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第4話 はるかとはるか

・新たな試練


学園での生活も少しは慣れてきたころ、教師からの突然の試練。

平穏無事な学園生活を守るためは、これを突破せねばならない。

ただやはり、仲間たちは動揺を隠せない。

戸惑いの声、世界への恨み、届かない祈り。


いやまぁ、テストなんてそんなもんだ。

中間試験だし突然でもなくね?


開始の合図とともに、机のウィンドウが問題文を映す。

ざっと見たところ、難しそうでもないかな。数学は得意だし。

満点とはいかなくとも、それなりの結果にできる自信はある。

うんうんと唸っている仲間たちには悪いが。


特に答えを求めているわけではないが、ちょうどいい機会だ。

試しに、と女神を思い浮かべると、手元に吹き出しが出る。


 ▽ 第2問

  35 28 16 21


え?あれ?

見慣れない表示に戸惑っていると、数字が変わる。


  41 28 16 15


表示が変わることなんかあったか?

これもしかして、みんなが回答している割合だったり?


  52 20 18 10


間違いなさそうだ。

最初の選択肢が人気のようだ。え人気?

いやたしかに1つ目が正解のハズだ。


「そうか、直接答えが出るわけじゃないんだ」

後ろでめぐるが顔を上げた気配を感じる。

思わず口にでてしまっていたらしい。


思いのほか不便なところもあるみたいだ。

後は黙々と残りの問題を解いていった。


「ぐあぁ」

伸びをするめぐるが、遥先生は余裕だったろ?と聞いてくる。

「そうだね、特に気になるようなとこはなかったかな」

「やっぱりそうか。さすがだな遥は」

俺が見込んだ男なだけあるな、とバンバン背中を叩いてくる。


得意分野だしという思いがつい口から出てしまう。

「えっへん」

「おっと、遥先生が余裕を見せつけてきたぞ」

「え、いや、なんとなく」

「かー!負けだよ俺の!」

顔を見合わせた直後にお互い吹き出してしまった。

やはりこいつとは、ずっと仲良くやれそうだ


・・・


自室のベッドで、今日の不思議な現象を振り返ってみる。

今までと違い、なんで割合が出たんだろう。

よくわからないまま、女神の顔を思い浮かべる。


何か選ぶわけでもないからなのか、空欄の吹き出しが出た。

あ、一応でるんだ。


へーと感心していると、隅の小さい数字に目がとまった。


 087


うん?なんだ?エラーコードか?

もしかすると、ステータスコードとかそういうのか?

特に表示するものがないことを示す、とか。

もしかすると、今までも出てたのかもな。

次からはちょっと意識しておこう。


自分の「えっへん」に思い出し笑いしながら、眠りについた。


・お見通し


何か思いついたのか、突然めぐるが肩をたたいてきた。

「無事にテストも終わったことだし、打ち上げとかどうよ」

「中間テストで?」

「こういうのは男気なんだよ。食いたいものとかあるか?」

「男気なんだ。んー、いや特にはないかな」

「いっつもなんか考えてそうだから、なんかあるかと思った」

「別に、そういうわけじゃないよ」


考えてそうってとこに思い当たる節がないわけじゃない。

ただ、言えるものでもないしな。

とその時、扉の強度が気になる音が教室に響く。

やっぱり絵里ちゃんか。

「めぐるくん!購買にすごいのあったよ!」

「すごいのって?」

「よくわかんない!行こ行こ!」

「わかんないのかよ」


購買には、たしかに見慣れないパッケージが並んでいる。

「めぐるくん!これこれ!」

「なんだそれ、パンなのか?」

「たぶんきっとおいしい!」


絵里ちゃんは「たぶんきっとおいしい」やつだな。

正体が気にはなるが、彼女らしい選択だな。

めぐるは「新作!」というポップがついた焼きそばパンか。


なんとなく棚を眺めて、クリームパンが目についた。


「お、この新作は普通にうまいな」

「でしょでしょー。えりにはなんでもお見通し!」


一瞬だけ心臓が跳ねた。


「さっき何もわかってなかったろ」

「えへへーでもおいしい」


ひとまず落ち着こう。

クリームパンを無言でもぐもぐと食べ進めてしまう。


「はるかくんリス?」

「え?」

「もぐもぐさんだもん。はるかくんリスだった!びっくり!」

「なんだよそれ」


リスかどうかはともかく。

このクリームパン、うまいな。


・岬さん


「はるかくーん、またねー」

めぐると絵里ちゃんが「おかいものだよー」と飛んで行った。


ひとりになった帰り道、潮の匂いにつられて海に向かっている。

風が強いかな。

遠くに見える空と海の境目が、やけにはっきり見える。


澄み渡った青の中で、小さいが存在を主張する赤があった。


どこか見覚えのある白いワンピース、彼女の傘だ。

確かめようと目を凝らすと、彼女が駆け寄ってきた。


「あのときは」

「あのときは」


同時に声が出たことが照れくさい。

頭をかくと、彼女がハンカチを差し出してくれる。

「ありがとうございました」

「え、いや、いいよ」

「お礼が言いたくて」

「ずっと持ってたの?」

「あ、はい」


今度は彼女が恥ずかしそうに、ちょっと下を向く。

ハンカチは綺麗にたたまれ、でも少し日に焼けていた。


「ありがとうございました」


改めてのお礼に少し申し訳ない気持ちにもなる。

でも、ずっと持っていたのかな。

いつ再会するかわからないのに。

なんだか少し彼女のことを知りたくなってきた。


「このあたりの学園とか?」

「あ、はい。まだ登校したことはないんですけどね」

「?」

「もうすぐ初登校なんですよ!」


髪をかき上げながら顔をあげた彼女が笑顔を見せた。

あの時の神秘的なイメージとは違い明るいもの。

でもどこかぎこちない。


少し強い風にあおられた傘が大きく揺れる。

とっさに手を伸ばそうとしたが、彼女はしっかり傘をにぎる。


「慣れ、た?」


なんとなく意地悪な質問が思わず口をついて出てしまった。

僕はもしかして、いやなやつかもしれない。


「あ、はい!もう大丈夫です!」

彼女は明るく、続けて、岬です、岬ハルカですと教えてくれた。


「はるか」

「え・・・」


いきなり呼び捨てのようになってしまった。いかんいかん。

「あああ、ごめん、阿南、遥、僕の名前」

「遥か彼方の遥」

「おなじ名前だったね」


「はるかくん・・・」

「ああ、うん」


改めて目が合い、お互い吹き出してしまう。

そんな偶然あるんですね!という彼女の笑顔がまぶしい。


「よろしくね、岬さん」

「はい、こちらこそよろしくです、阿南くん」


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