストレス反応ゼロ。極度の自信か、通常の社会的恐怖

処理の完全な欠如のいずれか。おそらく両方。


それから山本が来て、すべてが変わった。


花は前に身を乗り出した。


わずかに。


これに気づいて元に戻った。


山本の経歴、姿勢、折れた鼻、動きの経済性を観察した。


入力した:


挑戦者。訓練済み。サブミッション系の背景。述べた通り十二年の可能性あり。

肩の位置、体重配分に注目、――


始まった。


花は入力をやめた。やめたことに気づいていなかった。


代わりに動きを見ていた。クリンチ。調整。調整の後に起きたこと。


約半秒前に何が来るかわかっていた。動画を四十一回見ていた。十九ページの

メモがあった。藤村の論文を四回読んでいた。


四十五度の角度の低解像度の動画映像で空投がどう見えるかを知っていた。


三十メートル離れた場所から直接、完全な日光の下でどう見えるかは知ら

なかった。


違った。かなり違った。


テーブルの端を握っていることに気づいた。


力を緩めた。


自分は研究者だった。リサーチを行っていた。自分は――


山本が二度目に地面に落ちた。


花は音を出した。


小さかった。カフェはそれほど静かではなかった。


隣のテーブルの女性が彼女を見た。


花はノートパソコンの画面を見た。女性は目を逸らした。


十秒間画面を見続けた。


それからまた窓の外を見た。


武志と警察官がまた話していた。武志が話しながら顔を観察した。誰かのために

パフォーマンスしていなかった。誰かのために何もしていなかった。ただそこに

立って、自動販売機の選択肢について話すのと同じトーンで思っていることを

言っていた。


入力した:


社会的パフォーマンスの完全な欠如。外部からの承認のために行動を調整しない。

思っていることを言う。他人にどう見えるかを認識していないか、無関心。


間を置いた。追加した:


格闘家として危険な特質。


また間を置いた。追加した:


一般的に危険な特質。


書いたものを見た。最後の行を削除した。また入力した。残した。


武志が歩いていった。警察官が見送った。花が見送った。


角を曲がるまで見た。


それから観察ドキュメントを見た。今は十四ページだった。


結論と題したセクションを読んだ。


でも誰かが何かを教えた。

今の彼が何であれ、誰かがかつて一度方向を示した。

誰なのか調べる。


調べようとしていた。何もなかった。登録記録なし。試合履歴なし。

所属道場なし。記録されたコーチなし。


黒金武志はアクセスできるどの武道データベースにも存在していなかった。


完全に形成された状態で、どうせ合格できるはずのなかった講道館の試験に

現れて、信念のもとにそれを落ちた。


彼が立っていた空の角を見た。


アパートの壁のことを考えた。


彼の建物を調べていた。渋谷の自撮り動画の背景の細部から大まかな場所を

特定していた。三軒茶屋。ショットの角度から駅近くの建物の三階。


そこには行っていなかった。行くつもりはなかった。


ドキュメントを見た。一番下に新しい行を追加した:


三軒茶屋に行かない。


それをじっと見た。ドキュメントを閉じた。開いた。その行を読んだ。


コーヒーをもう一杯注文した。


新しいセクションを始めた。タイトルをつけた:


観察された技術――ライブ分析――木曜日


書き始めた。二時間書いた。


三軒茶屋のことを考えなかった。


少し考えた。


コーヒーを飲んだ。書き続けた。


――


健二が渋谷に到着したのは午後四時十五分だった。


出口を間違えたので四十分遅かった。


カメラを持っていた。同じカメラだったが、新しいストラップを買い、

より良いレンズキャップを買い、専門学校以来初めてセンサーを清掃していた。


かすかに違って感じた。より意図的な感じがした。


渋谷駅近くの自販機で武志を見つけた。三台目だった。


「よう。」健二が言った。


武志はカメラを見た。また健二を見た。


「レンズキャップ新しくなってるな。」


「うん。」


「そうか。」


健二はしばらく立っていた。


「インタビュー受けた。」


「言ってたな。」


「もっと映像が欲しいって。」


「何の?」


健二は武志に向かって漠然と手振りをした。


「俺。」武志が言った。


「うん。」


武志は自販機を見た。「金もらえてるか?」


「うん。」


「よかったな。」


缶を選んだ。見慣れた疑いの目で確認した。


「で。」健二が言った。「撮っていいか――」


「ええよ。」


健二はカメラを上げた。


武志は缶を開けた。飲んだ。顔をした。


「また違うやつにした。」


健二はこれを撮影した。刺激的な映像ではなかった。それでも撮った。


「今日、喧嘩があったな。クリップ見た。」


「山本。」


「上手かったか?」


武志は考えた。


「YouTuberよりはな。」


「それほど高い基準じゃないけど。」


「ない。」


健二はカメラを少し下げた。


「本当に誰かと戦いたいの?本当に。」


武志は彼を見た。質問は健二が予期したより違う場所に着地した。


傷ついたのではなかった。一蹴したのでもなかった。


武志は手の缶を見た。自販機を見た。通りを見た。


「ああ。」


「なんで?」


間があった。健二が予期したより長かった。


答えを避けているのではなかった。本当に考えていた。


「何かがある。」武志はついに言った。


「何が?」


「もう少しでできる何か。」


缶を見た。


「二回感じた。意図的にはできない。」


「技みたいな?」


「みたいな。」


「それには誰か上手い人が必要で――」


「俺を十分遠くまで追い込んでくれる誰かが必要や。そうしたら起きる。」


長い間があった。


「今まで誰も――」


「ない。」


健二はこれを考えた。またカメラを上げた。


「わかった。」


「何が。」


「探す間、撮る。」


武志は彼を見た。「もう怖くないんか。」


健二はメールの中のスポーツメディアの契約のことを考えた。新しいレンズ

キャップのことを。老師範が自分の手を見つめている映像のことを。


「まだ怖い。でも雇われてもいる。」


武志の顔に何かが起きた。別の照明の下ならほとんど笑みと呼べるかも

しれないもの。


「わかった。」


歩き始めた。健二が続いた。カメラを上げて。


二人は渋谷の夕方の中に歩いていった。


そして群衆の中、三十メートル後ろのやや左側で、ノートパソコンの

バッグを持った女が観察アプリを閉じ、慎重な距離を保ちながら後に

続いた。


同じ方向に向かっているだけだと自分に言い聞かせながら。


同じ方向ではなかった。


同じ方向ではないことは分かっていた。


それでも同じ方向に行った。


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