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第36章 見せる日
閉じた観察会の日。
入室者は、七名。
全員、成人。
全員、黒帯以上。
撮影なし。
公開なし。
外部発信なし。
そう決まっていた。
武志は、白い道着で、畳の端に、立っていた。
少しだけ、落ち着かなかった。
大勢の前より、
少人数の、真剣な視線の方が、やりにくかった。
佐伯七段が、前に出た。
三十四歳。
全日本の強化に関わる、現役の指導員だった。
背は、高くなかった。
でも、立ち方に、迷いがなかった。
彼女は、武志に、礼をした。
「本気で、行っても、よろしいですか。」
武志は、礼を返した。
「……お願いします。」
畳の周りが、静かになった。
山田は、壁際で、ペンを持っていた。
でも、まだ、何も、書けなかった。
佐伯は、一度だけ、呼吸を整えた。
その整え方が、すでに、上手かった。
老師が、小さく、言った。
「ええな。」
館長も、うなずいた。
「ええ。」
武志は、両手を下げた。
佐伯は、そこを、正面から、取りに来た。
迷いのない、最短距離だった。
観察会は、そこで、ようやく、本当に、始まった。




