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第3話 あまあま絶好調!

・学園生活


汐見さんは隣のクラスだけど、一緒に下校するようになった。

「ねね、めぐるくん!」

「なんだ?」

「なんかね、新しいお店できたから行きたい!」

「おう、行こうぜ、遥もいいよな」

「ああ、行ってみよう」

「やったね!」


汐見さんの言うお店とやらは、おそらくスイーツ的なやつだろう。

お店が近づいてくると、ほらね。思った通りだ。

「うわーいっぱいあるね!」


「ねね、めぐるくんはあまいの好きだったよね!」

「おう!甘いのも辛いのも苦いのも好きだぞ!」

「ニガイのはいやかなぁ・・・はるかくんもあまいの好き?」

「う、うん。す、すきかな」

「はるかくんかっわいいー」


え、かわいいの?なにこれワンチャンあったりする?

いやいや。そりゃ甘い。


甘いというか、沢山の甘そうなメニューが目に飛びこんできた。

いわゆるクレープだな。

ただし自分の知ってるクレープではない何かも大量にある。

「だいもんだい、だよ?めぐるくん」

「そうか?」

「どうしよう、もう一生決めらんない!」

「俺はこれかなあ、ツナスパムクリーム」

「それ甘いのかしょっぱいのかわかんないよー」

「いや見たことないし」

「そういうとこ変わんないよねー」


これは外せない。

めぐるはいいとして、汐見さんに候補をご提案申し上げたい。

女神のことを思うと期待通り、手からウィンドウが開いた。


 ▽ 納豆おくらキムチ

  ネットリ度:MAX

  マゼマゼ度:MAX

  ネバネバ度:MAX+++


いや、見なくてもわかる。そういうもんだ。


 ▽ 生チョコバナナ

  コスパ度:MAX

  バナナ度:MID

  これも捨てがたい度:MID


たしかに捨てがたい。

なによりコスパ最高ってのがいい。とりま自分の分はこれだな。

あれ?バナナ好きだったっけ。


 ▽ 焦がしブリュレのプリンクレープ

  あまあま度:MAX

  肥満感:+20

  学園女子支持率:83

  学園女子リピート率:92


学園女子的に、わかりやすすぎないか?

この肥満感てのはなんだ?罪悪感ならわからんでもないが。

ともかく、汐見さんにはこれだな。

「汐見さん、これどうかな、焦がしブリュレのやつ」

「それいい!」

「なんか女子に人気みたいよ?」

「えなに、はるかくんそういうの知ってる感じなんだー」

「というか、汐見さんに合いそうかなって」

「あ、えりでいいよ!上の名前で呼ばれるとくすぐったい」

「う、うん。じゃあ頼んじゃおうか」

「やったね!」


つい二人分払おうとしてしまい、汐見さんに止められた。

べべべつに名前で呼んでと言われたからじゃないぞ?

そんな甘くないぞ?焦がしブリュレは甘そうだけど。


だめだよーという汐見さんの顔で少し冷静になる。

そうか、今は「もう」学生だったな。


しばらくして受け取ったバナナクレープは、芳醇な香りがする。

確かにこれはコスパ最高かもしれない。


さっそくかぶりついていると、汐見さんが隣でつぶやいた。

「やばい」

「おいしい?」

「これはやばいよ、はるかくん」

「おいしかったならよかった」

「ううん、そういうのではなく、太りたくなる」

「はい?」

「うん、太りたくなるあじなんだよ。えり太ることを決意する」

「お、おいしいならよかったよ」


「ネバネバすぎるだろ!非常識にネバネバだろ!これ!」

あー。ですよねー。


・・・


3人で下校するのがすっかり日課のようになっていた。

「はるかくん、釣りとかするんだー」

「うん、近くに有名なスポットがあるって聞いてね」

「えー、えりも行きたい!やったことない!」

「たしか道具貸してくれるみたいだし、ためしに行ってみる?」

「やったー!いくいくいくー!めぐるくんも行くよね」

「おう、もちろんだ。遥には負けねぇ」

「あ、はい」


親父に釣りの話題を出したとき、教えてくれていた。

なんでも島の住民は料金がかからないらしい。

有料だが釣り上げた魚の調理も頼めるので人気、ということも。


じゃぁ次の休みは、みんなで行こうかということになった。

汐見さんは、ばんざーい!と叫びながら、くるくる回ってた。

たぶん、あれは穴を掘ってるんだ。大変だな。がんばって。


・海釣り公園


快晴の海釣り公園は風が気持ちいい。

朝から家族連れでにぎわっている。ちょっと早かったかな。

みんなはと見回すと、知ってるアニメ声が聞こえてきた。


「おっはよー!」


片手をあげてそのまま飛んでいきそうな勢いだ。

アウトドアを意識したような黄色いショートパンツ。

オーバーサイズ気味のシャツもよく似合ってる。

「はるかくんはやいねー、めぐるくんはまだー?」

「うん、もうすぐじゃないかな」


「おーい!おまたっせー!」

「めぐるくーん、おっはよー!」


みんなで道具を借りて、いよいよ釣り場へ向かう。

窓口で身を乗り出してた汐見さんのためにも、よく吟味しよう。

そうだな、いっそ初心者向けで入れ食いみたいな場所ないかな。

やたら都合がよいことを女神に念じてみる。


 ▽ 正面の岩陰

  混雑:少々

  魚影:濃い

  難度:低い

  足元:安定


やけに具体的だな。

足場がいいっていうのも加点ポイントだよな。


 ▽ 西側の柵

  混雑:多い

  魚影:薄い

  難度:やや高い

  足元:安定


あー混んでるのはちょっとな。

魚もいなさそうだし、ここはパスかな。


 ▽ 東側木陰

  混雑:ゼロ

  魚影:僅か

  難度:最高

  足元:注意


めちゃくちゃにわかりやすくないか?

これももう正面の岩陰がド安定じゃん。


「めぐる、あっちの岩陰がよさそうな気がする」

「お、さすがだな、行ってみよう」

「なになにーあそこがいいの?」

「うん、あまり混んでないし、足場もよさそうだしね」

「へぇ!なんかすごいね!」


素直にすごいと言われたことにくすぐったさを感じる。

でもせっかくだ。釣れないのも危ないのも避けないと。


エサはイソメと呼ばれるミミズのような生き物だ。

汐見さんごめん、大丈夫?と声をかけようとした矢先、


「この子ぶっすりいけばよい?」


あー結構大丈夫な感じなんですね。汐見さん。

「うん、途中から針が出るような感じでいいと思う」

「お、こんな感じか?遥」

「いいと思うよ。というか、僕もはじめてなんだけどね」

「なんだよ遥。なんかもうプロっぽかったぞ?」

「え、あ、そう?」


「うきゃーつよいー!」

さっそく汐見さんに何かかかったようだ。

「まけないよ!」

「汐見さん、ゆっくり引いて!」

「えり!」

「あ、はい」


案外いい感じに引き寄せる汐見さん、あ、絵里ちゃん。

しばらく「むひょー」と格闘していたが、無事釣りあげたようだ。

「きみはだれ?」

「カサゴだね。唐揚げがおいしい」

「ということは、きみもえりを太らせる気だな?」

「そ、そうだね。あとで調理してもらおうか」

「遥!こっちもきたぞ!」

「やるじゃん、めぐる!」


みんな夢中で釣りまくって、相当な釣果になった。

絵里ちゃんのカサゴ、めぐるが釣った大きなアイナメなどなど。

「たくさんつれたね!」

「だよなぁ、色々教えてくれてありがとうな、遥」

「いや、みんな楽しめたようでよかったよ」


「はるかくん!おたのしみはこれからだよ!!」

そうだった。ここは調理してもらって食事できる施設がある。


あの子つよかったんだよ?と二の腕を見せつけてくる汐見さん。

すごかっただろ、とまだ鼻息の荒いめぐる。

食事処で自慢大会を開催していると、料理が運ばれてきた。

香ばしく揚がったカサゴにアイナメの刺身、煮つけまで。

これはなかなかに豪華だ。


お料理を見た絵里ちゃんのはしゃぎっぷりといえば、それはもう。

腕組みしてるめぐるの自慢げな顔といったら、そりゃーもう。


「もうね、えりは、だめなのです」

「え、だ、大丈夫?絵里ちゃん」

「太るとかそういうのではなくね、もうね、すぴー」


「今日は遥の勝ちだな!」


がはは!と言いながら背中をたたくめぐるの顔。

お箸を握ったままの絵里ちゃん。

みんなの様子を見てると、なにか実感がわいてきた。


ただまぁ、お会計のときに、みんなでしょんぼりしたけどね。


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